木の葉崩しとその後
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「秋道家?あぁ、だったらあそこの角を曲がってすぐだよ」
『ありがとうございます』
ぺこりと頭を下げ、言われた通りに進んでいく
手には薬の予備を持ち、フードをかぶって歩く
角を曲がると、大きな屋敷が見えた
秋道は木の葉でも歴史ある家柄らしく、教えてくれた人はすぐに分かると言っていたが、本当だった
『…秋道…、ここだ』
見知らぬ土地を一人で歩くのはまだ不安があったが、どうしても薬は届けたかった
「! おや、どうかしたのかな?」
『!』
家の前でウロウロしていると、後ろから声をかけられる
慌てて振り向くと、そこには身体の大きな優しそうな男の人がいた
『あっ、あの、秋道チョウジくんに用事があって、その』
「チョウジのお友達かな?
ごめんね、チョウジはまだ体調が戻らなくて」
『あ、その事で…
チョウジくんのお父様ですか?』
「うん、そうだよ」
ニッコリと笑うチョウジくんのお父様に申し訳ない気持ちが募る
フードを外して髪色を露わにし、手に持っていた薬袋を渡した
『あの、チョウジくんと予選で戦った時に毒薬を使いました
そろそろ毒薬は切れると思いますが、念のため解毒剤を渡しに…』
「……じゃあ君が、砂隠れの里から受験している瑞乃ちゃんだね
シカマルに聞いたよ、試合の直後にすぐ治療してくれたって
ありがとう、これはチョウジにちゃんと飲ませるよ」
『……すみません、でした』
申し訳なくなって、思わず謝罪する
だがそれを聞いたお父様は、クス、と笑った
「君が謝る事はない、負けたのも怪我をしたのも、全部チョウジが弱かったからだ
まだまだ修行が足りないんだよ」
『………。』
「君は優しいね、チョウジの体調が良くなったらお礼を言うように伝えておくよ
君は本戦があるだろう?
チョウジの分まで頑張ってくれよ」
『……はい、失礼します』
ぺこりと頭を下げ、秋道家を後にする
走って宿まで戻ると、テマリが巨大扇子の整備をしていた
「? どうした瑞乃、どこかに行ってたみたいだが」
『っ、うん、ちょっと散歩してた
散歩も良いけど、修行しないとね』
「?
そうだな」
うまく笑えていただろうか、自信は無かったがテマリは疑問に思わなかったようだ
そして数日後、医学書が欲しくて本屋にいたところを、元気になったチョウジくんに声をかけられたのだ
***
シカマル視点
第三の試験、本戦
勝ち進んだ受験者達は一箇所に集まり、戦う場所を見下ろす
砂の四人は近くに固まっていた
『!
シカマルさん、でしたね
チョウジくんはもう大丈夫ですか?』
「あぁ、すっかり元気になってる
多分この会場のどっかにいるぜ、見にきてるはず」
『………そうですか』
「?」
少しだけ気まずそうな顔をした彼女に疑問を抱いたが、すぐにゲンマさんがトーナメントを発表した
トーナメントが発表されると、一番最初の試合は彼女だった
相手は音隠れの男だ
『………行ってきます』
「!」
すでに下に飛び降りた音忍を追うように、彼女もひらりと下へ飛び降りた
途中、空色の髪がわずかに露わになる
だが彼女はそれを嫌がるように、フードを手で押さえて着地した
「砂隠れの里、虹色瑞乃
音隠れの里、ドス・キヌタ
両名に間違いないか」
「はい」
『はい』
目の前の音忍を見る
包帯だらけの顔から覗く目を睨んだ
この男は、先日我愛羅の暗殺を目論んだ男
油断は大敵だ
「では……、始めっ!」
試験官の声を聞くや否や、奴はすぐに仕掛けてきた
***
『水遁・水龍弾!!』
会場中を水龍が覆い尽くす
足を壁につけ、宙で術の様子を睨んでいた彼女は、やがて水の放出をやめた
彼女とは反対側の壁際で、対戦相手は気を失っていたのだ
『あなたの術は厄介だけど、それは空気があるから
空気を振動させて攻撃されるのは厄介だし、かわすのは難しい
けれど、あなたごと水の中に沈めればどうなると思いますか』
すと、と地面に降りて相手のもとへ歩く
『攻撃のために繰り出した振動が、水全体を震わせて自分を攻撃する…
自分の術の弱点を把握していなかった
それがあなたの敗因です』
「………勝者、虹色瑞乃!」
ゲンマさんが高らかに宣言をし、会場から拍手が沸き起こる
ほっと息を吐いた彼女は、そのまま階段に向かった
***
自分の試合は、チャクラ切れによる辞退でテマリが勝ち、俺は負けた
その後すぐに行われたサスケと我愛羅の試合の途中、砂隠れの我愛羅の様子がおかしくなったのだ
会場に羽が舞う
一瞬見惚れたそれだったが、すぐに幻術だと気付いた
幻術返しをして、面倒だからと適当に寝転がっていようとした瞬間、わずかではあったが、視界にあの空色がうつったのだ
「瑞乃…?」
彼女は我愛羅たちの後を追うように、会場の外へと飛び出ていった
この時は知らなかった、彼女が木の葉崩しに加担していたことに
そして作戦は実行され、木の葉は三代目火影と多くの仲間を失った
やがて砂が降伏宣言をしたが、その時もいまいち理解出来なかったのだ、彼女も木の葉崩しの一端を担っていたことに
***
木の葉崩しが始まった直後、事前に知らされていたように会場を幻術で包まれる
あらかじめ聞いていた我々はすぐに幻術を解き、暴走気味の我愛羅を連れて会場を後にしたのだ
「すまなかった……」
「「『!!』」」
ナルトくんとの戦い、そして砂の敗北が決まり、私たちは一旦退避した
ボロボロの我愛羅はカンクロウに背負われながら、確かに謝ったのだ
テマリとカンクロウの戸惑いが手に取るように分かる
二人は嬉しそうに、でも恥ずかしそうに小さく笑ったのだ
それを見た私も、心の底から笑えた
その後、風影様が大蛇丸に暗殺されていたことが判明し、砂はすぐに木の葉に降伏した
そしてしばらくは、木の葉との関わりは一切無かったのだ
うちはサスケが里抜けを図るまでは
『大丈夫ですか!』
木の葉同盟国として、私たちは再び木の葉に戻ってきた
うちは奪還を言い渡されたメンバーを聞いて、思わず目を見開いたのだ
彼らの足取りを追っていき、怪我をした人を次々に治療していく
チョウジくん、日向さん、キバさん、そしてシカマルさん
シカマルさんのもとに着いた時にはすでにテマリが敵を倒していて、シカマルさんと二人で待っていた
彼はこの任務で隊長を任されていたし、その理由も頷ける
テマリとの戦闘で見せた頭の良さ、作戦を立てる能力、機転の早さ、どれもがあの時中忍試験を受けた下忍の中でズバ抜けて優れていたのだから
隊長である彼に仲間の安否を伝え、すぐに我愛羅のもとに向かう
やはり彼は友達思いだ
私の報告を聞きながら顔を歪めて自分を責めるその姿に、心が痛んだ
自分のせいだ
そう彼は言うけれど、あなただったからこそ、他の人たちは生きているんだとも思った
そしてうちはサスケは、ナルトくん達が必死に止めようとしたのを嘲笑うかのように、木の葉からいなくなったのだ
***
うちは奪還任務で負傷したチョウジくん達の治療のため、木の葉病院で治療に参加させてもらっていた
その時にやっと、シカマルさんとお互いに自己紹介をしたのだ
まぁ、元から知ってはいたのだが
テ「瑞乃、少し買い物に付き合ってくれないか」
『分かった』
テマリから誘われ、木の葉にある忍具屋に向かう
途中、風が吹いてフードがはずれた
「なんと、青い髪…」
「珍しい……」
「どこの人間かしら、あんな人木の葉には…」
「……! 砂の忍じゃないか…」
『…!!』
空色の髪が露わになった途端、集めてしまう視線
人々の声も聞こえてきて、思わず顔をゆがめてフードをかぶり直す
声が聞こえていたテマリは、その声の主をギロリと睨んでいた
「っくそ、どいつもこいつも…
瑞乃、あんな奴らの声なんか気にするな
私や我愛羅やカンクロウは、お前の髪は好きだぞ」
『…ありがと、テマリ』
彼女たちは私が髪をコンプレックスに思っていることを知っている、だからこうして気を遣ってくれるのだ
きっと、この先現れないと思っていた
私の髪が好きだなんて言ってくれる人は、二度と出会えないと思っていた
けれど木の葉には、私の予想を裏切る人がたくさんいたのだ
私のコンプレックスを無くしてしまうような事を言ってくれた人がいたのだ
「……なぁ、やっぱフード外さないのか?」
『! ……あ…、その、え…と』
「?」
それが、この人だった
私の髪は、空のようで綺麗だと
好きだと言ってくれた
『――………その、私、これからはフードをしないように心がけてみようかなって思ってるんです』
「へぇ…、いんじゃねーの?綺麗な髪の毛なんだから、出し惜しみする必要ねぇだろ
――てか、注目されんのだって、みんなお前の髪が綺麗だから見惚れてるだけなんじゃね?」
『――!!』
我愛羅達の言葉よりも彼の言葉の方がずっと響いたのは、もしかしたらこの時から彼に好意があったからかも知れない
それに、他里の人間にこんな事を言われた事がなくて、本当に嬉しかったのだ
自分の嫌いなものが、初めて好きになれたきっかけをくれた人
それが、シカマルさんだった
.