二人の出す結論
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
眩しさに目を開ける
するとそこは見知らぬ部屋で、慌てて身体を起こした
「………………あぁ、そうか」
ここは砂隠れの里の中で、瑞乃の実家だ
ガランとした一軒家に、瑞乃はたった一人で住んでいる
忍界大戦で、彼女のご両親は亡くなったのだ
『………ん…』
「!」
ふと横に目をやると、自分が飛び起きたせいで布団がズレたのか、瑞乃の肩があらわになる
一糸纏わぬ姿のままの彼女に、昨夜のことが思い出される
「……。」
布団をかけ直し、彼女の肌を覆う
しばらくは起きないだろうと思い、彼女を起こさないように寝床を抜け出し、床に落ちている服を拾って身につける
しんと静まり返る瑞乃の実家は掃除が行き届いており、ほどよく生活感がある
リビングに入ると、いくつかの写真立てが棚の上に置いてあるのが見えた
瑞乃と、我愛羅たち三姉弟の四人で写る写真
瑞乃と、おそらく両親だろうと思われる、初老の男女との写真
年老いた女性との写真
どの写真も全て、彼女は花のような笑顔を咲かせ、幸せそうだ
その棚の上に、蓋が開いたままの小物入れがあった
「………あ、」
小物入れの一番上に、見覚えのある指輪が置いてある
大事そうに布の上に置かれたそれは、自分が以前彼女に贈ったものだ
婚約指輪として、あの夕日が見える特等席で、彼女に贈ったのだ
『あ……、』
「!」
指輪をじっと見ていると、ぺた、という足音がして、瑞乃が姿を現した
床に落ちていた服を慌てて着たのか、少しはだけていた
「………おはよう」
『!
お、おはよう、ございます…
あの、ご飯、つくりますね
シカマルさんはシャワー浴びてきてください、タオルとか出しておきますから』
顔を真っ赤にさせ、逃げるように台所に入る瑞乃
そのまま慌ただしくガチャガチャと朝ごはんの準備を始める背中に、手を伸ばしていた
『!!』
ふわりと背中から優しく包まれ、どき、と胸が高鳴った
『あ、あの、シカマルさん?』
彼は背中から私を抱きしめたまま、何も言わない
ぎゅう、と腕の力を強くするだけだ
「………身体、平気か?」
『あ…、はい、大丈夫です』
「無理させて悪かった」
こつん、とシカマルさんが私の肩に額を乗せる
いつもは結われてる髪が下ろされ、さら、と流れた
「……俺を選んでくれ」
『!』
ぎゅう、と抱きしめる力を強め、シカマルさんがそう呟いた
どこか弱気な、小さい声だった
『……私はシカマルさんと一緒にいたい
昔からその気持ちに変わりはありません』
はっきりと告げれば、シカマルさんは腕をほどき、私の目を見つめる
それを真っ直ぐに見つめ返した
『愛しています
誰よりも、あなたのことを』
そう告げ終えるのと同時に、唇をふさがれる
目を閉じて、彼の背中に腕を回した
「瑞乃
俺と結婚してくれませんか」
切れ長の目が、私に向けられる
真剣な表情の彼に、私の答えは決まりきっていた
『はい、もちろんです…!』
他の誰よりも大切な人が、私とこの先も一緒にいて欲しいと願うのなら
断る理由なんてどこにもない
私も同じ気持ちなのだから
愛してる人と一緒になることに、なんの障壁があろうというのか
***
「__…そうか、お前たちの話は分かった」
『………ごめんなさい、我愛羅
あなたの足を引っ張ることになるかもしれないけど…』
「瑞乃が謝ることはない
それに元より、俺たちは全員こうなる事を望んでいた」
『え………』
我愛羅はふ、と小さく口元をゆるめる
ここは風影の部屋で、室内には我愛羅と私しかいない
シカマルさんは木の葉の忍びたちと合流するために、先ほど家を出た
「ナイ殿がお前を呼んでいる
行ってこい」
『……。』
我愛羅は優しく微笑むと、ナイ殿が待っている場所を伝える
分かった、と返事をして、彼に背中を向ける
その背中に、我愛羅が声をかける
「良かったな」
『!』
ぐ、と込み上げるものがあった
だがそれが雫となって溢れないように必死に唇を引き締め、震えながら答えた
『ありがとう、我愛羅』
*
「あ、シカマル先輩
昨日の夜どこ行ってたんすか、探したんですよ」
瑞乃に聞いた場所に行くと、木の葉の小隊と合流できた
カンタが俺に気付き、ため息混じりでそう声をかけてくる
「あー…、悪い」
「………………ま、良いですけど
テマリさん?て方に聞いてましたから」
「テマリに?なんて」
「え?シカマル先輩は瑞乃さんのところに行った、って
瑞乃さんと一緒にいたんですよね?」
「あぁ…、そうだ
そうか、テマリが…」
昨日、病院でテマリに瑞乃の居場所を聞いて、すぐに墓地に向かったんだった
一応、礼を言っておこうとテマリの居場所を聞こうとすると、聞き慣れた声がした
「シカマル」
「!
テマリ、ちょうど良かった、アンタのこと探そうと…「ナイ殿がお呼びだ」
!!」
ナイ
その名前に少し表情を曇らせる
「……今回の合同任務の最終的な打ち合わせは数刻後に予定している
それまで、木の葉のみなは砂隠れでゆっくりしてくれ
木の葉ほどではないが、面白いものも色々とある」
先日の任務で捕らえた賊は、砂隠れの堅牢な牢獄に入れられている
任務自体は成功だ
あとは砂と木の葉で現状確認をし、今後の動きを決め、解散
俺たちは木の葉に帰還し、報告をすれば全て終わる
だがその前に、俺には片づけることがあるということか
「……シカマル、案内する
着いてこい」
「……分かった」
どこか神妙な面持ちのテマリの後を追い、その場から歩き出した
*
「で、瑞乃と話せたのか」
歩き出してすぐ、テマリはこちらに背を向けたまま尋ねてくる
それに、まあな、と返す
「………お前たちの出した結論を、聞いてもいいか」
テマリは足を止め、俺を振り返った
どこか心配そうな眼差しに、ふ、と笑う
「アイツ、本当に愛されてるんだな」
「は?」
「我愛羅もテマリも、カンクロウも、みんな瑞乃のことを考えてる
良い仲間に恵まれてんだな」
「……当然だ。私たちは同じチーム、小さい頃から苦楽を共にした仲間だ
瑞乃も、私たち姉弟の一員のようなものなんだ」
テマリの真剣な眼差しに変わりはなく、その眼差しのまま、空を見上げた
「私たちは瑞乃が大切だ
だからアイツの幸せを願っている
そしてアイツを幸せにできるのは
お前だと、思ってる」
「……。」
「ナイのところに行く前に、聞かせてくれ
お前たちの出した結論を」
さあ、と風が吹き抜ける
雲一つない晴天は、アイツの髪を連想させた
「俺から瑞乃に結婚を申し込んだ」
「!!」
「返事も、もらえた
それを今から伝えに行く」
「返事の内容は…」
不安げなテマリに思わず笑う
笑われたことに戸惑っているようだが、彼女は真っ直ぐに俺を見上げている
「もちろん、はい、って言ってもらえたさ」
「!!
そうか…!決めたんだな…!」
心の底から安堵した様子のテマリを見て、改めて瑞乃のことを想う
天秤にかけられた側同士、同じ心配をしていたようだ
「教えてくれてありがとう
瑞乃は、ちゃんと自分の心と向き合ったんだな
本当に良かった」
「あぁ、心配かけたな」
「全くだ
なら、あとは最後の関門か」
「………。」
歩みを進めること数分
遠くに大きな屋敷が見えてきた
「あれがナイの別宅だ
あそこでナイが待っている」
行ってこい、とテマリに送り出される
「瑞乃を頼む」
最後にそれだけ言うと、テマリは来た道を戻っていった
「………よし」
少しの深呼吸をして、扉の前に立つ
門番らしき男たちに声をかけると、扉を開けてくれた
.
1/1ページ