彼女が経験したこと
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カンタ視線
『「あ」』
昨夜の飲み会の翌日、ちょっとした任務を終えて火影様のもとへ向かっていると、前から瑞乃さんがやって来た
お互いに立ち止まり、挨拶をする
『カンタさん、昨日はありがとうございました』
そう言って深々とお辞儀をする彼女に慌てて俺もお礼を言う
そうすれば彼女は顔を上げて、ふわりと笑った
「俺の方こそ楽しかったッス!
まぁナルト先輩達の介抱はめんどくさかったけど………」
『ふふ、いつもはシカマルさんとヒナタちゃんと3人でやってるんですけど
今回はカンタさんとアカリさんがいて助かりました』
「あ、いつもは3人でやってんすか、大変ですね」
『まぁ……、でも楽しいので』
そう言って、また綺麗に微笑んだ瑞乃さん
この人はいつもこんな穏やかな笑顔を見せるけど、怒ったりするのかな、なんてぼんやり考えた
しばらく一緒に話しながら歩いていると、どうやら瑞乃さんはシカマル先輩を探しているらしかった
「一緒に来てないんですね」
『本来は私も休みなんですけどね、起きたらシカマルさんがいなくなってて
シカマルさんも今日は休みのはずなんですけど、どこ行ったのかな……』
「入れ違いになってたりして」
『……それは、困りますね』
はは、と苦笑いをする彼女に同じように笑う
すると、通りの向こうから、見慣れた猫背が見えてきた
「ーーー!
瑞乃?」
『あ』
「こんちわ、先輩」
シカマル先輩は瑞乃さんを見ると、すぐに駆け寄ってきた
隣にいた俺には今気付いたらしい
瑞乃さんしか見えてなかったのか
「………なんで外にいるんだお前」
『起きたらシカマルさんがいなかったので、探して歩いてたらカンタさんに会ったんです』
「俺は火影様のとこに行く途中なんで、ここで失礼します」
「あ?あぁ、悪いな」
『さよなら』
ふわりと微笑んだ瑞乃さんと、びみょうな顔のままのシカマル先輩に挨拶をし、先を急いだ
曲がり角を曲がる前に後ろを1度振り向いたが、後悔した
2人はしっかりと手を握って歩き出していた
***
『昨夜、私途中で寝ましたよね?』
「そうだな」
『部屋まで運ばせてしまってすいません、ありがとうございます』
「別に気にすんな、あんだけの人数の料理作ってもらってるんだし
疲れるのは仕方ねーだろ」
がしがしと頭をかきながら、素っ気なく言うシカマルさん
でも、素っ気なさの中にも優しさが含まれていて、頬が緩んだ
『そういえば、どうして起こしてくれなかったんですか?朝食の準備くらいならしましたよ』
「あ?
だってお前最近休みなかったし、昨日は昨日で疲れさせたし、今日くらいは寝かせてやろうかと思って」
『………お気遣いは嬉しいです
でも、起きて家にシカマルさんがいないと、なんて言うか……
不安になります…』
「!」
きゅ、と手の力が強くなる
実際、起きて家の中を見て回っても、誰もいないのは不安になった
だから家を出て探しに来たのだ
私の小さな行為に気付いたのか、彼はふっと笑った
「……お前から離れたりしねーよ、だから安心しろ
まぁ、さすがに何も言わないで出たのは悪かった
次からは気をつけるからよ」
『………ありがとう』
にこりと可愛らしく笑う彼女に、あぁ、こういう所が好きなんだな、と改めて実感した
その日は2人とも非番だったから、久しぶりにゆっくりと家で過ごした
明日からは、また中忍試験の仕事が待っている
***
それから数日後、中忍試験が始まった
第1の試験の監視員として会場に入り、テストを受ける受験生達を見ていた
その後、第1の試験は終了し、受験者はだいぶ減った
そしてすぐにシカマルさんの案内で、第2の試験会場である「死の森」に受験者達が集まった
「じゃ、今から第2の試験の説明をする
ーー虹色上忍」
『はい』
シカマルさんに名前を呼ばれ、受験者達の前に出る
その時、受験者の中に砂隠れの子供達がいた
彼女たちは砂隠れの忍者学校の生徒で、私も何度か授業をしたことがある
「あ!瑞乃さま!」
「ほんと?!」
男の子も女の子も、私に向かって手を振った
それに笑顔で振り返し、こほん、とひとつ咳払いをした
「………瑞乃”さま”って…、っぷ」
『………奈良上忍、笑ってないで準備してください』
「はいはい」
くく、と笑いながらシカマルさんが巻物の準備をしに小屋に入る
それを見て、ふう、と一息ついて、また説明を始めた
***
「瑞乃さまー!試験官だったんだね!」
「見ててくれ!絶対中忍になってみせるからよ!」
『うん、みんな頑張ってね、応援してる
あ、でも無茶はダメだよ?
私は医療班だけど、みんなだけじゃなく、受験生全員の怪我の手当しなきゃいけないんだ
君達だけを見てることは出来ないんだ、試験官だしね
分かった?』
「「「はーい!」」」
『よし、じゃあ係りの人の後についていこう
試験は過酷だよ、みんなで協力しないとね』
「え、でも、瑞乃さま達は最短記録でこの試験をクリアしたって有名だよ!
だったら俺たちでも大丈夫だろ!」
『……それ、は……』
目の前の彼を見て、言葉を濁す
確かに私たちは、今までの歴史の中で、最短記録でこの森をクリアした
でもそれは、我愛羅の力がほとんどで、協力なんてしなかったのだ
私にとって、あまり思い出したくない記憶だ
我愛羅を心の底から尊敬し、憧れてるこの子達は、小さい頃の我愛羅を、恐れられていた彼を知らない
だから、話す気にはならなかった
「虹色上忍、仕事だ」
『!』
どうしようかと言葉を探していると、シカマルさんが声をかけてきた
『じゃあね、みんな
森の真ん中の、塔で待ってるよ』
そう言って立ち上がり、3人の頭を順番に撫でていった
それに嬉しそうに笑うと、みんなは係の後を追って歩き出した
『……助かりました』
「………いや?ただ用があっただけだ
……………ほら、俺たちも行くぞ
いくら上忍と言えど、そんなぼんやりしてると怪我するぞ
ここは「死の森」なんだ、気を引き締めろ」
『………はい!』
アカリさんが時計を確認し、私たちに声をかけた
「先輩、あと30分で受験生達が入口に着きそうです
先発隊はそろそろ向かってください」
「分かった、アカリ達後発隊も気を付けろよ
よし、先発隊・医療部隊は出発だ!」
シカマルさんの掛け声で、先発隊は一斉に走り出す
私もそれを追いかけた
中忍ですら無傷では真ん中の塔に辿り着けないと言われるこの森では、試験官もなかなか命がけだ
それを肝に銘じ、そして、受験者たちの無事を願い
走り出した
***
数名が怪我を負ったが、大したことは無かった
とりあえずどの受験生よりも早く塔に辿り着けたことに安堵し、先に塔の中で待機していた忍者達と落ち合った
***
「瑞乃さん」
『!
アカリさん』
「……シカマル先輩は、ご一緒ではないんですか?」
『えぇ、他の方と会議中です』
「そうですか…
隣、いいですか?」
『もちろん、構いませんよ』
ふわりと綺麗に微笑み、横に長い椅子から腰を上げて端に動く瑞乃さん
空色の髪がはらりと揺れるのを見て、綺麗だな、と感じた
「……カンタから聞きました
瑞乃さんは、シカマル先輩とお付き合いされてるんですよね」
『はい、そうですよ』
「いつからなんですか?」
『いつから…、5年ほど前からでしょうか』
「え…、5年?」
はい、と優しく笑う瑞乃さん
その笑顔を見つつ、私は驚愕していた
5年前は、私やカンタはまだ下忍で、忍界大戦が起こった時期だ
そんな前から、二人は付き合っているのか
「忍界大戦のあと、ですか?」
『いえ、大戦の前ですよ』
「何で知り合って…」
『一時期任務で木の葉に滞在してて…、その前から面識はあったんですけどね
私とシカマルさんは同じ中忍試験を受験してて、第三の試験の予選で初めて会ったんです』
「……! 木の葉崩しの時の…」
『…………えぇ、その時にお会いしました』
「あ、すみません!
そういうつもりじゃなくてですね、あの、うっかり言っちゃって」
『気にしないでください、あれは完全に砂に非があります
それに、あの中忍試験に参加したのは木の葉崩しの作戦のうちだったんです』
「!!」
『木の葉崩し作戦の中心に、私はいたんです』
ふっと視線を外し、鬱蒼と生い茂る死の森に目をやる瑞乃さん
その表情はいつもの穏やかなそれとは違い、暗く見えた
この人はきっと、私よりも何倍も多くの危険な場面を潜り抜けてきたんだ
木の葉崩しにしろ、忍界大戦にしろ
自分よりも多くの事を体験した、本当に「大人」な人なんだと感じた
『…砂から中忍試験に参加したのは、今の風影とその兄姉、そして私
四人一組でした
私たちの目的は試験に受かる事ではなく、木の葉に侵入し、第三の試験まで勝ち進むこと
………第三の試験は多くの人が集まる、絶好の機会ですからね』
「………。」
無表情で淡々と話し出す瑞乃さんの横顔を、黙って見ていた
何となく、聞くべきだと思ったんだ
.
『「あ」』
昨夜の飲み会の翌日、ちょっとした任務を終えて火影様のもとへ向かっていると、前から瑞乃さんがやって来た
お互いに立ち止まり、挨拶をする
『カンタさん、昨日はありがとうございました』
そう言って深々とお辞儀をする彼女に慌てて俺もお礼を言う
そうすれば彼女は顔を上げて、ふわりと笑った
「俺の方こそ楽しかったッス!
まぁナルト先輩達の介抱はめんどくさかったけど………」
『ふふ、いつもはシカマルさんとヒナタちゃんと3人でやってるんですけど
今回はカンタさんとアカリさんがいて助かりました』
「あ、いつもは3人でやってんすか、大変ですね」
『まぁ……、でも楽しいので』
そう言って、また綺麗に微笑んだ瑞乃さん
この人はいつもこんな穏やかな笑顔を見せるけど、怒ったりするのかな、なんてぼんやり考えた
しばらく一緒に話しながら歩いていると、どうやら瑞乃さんはシカマル先輩を探しているらしかった
「一緒に来てないんですね」
『本来は私も休みなんですけどね、起きたらシカマルさんがいなくなってて
シカマルさんも今日は休みのはずなんですけど、どこ行ったのかな……』
「入れ違いになってたりして」
『……それは、困りますね』
はは、と苦笑いをする彼女に同じように笑う
すると、通りの向こうから、見慣れた猫背が見えてきた
「ーーー!
瑞乃?」
『あ』
「こんちわ、先輩」
シカマル先輩は瑞乃さんを見ると、すぐに駆け寄ってきた
隣にいた俺には今気付いたらしい
瑞乃さんしか見えてなかったのか
「………なんで外にいるんだお前」
『起きたらシカマルさんがいなかったので、探して歩いてたらカンタさんに会ったんです』
「俺は火影様のとこに行く途中なんで、ここで失礼します」
「あ?あぁ、悪いな」
『さよなら』
ふわりと微笑んだ瑞乃さんと、びみょうな顔のままのシカマル先輩に挨拶をし、先を急いだ
曲がり角を曲がる前に後ろを1度振り向いたが、後悔した
2人はしっかりと手を握って歩き出していた
***
『昨夜、私途中で寝ましたよね?』
「そうだな」
『部屋まで運ばせてしまってすいません、ありがとうございます』
「別に気にすんな、あんだけの人数の料理作ってもらってるんだし
疲れるのは仕方ねーだろ」
がしがしと頭をかきながら、素っ気なく言うシカマルさん
でも、素っ気なさの中にも優しさが含まれていて、頬が緩んだ
『そういえば、どうして起こしてくれなかったんですか?朝食の準備くらいならしましたよ』
「あ?
だってお前最近休みなかったし、昨日は昨日で疲れさせたし、今日くらいは寝かせてやろうかと思って」
『………お気遣いは嬉しいです
でも、起きて家にシカマルさんがいないと、なんて言うか……
不安になります…』
「!」
きゅ、と手の力が強くなる
実際、起きて家の中を見て回っても、誰もいないのは不安になった
だから家を出て探しに来たのだ
私の小さな行為に気付いたのか、彼はふっと笑った
「……お前から離れたりしねーよ、だから安心しろ
まぁ、さすがに何も言わないで出たのは悪かった
次からは気をつけるからよ」
『………ありがとう』
にこりと可愛らしく笑う彼女に、あぁ、こういう所が好きなんだな、と改めて実感した
その日は2人とも非番だったから、久しぶりにゆっくりと家で過ごした
明日からは、また中忍試験の仕事が待っている
***
それから数日後、中忍試験が始まった
第1の試験の監視員として会場に入り、テストを受ける受験生達を見ていた
その後、第1の試験は終了し、受験者はだいぶ減った
そしてすぐにシカマルさんの案内で、第2の試験会場である「死の森」に受験者達が集まった
「じゃ、今から第2の試験の説明をする
ーー虹色上忍」
『はい』
シカマルさんに名前を呼ばれ、受験者達の前に出る
その時、受験者の中に砂隠れの子供達がいた
彼女たちは砂隠れの忍者学校の生徒で、私も何度か授業をしたことがある
「あ!瑞乃さま!」
「ほんと?!」
男の子も女の子も、私に向かって手を振った
それに笑顔で振り返し、こほん、とひとつ咳払いをした
「………瑞乃”さま”って…、っぷ」
『………奈良上忍、笑ってないで準備してください』
「はいはい」
くく、と笑いながらシカマルさんが巻物の準備をしに小屋に入る
それを見て、ふう、と一息ついて、また説明を始めた
***
「瑞乃さまー!試験官だったんだね!」
「見ててくれ!絶対中忍になってみせるからよ!」
『うん、みんな頑張ってね、応援してる
あ、でも無茶はダメだよ?
私は医療班だけど、みんなだけじゃなく、受験生全員の怪我の手当しなきゃいけないんだ
君達だけを見てることは出来ないんだ、試験官だしね
分かった?』
「「「はーい!」」」
『よし、じゃあ係りの人の後についていこう
試験は過酷だよ、みんなで協力しないとね』
「え、でも、瑞乃さま達は最短記録でこの試験をクリアしたって有名だよ!
だったら俺たちでも大丈夫だろ!」
『……それ、は……』
目の前の彼を見て、言葉を濁す
確かに私たちは、今までの歴史の中で、最短記録でこの森をクリアした
でもそれは、我愛羅の力がほとんどで、協力なんてしなかったのだ
私にとって、あまり思い出したくない記憶だ
我愛羅を心の底から尊敬し、憧れてるこの子達は、小さい頃の我愛羅を、恐れられていた彼を知らない
だから、話す気にはならなかった
「虹色上忍、仕事だ」
『!』
どうしようかと言葉を探していると、シカマルさんが声をかけてきた
『じゃあね、みんな
森の真ん中の、塔で待ってるよ』
そう言って立ち上がり、3人の頭を順番に撫でていった
それに嬉しそうに笑うと、みんなは係の後を追って歩き出した
『……助かりました』
「………いや?ただ用があっただけだ
……………ほら、俺たちも行くぞ
いくら上忍と言えど、そんなぼんやりしてると怪我するぞ
ここは「死の森」なんだ、気を引き締めろ」
『………はい!』
アカリさんが時計を確認し、私たちに声をかけた
「先輩、あと30分で受験生達が入口に着きそうです
先発隊はそろそろ向かってください」
「分かった、アカリ達後発隊も気を付けろよ
よし、先発隊・医療部隊は出発だ!」
シカマルさんの掛け声で、先発隊は一斉に走り出す
私もそれを追いかけた
中忍ですら無傷では真ん中の塔に辿り着けないと言われるこの森では、試験官もなかなか命がけだ
それを肝に銘じ、そして、受験者たちの無事を願い
走り出した
***
数名が怪我を負ったが、大したことは無かった
とりあえずどの受験生よりも早く塔に辿り着けたことに安堵し、先に塔の中で待機していた忍者達と落ち合った
***
「瑞乃さん」
『!
アカリさん』
「……シカマル先輩は、ご一緒ではないんですか?」
『えぇ、他の方と会議中です』
「そうですか…
隣、いいですか?」
『もちろん、構いませんよ』
ふわりと綺麗に微笑み、横に長い椅子から腰を上げて端に動く瑞乃さん
空色の髪がはらりと揺れるのを見て、綺麗だな、と感じた
「……カンタから聞きました
瑞乃さんは、シカマル先輩とお付き合いされてるんですよね」
『はい、そうですよ』
「いつからなんですか?」
『いつから…、5年ほど前からでしょうか』
「え…、5年?」
はい、と優しく笑う瑞乃さん
その笑顔を見つつ、私は驚愕していた
5年前は、私やカンタはまだ下忍で、忍界大戦が起こった時期だ
そんな前から、二人は付き合っているのか
「忍界大戦のあと、ですか?」
『いえ、大戦の前ですよ』
「何で知り合って…」
『一時期任務で木の葉に滞在してて…、その前から面識はあったんですけどね
私とシカマルさんは同じ中忍試験を受験してて、第三の試験の予選で初めて会ったんです』
「……! 木の葉崩しの時の…」
『…………えぇ、その時にお会いしました』
「あ、すみません!
そういうつもりじゃなくてですね、あの、うっかり言っちゃって」
『気にしないでください、あれは完全に砂に非があります
それに、あの中忍試験に参加したのは木の葉崩しの作戦のうちだったんです』
「!!」
『木の葉崩し作戦の中心に、私はいたんです』
ふっと視線を外し、鬱蒼と生い茂る死の森に目をやる瑞乃さん
その表情はいつもの穏やかなそれとは違い、暗く見えた
この人はきっと、私よりも何倍も多くの危険な場面を潜り抜けてきたんだ
木の葉崩しにしろ、忍界大戦にしろ
自分よりも多くの事を体験した、本当に「大人」な人なんだと感じた
『…砂から中忍試験に参加したのは、今の風影とその兄姉、そして私
四人一組でした
私たちの目的は試験に受かる事ではなく、木の葉に侵入し、第三の試験まで勝ち進むこと
………第三の試験は多くの人が集まる、絶好の機会ですからね』
「………。」
無表情で淡々と話し出す瑞乃さんの横顔を、黙って見ていた
何となく、聞くべきだと思ったんだ
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