選択の時
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
木の葉に戻ってきて数日が経過した
今のところ任務はなく、のんびりとした日々を送っていた
あれからヒナタ達やネジさん達にも帰還したという報告をしに会いに行き、それぞれの成長に驚き、そして久しぶりの再会を喜んだ
ネジさんに至っては上忍になっていて、驚いた
シカクさんやヨシノさんにも挨拶に行き、まるで我が子のように私の成長を喜び、そして帰還を喜んでくれた
そんな怒涛の日々も終わり、今日は落ち着いたからと、花屋で花を買い、慰霊碑にやって来た
青い花束を慰霊碑に置き、両手を合わせる
穏やかなこの場所は、やはり心が安らぐ
『……そう言えば、最近ナルトを見てないな』
一緒に帰還したナルトだが、帰ってきて早々に任務が入ったとかで砂隠れに向かった
重要な任務らしく、顔に焦りがあったのを覚えている
その援護としてガイ班が向かった、というのも聞いた
砂に何かあったのか、少しの不安が胸に広がる
『………?』
考えにふけっていると、ザ、と視界が霞む
添えた青い花束に、何か違う映像が重なった
『!!
あ…っ!』
ズキン、と頭が一瞬痛くなったと思ったら、それは断続的に強くなっていく
やがてガンガンと痛むようになり、耐えきれずに地面に伏せた
まるで頭の中を金槌で殴られているかのような、これまでに感じたことのない激しい痛みだった
『……っ、あた、まが…!
………!!』
地面に伏せ、両腕で頭を押さえる
それは気休めにもならず、頭の痛みは激しさを増していく
何の前触れもなく突然に襲われた頭痛は、全ての思考を奪っていった
考えることも出来ないくらいの痛みの中、目の前が真っ暗ふと真っ暗になる
気を失ったわけではない、だって自分にははっきりと意識があるのだから
目も閉じていないはずなのに、なぜ
戸惑うトキをあざ笑うかのように、また痛みは激しさを増した
『っ、あぁぁ!!!』
頭が割れる
恐怖に近い感情を抱いたその時、真っ暗な視界に光が差し込んできた
ーーー……俺が術を解く時、もしくは俺が死んだ時にお前の記憶は戻ってくる
サソリさんが術を解く時だけです、あなたはそう簡単には死なないでしょう?ーー
目の前で少し目を見開く男性は、私が発した言葉に驚いたようだ
だがやがて不敵に笑い、私の額に手を当てた
ーしばらくの別れだ、トキ
せいぜい生き伸びろよーー
その言葉と共に、私の視界は再び暗くなる
そしてまた光が差し込むと、違う人物がそこにはいた
ーー…俺の弟の名を教えておこう
弟の名は、うちはサスケ
アイツとも、もしかしたら出会うかもなーー
この記憶は、映像は、人物は
うちはイタチが私に話しかけている、私の知らない記憶
それにさっきの、赤髪の男には見覚えがない、はずなのに
『………サソリ、さん』
ひどく懐かしい気持ちが湧き上がってくる
どうして、これは一体何なのだ
頭の中に流れてくる映像はどれも分からないものばかりだが、確かに私のものだ
私の、記憶だ
ふと、視界がぐるりと変わる
そして目の前に広がるのは、ひび割れた地面と土煙
『!!
サ、クラ…』
ひび割れた地面の上には、サクラと1人のご老人
そして2人が睨む先には、あの赤髪
『サソリ……さん…?』
サソリ、と記憶の中のわたしが言っていたその名を紡いだ瞬間
2人の攻撃が彼の身体を貫いた
ぶつん
頭の中の何かが千切れる音がした
そして光を失うサソリさんの目
そこでようやく、頭の痛みがなくなった
そして全てを理解した
ふ、と視界が暗くなり、また違う映像が流れてくる
ーー…木の葉隠れの里に潜入し、九尾の人柱力に接触、および木の葉の内情を調査してこいー
光が差し込み、目を開けば、目の前には見慣れた土壁
そして、特徴的な輪廻眼
これで繋がった
は、と口元を緩めて笑う
何という事だ、私はこんなにも大事な事を、こんなに長い間忘れていたなんて
頭の中に流れてくる映像は、そこで止まった
再び目を開けると、最初に目に入ったのは、自分が置いた青い花束
ゆっくりと身体を起こし、そして天を仰ぐ
『………全部、思い出した』
自分にはなぜ、3年分の記憶がなかったのか
自分はなぜ、戦い方を知っていたのか
自分がなぜ、暁に狙われていたのか
自分は何のために生きているのか
『………私は、暁
暁のために、生きている』
なんと滑稽な事だろう
つい先日、五代目と慰霊碑に向かって誓ったことが、いともたやすく壊れてしまった
私は木の葉のために身を捧げるわけではない、この身は全て、暁のために
ーーお前は光の中にいろー
唐突に耳によみがえる、あの日のサスケの言葉
それが思いだされて、おかしくて笑った
『………違うよ、サスケ
私は最初から、光の中になんていない
私は最初から、闇の中にいたんだ』
私はサスケと出会った当初から、暁という闇に染まっていた
サスケが惹かれていたのは、私ではなく、私の闇
知らず知らずのうちに、私の中にある闇に惹かれていたんだ
『………私は光の中にいたら、その光に身を焼く』
暁は、全ての闇だから
ゆっくりと立ち上がり、周りに人がいない事を確認する
そしてはっきりと、言葉を告げた
『ゼツさん、どこかにいるんでしょう』
ズズズ、と空間が歪む音がする
突然現れた気配には、今さら驚きはしなかった
「…やぁトキ、まさか君から名前を呼ばれるなんて」
地面の中から現れたその人は、先ほどの映像に出てきた
サソリさんに術をかけられる直前に紹介された、正式な暁のメンバーだ
『サソリさんは死にました、木の葉の手によって』
「!
……そうかい、だから君は記憶を取り戻したのか」
『………皮肉なものですね
サソリさんを殺したのは、私の友ですよ
私の記憶がない事を気にせずに接してくれていた友のおかげで、記憶を取り戻すなんて
なんという皮肉でしょうね』
は、と嘲笑するトキに、ゼツはすこしの間黙る
だがすぐに、口を開いた
「……さて、君はどうする?」
「木の葉ニ残ルカ?」
ゼツの問いかけに、トキはちらりと慰霊碑に目を向ける
ここともまたお別れか、と申し訳ない気持ちが胸に広がった
『木の葉を抜けます』
ザァ、と風が吹き抜ける
その風が、行くなと嘆いているように思えた
『暁に、戻ります』
私の居場所はそこにあるのだから
第3話
選択の時