タイムリミット
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シズネを人質に取られた状態のため、いのたちはトキに迂闊に近づけない
それを気配で感じ取りながら、シズネの過去に意識を向けた
「……空目はもともと木の葉の人間ではない
あまりに大きな力を持っていたために、敵対して戦争になることを恐れた空目の長と初代火影が手を結んだのだ
空目も外部に敵を作り、一族を滅ぼされることを恐れて木の葉の一員となった
その条件に、一族の保護を願った
だから空目一族の集落は里の中心地から離れた場所にあるのだ」
この話は少しだが知っている
生前、一族から聞かされていたのと同じものだ
「空目の時間を操る力と、優れた医療忍術は木の葉にとっては有益だった。技術躍進につながるからな
だが空目の力は、それだけではなかったのだ」
「と言うと?」
「夢見の力…、いわゆる予知夢の力は、空目の中でも特殊な力だ
一族に起こる災いを予感し、危機を救うための力であるが、それは神に近い力
人間が到底持っていい力ではない、大きすぎる力なのだ
ゆえに夢見の力を持つ空目の人間は、徐々に夢見の力に飲み込まれていく
やがては、悠久の時をさまよい続けてしまう」
「………?」
シズネはピンと来ていないのか、首を傾げる
綱手はそれを見て、要するに、と続けた
「うちはの万華鏡写輪眼が眼を使うごとに光を失うのと同じように、空目の夢見の力も、使うごとに術者を蝕んでいく
いわば呪いだ
さらにタチが悪いのは、写輪眼と違って自分で夢見の力を操れないこと
空目トキは、自分の意思とは関係なく、夢見に飲み込まれていくんだ」
「…そうなると、何が起きるのです?
トキさんはどうなるんですか?
悠久の時をさまよい続ける、とは…」
シズネがそこで言葉を途切れさせると、綱手はひとつ呼吸を置いて、目を閉じた
「トキの中から時間がなくなるのだ
周りから見たら現在を生きていても、アイツの中では過去も現在も未来も、全てが混在するようになる
トキの時間の流れが歪んでしまうのだ」
「………そんな事って、あり得るんですか…?」
シズネの問いかけに、綱手は渋い顔を浮かべる
「それは、断言できない
夢見の力を持つ人間の絶対数が少なすぎるから、データも無いのだ
だが空目に残された古い文献には、今のような記述がある
………しかし、はっきり言って、私もそれがどういう状況なのかは分からない
私たちから見れば普通でも、トキには何かしら異常が起きてる
それが分からない以上、私たちは助けるすべがない」
「………そんな、」
「ただ一つ言えるのは………
トキが完全に夢に飲み込まれた時、トキの自我が消える
トキは生きながら、死ぬ」
そこでぷつりと記憶が途切れた
私の術の限界がきたようだ
だが知りたいことが知れた
私を昼夜問わず襲う予知夢と、イタチさんの言った「夢に飲み込まれる」の意味
他人は言葉では理解し難いだろうが、私は分かる
私の中から時間が消える
生きながら死ぬ
それらのリミットは、漠然とだが見えていた
「っ、ぅ、はぁ!」
「シズネさん!」
青い顔のシズネがその場に崩れ落ちる
トキはシズネからゆっくりと手を離し、少しだけ微笑んだ
『ありがとうございます、シズネさん
私が知りたいことが知れました』
シ「………ナルトくんの居場所以外に、何を知ろうとしたの?」
『………。』
い「トキ…?」
シズネから距離を取ると、すかさずいのが彼女に駆け寄り、その身体を支えた
そしてじっとトキを見つめた
『………どうやら私には、もう時間がないようです』
シ「!
まさか…!」
い「え…?何?どういう事…?」
何かに気づき、目を見開くシズネ
状況が分からずに困惑するいの
そして、悲しげに、あまりに儚げに微笑むトキ
戦いの最中だというのに、異様な空間が広がっていた
『綱手様やシズネさんの言う、この"夢見"の力…
もう、私は夢に飲み込まれてきている』
シ「!!」
い「…?
何を言ってるのよトキ…!
私にも分かるように言ってよ!」
いのの悲痛な叫びが、空に溶けていく
それを聞いたトキはいのを見て、にこりと笑った
あまりにも場違いなその笑顔は、いのの不安を煽る
『いの、私はね
もうすぐ死ぬの』
笑顔で言うには似つかわしくないその言葉を、トキはあまりに綺麗な笑顔で言ったのだ
トキが笑っているものだから、いのは一瞬、言葉を飲み込めなかった
い「………何、言ってるのよ」
『………。』
い「死ぬなんて、簡単に言わないでよ…!こんな時にしょうもないウソ言ってんじゃないわよ!!」
『………嘘じゃないよ』
シ「!!
いの!」
笑ったままのトキを見て激昂したいのが、彼女に向かって駆け出す
シズネの制止も無視し、トキの肩を掴んで揺すった
「トキ…!アンタ自分が何言ってるか分かってんの?!
私の前で…!
アンタと同じ第十班の私の前で、死ぬって言ったのよ!!」
『分かってるよ』
「………!!」
トキは、いのが激昂しても笑顔を崩さなかった
「……なんで笑ってるのよ、トキ…」
ぽろ、といのの瞳から涙がこぼれる
そのままいのは、肩を掴んでいた手を下ろし、ずるずるとその場に崩れてしまった
『私はもうすぐ死ぬ
けどその前に、やらなきゃいけない事がある』
「!」
『………じゃあね、いの
次会う時、もしかしたら私は私じゃないかも知れない
その時は、私の力が使われる前に、私を殺して』
「!!!
何言って…!!」
『………さようなら』
「嫌よ…!!
戻ってきてよ!!トキ!!!」
いのが手を伸ばす
だがその手がトキに触れる前に、トキの姿は木の葉となって消えてしまった
「………トキ…!!」
いのの呼ぶ声はトキに届くことはなく、土ぼこりが舞い上がる空に消えていった
***
いのとシズネさんのもとから離れ、また里の中を歩いていく
妙木山の情報を伝えてから時間が経った、そろそろ何か暁側が仕掛ける頃合いだろう
『(……一度引き上げるか…?)』
里の中にいては、ペインの攻撃に巻き込まれかねない
事前に連絡が来るだろうが、先に引き上げるかどうか迷った
ズゥゥゥゥン……
『!
口寄せ…』
大きな何かが歩き回る音がして、そちらに目を向ける
するとペインの口寄せ達が、一箇所に集まっていた
タン、とそちらに向かって駆け出すと、徐々にその全貌が見えてきた
口寄せ達が囲っていたのは、一人の女性だ
その人は、私の知る人だった
だが少し、体型に変化がある
『………………!!
時遁!』
少し離れた建物の屋上から、口寄せに向かって印を結び、術を使う
ぴた、と口寄せ達が動きを止めたのを見て、すぐにその人のもとに降りた
『………紅先生』
「!
トキ…」
座り込む紅のもとに降り立つと、紅は驚いた様子を見せる
だがすぐに、警戒心を表に見せた
「………私を、助けてくれたの?」
『………。』
トキはその問いかけに、ふっと目を伏せる
だがすぐに顔を上げ、紅のお腹を見た
大きいそのお腹に何が宿っているか、すぐに気がついた
『……アスマ先生との子ども、ですか?』
「……えぇ、そうよ」
『………………。』
トキはゆっくりと膝を地面につけると、紅のお腹にそっと手を伸ばした
だが途中で我に帰ったのか、手を引っ込めようとした
『!』
「第十班で触ってないのは、貴方だけよ」
引っ込めようとした手を引き止めたのは、紅だった
紅に手を取られ、そのままお腹に誘導される
大きなお腹に触れた時、トキの目に映像が流れてきた
紅と同じ赤い目をしつつも、どこかアスマの面影を残す少女の姿
のどかな景色の中、元気いっぱいに走り回る姿が見えたのだ
『………アスマ先生に、よく似てる』
「え?」
『この子はきっと、火の意志を継ぐカッコいい女の子になりますね』
「……未来が見えたの?」
紅の問いに、こくりと小さく頷く
お腹から手を離し、そのまま印を結んだ
途端、口寄せ達が動き出す
『ここは私がやる
お前たちは他に行け』
トキの指示に、輪廻眼の口寄せ達は大人しく歩みを他に向けた
ずしん、と重い音を立てて遠くに向かう口寄せを見た後に、紅はトキを見上げる
トキも同じように、口寄せ達の気配が消えたのを確認してから紅を見下ろした
『空目一族の集落に向かってください
あそこには被害が及ばない
他の人にも、そこに避難するよう伝えてください』
「……ありがとう、トキ」
『………そのお腹の子に死ぬ未来は見えなかった
紅先生、貴方は生きるべき人だ
必ず逃げ延びてください、お腹の子のために』
真っ直ぐに紅を見つめるトキの瞳は、緑色に染まっている
それに気づいたものの、紅は口にはしなかった
「トキ、貴方も生きるべき人よ
私たちは貴方を必ず助ける」
『!
………………早く行ってください、ここも安全じゃないのですから』
トキが一瞬だけ見せた悲しげな顔を追求することはせず、紅はゆっくりと歩みを進める
道中の無事を祈っていると、私の周りを折り紙が舞う
その中から小南さんが現れた
「トキ、ペインの森羅天征が来る
一度里の外に撤退するわよ
貴方はそのまま長門の元に行ってちょうだい
彼の身体が心配だわ」
『はい』
ペインさんの正体については聞いている
そういった重要事項は、メンバーが減った際に聞かされていた
「行きましょう」
『はい』
タン、と木の葉から離れる
最後に里全体を見下ろした時にはすでに、その面影は失われていた
.