生かされた意味
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戦争が始まり、私は戦場から離れた場所で待機を命じられていた
私という存在の損失は、この戦争では敗北となってしまうからだ
『………本当に、時間がなくなるのね』
空目の呪いである、時間の喪失
それはもう私に牙を剥いている
目の前に広がっている景色は森のはずなのに、数年前の木の葉の里の姿が目に写っていた
幼い同期たちがはしゃぐ姿だ
今の私は、過去にいる
かと思えば現在に戻り、また鬱蒼とした森の景色を眺める
時間が行ったり来たりして、結局、今がいつなのか分からなくなった
『…………!』
だが突然、視界が光に包まれる
これは予知夢の予兆だ
何かが起きてしまうことを予感し、目を閉じて予知夢を受け入れることにした
***
視界に広がったのは、日向ネジの姿だ
だがその身体には、無数の木々が突き刺さり、絶命直前であることが容易にわかった
ネジさんが、ナルトをかばって死ぬ
そして暴れ出すうちはマダラと十尾
幾人もの忍びたちの亡骸が地面に転がり、まさに地獄だった
『………私が守りたいものは、この世界
大好きな人たちが生きる、この世界だ』
目を開ける直前、地面に倒れたシカマルの姿が見えた
『シカマルは、シカマルだけは、絶対死なせたくない…!』
予知夢の通りなら、近いうちにシカマルに命の危機が迫る
それはきっと、マダラたちの暴走が関係してる
トビの行方ももう分からない
サスケがどうなったのかも分からない
だがもう、今しかない
私の目的のために、動くなら今だ
ダン、と足を踏み出し、戦場に向かった
***
シカマルが倒れた
戦場の前線に立っていた忍びたちは次々にやられ、絶命していく
少しずつ取り残されていく
「シカマル!しっかりして!」
いのの必死の声も、シカマルには届いていない
まずい、このままじゃ
一抹の不安がよぎった時、また新しい攻撃が襲ってくる
「いの!シカマル!」
チョウジが2人を守ろうと飛び出してくる
だがそれも、間に合いそうにない
誰もが諦めたその時、戦場にはあまりに不釣り合いな、鈴のような声が響いた
『時遁、時空縛』
この世界ではたった1人しか使えない、時間を止める術
誰が使ったのかなんて、すぐに分かった
「トキ…!」
荒れ果てた戦場の地に、ひらりと現れた鮮やかな青
トキの髪が風に揺れた
「………裏切るのか、トキ」
『………。』
トビがギロリと見下ろしてくる
トキはその目をしっかり見返し、口を開いた
自分たちを襲おうとしていた攻撃が、すべてピタリと止まっている
時間が止まっているのだ
『……裏切る?』
トキはトビから一度目を離し、後ろを振り向いた
視界に映るのは、すでに絶命したネジの姿
『………私は、私の守りたいものを守りに来たんです
………………………もう、手遅れだけど』
ヒナタがネジを抱きしめ、涙を流してトキを見つめる
ヒナタの表情は、悲しみと驚きと、落胆と戸惑いと、様々だった
「………トキ…」
名前を呼ばれ、そちらに目を向ける
瀕死の状態だったシカマルが、ナルトのチャクラで回復し、何とか立ち上がっていた
それに、良かった、と小さく呟いた
「トキ」
『………。』
「こちらに戻って来い、お前はこちら側の人間だ」
トキを見下ろすトビ
そして、仲間を背にトビを睨みあげるトキ
一触即発のビリビリした空気感に、誰も間に立つことが出来ずにいた
『………トビさん、あなたが求めているのは"私じゃない"』
「……?」
***
戦場に突如サスケが現れ、第七班が再結集した
その勢いでマダラを止められるかと思いきや、敵はさらなる攻撃を繰り出し、幾人もの忍びたちの命を奪っていった
途中、攻撃を喰らい意識を失ったものの、ナルトのチャクラのおかげで一命をとりとめた
意識を取り戻してすぐに視界に見えたのは、トキの後ろ姿だった
『トビさん、あなたが求めているのは"私じゃない"』
トビと呼ばれる仮面の男を睨み上げ、トキは毅然とした態度で言い切る
何の話だと、全員がトキの言葉に意識を集中させた
「何の話だ?
この戦争が終わった暁には、世界を再構築する
そのためにはトキが必要なのだ」
『違う』
「!」
トビの言葉を真っ向から否定するトキ
トビの隣にいるマダラも、黙って様子を伺っている
『暁が最初から求めていたのは、私じゃない
私じゃなくて、空目の血…
時を操ることができる、私の身体を流れる空目の血が欲しかったんでしょう?』
「………。」
トビは黙り、マダラはふっと笑う
それは、もはや答えだ
「空目一族の力が必要なのは事実だ
だがそれ以上に、お前には価値がある」
『夢見の能力でしょう?
空目の中でも強力な力を持つ者にだけ宿るこの力…
あの日…、一族が滅んだあの日!
私に夢見の能力があると分かったから、暁は私を殺さなかった!!
私の夢見の能力が、この戦争に必要だったから!!
あなたが最終作戦として考えていた無限月読に私の夢見の能力が加われば、過去だけでなく、未来をも閉じ込められる…
この世界のすべての人間の時間を操ることが出来る!!
だからあなたは、私を生かした!!!』
最後はもはや叫びだった
トキが今まで抱いていた、自分が生きた意味を、今ここで確認しているんだと思った
「そうだ」
「「「「「!!!」」」」」
トビはゆっくりと、そしてはっきりと言った
「お前の力を利用し、この世界を再構築するために、お前を生かした
それに間違いは無い」
『………無限月読の発動後、私はどうなるんです?』
「………………。」
トビは黙り込む
だが代わりに、マダラが楽しげに口を開いた
「そんなもの、夢見の能力を月読に吸い取られ、そのまま死ぬだけだ
簡単な話だろう?」
ははは、とまたマダラの笑い声がする
ナルトとサスケが拳を強く握りしめ、わなないているのが分かった
『………………私を殺すために、今まで私を生かしたのですか…?』
「!」
トキの声が震える
彼女は背中を向けていて、顔は見えない
だが、泣いているのだろうと思った
「そうだ
お前の命をもって無限月読を成功させる
だから、こちらに来い」
「ふざけんなってばよ!!!
誰がトキを渡すか!!!」
「トキ!!行っちゃダメ!!」
ナルトとサクラが叫ぶ
トキはその声に反応したかのように、ゆっくりと手を動かした
その手は彼女の腰に携えてある短刀に伸び、スラリと刀身が抜かれる
「………トキ、おい、何考えてる」
ドクン、と心臓が嫌な音を立てた
『私がいなくなれば、あなたの思惑も阻止できる』
そう言うやいなや、トキは短刀を大きく振りかざし、自分の首を切り裂こうとした
「やめろ!!
トキ!!!」
.