心を殺せ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
は、と目が覚める
だがそれは、朝が来たからではない
『……夢の中だ』
徐々に視界が開けてくる
そこに映る景色は、見たことがない場所だった
公衆トイレのような場所に入っていく角都の後ろ姿が見える
『……そう言えば、換金場所は変なところだって…
ここなのかな』
一般人に悟られないよう擬態してるという換金場所
飛段さんはその場所が臭うから嫌いだと言っていた
臭う、ならばこの場所が換金場所に違いない
ふ、と視界が変わり、気付くと建物の上に立っていた
換金場所になってるトイレの上だ
周りは森で囲まれており、のどかな景色が広がる
ちらりと下を覗くと、飛段さんが建物の前の階段で座り込んでいた
『!』
ふ、と突然現れた気配と、首筋に突きつけられる冷たい感覚
クナイか、と気付いた時には、下から飛段さんの怒鳴り声がした
「動くな」
『!!』
背後でクナイを持つその人物が、静かにそう呟く
聞き覚えがありすぎるその声に、どくん、と鼓動が大きく響いた
『……シカマル…』
その声と同時に、どこからか現れたコテツさんとイズモさんが飛段さんの身体を貫く
無駄なことを、と呟く私に、後ろにいるシカマルが「え?」と声をこぼした
『!』
外の騒ぎに気付いた角都さんが換金場所から出てくる
それと同時に、これまたどこからか現れたアスマ先生が手裏剣を投げた
「……その腰布」
「うわ、まーたくっせー換金場所に行かなきゃなんねーのかよ!」
『!』
アスマ先生の攻撃を難なくかわし、角都さんが先生を見る
アスマ先生の腰に巻いてある「火」の紋が入った腰布を見て、少しだけ楽しげな声を発した
そしてそれを聞いた飛段さんもアスマ先生の腰布を見て、嫌そうに顔を歪めたのだ
『…!
ダメ…!』
その瞬間、二人のターゲットがアスマ先生に向いたのが分かった
「………トキ、そんな所で油を売ってないで降りてこい
その男もさっさと殺せ」
『……!』
角都さんの言葉に、身体がぎくりと揺れたのが分かる
シカマルを、殺せと言うの
「よせ」
『!』
「お前は俺を殺せない」
優しい声が鼓膜を震わす
全て分かっているかのようなその言葉に、ぎゅうと胸が締め付けられた
「やはりな」
『!』
シカマルの拘束から逃れない私を見て、アスマ先生はふっと笑った
「トキ、お前は優しい子だ
シカマルを殺すなんて出来ないだろ
木の葉に帰ろう、俺たちはお前を連れ戻しに来た」
『………!!』
アスマ先生の言葉に、角都さんと飛段さんが顔をしかめる
そして次の瞬間、角都さんが姿を消した
「………!!」
ふっ、と角都さんがシカマルの背後に表れ、拳を振るう
ギリギリのところでかわしたのを見て、角都さんは私の腕を引っ張った
「何を躊躇っている」
『………。』
「お前は暁だ、木の葉ではない」
『……はい』
「心を殺せ」
『はい』
角都さんの言葉に、気持ちを切り替える
そうだ、私は自ら闇に身を投げた
今さら、日の当たるあの里へ帰る事など出来ない
悲しげな顔をするアスマ先生の顔を見たくなくて、目を閉じた
目を閉じて、再び開ける
光が差し込む中、真っ先に視界に入ったのは
恩師の変わり果てた姿だった
『あ………、アスマ、先生…』
コテツさんとイズモさんは角都さんに首を絞められて身動きが取れない
シカマルはアスマ先生の後方で倒れている
そして、大鎌で自分の身体を刺している飛段さんの姿
飛段さんは、呪いの円の中にいた
その一瞬で理解した
アスマ先生は飛段さんの呪いを受け、殺されたんだと
『あ……、あぁ……!
うそ、なんで、こんなの…!!』
嫌だ、大切な人が、また目の前で死ぬなんて
アスマの姿と空目一族の仲間たちの姿が重なる
『……もう誰も、失いたくなんてないのに…!!』
大好きな人が目の前で息を引き取るのを、ただ見つめることしか出来ない
私は暁だ
アスマ先生を助けることは出来ない
私は何も出来なくて、私の周りの人が死ぬ
私に関わるから、死んでしまうんだ
『…っ、お願い…!
誰にも死んでほしくないの…!』
ば、と手を向けてチャクラを練る
完全に息を引き取る前なら、まだ、助けられる
けど、その瞬間に意識が途絶えた
***
『………!!』
ガバッと身体を起こす
周りをみると、昨夜入った洞窟の中だった
「おーいトキー、起きたかー?
ずいぶんうなされてたみてぇだけど、生きてるかー?」
「……!
目の色が違うな」
『あ……』
飛段と角都の声が交互にする
そちらに顔を向ければ、すでに洞窟の外で出かける準備をしていた
ヨロヨロと洞窟の外に出て顔をみせると、角都が目の色が変わっていることに気付く
角「……空目の予知夢か」
『…少し、変なものを見ました
けどよく分からなくて』
飛「?
予知夢、って何の話だ?」
角「今さら説明するのも面倒だ
トキ、そろそろ出るぞ
支度をしろ」
『………はい』
角都が地陸を持ち上げる
時遁の術で時間を止めた地陸は、昨夜とは全く変化がなかった
死者特有の死斑や、顔色の悪さはない
それを見て少し顔をしかめるも、トキは大人しく準備をした
準備をしながら、今後の事を考えた
アスマが死ぬあの夢を、変えられないかと
***
森を抜け、少し開けた場所に出る
不自然だが、トイレがあった
『……ここは』
「ここが換金場所だ」
角都はそう言うと、地陸を担ぎ直して中へ入っていく
男子トイレに入っていくので、外にいます、と背中に声をかけた
意外にも、飛段も共に入っていった
『……。』
見張りでもしよう、と建物の屋上に飛び上がる
足を投げ出し、屋上の淵に座り込んだ
眼前に広がるのどかな森からは、鳥のさえずりや木々のざわめきが聞こえてきた
まだ、他の人間の気配はない
しばらく屋上で足をぶらぶらさせながら待っていると、トイレから人が出てくる
『飛段さん』
「あ?
おー、そんなとこにいたのか」
『見張りがてら休んでます』
「真面目だなーお前」
『角都さんは?』
「角都は金を数えてる
俺はあんなくせーとこいたくねぇから先に出てきた」
『………そう、ですか』
どか、と飛段さんがトイレの前の階段に腰を下ろす
どくどくと鼓動が早まるのが分かる
落ち着け、と自分に言い聞かせた時、背後に人が立つ気配を感じた
「動くな」
あぁ、夢と同じ
聞き慣れた声がする
首筋に感じる冷たい感触と、背後に立つ気配
『殺さないの?』
「……。」
私の言葉に、後ろの彼がピクリと反応する
だが声は出さなかった
『普通なら、背後を取った時点でそっちの勝ちでしょ
加えて私はS級犯罪者組織の一員……
抹殺を躊躇う必要はないはずよ』
キン、と構えていた短刀を後ろに向ける
来ると分かっていたのだ、こちらも対策は立てている
『悪い事は言わない
ここから引け、そちらに勝ち目はない』
「………俺たちの目的は暁の抹殺
そしてお前を連れ戻す事だ」
『!』
後ろを見ずに淡々と交わされる会話
淡白な会話は、彼と話すときの特徴でもあった
言葉に詰まった時、眼下で飛段さんが身体を貫かれた
貫いたのは、コテツさんとイズモさんだ
「まずは1人」
『……それはどうかな』
「!」
ほ、と息を吐く彼に、すぐに言葉を返す
私の言葉に、彼が顔をしかめたのが分かった
これも夢と同じだ
角都さんが外に出てきたところで、アスマ先生が奇襲をかける
だがそれは不発に終わった
そして角都さんは、アスマ先生の腰布に目を留め、楽しげな声を発する
それとは反対に、飛段さんは嫌そうな声を出した
「………トキ、そんな所で油を売ってないで降りてこい
その男もさっさと殺せ」
屋上で身動きが取れない私に気付いた角都さんが、ちらりと私を見てそう言った
ぐ、と刀に力を込める
けどやはり、思うようには動かなかった
「よせ」
『!』
「お前は俺を殺せない」
優しい声が鼓膜を震わす
全て分かっているかのようなその言葉に、ぎゅうと胸が締め付けられた
同じだ、夢と
「やはりな」
『………。』
シカマルの拘束から逃れない私を見て、アスマ先生はふっと笑った
「トキ、お前は優しい子だ
シカマルを殺すなんて出来ないだろ
木の葉に帰ろう、俺たちはお前を連れ戻しに来た」
『……。』
アスマ先生の言葉に、角都さんと飛段さんが顔をしかめる
そして次の瞬間、角都さんが姿を消した
「………!!」
ふっ、と角都さんがシカマルの背後に表れ、拳を振るう
ギリギリのところでかわしたのを見て、角都さんは私の腕を引っ張った
「何を躊躇っている」
『………。』
「お前は暁だ、木の葉ではない」
『……はい』
「心を殺せ」
『はい』
ここまでも夢と同じ
角都さんに助けられ、そこでやっと、私は彼と視線を交えた
『シカマル』
キン、と短刀が鳴る
明確な戦う意志を見せると、シカマルもアスマ先生も、一瞬だけ悲しげな顔をした
敵として、かつての仲間と戦う事になるなんて
まさにそんな顔だった
『私は暁
暁以外は全て敵とみなす
我らの邪魔をするなら、容赦はしない』
その声を皮切りに、一斉に飛び出した
***
キィン、と刀同士がぶつかる
4対3で、数ではこちらの方が不利だ
だが、そんなものは関係ない
そしてあの瞬間がやって来た
呪いの餌食となり、アスマ先生が倒れる
変えたくても、変えることを許されなかった未来が現実となった
「アスマぁぁぁぁぁ!!!!」
シカマルの悲痛な叫び声が頭に響く
あぁやはり、予知夢の通りになってしまった
どんどん生気を失う恩師の姿に、胸がズキズキと痛み出す
と、その時、視界を烏が覆った
『………!!』
目くらましか、とその場から下がる
すると、いのとチョウジがシカマルのもとに集まっていた
『………いの…、チョウジ…』
思わずこぼれた2人の名前
だがそれは届かなかった
いのがすぐにアスマ先生の治療を始める
ここからは、予知夢にはない現実だ
チョウジとシカマルの心配そうな顔が目に映る
立ち尽くす私の隣にいた飛段さんが、おもむろに大鎌に手をかけた
「まとめて殺してやるよ」
ニヤリと笑う飛段さんに、ライドウさんが構えを取る
だが私は、咄嗟に飛段さんの前に立っていた
「……あ?トキ、何のつもりだ」
『………これ以上の戦いは無意味です、木の葉に伝令が回れば、いずれここを囲まれる
その前に退くべきです』
「何言ってんだよ!こっからが楽しいとこだろーが……
……あ?」
『!』
ピシ、と頭の中に電流が流れるような感覚がした
それはペインからの連絡があるときの信号だ
二尾の封印を行うからすぐに戻れ、という指示に、どこかホッとする自分がいた
「行くぞ飛段、トキ」
「チッ、良いとこだったのによぉ!
良いかお前ら!俺たちはまた戻ってくるからな!そこ動くんじゃねぇぞ!!」
そう声を荒げ、2人が姿を消す
自分も後を追おうとしたその時、聞き慣れた声が私の名を叫んだ
「トキ!!
アンタならアスマ先生を助けられるでしょ?!」
『…!!』
「お願い…!急所を四箇所もやられてるの…
私の医療忍術じゃどうにもならない…!
けどアンタの時遁なら…!!」
いのの涙交じりの声が背中から刺さる
後ろを振り向けば、もう生気を失いかけている恩師の姿と、涙を流すいのとチョウジの姿が
あぁ、こんなの見たくなかった
大切な人が死にかけ、大切な人たちが悲しんでいる
みんな、私に関わったから
助けたい、そう願う自分と、助けてはいけないと叫ぶ暁の私
2つの心が自分の中で入り乱れている
痛い
怪我はしていないのに、胸が痛い
痛みを抑えるように胸を押さえ、精一杯いのたちを睨んだ
『これは警告だ
暁に関わるな、私に関わるな
関われば、また誰かが死ぬ
暁の前に、誰も立ち塞がることなんて出来ない』
「トキ…っ!!」
『………私は暁
世界の敵
私を連れ戻すなんてバカなこと、考えるな
二度と私の前に現れるな…!』
声が震える
心が痛む
大切な人たちを傷つける言葉は、同時に私の心にも傷をつけた
滲む視界の中、最後に目に入ったのは
涙を流す第十班の三人の姿だった
第11話
心を殺せ
.