失恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シカマル先輩が去っていく、俺はそれを呆然と見ていた
カン「………嘘だぁ…」
イノ「シカマルのあんな姿、見たことないでしょー?
瑞乃には弱いのよ」
サク「見ていて楽しいわよ
───あ、そうだカンタ」
サクラ先輩がぽん、と手を叩く
何だとそちらに顔を向けると、先輩らは何やら耳打ちをして話を始めた
カン「?」
サク「今晩ね、シカマルの家で瑞乃のおかえり会やるのよ
ヨシノさんは出かけてていないけど、私達の好きにしていいって許可はもらってるし
もう毎年の恒例行事ね
そこにカンタも来たら?」
へ?と俺が間抜けな声を出すと、いの先輩も同じように勧めてきた
イノ「そーね、いつも同じメンツじゃつまらないわ
カンタも来なさいよ!」
カン「えー…、先輩ら酒飲みますよね……
その介抱が俺だけとか無理っす」
イノ「ならアカリ連れてきなさいよ、あの子にも介抱手伝わせればいいわ!
そういうのやってくれる子だし?」
カン「それはそれで話がこじれる…」
サク「じゃ、今晩6時にシカマルの家ね
さ、そろそろ昼休みもお終いだし、戻るわね」
カン「いや、まだ行くとは言ってな「じゃー、また後でね、カンタ」
………はぁ」
意気揚々と病院内に入っていった先輩らを見て、大きなため息をついた
カン「………明日は非番だったよな」
こりゃ、明日は何も出来ないな
半ば諦めの気持ちを込めつつ、また大きなため息をついた
***
「「「「カンパ~~~イ!!!!」」」」
シカ「………悪いなカンタ、アカリ。巻き込んで」
カン「ははは……」
アカ「私は全然構いませんよ、シカマル先輩のお手伝いが出来て嬉しいですから!」
夜、約束通りシカマル先輩の家に行けば、すでに出来上がっている先輩ら数人と、そんな先輩らを介抱する他の先輩達
言ってしまえばカオスな状況になっていた
そんな中でもアカリはシカマル先輩に熱烈なアタックをしていて、事情を知っている俺としては瑞乃さんが気になった
『あ、いらっしゃい。すみません、ごちゃごちゃしてて』
アカ「………どうもー」
カン「(アカリ敵対心むき出しだな)」
シカマル先輩と話していた俺達のもとに現れたのは、この会の主賓であるはずの瑞乃さんだった
彼女はエプロンをしていて、料理係をしているようだった
『とにかく座ってください、すぐに料理できますから』
そうふわりと笑い、すぐにキッチンに消えた瑞乃さん
その後をシカマル先輩がすぐに追いかけ、一緒にキッチンで何やら話していた
アカリは入り込むタイミングを見失ったらしく、大人しく席に座った
それからはナルト先輩やキバ先輩に絡まれたりと大変だったが、瑞乃さんが作ってくれた料理はどれも美味しかった
それはアカリも思ったようで、純粋に料理のことを聞きに瑞乃さんにしきりに話しかけていた
『──…で、その時はアクを取り除くのを気をつけてやれば……』
アカ「なるほど!参考になります!」
2人が料理の話で盛り上がる中、俺とシカマル先輩、ヒナタ先輩などの正常組は、泥酔してリビングの床で寝始めた先輩らを布団に運んでいた
こんなことは毎年のことらしく、シカマル先輩もヒナタ先輩も慣れた様子で先輩達を大広間に敷かれた布団の上に運んでいた
アカ「あ、シカマル先輩!」
『!
大丈夫ですか?』
シカ「適当に布団の上にブン投げた」
アカ「ならシカマル先輩も飲みますか?
全然飲めてないですよね!」
シカ「あぁ……、そうすっかな」
はい!と嬉しそうに返事をすると、アカリはシカマル先輩の隣に座り、手酌を始めた
その少し離れたところで、瑞乃さんはヒナタ先輩と静かにおしゃべりを始めていた
カン「!
(瑞乃さん……、シカマル先輩のこと何回か見てるな)」
そりゃそうか、見知らぬ女が親しげに先輩に近寄ってんだから
彼女なら気になるよな
***
ヒナ「あ……、シカマル君、瑞乃ちゃんが……」
シカ「え?」
お手洗いから戻ったヒナタ先輩がシカマル先輩に声を掛けた
俺やアカリもそれにならって瑞乃さんを見ると、彼女はテーブルの机に突っ伏して眠っていた
ヒナ「……どうしよう」
カン「俺が部屋に運びましょうか、シカマル先輩お酒飲んだし」
そう言って俺は立ち上がり、瑞乃さんの肩に手を置いた
そしたら
───バシッ
カン「───……え、?」
アカ「………シカマル先輩?」
肩に置いた俺の手は、すぐにシカマル先輩にはじかれた
シカ「………悪い
瑞乃は俺が運ぶから、お前らはここにいろ」
カン「………は、い」
アカ「………。」
シカマル先輩はわずかに眉をひそめてそう言うと、瑞乃さんを横抱きにした
いの先輩やサクラ先輩には肩を貸すだけだったのに、瑞乃さんの時は優しさに満ちていた
すごく大切なモノを扱うような、そんな優しさだ
そしてシカマル先輩は瑞乃さんを抱いたまま歩き出し、他の先輩達がいる大広間とは違う場所に向かった
アカ「………ヒナタ先輩、」
ヒナ「うん?」
アカ「……瑞乃さんって…」
アカリはそこまで言うと、うつむいた
きっと、さっきのシカマル先輩の態度で気付いたのだろう
だが、はっきりと言葉には出来ないようだ
アカリの恋心を知らないヒナタ先輩は、あぁ、と言うと言葉を続けた
ヒナ「瑞乃ちゃんはね、今シカマル君の家に滞在してるの
だから、多分その部屋に運んだんじゃないかな
ちょっとお酒飲んだみたいだし、大丈夫かな瑞乃ちゃん…」
ふむ、と顎に手を当てて心配そうな顔をするヒナタ先輩
ここからではアカリの顔色は伺えない
アカ「………私、お水持っていきますね
少し外します」
ヒナ「あ、ありがとうアカリちゃん」
いえ、と背中で言うと、アカリは水を持ってシカマル先輩の後を追った
今追い掛けるのは、アカリにとって良い事ではないな、と漠然と感じた
***
「──…おい瑞乃、大丈夫か?」
『……ん、……。』
「ほら、部屋着いたぞ
寝るならベッドで寝ろ」
瑞乃をベッドに降ろすと、ベッドがギシ、と鳴った
意識がはっきりしていないのか、んー、とか何とか言っている
「もう寝ろ、俺は戻るからな」
『や……、待っ、て…』
「!」
ベッドから離れようとしたが、それを彼女が阻んだ
瑞乃は俺の服の袖を掴み、ぼんやりとしたまま何か言っている
「……どうした?」
ベッド脇に跪き、瑞乃の顔を見る
酒の影響からか、目は潤んでいた
「……瑞乃?」
『行かないで………』
「っ、な…」
するりと腕を伸ばしてきて、きゅっと首元に抱きつく瑞乃
彼女らしくない行動に俺が戸惑っていると、彼女は耳元でつぶやいた
『…や……、アカリ、さ…のところに……行かないで……』
「え?」
ぎゅう、と強く抱きつくと、そのまま何も言わなくなった
「………ヤキモチ?」
***
「……………。」
瑞乃さんにお水を持っていくと、部屋の扉がわずかに開いていた
シカマル先輩がまだ中にいるのか、と中を覗き、私は言葉を失った
瑞乃さんがシカマル先輩に抱きついていたのだ
そしてシカマル先輩はそれを拒むことなく、優しく瑞乃さんの頭を撫でていた
「……。(あぁ……、なんだ、そうなんだ………)」
あの2人は、お互いを好いているんだ
なんだ、何も知らなかったのは私だけなのか
今までのアタックは、何も意味を成さなかったんだ
だって、シカマル先輩にはもういたんだから、好きな人が
私なんかよりずっと知的で、優秀で、笑った顔が可愛いくて、空色の綺麗な髪のあの人がいたんだ
「…………勝てるわけないじゃん」
水を渡すことはせずに、私は静かに扉を閉めて、来た道を戻った
最後に見えたのは
薄暗い部屋の中で
シカマル先輩が眠っている瑞乃さんにキスをしている場面だった
***
アカ「帰ります」
ヒナ「え、でも、もうこんな時間だよ?
1人じゃ危ないよ…」
カン「………俺が送ります
じゃ、お先に失礼します。先輩らに、ありがとうございました、って伝えといてください」
ヒナ「あ……、カンタ君も帰るなら大丈夫だね
分かった、伝えとくね」
アカ「さよなら」
アカリはにこりと微笑み、すぐに玄関に向かった
何か見たんだな、と分かった
***
「アカリ」
「何よ」
「フラれたのか」
「そうよ」
「あの2人、前々から付き合ってんだと
さっき聞いた」
「………あっそ」
暗い夜道を2人並んで歩く
隣のアカリは、特に表情を変えることは無かった
「………俺さ、」
「なに」
「瑞乃さんに一目惚れしてたのかも」
「…………は?」
「だから俺もさっきフラれた
いや、付き合ってるって聞いたのは何日か前だから、その時フラれた」
「ちょちょちょ、カンタ、え、マジ?」
「あぁ
だって瑞乃さん可愛くて綺麗じゃん
女性として、魅力的だと思う」
「そりゃ私も素敵な人だと思うけど……」
「でもよ」
俺が力強く言葉を遮ると、アカリは黙って俺の方を向いた
「……相手がシカマル先輩だから、かな
なんか、フラれても仕方ないかなって思う
あの2人、すっげぇお似合いじゃん」
「……………。」
「お前も思ったんだろ?
だからいきなり「帰る」って言った、違うか?」
俺がアカリに目をやれば、アカリは目をそらした
「………悔しいよ、でも、あの人なら負けても仕方ないかなって思った
私は、シカマル先輩のあんな優しい目、見たことが無かった
でも、瑞乃さんを見る目は全部優しくて……
「あぁ、本当にこの人のことが好きなんだな」って、嫌でも分かったわ」
そこまで言うと、アカリは口を閉ざした
俺は何も言わず、彼女の頭をぽんぽんと撫でた
俺の一目惚れと、アカリの長年の片思いは
あっさりと終わりを告げたのだ
でも、めちゃくちゃ悔しい、とかそんなのは無い
………きっと、あの2人が純粋に思い合ってるのが伝わったからだろう
「……素敵な人だったな」
「………そうね」
ぽつりとつぶやいたきり、2人とも口を閉ざした
.