あなたへ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
サク「ネジさん……」
ネジ「なんだ?」
瑞乃の傷口を塞ぎ終わったサクラがうつむいたまま口を開いた
サク「……シカマルを、探してください」
「「「「!!」」」」
はっ、とその場にいた全員が息を呑んだ
テン「……そんなの…っ!」
リー「…シカマル君になんて言えば……」
サク「……。」
ネジ「……分かった」
静かに目を閉じ、白眼を開いたネジ
まわりを見渡し、一点を見つめ、口を開いた
ネジ「見つけた
四時の方向、走って数分のところに誰かといる」
サク「……行きましょう
リーさん、瑞乃を」
リー「…はい」
ネジがヒナタを背中に乗せ、リーは瑞乃の首と膝の後ろに手を回し、持ち上げた
リーが持ち上げた拍子にだらりと垂れた彼女の腕に、サクラ達は思わず目を背けた
すぐにサクラが瑞乃の腕を体に乗せ、ネジを先頭に歩き出した
シカ「………。」
シホ「……彼女なら、きっと大丈夫ですよ」
低く頭を垂れ、黙っている俺を見かねたシホが声をかけてきた
シカ「……そうだよな
帰ってくるよな、アイツなら」
シホ「帰ってきますよ、絶対」
にこりと笑いかけてくるシホになんとか返そうとしたが、顔は引きつって何も出来なかった
頭の中ではぐるぐると様々な考えが駆け巡る
瑞乃が去った後に現れた親父達の動向ももちろん気になるし、ナルトがどうなったのかも気になる
だが、やはり彼女のことが一番気になった
早く会いたい
無事を確認したい
早く帰って来いよ
サク「シカマル!」
シカ「!」
離れたところから名前を呼ばれ、振り向いた先にはサクラが
それとガイ班の四人が、真っ直ぐこちらに向かって歩いて来ていた
シカ「!!!!!!」
目を疑った
ネジの背中には眠っているヒナタ
そしてリーの腕の中には
瞳を閉じた瑞乃の姿があった
―――――
『――…
ここは…?』
気付いたら、真っ暗な闇の中にいた
ここはどこだ
私は何でこんなところに
しばらく自分に問い掛け、思い出した
『……私は
死んだんだ…』
そっと胸に手をあてる
ヒナタちゃんを庇う時に貫かれた場所
しかしそこに穴はなく、体は五体満足
痛みもない
ここは死後の世界といったところか
『私は……、ヒナタちゃんをちゃんと守れたのかな…』
守れないで死んだなら、それは最大の心残り
何のために私は
死んだんだろうか?
「…瑞乃か?」
『!
(まさか……!)』
暗闇から聞こえてきた、少し擦れた声は
大好きで忘れられないあの人の声に間違いなかった
『チヨばあ様っ……!!』
―――――
シカ「………。」
サク「ごめん…
ごめんシカマル……っ!」
サクラの謝罪とテンテン達が泣く声は
俺の耳にはほとんど入らなかった
リーによって仰向けに寝かされた瑞乃の顔に生気はなく
一番恐れていた現実が、俺の胸に深々と刺さった
瑞乃が、死んだ
シカ「……一人に、してくれないか…」
サク「……シカマル」
ネジ「……、行こうみんな
今は二人だけにしてやろう」
ネジが「二人」と言ってくれて、急に目頭が熱くなった
俺と、瞳を閉じて眠っている瑞乃を残し
他のみんなは離れていった
シカ「……なに…、やってんだよ」
そっと頬に触れてみた
しかし、触れて後悔した
瑞乃の頬にぬくもりは無く、あるのはただ
死者特有の冷たい感触だった
シカ「ふざけんなよ……っ!!
こんな…、こんな風に帰ってくるなんて
誰が許すかよ……!!」
髪の毛に指を通し、何度も撫でた
シカ「瑞乃……!!」
頬を流れた涙は
恩師を亡くしたあの時と同じだった
―――――
チヨ「――…お前、来るの早すぎじゃ」
『私だってこんなに早く来るとは思いませんでしたよ』
暗闇から現れたチヨばあ様についていくと、たき火があった
明らかにおかしいとは思っても、チヨばあ様は何の迷いもなくたき火の近くに座ったので、私も同じように隣に座った
チヨ「まーったく、お前は本当に師匠泣かせな奴じゃな」
『今まで泣かせた記憶はありませんよ
いつも私が泣かされました』
チヨ「そうじゃったかの?」
『……ふふ』
―――――
ざっざっ、と土を踏む音がした
ゆっくり重たい頭を上げて音がする方を見れば、サクラが思い詰めた表情をして立っていた
サク「…瑞乃が亡くなった理由
話しておくわ」
シカ「!」
サク「アンタには知る権利がある
いえ…、知らなきゃいけない
瑞乃の恋人として
彼女と一番一緒にいた人間として」
シカ「……。」
そう語るサクラの瞳は徐々に濡れて、一筋の涙がこぼれた
見ていれば分かる
サクラだって思い出すのはツライはずなのに、それでも俺に伝えようとしているんだ
視線をサクラから瑞乃に戻した
生気が宿っていない顔は、先ほどと全く同じ
なんとか現実を受け止めようと見つめ続けていた
サク「…瑞乃はヒナタを庇って暁の前に飛び出したの
そしてそのまま心臓を貫かれた
……多分、即死
――…でも、瑞乃の行動のおかげでヒナタは軽傷で済んだわ
もう少ししたらヒナタは起きると思う
アンタの彼女は、自分の命よりも仲間を守る
立派な医療忍者よ」
すべてを言い終えたサクラの目からは大粒の涙が次から次へとこぼれ落ち、地面に染みを作っていった
シカ「………そうか」
サク「……。」
さらり、と髪の毛を梳く
晴れ渡る空を連想させる髪は、いつもと同じように引っ掛かることなくすりぬけた
シカ「…仲間のために、か…
瑞乃らしいな…」
サク「…そうね」
ざっ、と再び土を踏む音がして、サクラが歩き去った
シカ「……自慢の彼女だよ、お前は」
小さくつぶやき、そっと唇を合わせた
この唇が温かければと思うのは
我が儘だと分かっている
―――――
チヨ「そうか、我愛羅は無事か」
『はい、今も風影として里のために尽力してますよ』
チヨ「…ワシがしたことは無駄にはならなかったようじゃな」
そう言って穏やかに笑うチヨばあ様は、生前と何一つ変わっていなかった
『……チヨばあ様』
チヨ「なんじゃ?」
『私――…』
そこまで言った時、どこからか光が私の体に落ちてきた
『?!
何…?』
チヨ「…ふん
やはり、おぬしが来るのは早かったようじゃな」
『え?』
チヨばあ様を見れば、彼女はまた穏やかに笑っていた
早かった、って
もしかして
『っ、チヨばあ様!!』
チヨ「?
なんじゃ?」
少しずつ視界が光に包まれる
体の感覚が薄れてきて、足が浮いているような気分になってきた
『私っ…!!』
今までずっと伝えたかった言葉があるんです
『私っ、チヨばあ様の弟子で本当に良かったって思ってます!
あなたの弟子であることを誇りに思ってます!
だから!
だから私、頑張ります!
医療班の班長として、精一杯我愛羅達を支えていきます!』
チヨ「……ふん、やはりなめくじ姫の影響を受けたかの
言うようになったな」
『事実しか言ってません!』
視界の半分以上が真っ白になってきた
そろそろこの時間が終わるとなんとなく分かった
でも、言いたかったことは言えた
だから私は満足
チヨ「瑞乃!」
『!』
薄れゆく視界と意識の中、チヨばあ様の顔が見えた
チヨ「……ワシも、お前が弟子で良かったぞ
ワシの分も精一杯生きろ
幸せになるんじゃぞ」
『…!』
そう言って笑ったチヨばあ様の笑顔は、今まで見た中で一番穏やかで
私の大好きな笑顔だった
『……大好きです、師匠』
そして
視界は真っ白になり
意識が遠退いた
.