シカマル先輩
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「――…つっても、俺初めてなんでよく分からないんです
すんません」
『いえ、大丈夫ですよ。私は毎年やっているので分かっています
とりあえず、この資料の整理を一緒にやってくれますか?
次の会議に必要なので』
「うっす」
瑞乃さんの向かいの席に座り、渡されたたくさんの資料を仕分け、軽く目を通し、まとめていく
さすがに各地から参加者が集まるだけあって、いちいち資料の量が桁違いに多過ぎる
シカマル先輩はこんなのを毎年やっていたのかと思うと感心する、だがそれと同時に意外だった
「あの」
『はい』
「瑞乃さんはいつもシカマル先輩と一緒に仕事をされてたんですよね?まぁ今は俺がやってますけど
コレも本来だったらシカマル先輩がやるんスか?」
『はい、そうですよ』
「…………意外……」
『はい?』
確かにシカマル先輩はデスクワークが得意だ、頭もいいし、この仕事を任されるのも分かる
だが、この仕事は女性と2人きりだ
すでに数時間経過しているが、瑞乃さんは(当たり前だが)仕事に集中していて特に会話はない
ぶっちゃけ居心地が悪い
女性があまり得意ではないシカマル先輩が、この人と2人きりで何時間もこんなことをしているのが意外だった
『シカマルさんが私と2人きりでずーっと黙って仕事をしているのが意外……、ですか?』
「えっ、あ、いや、その」
『ふふ、そうですよね。本当に嫌だったら綱手様に言ってますよね
確かに楽しい仕事ではありませんが、時折言葉を交わしますよ?
一緒にご飯も行きますし』
「え?シカマル先輩が?!」
意外過ぎる
サクラ先輩やいの先輩といった同期の方と行くのですら渋るシカマル先輩が、瑞乃さんと一緒にご飯に行くだなんて
『…あ、もうこんな時間ですか
カンタさん、ご飯食べに行きませんか?』
「え、あ、行きます」
俺がどもりながらも返事をすると、瑞乃さんはふわりと柔らかな笑顔を浮かべた
***
『カンタさんから見たシカマルさんって、どんな感じなんですか?』
「………うーん」
一緒に入った定食屋で適当に注文をし、品物が来るまでの時間を持て余していた
すると瑞乃さんからシカマル先輩のことを聞かれた
………どんな感じか……
「……やっぱ、カッコいい先輩ですよ
頭はいいし、強いし、優秀だし
シカマル先輩と一緒に任務に行くと、やはり色々なことを先輩から学べます
先輩には結構可愛がってもらってます」
『そうですか、カッコいい先輩かぁ……ふふ
他にはありますか?性格とか』
「性格っつったら、やっぱめんどくさがりッスよね
でも最後は何だかんだかまってくれるから、ナルト先輩とかキバ先輩に絡まれてる」
『あ、それは分かります。何だかんだ優しいですよね』
「優しいですよね
だから女子の人気も高いんスよ
俺の同期とかからわりと人気があるんです」
『…………へー、それは初耳でした』
「それに、奈良一族の次期族長候補ナンバー1ですからね
狙ってる女は少なくないんじゃないですか?
現に浮いた話を聞いたことないし、女子は苦手っぽいし
あぁ、でも、この間誰かをフッたって話聞いたな…
―――お、来た」
料理が運ばれてきたから会話は一時中断された
ふと瑞乃さんの顔を見ると、先ほどより少し眉が寄っていた
「………瑞乃さん?どうしたんすか?」
『あ、いえ
シカマルさん、フッたんですか?どうして?』
「え、理由まではさすがに……
女子が苦手だからじゃないッスか?」
『…………。』
む、と口を尖らせた瑞乃さん
彼女が子供っぽい仕草をしたことに驚き思わず凝視したら、首を傾げられた
無意識だったのか
『どうしました?』
「いや、それよりさっさと食いましょう!
まだ仕事もありますし、シカマル先輩に仕事残したら後でいじめられます」
『ふふ、そうですね』
口元に手を添え、くすくすと小さく笑う瑞乃さん
その時ふと、綺麗な人だな、と思った
***
「―――…終わったー…」
『お疲れ様でした、お茶どうぞ』
「あ、ありがとうございます」
山のようにあった資料をまとめ終え、ぐーっと背伸びをする
すると、いつの間にか先に仕事を終えていた瑞乃さんがお茶をくれた
『さて、もう夕方になってしまいましたね
今日はこの辺で終わりましょうか』
「あ、了解っす
送りますよ」
『ありがとうございます』
作業に使った部屋を片付け、瑞乃さんとともに部屋を出る
彼女は確か、いの先輩の家に泊まっていたはずだ
***
瑞乃さんを送るために2人で木の葉を歩いていたら、彼女は少し大通りから離れた場所に足を進めていった
確かこっちはあの先輩の自宅近く
頭にハテナマークが飛びかう
『―――……あ、ここまでで大丈夫です
ありがとうございました、カンタさん』
「えっ?いや、いの先輩の家はまだ先ですよ?」
『あ、それは昨夜だけお世話になったんです』
「へっ?じゃあどこに滞在するんすか?」
『それは―――…』
瑞乃さんがそこまで言った時、ふいに俺の後ろに目を向けた
そして、ふわりと花が咲いたように綺麗に笑ったのだ
『……お久しぶりです、シカマルさん』
そこまで彼女が言って、やっと俺の後ろの気配に気付いた
慌てて後ろを振り向けば、そこには任務から帰ってきたばかりらしいシカマル先輩がいた
「………瑞乃、敬語はやめろって何度言えばいいんだよ」
『もうクセなので』
「やめろっつの」
『慣れたらやめます』
「………めんどくせぇ」
頭をかくシカマル先輩に、瑞乃さんはくすくすと笑う
俺達の近くまで歩み寄ってきたシカマル先輩は、そのまま和やかな雰囲気で瑞乃さんと話しだした
その2人の横で、俺はさらにハテナマークを飛び交わせていた
「……………え、え?
あの、シカマル先輩?」
「あ?
……あ、わりーなカンタ。俺の代わりに仕事やってくれて
めんどくさかっただろ?」
「いや、それは全然、あの、瑞乃さんが教えてくれたんで…
―――じゃなくて!」
『「?」』
突然大声を出した俺に、2人は不思議そうに顔を合わせた
いやいやいやいや、待てよ、落ち着け俺
あのシカマル先輩が、あんな優しい顔で女の人と話してるなんて見たことがねぇ
俺の同期でシカマル先輩ねらいの女がいるが、アイツと話してる時とは雲泥の差だ
なんかこう……、ふわふわした雰囲気が目の前の2人にはある
サクラ先輩やいの先輩の話から、まさかとは思っていたが……
そのまさかなのか?
「あのー……、お二人って、どういう関係で…?
ただの仕事仲間、ですよね…?」
俺が恐る恐る尋ねると、シカマル先輩は思い切り顔をしかめた
あ、良かった、違うんだ
………そう思ったが
『私達はお付き合いしています』
出会ってから1日しか経っていないが、今までで一番綺麗な笑顔を浮かべた瑞乃さんは、はっきりとそう口にしたのだ
その瞬間、俺は大声を上げた
***
「うるっせーぞカンタ」
「すんません……
その、あまりの衝撃で………」
『すみません、シカマルさんがいない時に言うのは気が引けたので…』
「つーか、てっきりいのやサクラがバラしてるかと思ってた」
「“本人がいないところじゃ言えない”って、教えて頂けませんでした」
「へー、アイツらならべらべら話すかと思ってた」
『失礼ですよ、シカマルさん』
瑞乃さんが苦笑いを浮かべる
それにシカマル先輩はハイハイ、と返事をした
確かに、こうして見ると、男女の関係っぽい雰囲気しかない
でも信じられねぇ、明日いの先輩達に聞こう
「―――うし、じゃあまた明日だな
カンタ、お疲れさん。お前の仕事は俺が引き継ぐから」
「あ、了解っす。お願いします」
『お疲れ様でした
短い期間でしたけど、楽しかったですよ』
「いや、俺も楽しかったっす。仕事はめんどくさかったけど」
「ホントめんどくせぇよな」
『シカマルさん!』
「あーハイハイ」
ひらひらと手を振るシカマル先輩に、瑞乃さんはため息をもらした
「じゃー行くか」
『はい
それではカンタさん、お疲れ様でした』
「あ、お疲れっした」
『またお会いする機会はあると思うので、その時はお願いします』
「うす、じゃあ失礼します」
ぺこりと頭を下げ、俺は自宅に向けて歩き出す
そう言えば、立ち話をしていた場所は奈良家の敷地のすぐ横だ
ふと後ろを振り向けば、シカマル先輩と瑞乃さんは奈良家の中へ入っていった
彼女がここまで来たのは、シカマル先輩家に泊まるからなのか?
それってもう親公認?結婚前提?
「………マジかよ……………」
女が苦手で有名なシカマル先輩が好きになった人
虹色瑞乃さん
彼女は砂の忍なのに、どうして付き合うことになったのか
シカマル先輩は中忍の時から、この中忍試験の係を務めている
瑞乃さんが中忍試験の係を務めるようになったのは、今から2年ほど前からだそうだ
ならば、2人は2年前かそれ以降から付き合っているのだろうか
「………やっぱいの先輩だな」
***
「あら、瑞乃ちゃんいらっしゃい!
久しぶりね~!」
『お久しぶりです、またお邪魔させてもらいます』
「いーのよいーのよ!
いつかこうして一緒に住むかもしれないし、その予行練習よ!」
「バカ、気ぃはえーよ
お前もいちいち照れてるな、だから遊ばれるんだよ」
『……はい』
頬を赤らめる瑞乃に呆れていると、ヨシノは2人に部屋へ行くよう促した
「夕飯の買い物行ってくるから、2人はゆっくりしてなさい
シカマル!お茶くらいは出しなさいよ!」
「わーってるよめんどくせぇ」
『そんな、お構い無く』
「じゃ、部屋行くか
カンタの仕事状況とか、色々確認しておきたいし」
くい、と指先を掴まれ、シカマルさんに引っ張られる
後ろでヨシノさんの「ごゆっくり」という声が聞こえた
***
シカマルさんの部屋に案内される
といっても、もう何度も来ているからこの家のことはだいたい分かっているのだが
部屋の扉を開け、先に入るよう促すシカマルさんにお礼を言い、中に足を踏み入れる
ぱたん、と扉が閉まる音がした直後、後ろから抱き締められた
『っ…
………シカマルさん?』
「敬語、やめろっつの」
『……どうしたの?』
やっと砕けた口調になった瑞乃
そんな彼女をぎゅっと抱き締め、はー、と息を吐いた
「任務が長引かなけりゃ、お前の迎えに行けた」
『それは…、仕方ないことだよ
任務は全うしなきゃ』
「わーってる、けど
お前に一番に会うのは、俺が良かった」
どき、と心臓が跳ねる
一度それを意識してしまえば、速まる鼓動を押さえる手立てはない
『……私も、シカマルさんに迎えに来てほしかった
カンタさんもお優しい方でしたけどね』
「…………だから嫌だったんだよ」
『え?』
ぎゅっと抱き締める力が強まる
首を少し後ろに向け、シカマルさんの顔を伺う
シカマルさんは私の肩に顔を埋めているので、表情は伺えなかった
『どうして?』
「カンタは男だろ」
『………え
ヤキモチですか?カンタさんに?』
「うるっせーバカ」
『いやいや、私に当たらないでくださいよ
でも嬉しいです』
「うっせー」
ぺし、と私の頭を軽く叩くと、シカマルさんは腕を解いた
『シカマルさん』
「あ?
────…!」
ぐ、と背伸びをしてシカマルさんに顔を近付ける
そのまま目を閉じてシカマルさんに口付けると、彼は驚いて目を見開いた
「………そーゆーのは男からするモンだろ」
『いいじゃないですか、1年ぶりなんですし』
「………やり直し」
『!、ん』
頭の後ろに手を回し、空色の髪の毛に指を通しながら、何度も何度も角度を変えてキスをした
その時間はまるで、会えなかった1年間の空白を埋めるかのようだった
「……また敬語になってる」
『あ』
「タメ口にしなきゃ返事しねぇからな」
『?!』
.