父
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第四次忍界大戦が開戦した
それに従い、暁側にはカブトが参戦した
「久しぶりだね、トキさん」
『………その姿』
カブトは、もう私が知るカブトでは無かった
その体に大蛇丸さんを宿し、新しい人間として、次の大蛇丸さんとして生きようとしている
妄信的なカブトのその姿に、言葉は出てこなかった
戦力補充として、カブトの穢土転生を使用するという
見せたいものがあるから、と、私とトビさんはカブトに呼び出されたのだ
『………!!』
大きな棺がいくつも呼び出され、一つ一つ蓋が開けられる
かつての暁の仲間が呼び出されたことに驚きはなかった
カブトはやるだろうと思っていたからだ
だが一つ、予想外の穢土転生があった
「どこで手に入れた……!」
本物のうちはマダラの穢土転生だった
『(……トビさんが本物のうちはマダラじゃない事はバレた、けど多分、オビトという人物である事は分かっていない
どうする、このまま放置するか、殺すか
穢土転生を行なった後では手に負えないし、術者を殺して術が止まる確証もない
穢土転生が暴走すれば、取り返しのつかない事になる
放置しても殺しても、こちらとしては損害が大きい)』
トビの意向に沿うのが一番か
と、私は口を出す事はせず、トビさんの後ろ姿を見つめる
するとカブトは、後ろで控える私を見てニヤリと笑った
「君にも良い手土産を持って来たんだ」
『……?』
ぱん、と手を合わせると、また新しく棺が2つ出てくる
死者を呼び出したのだ
私に、という事は私が知る人物だろう
そして、死んでいる人物だ
自来也様ではない、それはカブト自身が発言していた
自来也様は水圧が強く、引っ張り上げられないところまで沈んでいると
だとすると、誰だ
『………アスマ先生、か』
「察しがいいね、その通りだ
一つは君のかつての師、猿飛アスマだよ」
『残りは?』
「口で言っても味気ないからね、見せてあげるよ」
カブトがそう言うと、ガタン、と棺の蓋が開かれる
一つの棺には、アスマ先生の姿が
そしてもう一つが開いた瞬間、私は言葉を失った
『お父さん……』
あの日失った、私の父の姿があった
***
すでに他界した忍者が何人も穢土転生で呼び出され、敵として現れる
木の葉の里の者から他里の者まで、いろんな人間が現れた
「シカマル!あれ見て…!」
戦場の真ん中で、チョウジが自分を呼んだ
緊急事態かとそちらに目を向け、目を見開いた
「……トキの、親父さん」
空目一族最後の族長にして、トキの実の父親
トキと同じ空色の髪に、空色の瞳を持つあの人が、戦場で戦っていた
「穢土、転生…」
「酷い、トキのお父さんを…」
「………………行くぞ、チョウジ
封印班を呼べ」
「えっ?」
アスマの形見であるチャクラ刀を手に、一歩踏み出す
「トキの親父さんを封印する
そんで、空目一族の呪いについて聞こう」
「!」
「どこにいるか分からないトキを探すより、こっちの方が早い」
「………分かった」
チョウジが一度離脱し、封印班を探しに行く
その間に、トキの父に近付いた
「………!
シカマルか…?!」
トキと同じ空色の瞳が自分に向けられると、彼は大きく目を見開いた
自我はあるらしい
おそらく、穢土転生の人数が多く、一人一人を縛ることが出来ないのだろう
「……そうです、奈良シカマルです」
「やはり…、ますますシカクにそっくりになったな
今はいくつだ?」
「16です」
「…そうか、10年経ったのか」
「………。」
何を言えばいいか分からなかった
封印すると言ったが、複雑だ
「トキと会って、話したよ」
「!!」
「この世に呼び出されてすぐに、ね
気が付いたら、目の前に妻の若い頃にそっくりなトキがいた
驚いたよ
あの子は綺麗になっていた」
「そう…すね」
「全て、聞いたんだ
あの子が教えてくれた」
「………。」
トキの父は、自分が死んだ後にトキがどんな人生を歩んだのか、全て聞いたらしい
暁にいることも、この戦争のことも、全て
「情け無い
大蛇丸に殺され、最愛の娘の成長も見届けられず、挙句あの子は世界の敵となった
生きててくれればそれで良かった
だが、あの子の人生はそれだけじゃ許されない」
「……。」
「あの子の人生は、命は、この世界にとっては危険なものだ
空目の力を開花させているのなら、それはなおさら…
だからシカマル、君に最後の頼みがある」
「………はい」
トキの親父さんは、自分にとっても父のような存在だった
その人の最後の頼みを聞かない理由はない
この人は優秀で、聡明な人だ
だから、彼が次に何と言うか、予想は出来ていた
「トキを殺してくれ」
容易い言葉ではない
自分が命をかけて守った最愛の娘を、殺してくれと頼む
生半可な気持ちで言える言葉ではない
だからこそ俺は、真っ直ぐに親父さんを見つめて返事をした
「はい」
愛する娘といえど、戦争の引き金になった組織の一員であるトキを許してはいけない
彼女の経緯も理解した上で、彼は言ったのだ
「トキに、これ以上空目の名を汚すようなことをして欲しくない
これは私の願いだ
このままでは、死んだ空目の者たちが浮かばれない
………いや、トキを殺したとて、浮かばれることはないだろうが…
だがせめて、この世界に災いをもたらさないよう、あの子を殺してくれ」
「はい、覚悟はしています」
「そうか…、ありがとうシカマル
すまない
こんな辛いことを、小さい頃からトキと仲良くしてくれたお前に頼むなんて…」
穢土転生の目から涙が流れる
娘が殺されるなんて、父親としては止めたいだろう
だが彼もまた、忍びだった
そこに、封印班を連れたチョウジが戻ってくる
親父さんは、懐かしい顔に少しだけ嬉しそうに口元を緩めたが、すぐに表情を戻した
「…今からあなたを封印します」
「あぁ、甘んじて受けよう」
「けどその前に、教えてほしい事があります」
「……?」
封印班がトキの親父さんの身体を拘束し、術を使えないようにする
一歩近づき、知りたい事を言った
「空目一族の呪いって何ですか
トキが夢に飲み込まれる…とは、どういうことですか」
「!!」
自分の言葉に、トキの親父さんは大きく目を見開いた
その反応から見るに、トキは親父さんに、予知夢の力があることは話していないのだろうと察した
「………どういうことだ
夢、ということは、あの子は予知夢の力があるのか?」
「はい
トキは空目でも珍しいとされる予知夢の能力があります
その力があったから、アイツは殺されることなく、暁に大切にされた」
「そんな……、まさか、あの子が…」
がく、と項垂れてしまう父親に、封印班もチョウジも戸惑っている
「なんてことだ、あんな力を持ってしまったなんて…
もうあの力の継承者は現れないと思っていたのに…!
あの力は危険すぎる、ただの人間が持っていい力ではない!」
封印を解きそうな勢いで、親父さんは激しくうろたえる
空目にとっていいものではない、それだけは伝わった
親父さんは項垂れながら、少しずつ話をしてくれた
空目一族の成り立ち
時を止める力、時を巻き戻す力の危険性
ただの人間が時間という絶対不可侵の領域を操るが故の、空目一族の呪い
「そもそも、時間というものを操つれること自体が異常なのだ
だが我々の一族は、その異常性を唯一六道仙人から許されたと言われている
だが、許されたと言っても所詮はただの人間だ
時間という大きすぎる力を手に入れたが、完全に操ることはできなかったのだ
その弊害が、予知夢だ
予知夢はいわば、時遁の力の一種の暴走だ」
「暴走?」
「そう、暴走だ
時遁の力が強大な者に限り、時間を止める・巻き戻す以外に、未来を見る事ができてしまった
だが、あまりに強大な時遁の力は、宿主である空目一族の人間を食い尽くす
やがて、宿主である空目一族の人間の時間を奪うのだ」
「……人間なんかが操れるようなものではない力を手に入れたが、本当は手に負えていない…
その時間の力に逆に操られているってわけか
つまりトキは、空目一族の中でも強大な時遁の力を持っていたがために、予知夢を見る事が出来てしまった
そして、トキも操りきれていない時遁の力は暴走を続け、トキの時間を奪う……
そういうことですか」
「そうだ
もう空目の純血もかなり減ってきた、だからそんな人間はもう現れないと思っていたのに…
まさか、よりによってトキがその力を持ったなんて…」
震える声でつぶやく親父さん
それだけで、この件がどれほど深刻なのか、いやでも分かった
「時遁の暴走に負ければ、トキはどうなるんです?」
時間を奪われる、と答えていたが、その漠然とした答えが腑に落ちなかった
改めて質問すれば、彼は悲しそうに答えた
「あの子の中から時間の感覚が奪われる
周りからは普通に見えていても、あの子は【今】なのか【過去】なのか【未来】なのかが分からなくなる
現実と非現実が入り混じり、正しい時間で生きる事が出来なくなるんだ」
「正しい時間で生きられない…」
トキの親父さんの説明はあまりに規模が大きく、そしてざっくばらんな話だった
だが、間違ったことは言っていないとも思った
もともと情報が少ない一族だ、疑っている暇はない
トキを助けるには、親父さんの言葉を信じるしかなかった
.