選ぶことで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大名からの政略結婚の申し込みに困惑する瑞乃を気遣い、テマリと我愛羅とカンクロウはバキに相談を持ちかけた
「確かに、昔はよくあった話だ
隠れ里の優秀な忍と大名の子供が結婚する事で、隠れ里への援助や協力を求めたり、風影の立ち回りをよくする目的があった
だが、忍界大戦が終わった今、目立った脅威もないし、大名と隠れ里の関係も長年築いてきたものがあるから良好のはずだ」
「なら瑞乃が政略結婚を求められる理由はないじゃん?」
「忍側から見た場合では、な
だが大名の中にも大名の世界がある
そこには上下関係もあるし、力の差もある
今回瑞乃に政略結婚を持ちかけてきたあの大名一族は、大名の中では力が無い方だ
それに隠れ里との関わりも、長年敬遠していた
それゆえに、今の時代に乗り遅れている
だから、お前を一族に引き入れることで隠れ里との関係を築き、なおかつ力を上げようという考えなのだろう」
バキの言葉は的を得ており、テマリ達は反論ができない
「瑞乃」
『!
我愛羅……』
終始黙り込んでいた我愛羅は、その時初めて声を発した
エメラルドグリーンの瞳に、瑞乃の不安げな顔が映る
「お前は言っていたな、いつか一緒になってほしいと言われ、それに”はい”と返事をしたと
その気持ちは今も変わらないか?」
『………変わらない
私はあの人以外は、考えられないよ
でも』
「でも?」
カンクロウが首を傾げる
テマリはじっと彼女を見つめていた
『私の選択で我愛羅の道を閉ざすような事は出来ない
私は我愛羅の足を引っ張りたくない』
「おい!ならシカマルの事を諦めると言うのか?!」
テマリが瑞乃の肩につかみかかる
それをカンクロウが慌てて止めた
「お前はシカマルの事が好きなんだろう?!
何年も付き合ってきたじゃないか!
なのに、お前はアイツを諦めるのか?!
そんな軽い気持ちだったのか?!」
『軽い訳ない!!』
「!!」
思わず飛び出た大きな声に、テマリがびくりと肩を揺らした
『軽い訳ないでしょ…っ!
シカマルさんの事は本当に好きだけど、けど、それと同じくらい、みんなの事も大事なの!!
どちらかだけを選ぶなんて、私には出来ない……っ!!』
震える声に、は、とテマリが息を飲む
顔を上げた瑞乃の目には涙がたまっていた
『二人だってよく知ってるでしょ?
我愛羅が風影になる時、どんだけ努力したのかを
その努力の甲斐あって、今我愛羅は、砂隠れが誇る立派な風影になった
砂の兵器なんて言われてたあの頃とは、もう違う
この里の誰もが我愛羅を信頼し、誇りに思い、彼のあとについていってる
そんな我愛羅の足枷になるなんて、私は出来ない…!
私のせいで我愛羅のこれまでの努力が崩れるのも、我愛羅やみんなのこれからが崩れるのも、私は耐えられない…!!』
「……瑞乃……」
する、とテマリの手が外れる
そしてその場に沈黙が広がった
幼い頃から苦楽を共にしてきた仲間だからこそ、瑞乃は誰よりも我愛羅の行く末を案じていた
彼が風影になるという夢を見つけた時は、テマリやカンクロウと同様に協力し、風影になった暁には誰よりも喜んだ
風影になったからといって、元人柱力である彼を敬遠する者は多かった
そんな彼を支え、見方を増やす手伝いをし、彼が風影として認められるよう努力した
我愛羅の努力と、テマリやカンクロウ、バキの努力
そして自分自身の努力
それら全てが、自分の選択によって崩れ去ってしまうという恐怖が、何よりも強かったのだ
ぎゅ、と拳を握りしめて震える瑞乃に、我愛羅たちは何も言えなかった
彼女は今、恋人と自分たちを天秤にかけて苦悩している
それなのに、その天秤にかけられた自分たちが口を出すのは難しい
「……今、木の葉から依頼が来ている
風の国と火の国との国境付近に潜伏している盗賊団の一斉検挙のため、協力してほしいとのことだ」
『……それで?』
「その任務は砂と木の葉の合同任務になるわけだが、木の葉側の隊長は奈良シカマルだそうだ」
『!』
我愛羅の口から出てきた名前に、どき、と胸が騒ぐ
顔をしかめた私には触れず、我愛羅は話を続けた
「この任務は木の葉との合同任務という事もあり、木の葉とつながりのある忍びに任せようと考えている
それで、お前に任せようと思っていた」
『………。』
「だがまだ返事はしていない
お前が任務に参加するなら、その旨を木の葉に伝える
だがこの間のこともある、嫌なら別の者を遣わそう
どうする?」
普通なら、風影が決めたことに異議を唱える事はない
だが私に選択肢をくれたのは、我愛羅なりの気遣いなのだろう
今、こんなぐちゃぐちゃな状態で彼に会う事も、任務に出る事も無理だと思った
『………その役目は、違う人に任せて…』
「瑞乃…」
弱々しい声に、カンクロウは不安げな顔を彼女に向ける
「………分かった、では他の者を検討し「私が行く」
テマリ?」
「私なら何度も木の葉に行ってるし、シカマルとも知り合いだ
瑞乃ほどではないが、十分に協力出来るだろ」
「確かにそうだが…」
我愛羅が少し考える素振りをする
だがテマリの顔を見て、うん、と小さく頷いた
「分かった、この合同任務はテマリに任せよう」
「あぁ」
『テマリ』
「何だ?」
話が片付いてすぐに、瑞乃が慌てた様子でテマリの服の裾を引っ張った
それに振り向くテマリは、瑞乃の不安げな顔を笑顔で見つめた
『………シカマルさんには、何も言わないで』
「!
何故だ?」
『………お願い…』
「………。」
うつむく彼女に合わせて青い髪がさらりと流れる
かつてこの髪色をコンプレックスに思って短くしていたのに、今ではずいぶんと長く、綺麗に伸びたものだ
そのコンプレックスを無くしてくれたのがシカマルだと言うのは、前に聞いたことがある
今思えば、彼女がシカマルと出会ったのも、結ばれたのも、奇跡に近いような気がする
「……………分かった、アイツには何も言わない」
『!
ありがとう…』
「だが、隠し事をする事になるんじゃないのか
良いのか?」
『!』
びく、と瑞乃の肩が揺れる
それを見逃さなかった
「お前たちの付き合いに口を出すつもりはない
だが私は、お前の幸せを願っている」
『…テマリ……』
「………あまり抱えるなよ、私たちはお前の味方だ」
『うん、ありがとう』
にこりと笑う瑞乃の笑顔には、いつもの明るさは見られなかった
***
「という事で、今度の砂との合同任務だが、砂からはこのメンバーが参加する」
綱手様から渡された書類にざっと目を通し、メンバーを確認する
砂のリーダーはテマリだった
「この任務は窃盗団の一斉検挙だ、じっくり情報を集め、砂と連携を取り、確実に捕まえろ
任務の期間は長めに設けてある
失敗すれば近隣の村に被害が及ぶ
それを必ず防ぐのだ」
はい、と任務に参加するメンバーが返事をする
そこで一旦解散となった
「瑞乃さんいませんね」
火影室を出て廊下を歩く
その時、同じ任務に就くカンタがそんな事を言い出した
「いるわけねーだろ、砂にもたくさん忍びがいるんだから」
「まぁそうなんですけど…
合同任務なら、お互いの里に精通してる人が抜粋されるのが普通じゃないですか
だからてっきり砂側のリーダーは瑞乃さんかと」
「アイツもそうだけど、このテマリってのも木の葉とはつながりのある忍びだ
だからこの人選は妥当だよ」
シカマルの言葉に「なるほど」と納得するカンタは、初めての砂との合同任務らしく、少し不安そうだ
「……砂との合同任務か」
任務の内容は少し複雑だが、きっちり作戦を立てて外堀から攻めていけば確実に検挙できるだろう
それに砂はテマリがリーダーだから、何かとやりやすい
問題なく終わらせることは出来るだろう
「あ、これ、捕まえた窃盗団の一味は砂に護送するんですね」
「あ?
あー、そうみたいだな
犯罪者を捕らえておく施設は、砂の方が近場にあるらしい」
「地図を見る限り、窃盗団のアジトも砂隠れの里も、結構近場にありますよね
任務が終われば、運が良ければ会えるかもしれませんね」
にや、と笑うカンタの顔をめがけて書類をバシ、とぶつける
いて、とカンタが声を漏らす
「何するんすか」
「あのな、遊びに行くわけじゃねぇんだぞ
分かってんのか」
「分かってますって、冗談ですよ、冗談」
「ったく……」
ふいと顔をそらすシカマルに、カンタはまたニヤリと笑う
シカマルの横顔は、少し赤くなっていた
***
一方その頃、砂隠れの里
砂隠れでも、テマリを筆頭に着々と合同任務の準備が進められていた
「その木の葉との合同任務で検挙する予定の窃盗団というのが厄介なんだ
窃盗団の中には元忍びもいるらしく、向こうの戦力が測りにくい
それに、追い込まれて起爆札で自爆したという過去の事例もある
だから任務の際は十分に注意してくれ」
「分かった」
「それと瑞乃、今回窃盗団の一味を検挙したら、そのまま砂に護送する予定だ
負傷者も予想される、あらかじめ病院にこの旨を伝えておいてくれ
くれぐれも混乱のないようにな」
『分かりました』
風影室でテマリと一緒に我愛羅から合同任務について聞き、自分の仕事を理解する
今回は現場には出ないものの、サポートとして協力することになったのだ
「任務についての話は以上だ
それとは別に…、瑞乃、お前に話がある」
『………。』
我愛羅の視線が書類から自分に向く
何となく嫌な予感がした
「お前はしばらく任務には出るな」
『えっ?』
「それと病院勤務も無しだ」
『は、え?ちょっと待ってよ、どういう事?』
嫌な予感はしていたが、少し予想とは外れた我愛羅の言葉に思わず食いさがる
だが彼は、静かに私を見るだけだ
戸惑う私をじっと見つめたあと、我愛羅は1度目を伏せた
そしてまた目を開き、しっかりと私を見つめたのだ
「瑞乃がどこかの大名の息子と結婚する…、という噂が一部の忍びの中に出回っているそうだ」
『!』
「恐らくは大名の側近か、上役あたりの仕業だろう
外堀から埋めていくつもりなんだろうな」
『そんな……』
まさかその話が知られるなんて、と少し気分が重くなる
だが、自分がシカマルさんと付き合ってることを知っているのは、我愛羅達を含むごく少数の人間しかいない
仕方のないことと言えば、仕方のないことだ
「今お前は、俺たちと奈良シカマルを天秤にかけている」
『………。』
「簡単な問題ではない事も分かっているし、お前が苦しんでいるのも分かっている
天秤にかけられている俺たちが出来る事は、お前を周りから守ることぐらいしかない」
『我愛羅……』
「………この問題は、お前だけの問題ではない
かと言って、お前が自分の気持ちを殺して決めることでもない
お前が本当に選びたい方を選べ
それでどんな結果になろうとも、俺はお前の選んだ道を信じる」
「そうだぞ瑞乃
お前がしたいようにすれば良い、私たちはお前の選んだ道を応援する
私たちの事は気にするな、何があっても、どうとでも出来るさ」
に、と強気な笑みを浮かべるテマリと、優しく笑う我愛羅
二人を見て、目頭が熱くなった
私の気持ちは決まっている、だがそれを選ぶことで我愛羅たちの足手まといになってしまう
どちらも大切で、1つに選べない私を思っての事なのだろう
『……ありがとう、二人とも
少し休ませてもらう
その間に、ちゃんと決めるよ』
「あぁ」
「一人で悩みすぎるなよ、本当に困ったら私たちを頼れ
分かったな?」
『うん、ありがとう』
にこりと笑い、風影室を後にした
そして病院に行き、合同任務についての連絡を済ませ、すぐに家に帰った
休みをもらっても、心が休まることなどない
けれど決めなければ
どちらを取るのかを
.