サスケの告白
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢に自分が乗っ取られていくのがわかる
じわじわと私を蝕み、支配しようとしているのだ
『(……早く、時間がない、私にはまだやることが)』
トビの時空間忍術の中で、消耗しきった身体を休ませる
壁に背中を預け、目を閉じた
この空間に来てからどのくらい時間が経ったかわからない
外で何が起きてるのかもわからない
ただトビは、自分を生かし、必要な時に利用するつもりなのだろうと思った
『………利用される前に、終わらせる』
月の眼計画の最後に私の力が必要だとトビさんは言った
全ての人間を支配し、夢に閉じ込めた後、私の時間を操る能力を使うことで、永遠に夢の中で同じ時間が続くと
幸せな時間が終わりを迎えることはなくなると、そう言った
夢と人々を支配し、さらに時間をも支配する
それが彼の言う「月の眼計画」の完成だ
私が生かされた意義が、そこで果たされるのだ
『………くそ、』
暗い空間の中で休んでいるだけなのに、また視界が真っ白になる
予知夢だ
『………………!』
見慣れない場所だった
大きな橋と、水がある
その水にサスケが立っていて、背後からクナイを持ったサクラが迫っていた
『サクラ…!?何をしてるの!?』
慌ててサクラのもとに向かう
サクラはサスケを殺そうとしたのだ、だがそれはあえなく失敗し、逆にサスケがサクラを殺そうと千鳥を発動させる
『駄目…!サスケ!!』
逃げ遅れたサクラは、サスケの千鳥が迫るのを待つだけだ
『仲間を殺さないで……!!』
必死に手を伸ばしても、それは届かない
やめて、サスケがサクラを殺すなんて駄目だ
サスケが仲間殺しをするのなんて、見たくない
もう誰にも、悲しい思いをして欲しくないのに
『!!』
千鳥がサクラを傷つけようとしたその瞬間、視界が奪われる
次に目を開けると、元の場所に戻っている
トビの時空間忍術の中だ
結末は分からなかった
『……。』
ドクドクと鼓動が騒がしい
冷や汗が止まらない
最悪の未来だ
混乱する頭の中で、必死に解決策を考える
サスケとサクラが会うのはどこだ、どのタイミングだ、自分がそこに介入するにはどうすればいいのか
あらゆることを考えようとしても、夢のショックが大きすぎて、考えがまとまらなかった
その時、ずず、と空間が歪み始める
誰かがこの空間に現れる前兆だった
「………………!!
トキ………」
『………サスケ…』
現れたのは、傷だらけのサスケと、香燐だった
香燐はトキのことが気に入らない
トキが現れるとサスケの雰囲気が変わるし、2人の間にある独特の空気感が嫌いだった。2人の世界を持ってるようで、気に食わなかった
サスケはトキに好意を持っているようなのに、トキはサスケを見ていない
それに、香燐はすぐに気付いたのだ
「香燐、少し外してくれ
トキと話がしたい」
「はぁ?!けどお前、怪我が…『私が治療するから、大丈夫』
………。」
サスケには邪魔者扱いをされ、トキには大人の対応を取られる
屈辱的だったが、サスケの言う通りにした
少し離れ、2人の会話が聞こえない場所まで移動する
だが気になって2人様子を伺うが、すぐに後悔した
自分が近づけないサスケのパーソナルスペースに、トキはいともたやすく入り込んでいたからだ
***
『時遁』
小さく呟き、サスケの身体に手を向ける
医療忍術特有の黄緑色っぽい光がサスケを包み、傷をもと通りにしていった
「大蛇丸を殺した」
『………知ってる』
「お前の仇はいなくなった
なのに何故、お前はまだ暁にいるんだ」
『………敵討ちのために暁にいるわけじゃない
私には、私の目的がある』
「………。」
傷跡が消えていく
それをサスケはじっと見つめながら、また問いかけた
「お前の目的はなんだ」
『………ひとつは、サスケ、あなたを止めることよ
イタチさんに代わって』
「!」
ぴく、とサスケの眉が動く
だが彼は何も言わなかった
『私の中では、サスケ奪還任務はまだ終わっていない
私はナルトと同じように、あなたを追っていた
………サスケ、あなたはこっちに来ちゃいけない
眼を開けて、ちゃんと見て』
する、とトキの指先が優しくサスケの目元に触れる
万華鏡写輪眼の酷使で、サスケの視力は確実に奪われていた
この視力を取り戻すのは、トキの時遁でも不可能だ
『あなたを待ってる人がいる
あなたのために涙を流してくれる人がいる
気づかないはずがないでしょ』
ブゥン、とトキのチャクラがサスケの目に触れる
視力が戻ることはないが、眼の酷使による痛みが引いていくのが分かった
「ならお前にも、同じように待ってる奴がいるはずだ
シカマルのことが大切だと、そう言ったのはお前だぞ
俺とお前は、結局同じなんだよ」
『違うよ』
「…?」
サスケがトキの顔を見る
その表情は笑みこそ浮かべていたものの、悲しさが垣間見えた
『私も、私とサスケは同じだと思ってた
一族を滅ぼされ、里を抜け、闇に堕ちた者同士だと
でも違う』
「………何が違うんだ」
『……………時間が違う
私にはもう時間がない、でもサスケ、あなたにはまだ時間がある
時間さえあれば、解決してくれるものもある』
「………………?」
サスケは意味がわからない、と顔をしかめる
それを見てトキは小さく笑いつつも、ふと真剣な表情になった
『私はもう壊れてしまった
予知夢で人の死を見過ぎてしまった
失うことに慣れてしまった
………私とサスケの違いは、それよ
あなたはまだ壊れていない』
「……………壊れたものは直せる」
『!』
「壊れたことを自覚してないと、直すものも直せない
お前に壊れてる自覚があるなら、それは直すことが出来るということだ」
『……本当、優しいのね』
す、と立ち上がり、一度香燐を見る
彼女はトキと目が合うと、びくっと肩を跳ねさせた
『でもね、私はもう直らない』
「!」
チリッと空気が震える
それまでは青かったトキの瞳が、緑色に変化していたのだ
「香燐から聞いた
お前の中にも違うチャクラがあって、それがお前を乗っ取ろうとしてると
だんだんお前の身体は蝕まれていってるだろうと」
『………感知タイプなんだね、あの人
その通りだよ』
トキは香燐から視線を外し、座り込むサスケを見下ろす
その瞳は緑色だ
『これが、空目一族の夢見の呪い
予知夢の力を持つ者は、だんだん夢に飲み込まれていく
やがて私は夢に飲み込まれて、消える
生きながらに死ぬの』
「……時間がないとは、そういうことか」
『そう
夢見に完全に乗っ取られるまでの時間が、もうないの
夢見の力は私がコントロールできるものじゃないから、防ぎようもない
私は直ることもなく、壊れ続ける
すべて壊れたその瞬間に、私が死ぬ
これは、変えられない未来』
「………シカマルはその事を知っているのか?」
『……………分からない
でも木の葉にはこの情報がある、もしかしたらもう知っているかもしれないわ』
「ならシカマルは、お前を必ず追いかけてくる」
『!』
ふいにサスケが立ち上がり、トキに手を伸ばした
さら、と空色の髪をすくいとり、愛おしげに撫でる
「お前のことが好きだ」
『……………。』
真っ黒な瞳が自分を射抜く
驚きはしたが、咄嗟に言葉が出なかった
『………珍しい事を言うのね』
「本気だ
アカデミーの頃から、お前のことが好きだった
道を違えても、それは変わらなかった」
『………ありがとう、サスケ』
「お前が壊れてるというのなら、俺が直す
だから、終わるまでそばにいろ」
サスケの言う終わりが、この戦いの終わりなのか、それとも私の時間の終わりなのかは分からなかった
けれどどちらにせよ、答えは決まってる
『嬉しいけど、ごめんね、それは出来ない
私にはまだ、やることがあるから』
「……そう言うと思った」
サスケは私の髪から手を離し、ふぅと息を吐いた
だがすぐに、また私を見た
「そのやることを成し遂げたら、死ぬつもりか」
『………。』
「……シカマルは、どうするんだ」
『………シカマルは私がいなくても大丈夫よ
シカマルは賢くて、強いから
きっと、私を殺す覚悟を決めてる』
「………シカマルに殺されるつもりか」
『………。』
トキはそれ以上語ることはなかった
いつのまにか緑だった瞳が、青に戻っていた
「トキ」
名前を呼んだその瞬間、ずず、と空間が歪む音がした
そしてすぐに、トビが現れた
「サスケ、外に土産を用意してる
トキももう回復したのなら、外に出てこい」
香燐が戻ってくるのを待って、時空間忍術から出る
眩しい光に少しだけ目が眩んだが、ふいに気配を感じて目を開けた
私たちの前に、あの男がいる
『………ダンゾウ…』
うちは一族の悲劇を引き起こした人間だ
そして、今のサスケにとっては、最も憎むべき復讐相手
すぐにサスケが殺気を放つ
このまま2人が戦うのだろう
「トキ、来い
お前も、巻き込まれれば死ぬぞ」
「!」
トビさんは香燐にそう言うと、離れた橋のような場所に移動し、腰を下ろした
私も同じようにそちらに向かい、トビさんの近くに腰を下ろす
香燐は別の場所に避難していた
「空目は木の葉の所有する戦力だ
返してもらおう」
「………トキは道具じゃない」
ダンゾウの一言に、サスケのチャクラが大きくなる
それが戦いの始まりだ
.