妹
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大蛇丸さんがサスケにやられた
外道魔像の指先で、そんな話がされた
「大蛇丸の場所は、名実ともに消えたわけだな」
デイダラさんが少しだけ楽しそうに言い、私を見る
私が立っているのは、大蛇丸さんが立っていた場所なのだ
「飛段と角都も死んだ
よってこれより、トキはイタチと鬼鮫と共に動け
指示は以前と変わらない、九尾を捕らえろ」
リーダーの指示に、はい、と返事をする
そこにデイダラさんが反論した
「トビよりトキと組んだ方が何かと面白い、こっちに呼んでくれよ
トビだってトキの能力しりてえだろ?」
『………。』
トビ、と呼ばれた仮面の男は、へらりと陽気に振る舞う
暁らしくない、ひょうきんな男だと鬼鮫さんが言っていた
だが彼は、私を暁に連れてきた張本人。新入りなんてのはでまかせだ
裏の顔が見えないが、写輪眼を持っている
だがそれは、彼と私の秘密
下手な言動は避けるべきだろう
『……機会があれば、デイダラさんとトビさんのとこに混ぜてもらいます
今回は、リーダーに従ってイタチさんと鬼鮫さんのとこにお世話になりますね』
「ちぇ」
「えぇ、構いません。トキと組むのは久しいですねぇ、楽しみです」
「………そうだな」
イタチさんは静かに言うと、それきり口を閉ざす
一度解散になると、私はトビさんのもとを離れ、イタチさんと鬼鮫さんと合流する事となった
***
一人で合流地点に向かってる時の事だ
あと数時間で着くだろうというところで、日中にも関わらず、視界が光に奪われた
敵襲かと思ったが、違う
『………夢?』
ざ、と視界がクリアになると、見たことのない場所に自分が立っていた
幻術かとも思ったが、違う
この感覚は予知夢だ
今度は何が起きるんだ、と周りを見ようとした時、激しい爆発が離れたところで起きた
『………まさか、!』
あの爆発の規模と音は、デイダラさんの起爆粘土に間違いない
そう思って走るが、思わず足を止める
『………どうして、サスケがいるの』
巨大な蛇を操るサスケの姿が見えた
そして、自分の胸にある口に起爆粘土を食べさせるデイダラさんの姿
『そんな、嘘でしょデイダラさん!
その術は貴方が死んでしまう!』
サスケの顔が引きつる
それを見て笑うデイダラさんの身体はどんどん肥大していき、そして、爆発へのカウントダウンが始まる
こうなってしまってはもう、止められない
『やめて!!』
そう叫んだ瞬間、あたりが真っ白になった
***
は、と気がつくと、元の場所に戻っていた
夢から目覚めたようだ
『………予知夢…』
初めてのことだ、自分の意識があるときに予知夢を見るのは
予知夢を見る時は、いつも眠っている時、つまり自分の意識がない時だ
なのに今、はっきりと意識があるときに、夢を見た
予知夢の力が、私に影響しているのだろうか
「トキ、見つけましたよ」
『!』
ふと声がして、ぱっと顔を上げる
木の上に鬼鮫さんとイタチさんがいた
鬼「気配は近いのに動かないので、心配になって見に来ました
どうかしましたか?」
『………予知夢を見ました』
イ「……たった今、か?この数分で見たのか?」
『はい
歩いていたら、急に視界が白んできて、気付いたら夢の中に』
鬼「おやおやそれは…、白昼夢のようなものでしょうか?
そうこともあるんですねぇ」
『……いえ、初めてです
予知夢はいつも、私の意識がない時に見るのに、今回は、突然』
イ「…………夢の内容は?」
タン、と2人が木から降りてきて、トキを見る
イタチの問いかけに、トキはすぅ、と息を吸った
『この後、デイダラさんとサスケが闘います』
「「!」」
『そこでデイダラさんが自爆します
おそらく、死んでしまうかと
その影響でのサスケの生死は分かりませんでした』
鬼鮫さんが驚いた顔をしつつ、イタチさんを見る
私も同じようにイタチさんを見た
イ「間違いないのか?」
『えぇ』
鬼「夢が外れる可能性は?」
『今まで一度も、予知夢が当たらなかったことはありません
私が介入しない限り、絶対に夢の通りになります』
鬼「なるほど、確かにそうですね
未来がわかるトキにしか、未来を変える事は出来ない
逆に、今ここにトキがいるのなら、未来は変えられない、と」
『はい
………………けど、おそらくサスケは生き延びます
そしてそのあとは、イタチさんを殺しに来るでしょう』
真っ直ぐにイタチを見上げ、トキが断言する
その視線を正面から見つめ返すイタチは、表情を変える事はなかった
「ならば、決着をつけるとしよう」
『!!』
イタチがそう言った瞬間、再びトキの視界が白み、映像が流れる
それは一瞬の事であったが、彼女が理解するには十分だった
トキの目に映ったのは、2つのシーンだ
1つは、イタチが倒れる姿
もう1つは、サスケが倒れる姿
トキの予知夢は、2つの可能性を示唆していた
***
「!」
自分と目を合わせていたトキの青い瞳が、突然緑色に変わった
それと同時に、今まで話していたトキの身体が、ぴた、と止まる
「予知夢か」
「え?」
鬼鮫も同じようにトキを見て、目が、と呟いた
そして次の瞬間、は、とトキが意識を取り戻した
『………あ、すみません』
「トキ、今、また予知夢を見たな?」
『は、はい、見ました、意識が飛んで…急に…』
「………。」
イタチさんが、そこで初めて表情を変えた
少しだけ顔をしかめたのだ
「トキ」
『はい』
「お前は、夢に乗っ取られ始めている」
『………え?』
夢に乗っ取られる?
鬼鮫さんも疑問に思ったようで、首を傾げていた
「予知夢の力というのは強大だ
その大きすぎる力が、お前を飲み込もうとしている
このままでは、お前はいずれ、夢に乗っ取られる」
『………どういう事ですか?』
「過去と未来がお前の中で混在するのだ
それによってお前の中の時間が歪み、やがて意識が全て夢に飲み込まれる
"今"も"未来"も"過去"も、全てが分からなくなる」
『………。』
何となく、イタチさんの言うことが分かった
今のように、意識がある時でも夢を見る事が、乗っ取られてる証拠なのだろう
私より、夢が主導権を奪っているのだ
『………そう、ですか』
「…だが、歴代でも予知夢の力を持つ人間はわずかだ
俺の言ってることが事実かどうか、今はもう確認するすべはない」
『……なら、そうならないよう努力してみます
私は、立ち止まるわけにはいきませんから』
夢の力より、私自身が強くあればいい
1度目を閉じ、もう一度開ける
私の目を見た鬼鮫さんが、青に戻ってますね、と笑いかけた
その数刻後、暁から「デイダラがサスケにやられた」という連絡が入った
夢の通りになった
また、私の大切な人が、私の大切な人を殺めた
***
『イタチさん
サスケが来ます』
深い森の中、先を歩くイタチにそう声をかけると、彼は静かに答えた
「鬼鮫、サスケが来たら、サスケ一人だけを通せ
他は通すな」
「分かりました」
サスケとイタチさんの最後の決戦は、あと少しで始まるだろう
全ての終止符が打たれるのだ
「トキ」
『!』
「少し話がある」
『………はい』
イタチさんはそう言うと、鬼鮫さんに待機するよう告げて歩き出した
私もその後を追う
鬼鮫さんの気配が遠くなったところで、彼が足を止め、私を振り返った
「お前の見た未来は、俺の死を告げていたか?」
『!!』
「正直に言ってくれて構わない」
イタチさんが、ふ、と小さく笑った
その笑顔は、妹を見る兄のようだった
『………分かりませんでした
私が見たのは、イタチさんが死ぬパターンと、サスケが死ぬパターンの両方を示していて…
どうなるのか、分からなかった』
「………そうか
お前でも分からない未来があるのだな」
『………………分からなくても、1つ分かることはあります』
「それは?」
『………私の大切な人が、私の大切な人と殺し合うのは、変えられない』
胸が締め付けられる
イタチさんも、サスケも、私にとってはかけがえのない大切な人
兄と、友
その二人が殺し合うことは、どうあがいてもとめられない
どう転んでも、どちらかは死んでしまう
私の大切な人が死ぬのは、決まっているのだ
「………お前はいつも、誰よりも、人の死と向き合っているんだな」
ぽん、と暖かくて大きな手が、私の頭に乗せられた
「トキ、俺はここで死ぬだろう」
『え……』
「だから、サスケの事を頼む」
『待って…!イタチさん、何を言ってるの…!』
「お前のこともどうにかしてやりたかったが、俺にはもう時間がない…
だから、いいか、トビには気を付けろ」
『え…?!』
「お前は利用されている
お前のその血が、予知夢の力が、奴の計画の一端を担っているからだ
だから気を付けろ、気を許してはいけない」
『………。』
何も言えなかった
言葉が出てこないのだ
「それから………、お前はこの先、さらに多くの人が死ぬのを見ていくだろう
予知夢でも、現実でも
お前はそれと向き合うんだ
それが、お前の宿命であり、運命なのだから」
『………はい』
「だが、忘れるな
お前を想ってくれる人はいる
助けてくれる人がいる」
『助けはいりません、私は…』
暁です
そう告げると、イタチさんは一瞬だけ悲しげな顔をした
その顔が、シカマルと重なった
助けてと叫んだ私に手を伸ばした、シカマルの姿が頭に浮かんでしまった
「お前は暁ではない
空目トキだ」
『!』
「そして俺の大切な………妹だ」
『イタチさ………』
「行け
これで最後だ、トキ」
とん、と私のひたいを指で小突き、イタチさんが小さく微笑む
夢で見た、イタチさんがいつもサスケにやっていた
気づけばもうイタチさんの姿はなくて、私はただただ、その場に立ち尽くしていた
溢れる涙を拭うこともせずに
.