兄と弟
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トビに気を付けろ
イタチさんは何か知っているんだ
そしてイタチさんの言った、私を利用する理由
私の血、つまり時遁の力と、予知夢の力が計画の一端を担っている
トビが以前に私に言った、世界を征服するための計画だろう
尾獣をすべて集めたあとで、私の力が要ると
写輪眼を持つ仮面の男
10年以上前から組織の一員だったにも関わらず、新入りを名乗って組織に所属する
ペインさんとはまた違う、何らかの力を持っている事は間違いないだろう
暁はもはや破綻寸前
主要メンバーがやられ、残すのはペインさんと小南さん、鬼鮫さん、私
そして、トビ
そして今度は、おそらくイタチさんという穴が出来る
トビはおそらく、その穴をサスケで埋めようとする
だからこの戦いの後、奴は必ずサスケと接触する
トビの正体が分からない以上、そしてイタチさんに頼まれた以上、サスケから目を離すわけにはいかない
注意せねば
「トキ、そろそろお客様が来ますよ」
『………!』
鬼鮫さんの声に、腰に携えた短刀を取り出して構える
その瞬間、四人の影が現れた
『……やっぱり、来ちゃったんだね、サスケ』
「………トキ、そこを退け」
少しだけ久しぶりの再会だ
嬉しくない、再会
「ここから先はサスケくん一人で行ってもらいましょう」
ぶん、と鮫肌を振りかざし、鬼鮫さんが小さな笑みを浮かべる
サスケは元からそのつもりだったらしいが、サスケが連れている眼鏡の女の子は、私と鬼鮫さんを倒して行くべきだと主張した
『サスケ』
「何だ」
『私は、サスケに復讐なんてして欲しくない
今でもそう思ってる』
「それは、イタチと親しいからか?」
『それもある、イタチさんは私にとって兄のような存在だったから
だからこそ、実の兄弟であるサスケと殺し合いなんてして欲しくない
私の大切な人たちが殺し合うのは、見たくない』
「………………お前がいくら言おうと、俺は止まらない
俺はイタチを殺すために生きてきた」
『………後悔するのは、貴方なのよ』
つう、と涙が一筋流れる
うちはの惨劇が蘇ってくる。あの夜、サスケだけは殺さずに涙を流して去っていったイタチさんの姿が、鮮明に眼に浮かぶ
サスケは、知らないのだ
「………予知夢でも見たか?」
『………。』
「大蛇丸のところにいる間、空目一族の資料を見た
予知夢は絶対。未来は変えられない
そうだろ?」
『……えぇ。私が見る夢は、覆ることはない』
目を閉じると、何か違う力を感じる
その力が目に集まるのが分かるのだ
ぱち、と目を開けた時、香燐が驚くのが分かった
香「目の色が緑になった…?!瞳術使いか?!
それに、チャクラの感じが変わった…!」
サ「………その目に、何を見た?トキ」
『………サスケが死ぬかイタチさんが死ぬか…
それは、私の予知夢でも分からなかった
けれど、どちらにせよサスケは後悔する』
サ「………何故そう言い切れる」
サスケの声のトーンが下がる
苛立ちが声に現れてきていた
『貴方は、何も知らないからよ』
「………………。」
『全てを知った時、貴方は何を思うのでしょうね…サスケ
私たちは似てるから、同じことを思うのかもしれない』
キン、と音を立てて短刀を鞘に収める
『未来は変えられない
サスケとイタチさんが闘うのは、もう避けられない
………行って
この先でイタチさんが待ってる』
言い終わるのとほとんど同じタイミングで、風が通り抜けた
それと同時に、目の前にいたはずのサスケの姿が消えていた
『………。』
涙がとめどなく溢れてくる
そしていつのまにか、地面にシミを作っていた
『私は後悔ばかりしてる』
未来を変えられたんじゃないかと
誰も死なずに済むんじゃなかったのかと
私がいれば、何かが変わるんじゃないかと
いつも思っては、何もできずにいる
そしていつも、失ってきた
『失う悲しみに、慣れてしまった自分がいるの』
けどサスケ、貴方にはこの想いを知って欲しくない
一度全て失った貴方が、また失うことがないように
私はそれを願うばかりだ
***
サスケとイタチが相対する
「トキには会ったか?」
「………あぁ」
「……トキは、泣いていたか?」
「………。」
椅子に腰掛け、リラックスした様子のイタチを前に、ふと目を閉じる
ここに来る前のトキの様子は、鮮明に思い出される
青の瞳は緑に染まり、その瞳からは涙が流れていた
「………あぁ、泣いていた」
「そうか…」
「お前はトキの何なんだ?何故アイツに固執する?
アイツは人柱力ではない、なのにアンタはずっと、トキを追っていた」
「………………。」
闘いの前に、それを聞いておきたかった
同じ組織に属しているとはいえ、イタチはトキのことをかなり気にかけている
その理由が分からなかった
「そうだな…
最期に話しておこう」
イタチは肘掛においていた手を下ろし、ぐ、と拳を握った
そして真っ直ぐに、サスケを見つめた
「トキは空目一族の中でも特異な存在だ
お前だって予知夢のことは知っているだろう」
「あぁ」
「暁は、トキのその予知夢の力が必要だったのだ
暁の最後の目的を達成するために」
「………最後の目的?」
暁という組織には興味がなかった、イタチとトキがいる、それだけ
だから目的なんてものはどうでもよかった
「暁にいたら、アイツは遠からず暁に殺される
もしくは、夢に殺される
だから俺は、守ろうとしていた」
「…………夢に殺される?」
「………このくらいでいいだろう
お前の質問には答えたぞ」
イタチは腰を上げ、立ち上がる
そして次の瞬間、姿が消えた
「では………
お前のいう俺の死に様を、再現してみろ」
その言葉を皮切りに、激しい火花が散った
***
鬼鮫さんが水月と呼ばれた男と相対している
私はそれを横目に見つつ、サスケが消えた方を見つめていた
『………!』
森の景色が、ざ、と霞む
またかと思った時には、視界が真っ白に染まっていた
『……………自来也様…?』
天候は雨、空は曇天が続いている
見慣れない建物は、どこか異国の雰囲気だ
そしてそこで、背中にいくつもの黒い棒を突き刺されて絶命している、かつてのもう一人の師の姿
『……ごめんなさい、私は弟子失格ですね…』
あの黒い棒は、ペインさんのものだ
自来也様は、ペインさんに殺されてしまうのだ
『……もう、誰かが死ぬことは避けられない』
自分の中の何かが崩れていく
全て崩れたと思っていたが、まだ、崩れるだけの余地があったようだ
ワタシが、壊れていく
『………さようなら、師匠
貴方がくれたこの力…、貴方の思うように使うことは出来ないかもしれないけれど
けどこれが、私の本当の生き方だと信じてるから』
仲間を守るためにと授けられた、血継限界の力
私はそれを、仲間を傷つけるために使うのだろう
『これが私の、生き方です』
倒れる自来也様を最後に見て、自分から目を閉じた
私なりの、木の葉への拒絶の意思だ
***
背中を向け、サスケが消えた方向を見つめるトキを、香燐はじっと睨み続けていた
だがその時、ふ、とトキのチャクラの感じが変化した
「おいそこの青髪のアマ!何してる?!
チャクラの感じが変わったぞ!」
そう声を荒げても、トキは微動だにしない
それを不思議に思った香燐は、重吾の制止を振り切ってトキの肩を掴んだ
「!!
意識がねぇぞコイツ…!」
香燐の言葉に、鮫肌と首切り包丁を構えていた二人も、それぞれの獲物を下ろす
香燐が触れた反動で、がくりとトキの身体が崩れ落ちた
「ちょ、おい!」
咄嗟に香燐が抱きとめ、その場に座らせる
そこでようやく、トキが目を開けた
『………!
あれ……』
香「気づいたか…
なんなんだテメー、さっきから。情緒不安定かよ」
水「いやいや、君に比べたらずっと落ち着いてるでしょ」
香「黙ってろ水月コノヤロー!」
その声に、はっきりと意識が覚醒する
また予知夢を見ていたのだ
『………ありがとう、迷惑かけてごめんなさい
もう大丈夫よ』
香「あ?
あぁ…」
『鬼鮫さん、そろそろ行ってきます』
鬼「おや、もう決着がついたのですか」
立ち上がり、足を踏み出す
少しだけ目が霞んだ
香「おいお前」
『!』
後ろから呼び止められる
くるりと振り返れば、キツイ目つきの赤毛の女の子が、私を睨んでいた
「お前のそのチャクラはなんだ?
お前を乗っ取ろうとしてるようだ」
『!
………そう』
「気を付けろ、お前自身のチャクラが負けたら、終わるぞ」
『忠告どうもありがとう
さすが、サスケが選んだ忍びね』
にこりと笑いかけ、背中を向ける
すぐに飛び出し、森に走った
大きな稲妻が走ったあの場所で、おそらく決着がついたのだろう
***
ざざざ、と森を駆け抜けると、不自然に開けた場所に出た
散乱する瓦礫と、不自然な丘
そのてっぺんに、人の気配があった
『………決着は、ついたようね』
地面に倒れる二人の人影
その片方に、生気は感じられなかった
イタチさんが亡くなったのだ
だがサスケも重傷だ、すぐに処置をしなければ危険な状態だ
サスケの傍に跪き、触れようとした途端、突然気配が現れた
「トキ」
『………トビさん、ゼツさん』
何もない空間からはトビが、地面からはゼツが現れた
トキはそれを分かっていたようで、動じることはない
「トキ、俺とともに来い
サスケの処置を頼みたい」
『元からそのつもりです』
そう告げるや否や、トビさんは空間忍術でイタチさんの遺体を飲み込み、ついで私とサスケを飲み込んだ
歪む視界の嫌悪感に顔をしかめていると、いつのまにかアジトに来ていた
.