大名のご子息
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
予選を終え、一ヶ月後
中忍試験、第三の試験が開催された
各里の火影や大名、役人や重役が集まり、厳戒態勢の中で行われる試験で、もちろんシカマルと瑞乃も係として参加していた
瑞乃は砂隠れの大名の護衛として、大名専用の観客席に控えていた
そしてシカマルも同様に、木の葉隠れの大名の護衛を勤めていた
「あなたが今日私を護衛してくれる方ですか」
優しい笑顔で瑞乃に声をかけるのは、年齢は20代後半ほどの穏やかな雰囲気の男性
『本日護衛を担当いたします、上忍の虹色瑞乃と申します』
ニコ、と同じように笑顔を返す
この人は別件で来れないある大名の御子息であり、次の大名候補である
まだ若いが、優秀で政治への関心が高く、将来有望と言われているお方だ
「私はナイだ、よろしく頼む瑞乃殿」
『は、ナイ様、責任を持ってお役目を果たさせていただきます』
に、と笑いかけ、静かにナイの後ろに控える
歩くたびに揺れる青い髪を、ナイはじっと見つめた
そして始まった中忍試験の第三の試験
試験を勝ち抜いた下忍たちの戦いは、例年と同様に盛り上がりを見せていた
「奈良上忍、少しよろしいですか」
下忍の健闘が続く中、一人の木の葉の中忍がシカマルさんを呼び出す
何かトラブルでもあったのかとそちらを見ると、ちょうど彼と目が合った
「瑞乃……、あ、失礼
虹色上忍、少し外す」
『いえ、何かあったんですか』
シカマルさんがいつもの調子で名前を呼んでしまい、公的な場であることと大名様の前であることもあり、謝罪の言葉を口にした
だが大名様たちは特に気にしてはいないようだ
「いや、報告があって少し確認してくる
ここは任せる、何かあったら別の者を呼んでくれ」
『はい』
「では、少し失礼します
試合のご観覧を邪魔して申し訳ありません」
「気にするな」
「あぁ、君は君の仕事をしなさい
こちらは楽しんでいるから」
大名様たちの声にふ、と表情を緩め、シカマルさんが席をはずす
護衛は大名様のすぐ横に控える私だけになってしまったが、近くにはまだ何人もの護衛の忍びがいる
「瑞乃殿」
『!
はい、いかがされましたか』
「君は先ほどの木の葉の忍びと親しいのかい?」
『奈良上忍ですか?
えぇ、係で何度もご一緒してますし、付き合いも長いので』
「そうなんだね」
にこ、と人当たりの良い笑顔を浮かべるナイ様は、そのまま穏やかな表情で試合の観戦を続けた
何かあったのかな、と少し気になったが、ふと何かの気配を感じてあたりを伺った
『………………!!
伏せてください!!』
「「?!」」
叫ぶと同時に聞こえる、空気を切り裂く音
それは真っ直ぐに木の葉の大名様に向かっていた
『っ、ぐ…!』
「瑞乃殿!」
木の葉の大名様を守るために腕に手裏剣を受ける
痛みに顔を歪めるも、すぐに敵を探した
『(あそこか…!)』
「瑞乃さん?一体どうしー……
!!!
瑞乃さん!!」
騒ぎに気付いたのか、大名の観覧席にアカリが入ってくる
だがすぐに、瑞乃の腕から流れる赤い血を見て顔色を変えた
『襲撃です!至急会場内にいる暗部に伝達を!
それと大名様方を安全な場所へ連れて行ってください!』
「わ、分かりました!
瑞乃さんは?!」
『私はあとを追います!』
「分かりました!」
手裏剣を投げてきた方角を見る
その先で、複数の人影が怪しく動くのが見えた
「瑞乃殿!」
『!』
手すりに足をかけて飛び出そうとする瑞乃に、ナイが声を上げた
「………気を付けてください」
『!
分かっています、ナイ様は安全な場所にいて下さい』
にこ、と笑いかけ、手すりから姿を消す
彼女が消えたその場所を見つめ、ナイは不安げな顔をした
***
「不審者?」
「はい、先ほど会場の外を見回っていた忍びが、不審な人影を目撃したと
会場の入り口ではない場所をうろうろしていて、その忍びが近付いたら一目散に逃げたそうです」
「不審者か……、何か目的があるとしたら面倒だな
会場の外の見張りも固めよう、それから「シカマル先輩!!」
!
アカリ?」
大名の護衛中に自分を呼びに来た係の忍びの報告を聞きつつ、次の指示を出していると、廊下の向こうからバタバタとアカリが走ってきた
焦った様子のアカリにどうかしたのかと尋ねると、彼女は息を整えるのも後に、すぐに口を開いた
「つい先ほどっ、大名様方の観覧席が襲撃されました!
瑞乃さんが大名様をかばって怪我を負ったのですが、そのまま大名様を襲った輩のあとを追っています!」
「!!」
アカリの報告に舌打ちがこぼれる
自分がいなくなり、護衛が瑞乃一人になったのを好機と捉えて襲撃してきたのだろう
「っ、クソ、迂闊だった…!」
「瑞乃さんの指示で会場内に配置している暗部には連絡済みです
それと暗部の一人が不審者と、その後を追う瑞乃さんを発見した模様
今、暗部数人で追跡中です」
「分かった、大名は?」
「別室に移動してもらいました
他の忍びで護衛をしています」
「よし、ならお前は審判にこの旨を伝えろ
それと、会場に来てる観客や選手にこの事態が気付かれないように係全員に伝達を
会場が混乱したら相手の思う壺だ」
「分かりました
シカマル先輩は?」
「俺は火影様たちにこの事を伝えてくる」
「えっ、瑞乃さんを追わないんですか?!」
アカリの驚いた声に思わず顔をしかめる
そうしたいのは山々だ
だが
「俺は中忍試験全体を任されてるんだ、個人の感情で勝手な真似は出来ねぇ
俺が会場を離れるわけにはいかねぇだろ」
「そ、うですけど、でも」
「いいから、お前は今言った仕事をしてこい」
「………分かりました」
少し不服そうにしながらも、アカリがその場から去る
気配がなくなったのを確認してから、自分も移動を始めた
「……瑞乃なら、大丈夫」
アイツは優秀な忍だ、大丈夫
襲撃された直後の指示も的確で無駄がなかったし、信頼の置ける人間だ
分かっているけれど、やはり心臓が嫌な音を立てる
***
その後、大名を襲ったのは犯罪者の組織だということが判明し、木の葉が派遣した撲滅隊が組織を撲滅した
おかげで一般客や受験生に被害は及ばず、中忍試験は無事に続行される運びとなったのだ
「瑞乃!」
「瑞乃さん!」
犯人を追跡した後、暗部にあとを任せて会場に戻ってきた瑞乃
その腕は血が滲んだままだった
瑞乃は俺とアカリの姿を見てほっと表情をゆるめた
『シカマルさん、アカリさん…』
「瑞乃さん!腕っ…!」
『すみません、油断しました…」
力なく笑うその顔色は悪く、足元もふらついている
ただ敵を追跡していたにしては、おかしい
『あの、医療班に…』
「!
おい!」
青い顔の彼女は、言葉も絶え絶えになりながら俺の腕を掴む
だがそれに力は入っておらず、すぐにずるりと外れた
「瑞乃!?」
「瑞乃さん!?」
瑞乃はがくりと膝を折り、倒れこんだ
幸いにも俺が身体を支えていたので、地面とぶつかることは無かったが
「アカリ!医療班を呼んでこい!」
「っ、はい!」
「瑞乃!俺の声聞こえるか?!」
シカマルさんが瑞乃さんを抱きかかえて呼びかけるが、反応が無かった
顔は青く、息も荒い
何があったのか分からないが、今は一刻も早く医療班を呼んで、瑞乃さんを診てもらわないと
***
木の葉病院に緊急搬送された瑞乃は、そのまま入院することになった
倒れた原因は、毒
大名を襲った手裏剣には毒が塗られており、その手裏剣を代わりに受けた瑞乃が、その毒にやられたのだ
だが彼女は医療忍者、ちょっとの毒は自分で解毒出来るし、耐性もある
だから回復も早かった
彼女は治療を受けた翌日にはすっかり回復し、いつもの笑顔を見せていた
「瑞乃、入るぞ」
『!
シカマルさん!』
瑞乃がいる病室に入ると、彼女はベッドの上で本を読んでいた
「もう大丈夫そうか?」
『はい、今日様子を見て何もなければ、明日にでも退院できます』
「そっか、良かった」
ふ、と笑いかけると、彼女も同じように笑った
ベッドサイドに行き、彼女がいなかった分の仕事をアカリがやってくれたことや、医療班がよく働いてくれたこと、試験は滞りなく進んでいることも伝えていると、扉を叩く音がした
「瑞乃殿、入ってもよろしいか」
『!
ナイ様、どうぞお入りください』
扉をノックしたのが砂から来ている大名だと分かり、姿勢を正す
俺も立ち上がり、扉を見た
「失礼する
………おや、先客がいたのか、邪魔をしてしまったな」
「いえ、お気になさらず、業務連絡がほとんどですので」
「ほとんどと言うことは、業務連絡以外にも話があったのだろう?
邪魔してすまなかったな」
「……。」
ナイ様、と呼ばれるこの若い大名の意味深な言葉にう、と顔をしかめる
そんな俺を見て、大名は笑った
「瑞乃殿、具合はどうか?」
『もう何ともありません
私の不手際でご迷惑をおかけしました』
「君が謝る事はない
君は木の葉の大名を守り切り、そして犯人逮捕にも一役買ったのだ
護衛としても、忍としても十分に働き、そして結果を残した
あなたは素晴らしい忍だ」
『お褒めに預かり光栄です』
ニコ、と瑞乃が優しく笑いかけると、大名はおもむろに彼女の腕を取った
『?!』
「これが傷跡かな?」
『は、はい、大したものではありませんが…』
「何を言う
うら若い美しい女性の腕に傷を負わせてしまったのだぞ
君は忍であるが、一人の女性なのだ
もっと自分を大切にしても良いのだぞ」
『………。』
キョトン、と呆気に取られた瑞乃と俺は、大名に何も言えずに、ただ言葉を待った
「瑞乃殿、すまなかったな
砂に戻ったら、今一度謝罪をさせてくれ
君に傷を負わせてしまった責任はこちらにもあるのだからな」
『謝罪だなんて、そんな』
「風影を通して、追って連絡をしよう
風の国で待っているよ」
にこりと温和な笑みを浮かべると、ナイ様は病室から出ていかれた
意外すぎる展開に戸惑っていると、シカマルさんがはーと息を吐いた
「大名って聞いてたからどんな奴かと思えば…、なんか色々と意外な人だな」
『そ、うですね
たかが護衛の忍を見舞いに来るなんて』
「…………。
瑞乃、退院したらうちに来い
母ちゃんが心配してた」
『分かりました』
ニコリと笑う瑞乃に笑いかえし、病室を出た
中忍試験もあとは合格者の選抜のみだ
「……………。」
先ほどのナイと呼ばれる大名のご子息については、彼女から少し話を聞いている
次の風の国の大名候補で、政治に関心があり、砂隠れの忍とも友好的な関係を持っていて、期待されている人材だと
そんな男が、わざわざ瑞乃の見舞いに来た
しかも彼女は、ナイを守って怪我をした訳ではない
自分ではない大名を守って負傷したのに、わざわざ病室に見舞いに来た理由があるような気がして、少し胸がざわつく
それに、彼女と話す時の表情が気になった
「木の葉の護衛の忍者」
「!
………あ」
病院の廊下を歩いていると、先ほど病室に来たナイがシカマルを待っていた
にこ、と穏やかな笑顔を見せるナイに、シカマルは戸惑いつつも頭をさげる
「いくら木の葉の病院の中だからといって、大名様が護衛もつけずに一人で歩かれるのは無用心ですよ」
「心配するな、すぐに護衛たちのもとに戻る
少し聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと…、っスか、俺に?」
「あぁ、君は彼女と親しいようだから」
「………。」
ナイはそう言うとシカマルの前に立ち、口を開いた
「君から見て、虹色瑞乃はどんな人間かい?」
「………は、え、瑞乃……
虹色上忍、っスか」
「そう
砂の忍びからは褒め言葉しか出ないが、他里から見た彼女はどんな人間なのかを知りたくてね」
意外な言葉に驚きつつも、聞かれた事に答えようと口を開いた
「………虹色上忍は優秀な医療忍者です
優しくて穏やかで、冷静さも兼ね備えてるし信頼の置けるヤツです
けど優しすぎるところがあるのが欠点っスね
それに人に弱みを見せられなくて、一人で抱えるクセがある
頼れるけど、たまに頼れないところがあるヤツです」
「………ふむ、なるほど
君はずいぶん彼女について知っているようだね」
「………まぁ、下忍の時からの付き合いなんで」
「そうか
ありがとう、参考になったよ
それと、今回の中忍試験、とても有意義な時間を過ごすことが出来た
他里で実際に目にするのは大事なことだな、また機会があれば見学したいものだ」
「………お待ちしていますよ」
「その時はまたよろしく頼むよ
では、私はこれで失礼する」
に、と笑ってナイがその場を後にした
何がしたかったんだ、と首を傾げたが、その時は気にしないでいた
.