政略結婚
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今年の中忍試験も無事に終わり、砂隠れの里に戻ってきていつものような生活を再開していた
砂隠れの病院で勤務したり、任務に出たり、アカデミーで指導をしたり、多忙な毎日を送っている
そんな中
「虹色上忍、風影様がお呼びですよ」
『分かりました』
我愛羅から呼ばれていると聞き、風影室に向かう
けどそこで待っていたのは我愛羅ではなく、仰々しい雰囲気を醸し出す里の上役の側近達だった
「虹色瑞乃上忍ですね、大名様たちがお待ちです
こちらへ」
『大名……?
待ってください、私は風影に呼ばれたのです。大名様の御前に赴く用件などー…』
「風影は大名様達のもとで待っています」
『え?』
「こちらへ」
有無を言わせない側近の態度と、明らかに様子のおかしいこの状況
我愛羅に何かあったのか、それを危惧して胸がざわついた
嫌な予感がする
***
『失礼します』
連れて行かれた部屋は風影室とは違い、上役が会議をする特別な部屋だった
数回程度しか足を踏み入れたことがないその部屋に入り、中にいる人間を見回す
部屋の中には3人いた
中にいたのは我愛羅、そして我愛羅の後ろにテマリの姿もある
カンクロウは任務中だからいなかった
そして、大きなテーブルの一番奥
そこで顔の前で手を組んで座る男性の姿が
この人は大名の一人だ
「……ほう、君が虹色瑞乃か」
『………私がここへ呼ばれた理由は何でしょうか』
品定めするような大名の視線に眉を寄せつつ、冷静に言葉を紡ぐ
ちらりと我愛羅とテマリを見るが、二人もここに呼ばれた理由を聞いていないようだ
「虹色殿、君は先日木の葉で行われた中忍試験で、ナイの護衛を務めただろう?」
『ナイ様?そうですが……』
「私はナイの父だ」
『!』
ぴく、と反応する
そうだ、この男性はナイ様のお父上だ
この方が中忍試験の観覧が出来なくなってしまったので、代わりにご子息のナイ様が木の葉を訪れたんだった
『ナイ様の……』
「君のことはナイに聞いたよ、突然の襲撃でも冷静に対処し、木の葉の大名を守り、犯人逮捕につなげたと
それに里の者も、君を高く評価している
君はとても優秀だ」
『お褒めに預かり光栄です』
話の流れがいまいち掴みきれないが、褒められていることに感謝の気持ちを見せる
ただ私を褒めるためだけに、わざわざ我愛羅達まで呼び出したというのだろうか
訝しんでいると、大名様はごほんと咳払いをした
それに姿勢を正し、目の前の大名様を見る
「さて、前置きはこのくらいにして、本題に入ろうか」
「本題?」
我愛羅が腕を組んだまま大名様に聞き返す
大名様はちらりと我愛羅を見たあと、真っ直ぐに私に目を向けた
「虹色瑞乃殿
うちのナイと結婚しなさい」
『え……』
しん、と部屋の中の空気が静まった
今言われた言葉が理解できるまで、どのくらいかかっただろうか
驚く私の意識を呼び戻したのは、机を叩く音だった
そして机を叩いたのはテマリだった
「おい、いきなり何を言い出すんだ!
そんな冗談を聞くためにわざわざ呼び出されたと言うのか?!」
テマリの怒鳴り声が鼓膜を震わす
は、と我に帰った私は、大名様の答えを待った
大名様はいきりたつテマリを見て、ふ、と小さく笑う
だがその目の奥は、笑っていない
冷酷な、冷たい瞳だった
「冗談とは心外だな、私は真面目に提案しているのだよ
この国の未来を担う次の大名であるナイと、これからも砂隠れの里に必要とされ、さらなる発展を導くであろう君
素晴らしい組み合わせじゃないか」
「ふざけるのも大概に「テマリ、やめろ」
っ、我愛羅!」
怒りが治らないテマリを我愛羅が静かに抑える、そこで少し、テマリが冷静さを取り戻した
だが私は、ドクドクと心臓が激しく鳴っていた
「………あなたがそう願っていても、ナイ殿の気持ちが大事なのではないのか?
それに、瑞乃の気持ちも」
「ナイは虹色殿の事を気に入っている
それに、この話を円滑にするために、あの日ナイの護衛をわざわざ君にしたんだ」
『は……?どういう事ですか…?』
「ナイと君が接触するように仕向けたのだ
そしてナイは君の事を気に入った」
「っ、貴様、瑞乃をどうするつもりだ?!」
ガン、とテマリが机を殴る
だが大名は、その音をうるさそうにするだけで、表情を変えなかった
「どうこうするつもりはない
ただ、ナイの嫁になれと言ってるのだ」
「だから!何故そうなるんだ!こんな無理やりな結婚を迫って、何がしたいんだ!!」
「何をそんなに怒るのだ
よくある話であろう?いわゆる政略結婚という奴だ
よく考えてみたまえ」
『………?』
大名様はじ、と私を見つめ、口を開いた
「私の一族は代々大名を排出している
だが、ただ一族から大名を排出するだけであって、力はない
むしろ大名の中では弱い
だからこそ、力をつけるためにも隠れ里との信頼関係が重要なのだ」
『………。』
「君は風影と同じチームであり、砂の医療班の班長であり、そして第4次忍界大戦では医療班の副班長も務めた
よって、君の名前は世界に知られている
その君の名前を得ることで、我が一族は世界にその存在を誇示できるのだ
そしてそれは、他の大名一家を出し抜くにはうってつけの称号になるのだよ」
「瑞乃を利用するのか?!」
大名様の話の内容が衝撃的すぎて、呆然とする
私のことなのに、どこか他人事のように聞こえた
「どうかね、虹色殿
悪い話ではないと思うが」
『っ!』
大名様が自分を見る目は、有無を言わせない圧力と、背筋が凍るような冷たさがあった
だが私には、彼がいる
『………そのお話をお受けすることは出来ません』
「おや、どうしてかな
………あぁ、もしや、特定の相手がいるのかね?」
『え……っと』
「………ふーむ、そうか、いるのか」
言い淀む私を見て相手がいると気付いた大名様は、しばらく考え込む素振りを見せる
相手がいると分かっているならこの話も無くなるだろう、なんて思って少し気を緩めていたが、大名様はまた私を見上げた
あの冷たい眼差しで
「その相手とは、結婚の約束を交わしたのか?」
『えっ…?!』
「っ、おい!いい加減にしろ!
それに答える義理はないだろう!!」
テマリが私をかばうように、私の前に立つ
見慣れた背中に、ほ、と息を吐いた
『…その方とは、今は難しいだろうけど、いつか一緒になってほしいと言われました
私はそれに、はい、と返事をしました』
恐る恐る、はっきりとそう答える
私の言葉に我愛羅やテマリが驚くそぶりを見せたが、二人とも嬉しそうに笑ってくれた
だが、大名様は無表情だった
そして先ほどと変わらない冷たい眼差しを私に向けている
「………その”いつか”とやらは、まだ来ていないのだろう?」
氷のように冷たい声だった
これにはさすがに我愛羅たちも驚いたらしく、目を見開いた
だがそんなのには構わず、大名様はニヤリと口元を歪めたのだ
「その相手を切りなさい」
ガツン、と頭を殴られたかのような衝撃が走った
「その”いつか”が来る前に相手を切って、ナイと結婚するのです
まぁそもそも、君の言う”いつか”があるのかどうかすらも怪しいものですが」
『ちょ…っと待ってください!
私はこの話は受けられないと…「君はこの話を断れるのかね?」
…?!』
「………どういうことだ」
我愛羅の静かな声が部屋に響く
そんな彼を見て、大名様はニヤリと笑った
「風影が風の国を治めているが、それは大名があってこそ…
大名を敵に回した風影は、議会の承認を得られず、力を奪われ、何も出来なくなる
君がもしこの話を断るというのなら、これからの我が一族は風影への援助・協力の一切を絶とう」
『?!』
「そんな横暴が認められる訳ないだろう?!」
「まぁ落ち着きたまえ、これはあくまで虹色殿が”断った場合”の話だ
この話を受けてくれるなら、我が一族は全面的に風影に協力し、他の大名にも顔が効くようにしてあげよう
そうすれば若き風影も、立ち回りやすくなるだろう?」
『……そんな…』
この話はつまり、私がナイ様と結婚しなければ我愛羅の邪魔をする、ということ
だが逆に、結婚すれば我愛羅の手助けをしてくれる
里と大名との関係は大事だ、問題は少ない方が良い
『なぜ我愛羅の邪魔をするんですか』
「邪魔をするか否か、それは君次第だ」
「瑞乃、話に乗る必要はないぞ!
お前にはシカマルがいるだろう?!」
「この話のお返事は保留にしておいてあげよう
だがよく考えることだ
幼い頃から苦楽を共にしてきた仲間の未来を、自分が握っていることを忘れずにな」
『!』
「返事が決まったら教えてくれ、また参る」
ふ、と笑い、大名様が部屋を出て行った
残された私は、ただ呆然と空虚を見つめた
「何なんだアイツは…!まるで脅しではないか!!」
「瑞乃、大丈夫か?」
『え……、あ、うん、平気』
我愛羅に顔を覗かれ、びくりと肩を揺らした
そして目に入る、風影の羽織り
私の選択で、我愛羅の行く道の邪魔になるかもしれない
そんな思いが頭を駆け巡り、胸が苦しくなった
けれど私は、あの人以外は考えられない
どうすれば良いんだ
.