それぞれの覚悟
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ナルトとカカシと離れ、一人で森の中を歩く
そろそろか、と意識を周囲に集中させると、ずずずと空間が歪んだ
「ご苦労だったな、トキ」
『……いえ、申し訳ありませんトビさん
ナルトを捕まえることが出来ませんでした』
「そのようだな
だがしかし、まさかペインと小南が裏切るとは……
予想していなかった
少し作戦を変える、ついて来い」
そう言うと、トビが手を差し出す
その手がナルトの手と重なったが、トキは迷わずにその手を取った
途端、視界が歪む
異空間忍術でどこかに移動するようだ
「そろそろか」
『!
サスケ…』
「!
トキか…」
歪む視界が不快で目を閉じた、だがすぐにトビの声がして目を開けた
景色は依然として森の中だったが、微妙に変わっていた
そして前方からやってくる4つの気配
その中の1つは、自分もよく知るサスケのものだった
トビはサスケに、すでに木の葉は半壊状態であること、そして復讐相手であるダンゾウは鉄の国に赴いたことを伝えた
それにより、サスケ達の目的地は鉄の国、五影会談へと変わったのだ
サスケ達がすぐに方向転換し、離れていく
トキはそれを、ぼんやりと見送った
『………。』
「トキ、サスケ達が会談を襲撃した後、第四次忍界大戦の宣戦布告を行う」
『え……
戦争を起こすのですか』
「あぁ、月の眼計画の仕上げだ
あとは鬼鮫が八尾をうまく狩ることが出来ればいいが…
いずれにせよ、その大戦で残りの人柱力を全て狩る
そうすれば、月の眼計画は完成するのだ」
どこか楽しげなトビに、トキは漠然とした恐怖を覚えた
長門と同じように争いのない平和な世界を夢見ての行動だが、トビと長門は決定的に違う
その差が、トキには恐ろしかった
「ペインも小南もいなくなった以上、お前は俺と行動を共にしてもらう
問題ないな」
『……はい』
「とは言っても、会談には俺一人で行く
お前は俺の時空間で待機し、チャクラとスタミナを回復させておけ
必要な時に呼び出す」
『分かりました』
トビの提案に少しだけ安堵した
五影とまともにやりあえるほどの気力もチャクラもスタミナも、今はなかったからだ
トビが再び手を差し出す
それを受け取ると、ずず、と視界が歪み、暗闇に落ちた
暗闇の中に建物のようなものが並ぶ、何度か見たことのある景色だ
そこで横になり、目を閉じた
***
ところ変わって、木の葉隠れの里
シカマルが、サクラに対して"ある話"をしたばかりだ
目の前で涙を流すサクラに、シカマルは困ったように顔をしかめた
「…トキは、どうするの」
「……………。」
涙を流しながらそう問いかけるサクラに、シカマルは少しの間黙り込む
今回、サスケ抹殺をダンゾウが許可してしまった。それにより、トキにも同じ許可が下るのは時間の問題だろう
木の葉の仲間として、同じ班の仲間として、小さい頃から一緒にいた幼なじみとして、どうすべきか
それはシカマルも、まだ答えを出せていない
「……第十班でこれから話し合うところだ」
「………そっか」
サクラのもとを離れ、チョウジといののもとに向かう
いのはまだ泣いていて、チョウジやテンテンが付き添っている状態だ
他の同期もいる
「いの、チョウジ
俺たちも決めなきゃなんねえ」
そう口火を切れば、いのはびくりと肩を揺らした。チョウジは覚悟していたのか、悲しげな顔でシカマルを見上げる
その異様な空気に、近くで見ていたキバが口を開いた
「何を決めるって言うんだよ、サスケのことはもう…「トキのことだ」
…!」
シカマルがはっきり告げれば、同期達の空気もピリッと変化した
里抜けした2人目の仲間で、現暁の一員
国際指名手配こそされていないものの、彼女は自分を敵だと言った
「トキは第十班の仲間だ
だから、俺たちが決めなきゃなんねえ
………分かってるだろ、いの、チョウジ」
優しく諭すように言っても、いのは顔を上げない
チョウジはこの話がされることを覚悟していたのだろう。泣きそうな顔になりながらも、涙は見せなかった
「………トキが里を襲撃した暁の一員であることは事実だ
抹殺対象にされるのはもう、時間の問題だろ」
「でもトキは父ちゃんを助けてくれたよ…。カカシ先生や紅先生のことも…
それに空目一族の集落に逃げれば大丈夫だって…、みんなを守ろうとしてた」
「………。」
チョウジの言葉に、シカマルも同期たちも口を閉ざす
それは紛れも無い事実だった
チョウジを守るために一度命を落としたカカシを術で保護し、かつ瀕死の重傷を負っていたチョウザを治療
そのあとはペインの口寄せに襲われていた紅を守り、空目の集落に逃げろと助言した
敵か味方か、どちらにもつかない行動をとっていた
シカマルが返答しかねていると、顔を伏せたままのいのが、わずかに顔をあげた
長い髪が、さらりと流れた
「トキは、もうすぐ自分は死ぬって言ってた」
その言葉に、シカマルはおろか、他の同期たちも息を飲んだ
「………トキに会ったのか?」
声が震えるのが分かった
この戦いでトキを追いかけたものの、結局足を骨折してしまい、断念した
チョウジも綱手様から連絡を受けてすぐにチョウザさんやカカシ先生のもとに戻って来たけど、すでに立ち去った後だったと
いのがトキに会っていたとは、知らなかった
「……シズネさんと一緒にいた時にペインに襲われたの。ナルトの居場所を教えろ、って
でも、その時にトキがどこからか現れて……
ペインはトキからナルトの居場所を教えてもらうと、すぐに消えたわ
でもトキはその場にとどまっていた」
いのがやっと顔を上げた
だが涙は止まる様子がない
「トキはシズネさんの過去を見て、何かを知ろうとしてた
詳しくは私も分からなかったけど、過去を見た後に"私には時間がない"って…
"私はもうすぐ死ぬ"って、確かにそう言った」
いのが話してる間、誰も言葉を発さなかった
「………トキが、死ぬ?」
ぼそ、とシカマルがつぶやいた
それにいのが、はっと我に帰る
「………ごめん、シカマル、アンタはずっとトキのことが……」
その先は言わなくとも、みんなが分かっている
シカマルがトキに向ける気持ちは、特別なものだと
だがシカマルは、少しだけ深呼吸をすると、はっきりと告げた
「この先、もしトキが敵として俺たちの前に現れた場合、俺たちはアイツを止めなくちゃいけない
たとえそれが、殺すしか方法がなくなっても、だ」
「「!」」
いのとチョウジが目を見開き、言葉を失う
シカマルの最後の一言が何を示しているのかは明白だ
サスケと同じように、仲間内でケリをつけるつもりだと、誰もが瞬時に理解した
だがそれに、いのが異を唱えた
「ちょっと待ってよ…!アンタはそれでいいの?!
トキのこと、好きなんでしょ?!
なのにトキを殺すつもりなの?!」
「サクラは覚悟を決めた
なら俺たちも、覚悟を決めなきゃなんねえだろ
トキは第十班の仲間だ
俺たちが、やるんだ」
シカマルの真剣な表情と、重々しい言葉は、逆らえる空気ではない
それに何より、シカマルも辛い決断であることはみな分かっているのだ
かつての幼なじみを、仲間を、好きな人を、自分の手で葬る覚悟を決めたその苦しみは、全員が分かっている
「………シカマルがそこまで言うなら、覚悟を決めるしかないね」
「チョウジ…!」
「トキを止められるのは、僕たちだけだ
僕たちがやらなきゃ、トキはいつか罪を犯すかもしれない
……これは、僕たちの使命だよ
僕たちが止めるんだ」
チョウジの横顔を見て、いのは口をつぐむ
だがすぐに、ぽろ、と涙をこぼした
「……もう、元には戻れないの?」
「……………。」
いのの悲しい声は、空に消えていく
トキの髪を連想させる青空が、今は眩しすぎる
「元に戻れるなら、その道を探す
けどダメだった時は、俺たちが終わらせるんだ
第十班は、どんな手を使ってでも、空目トキを止める」
同期たち全員に宣言するかのように、シカマルがはっきり告げる
それをいのの隣で聞くチョウジは、少しだけ目を伏せた
チョウジには、シカマルが自分に言い聞かせるように言ってるように思えたのだ
本心では嫌だと思っても、それを押し通すことができないのは分かっている
誰かがやらなきゃいけないのだ
***
外の様子は分からない
ここは暗くて、寒い
『……シカマル』
木の葉襲撃では、いのには会えたがチョウジとシカマルには会えなかった
だがこれで良かったのかもしれない
シカマルに会ってしまうと、自分の中にまた"木の葉隠れの里"の自分が戻ってきてしまうように思った
飛段さんと角都さんがやられた際、自分はシカマルに「助けて」と吐露した
だがもう助けはいらない
私は1人でやらなければいけないのだ
この先、戦争が起きる
九尾を奪うための戦争だ
トビさんの思い描く「月の眼計画」は、私が望む世界ではない
戦争をして、人々を操って夢の中に閉じ込めて、その中で永遠に平和な時間を過ごすといっても、それはしょせん夢
まがい物の平和だ
殺し合いをした挙句、夢の中に閉じ込めて操る世界は、私は嫌だ
私の世界は、今私が生きてるこの世界だ
死んだ人は蘇らない
アスマ先生も自来也様も、イタチさんも、他の暁の人たちも
空目一族のみんなも
戻ってこないのがこの世界だ
だがそれが正しい
夢の中で、月の眼計画の中で死んだ人たちに会えたとしても、それは結局は偽物なのだ
『………私が、トビさんを止めなきゃ』
私にはもう時間がない
タイムリミットが来る前に、月の眼計画をやめさせるんだ
そうしないとまた、戦争で誰かが死ぬ
私の世界が崩れてしまう
みんなが今を生きてるこの世界が私の世界
それを守るためなら、この命も惜しくはない
『私は私の世界のために、戦う』
五影会談にトビが現れ、第四次忍界大戦を宣言した
戦争は、すぐそこまで来ている
.