二人の気持ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
テマリは自分の顔が強張るのをはっきり感じていた
シカマルは、瑞乃がナイに結婚を申し込まれている事は知らないはずだ
だから、瑞乃に言われたように何も言っていない
なのに、まさかナイが直々にシカマルに会いに来るなんて、と驚いていた
「奈良上忍が砂に来ていると聞いてね、少し話でもと思って来てみたのだ
怪我は大丈夫かい?」
「……こんなの、かすり傷ですから」
「そうか…
そう言えば、瑞乃殿は優秀な医療忍者なのだろう?後で診てもらうといい」
「……。」
ナイが何故俺に会いに来たのか、俺はよく分からなかった
だが、ナイを見てすぐに気付いた
瑞乃に結婚を申し込んだのはナイだと
年齢的にも合っているし、将来有望なご子息
さらには彼女と接点もある
ナイに間違いなかった
「あの、俺に用でも?」
耐えきれずにそう切り出せば、ナイはぽかんと拍子抜けした顔をしたのちに、ふ、と笑った
「用があるのはそちらではないのか?
自分の恋人に結婚を申し込んだ男が目の前にいるのに」
「「!」」
テマリが息を飲んだのが分かった
やはり、テマリは知っていたのだ
「少し二人で話をしようか」
にこりと温和な笑顔を浮かべるナイに対し、俺は顔をしかめるだけだった
***
テマリがその場を後にし、ナイと二人になる
やけに鼓動が耳についた
「瑞乃殿とは下忍からの付き合いだと聞いたが、ずっと親交があったのかな?」
「…出会ったのは、中忍試験を受けた時です。同じ試験を瑞乃も受けていて、その時に
その後は音沙汰は無かったんすけど、瑞乃が木の葉に任務で滞在することになった時に再会して…
その後、付き合い始めました」
「ほう
その頃だと、まだ砂も木の葉もそこまで親交があった訳ではないのに…
それに、貴方の言う中忍試験は、木の葉崩しの事だろう?」
「……そう、すね」
「木の葉に甚大な被害を与えて、なおかつその作戦の中枢にいた瑞乃殿を、軽蔑しなかったのかい」
ナイの言葉に顔を上げる
そしてナイを見て、少し驚いた
あまりに真剣な目で、俺を見ていたからだ
「……確かに瑞乃は、木の葉崩しのために中忍試験を受けていました
けどあいつは、試験で戦った相手を手当てしたり、わざわざ家を訪ねて薬を渡したりしてました
……瑞乃がたとえ木の葉崩しに加担していたとしても、俺はあいつの優しさを知ってたから、軽蔑する訳ありません」
「……そうか」
ふ、とナイが笑う
何故笑うんだ、と眉を寄せた
ナイはひとしきり笑うと、穏やかな笑みを口元に浮かべたままシカマルを見た
「瑞乃殿があなたを好きになった理由が分かるよ」
「は?」
「あなたは、瑞乃殿をちゃんと見ているんだね」
「………。」
先に好きになったのは俺だ、ほとんど一目惚れだったから
それからずっと、瑞乃を見てた
あいつがどんな人間なのか、よく分かってるつもりだ
「瑞乃は、自分よりも他人の幸せを願うやつです
だから、我愛羅たちのために、あなたと結婚すると言うかもしれません」
「…そうなったら、あなたはどうする?」
「………俺は、瑞乃の気持ちを尊重したい
けど」
「!」
立ち上がり、ナイの目の前に立つ
ナイも真っ直ぐに見つめ返してきた
「………瑞乃を誰かに取られるのは、嫌だ」
「!」
ここに来るまで、何度も考えた
ナイとの結婚を選んだら俺はどうするのが正しいのか
なんて言えばいいのか
俺が別れを切り出すべきなのか
そんな事を何度も考えた
けど、やはり瑞乃の隣に俺以外の人間が並ぶのは、耐えられない
渡したくない
「………瑞乃殿も、あなたくらい自分の気持ちを正直に言ってくれても良いと思うのだがね」
「え?」
「忙しいところを邪魔したね
あなたの気持ちを聞いておきたかったんだ
すまなかった、私はそろそろ失礼させてもらうよ」
言うだけ言って、ナイが頭を下げてから病院から出ていく
去り際に見せた笑顔は優しくて、楽しげだった
「シカマル?」
ナイが出ていくのが見えたのか、テマリが慌てて戻ってきて、俺に声をかけてきた
それに俺は顔を上げ、テマリに向かって口を開いた
「瑞乃はどこにいる?」
俺の言葉にテマリは少し難しい顔を浮かべたが、やがて小さく「墓地だろう」と答えた
「瑞乃の両親と師匠の墓が里の外れにあるんだ
多分、そこにいる」
「分かった、行き方も教えてくれ」
「………ナイと何を話したのかは聞かないが、」
「!」
テマリが難しい顔のまま俺を見上げた
「瑞乃は自分よりも他人を優先する奴だ
今回もきっと、自分より我愛羅のことを考えて、本心を隠してる
……どうか、瑞乃を頼む」
「………分かってる」
ふ、と小さく笑い、墓地の場所を聞いてすぐに病院を後にした
歩いてる最中も胸のざわつきは収まることはなく、そして、どんな顔をすれば良いのかも分からないままだった
***
テマリに聞いた道を辿ると、人気の少ない広い場所に出た
墓標がいくつも並ぶその中で、2つの墓標のすぐそばに座り込む人の姿が見えた
鮮やかな空色の髪が、風に揺れていた
真っ直ぐにそちらに向かうが、彼女は顔を上げる気配がなく、表情を伺えない
顔を膝に埋め、微動だにしなかった
「……瑞乃」
少しだけ声が震えた
こんなにも彼女の名前を呼ぶのに躊躇したことはない
俺の声にぴくりと肩を揺らすと、恐る恐るといった様子で膝から顔を上げ、俺を見た
その目からは涙が流れていた
***
ザリ、と砂を踏む音が近くでした
そして聞こえてきた、愛おしい声
「瑞乃」
耳を疑った
ここに来るなんて思っていなかったから
恐る恐る顔を上げ、声がしたほうを見る
そこには間違いなく、彼が立っていた
『………どうしてここに…』
泣き続けたせいで声に疲れが出ているのが自分でも分かった
今、こんな状態で会いたくなかった
いや、会いたかった
でも、会いたくなかった
泣き疲れてうまく働かない頭では、それしか言葉が出てこなかった
だがすぐに、は、と息を飲んだ
『血が…!』
シカマルさんの任務服はよく見たらところどころ汚れていて、血が滲んだあとがある
手に絆創膏を貼っていたりと、明らかに負傷した後の姿だった
『怪我したんですか…!』
慌てて立ち上がり、砂を払うのも後にして彼のもとに駆け寄る
頬の傷に触れようとしたその瞬間、伸ばした手をシカマルさんに掴まれて、力強く抱き寄せられた
『…!』
ドキ、と心臓が跳ねる
シカマルさんの腕の中に包まれると、いつもなら嬉しさと気恥ずかしさが混ざってドキドキするのに、今はそんな気持ちになれなくて
代わって胸を占めるのは、罪悪感と後ろめたさだった
そんな思いを、シカマルさんが見逃すわけがなかった
***
涙を拭うのも忘れて、真っ先に俺の怪我の具合を気にする瑞乃
頬の傷に触れようとして伸ばしてきた手を掴み、ぐっと自分の胸に引き寄せた
何度瑞乃に触れても、瑞乃はいつも初心な反応をする
抱きしめれば恥ずかしそうに頬を赤く染めて、控えめに背中に腕を回す
けど今の瑞乃は、腕を回すどころか、戸惑っているように思えた
触れて欲しくない、と拒絶されているようだった
サァ、と乾いた風が吹き抜ける
シカマルさんは何かを言う訳でもなく、ただ私を強く抱き締めていた
「瑞乃…」
『!』
耳元で聞こえてきた声に、ドキ、と心臓が騒ぐ
懇願するような、彼らしくない弱々しい声だった
「……全部、聞いた」
『!!』
何を、なんて聞く必要もなかった
ナイ様のことを知っているんだとすぐに気付いた
「全部聞いて…、考えたんだ
俺は、お前が選んだ答えを尊重する」
『………それ、は』
ナイ様と結婚する道を選んでも良いの?
それは声になることはなく、ぐっと口をひき結んだ
「最初は、そう思ってた」
『……え』
「けど、お前を誰かに渡すなんて嫌だ
お前の隣に、俺じゃない男が立つなんて考えたくねぇ」
『………シカマル、さん…』
ぽろ、と涙がまたこぼれる
彼の言葉が、蓋をしていた私の気持ちを露わにさせた
『私っ、シカマルさん以外の人と結婚したく、ない…っ!
あなたじゃなきゃ…!』
ぼろぼろと溢れる涙はとどまることは無くて、視界を奪っていく
最後に見えたのは、優しく笑うシカマルさんの顔だった
暗くなった視界の中で、唇が重なったのが分かった
「お前の全部、俺にくれないか」
切ない声が耳に届く
いつもとは違う雰囲気と、その意味に鼓動が速まった
こく、と小さく頷いた私に、シカマルさんは優しく笑った
.
次回、もしかしたら裏表現が入るかも
注意してください
.