私たちの中忍試験
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「木の葉隠れで行われる中忍試験に参加する」
下忍になって任務をこなすようになって数ヶ月
異例の伝令がバキさんから伝えられた
だがもっと異例だったのは、あの作戦の事だ
『木の葉を潰すって……
それは、我愛羅の力を利用するという事ですか?』
テ「!」
バ「あぁ、そうだ
この作戦は我愛羅の守鶴の力を使う
そのために、お前たちは木の葉にいる間は我愛羅の護衛をしろ」
カ「………。」
テ「……分かったよ」
『………。』
我愛羅がいない時を見計らってバキさんに呼ばれ、今のことを言われた
最初は意味が分からなかった
私にとっては縁もゆかりもない木の葉隠れの里を、いきなり襲うだなんて
私も、もちろんテマリやカンクロウも納得してはいない
けどこれは、彼らの実の父親である四代目風影様からの命令だ
木の葉崩しの作戦内容を聞き、私達は木の葉隠れの里に初めて足を踏み入れた
***
第一の試験は何の問題も無かった
カンニングによる情報収集能力を図っている事は分かったし、そんな事をしなくても自力で問題が解けたからだ
第一の試験の最後に「試験を離脱するか否か」という質問をされたが、こちらとしてはやめるつもりはない
ある種これは任務でもあるのだから
「ここにいる全員、第一の試験の合格を言い渡す!!」
無事に第一関門をクリアできてホッと息を吐く
離れた席に座っているテマリと目が合うと、彼女はニヤリと笑った
そのまま四人で第二の試験に向かい、あの死の森へと足を踏み入れたのだ
***
我「そこにいるのは誰だ」
「「『!』」」
第二の試験の最中、他里の忍を殺めた我愛羅
その後、おそらく我々の様子を見ていただろう三人に声をかける
姿を見ていないからどんな人間かは分からなかったが、これ以上無駄な殺戮はよすべきだと思い、彼の前に立った
「………瑞乃、そこをどけ」
『嫌
我愛羅、もう天と地の巻物の両方を手に入れた
これ以上無駄な時間を過ごすより、早く塔へ向かう方が良い』
「おい瑞乃…!」
カンクロウの慌てた声が耳に入る
だが、彼を止めるべきだと思った
我愛羅の周りに砂が舞う
それが徐々に私の足元に巻き付いてきた
恐い
けど、引く訳にはいかない
「………ちっ
行くぞ」
苛々した様子で我愛羅がそう吐き捨て、すぐに走り出す
それを慌てて追うカンクロウと、私を気にかけるテマリ
私は大きく息を吐き、三人の後を追った
『(殺されると思った)』
手が震える
この時の私は、テマリ達と同様に、我愛羅を恐れていた
歴代最短でのゴール
それを言い渡された私たちは、誰一人として喜びはしなかった
ほぼ無傷で来れたのは、すべて我愛羅が殺したからだ
他のチームを待つ間、塔の中で宿泊することとなった私たちはそれぞれに別れ、好きなように時間をつぶしていた
「瑞乃」
『!
我愛羅、どうしたの?』
「……眠れなくてな」
『!』
夜も深まった頃、私のもとに我愛羅が来た
その後ろにはカンクロウとテマリもいる
私は分かった、と返事をし、彼を空いているベッドに寝かせる
目を閉じた彼の額に手をかざし、チャクラを放つ
青い光が私の手から溢れる
その光を受けた彼は、すぅと眠りについた
テ「……守鶴の様子は?」
『大丈夫、安定してる』
カ「なら良いけどよ…、まだ次の試験もあるじゃん?
こんな感じで大丈夫なのかよ」
『……確かに、いつもより不安定だと思う
少し心配』
テ「作戦に影響が出ないといいが……」
『………。』
作戦、その言葉に唇を噛む
少し顔色が悪い我愛羅の寝顔を見て、言いようのない不安に駆られた
『……我愛羅の事は見ておくから、二人はもう休んでて
そろそろ受験者が揃う筈だし、次の試験が始まるまで時間がないから』
カ「………じゃ、お言葉に甘えるとするじゃん?
あとで交代な」
『ありがとう』
我愛羅の中にいるヤツが暴れないように、我愛羅の眠りを妨げないように
私がこの班に配属されたのには、もちろん理由がある
同年代の子どもと比べて、ずば抜けて医療忍術に長けていたから
そして、医療忍術で彼を眠らせる事が出来るからだ
比較的穏やかな表情で眠っている我愛羅を見て、この先の試験に不安を抱く
木の葉潰しがどうなるのか、彼が、彼の中の守鶴がどうなるのか
どうしても怖いのだ
『………身体の傷は治せても、我愛羅の心の傷は治せないよ』
ごめんね
静かに呟いたその言葉は、彼にはきっと聞こえていなかっただろう
そして翌日
第二の試験の合格者が決まった
そして異例ではあるが、第三の試験の予選を行う事となったのだ
そこで私は彼と出会った
十数人が死の森の中にある格技場のような場所へ集められる
今からここでトーナメントを行うらしい
秋道チョウジ
虹色瑞乃
そして私の順番が回ってきたのは一番最後
相手はもちろん、初対面の木の葉の忍者であるチョウジくんだった
『行ってくる』
フードを目深にかぶり、ひらりと下へ降りる
木の葉側が彼に向かって大きな声で声援を送っていた
中には罵声に近いものもあったが
「では、はじめっ!」
試験官の声を皮切りに、すぐに彼が攻撃を仕掛けてくる
咄嗟のことで動けなかったものの、すぐに印を結んで水の壁を作った
『!』
水の壁が押されているのに気付き、すぐに水牢の術へと切り替えて彼を水で包み込む
「倍化の術!!!」
『!!』
動きを封じて安心するのも束の間、彼は倍化の術で水牢を破ったのだ
間合いをつめられないよう慌てて下がり、クナイを投げて遠距離攻撃をはかる
それは呆気なく弾かれ、しばらく武器を投げ合う硬直状態となった
チャクラがなくなった訳じゃない
攻撃方法に迷っている訳ではない
ただ何となく、戦いたくなかったのだ
第三の試験に勝ち残りたくなかった
逃げたいと、あの任務をやりたくないと思ったのだ
『あ』
意識が逸れてしまったのだ
彼が投げた手裏剣を弾く際、軌道を見誤ってそれがフードをかすめる
はらりとフードが外れ、露わになる空色の髪の毛
それにざわめく木の葉の忍と、目の前の彼
あぁ、やっぱりこんな髪は嫌いだ
色んな人間の目を引く、目立つ、変な色の髪の毛
知られたくなくてフードを被っていたのに
『ごめんね』
もういい、任務のことは割り切るんだ
やりたくないなんて、そんな我儘を言ってはいけないのも分かってる
砂の忍として、戦争の引き金となりうるこの任務を成功させなければいけない
だから私はフードをかぶり直し
毒付きのナイフを取り出し、手にチャクラを貯めて、一気に彼の背後を取ったのだ
「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
会場に響く痛切な叫び声
医療忍術の応用で、彼の足の筋肉を一部切断した
もちろん、すぐに治せる程度ではあるが
だがもちろん、それには激痛が伴う
彼があげる悲鳴を聞きたくなくて、毒付きのクナイで頬にわずかな切り傷をつけた
毒は所謂しびれ薬のようなもので、感覚を麻痺させて眠らせる効果があるものだ
彼が完全に動かなくなったのを確認し、試験官に薬の事を伝えて勝利を確認する
試験官は驚いた顔をしていたが、やがてコホンとひとつ咳払いをし、高らかに表明した
「勝者、虹色瑞乃!」
テ「良くやったな瑞乃」
カ「中々やるじゃん!」
『ありがとう
……!』
三人のもとに戻り、無事に本戦に進めたことに安堵する
その時、戦っていた彼が木の葉の集団のもとへ運ばれるのが見えた
彼に使った毒は自分で作ったもの、解毒剤は私しか持っていない
それに足のことだって
命には別状はないものの、放っておけなくて走り出した
後ろからテマリの声がする
けれど無視をした
『私が診ます』
木の葉の集団の中に一人で飛び込むのは少し勇気が必要だった
オレンジ色の男の子が私を責めようとするが、担当上忍らしき男の人に止められる
無理もない、仲間に怪我をさせた本人が現れたのだから
『………ごめんなさい』
この謝罪は、彼に怪我をさせたことと、仲間を傷付けたこと
そして、この後に起こる事への謝罪の気持ちも含まれていたと思う
彼の治療をする中、ふと顔を上げて目が合った男の子に声をかけた
あなたはこの方のチームメイトですか、と
その質問をした相手が、シカマルさんだった
友達思いな人だという印象を抱いた
それは、私が彼を治療している間、ずっと心配そうな顔をしていたから
戦っていた時もそうだ、同じような視線を送ってきたのを覚えている
シカマルさんに解毒薬を託した直後、テマリに呼ばれてその場を後にした
その時は思ってもいなかった
彼が、私の後ろ姿を見ていたなんて
***
テ「なんだアイツらは…、うるさいな」
『……でも、みんな好い人そうだったよ』
クスクス笑いながら答えれば、テマリは急に真面目な顔つきになった
テ「……瑞乃、今回の任務は…『分かってる、大丈夫だから』……そうか」
『……大丈夫…』
大丈夫、そう呟く私の顔を、テマリはじっと見つめる
だが何も言わなかった
きっと、この時彼女は気付いていたのだろう
私の心の中に迷いがあったことを
だがそれは、テマリも同じだったんだ
こうして第三の試験の予選は終了し、一ヶ月の期間を設けた後、本戦が開催されることとなった
それはつまり、一ヶ月後に
木の葉崩しが行われるということを意味していた
.