道を違えても
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ザァ、と折り紙でできた大樹が崩れ、空に舞っていく
その折り紙で長門と弥彦の身体を包む小南を、トキは少し離れたところから見ていた
「トキ」
『……。』
小南がトキを振り返り、名前を呼ぶ
顔を上げて彼女を見ると、全てを終わらせた、後悔のない顔をしていた
「私は暁を抜ける
………貴方はどうする?」
『………………私は……』
ふいに木の葉の里がある方角を見る
まだ煙が立ち込めているが、おそらくはもう大丈夫だろう
死者は長門の術で蘇り、里は復興に向けて動き始めてる頃合いのはずだ
「トキ、木の葉に帰るってばよ」
『!』
そう言うと、ナルトはトキの目の前まで歩いてきて、手を差し伸べた
夢と同じ光景だ
だが私は、その手を取らなかった
『………ごめんね、ナルト
私は木の葉には戻らない』
「………また暁に戻って、どうするんだってばよ、トキ」
『私にはやらなきゃいけない事がある
それを成し遂げるためには、暁にいなきゃいけない』
ナルトの青い目を真っ直ぐに見つめ、はっきりと答える
ナルトは少しの間悲しげに目を伏せた
『小南さん、今までありがとうございました
どうか、小南さんは生きてください
弥彦さんも長門さんも、それを望んでるはずです』
「………分かったわ」
小南はそう言うと、折り紙を集めて2つの花束を作った
それを、トキとナルトに向けて差し出した
「どうかお前たちは、散ることのない希望の花であってくれ」
最後に見せた、小南の凛とした顔
それを正面から受け止め、折り紙でできた花束を受け取った
***
『ナルト、途中まで肩貸す』
「おう、ありがとだってばよ」
『ごめんね、医療忍術を使えるだけのチャクラが残ってなくて』
「いいって、分かってるから」
小南との別れを済ませ、トキとナルトは木の葉を目指す
自分の肩にナルトの腕を回し、彼を支えながら、ゆっくりと歩く
「………なんか、懐かしいってばよ」
『え?』
特に会話はなかったが、2人で歩く時間はとても穏やかで、先ほどまでの戦いが嘘のようだった
そんな中、ナルトがふっと笑ってそう言ったのだ
ナルトはあたたかい笑顔のまま、ちらりとトキを見た
横顔は空色の髪に隠れて見えなかったが、ナルトは、トキはきっと泣きそうな顔をしてるのだろうと感じた
「エロ仙人と木の葉を出て修行してた時も、こうやってトキに肩を貸してもらったこと、たくさんあったなって思ってよ」
『………そうだね』
陽だまりのようにあたたかいナルトの身体がトキにも伝わってくる
それは懐かしさと同時に、自来也の死を思い起こさせた
「エロ仙人が死んだこと、知ってんだろ?」
『……うん、夢に見た』
「………。」
トキの言葉にナルトは少しの間黙る。だがすぐに、そっか、と力無く返事した
「エロ仙人は、トキと俺のことを救世主だと信じてた
俺も、そう思ってる」
『違う
本当の救世主はナルト、あなただよ
私は救世主じゃない
私は、破滅を呼ぶ存在』
ナルトがトキから腕を離し、ふらつきながらも自分の足で立つ
それを少しだけ不安げに見ながらも、トキは言葉を続けた
『師は同じでも、私たちは道を違えた敵同士
もう、戻れない』
「………!」
トキの青かった瞳は、緑色に染まっている
サクラの瞳よりも深い、森のような色だ
その時、ザァッと風が吹き抜ける
空色の髪は風になびき、トキの顔を一瞬だけ隠した
風がやみ、トキの顔が見える
緑色の瞳は、青に戻っていた
「………トキの言う、やらなきゃいけないことって」
ナルトがトキに問いかけようとしたその時、ガサ、と草木が揺れ、ある人がナルトとトキの間に現れた
ナルトはそれに驚いた様子を見せるが、トキは分かっていたのか、その人を真っ直ぐに見つめた
『……カカシ先生』
里の中でトキが弔ったはずのカカシは、長門の術により息を吹き返したのだろう
そして、ナルトの迎えに来た、というところか
『カカシ先生が来てくれて助かりました
ナルトをお願いします、念のため里に戻ったらサクラに診せて下さい
それでは、私はここで』
ぺこ、と小さく頭を下げ、トキは背中を向ける
その背中を見つつ、カカシは静かにクナイを構えた
それを見たナルトが、カカシ先生!と声を荒げる
『………私を殺しますか?』
背中を向けたまま、トキは静かにカカシに問う
カカシはクナイを構えているものの、動く様子は見せなかった
「トキ、君は今、どの立場にいるんだい?」
カカシの言葉に、トキは足を止めて振り返る
「君は暁として木の葉を襲撃しに来た
だが、ペインが里を破壊する傍らで、君は密かに人助けをしていた
俺やチョウザさん、そして紅…
君に助けられた人はいる
君は敵なのか、味方なのか
どっちなんだい」
構えていたクナイを下ろし、カカシがトキを見る
ナルトは2人の様子を黙って見ていた
『木の葉を襲うことはペインの指示であって、私の本意ではなかった』
「「!」」
『………私が木の葉に来たのは、知りたいことがあったからです
だから、カカシ先生たちを助けたのはただの気まぐれです
次は、殺す』
ギン、とトキの瞳が緑色に染まる
カカシはその変化が、トキの意思とは関係なしに行われていることに気が付いた
カカシとナルトが難しい顔を浮かべるのを見て、トキは小さく笑う
そしてそのまま、小南にもらった花束をナルトに向けて差し出した
『救世主はナルト、あなたよ
私も小南さんと同じように、あなたには希望の花であって欲しい
決して散ることが、ないように』
「………おう」
ナルトはカカシの背中から出て、覚束ない足取りでトキの前に立ち、花束を受け取った
カカシはすぐにナルトに肩を貸し、同じようにトキを見た
「トキ、君はこれからどうするんだ
九尾の捕獲に失敗した以上、君が暁の中で不利になることがあるんじゃないのか?」
『大丈夫ですよ』
2つの花束を持ったナルトを見てにこりと笑い、そのまま2人に笑顔を向ける
あまりに場違いな笑顔は、逆に不安を煽る
『暁の最終目的に私の存在は不可欠です
目的を果たすまでは、暁は私を殺さない』
「………それは裏を返せば、暁が目的を果たした後に殺される、とも取れるよ」
「!」
カカシの言葉にナルトが目を見開く
だがトキは、表情を変えなかった
『私にはやらなきゃいけないことがある
それを果たすまでは、死ねません』
消え入りそうな声と、儚げな笑顔でそう言うと、一陣の風が吹き抜ける
あまりの強い風にカカシとナルトが目を閉じる
風が止んで目を開けると、トキの姿は忽然と消えていた
.