束の間の幸せ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シカ「!
瑞乃」
『えっ
シカマルさん?!
なんで…』
数日後
朝、いつも通り木の葉病院に行こうと部屋を出、アパートの入り口を出ようとしたら
ふいに声を掛けられた
そこにはアパートに背中を預け、腕を組んでいるシカマルさんがいた
―――――
『どうしたんですか?
突然』
隣に並びながら質問を投げ掛けると、シカマルさんは少しだけ眉を寄せた
それが照れた時の癖だということは、とっくに知っている
シカ「………たまたまだよ
たまたまあそこ通っただけ」
『……塀に寄りかかっていたのもたまたまですか?
私には、あそこで誰かさんを待っていたようにしか見えませんでしたが』
シカ「………うっせー…」
さらに眉を寄せたシカマルさんは、少しだけ歩調を早めた
後ろから見える彼の耳は真っ赤で、自然と笑みがこぼれた
この幸せがずっと続けばいいのに
と、強く願った
シカ「……早く来いよ瑞乃
おいてくぞ」
『先に行ったのはシカマルさんですよ』
歩調を遅くしたシカマルさんの隣にまた並んだ
『「!」』
隣に並んだ時、お互いの手が触れた
ほんの一瞬だけ
たったそれだけなのに、とたんに胸がどきどきと騒ぎだし、顔に熱が集まった
隣にいるシカマルさんの存在がやけに気になって、お互い無言になってしまった
シカ「――…瑞乃」
『っ!
はいっ!』
ふいに声をかけられ、変な返事が口から飛び出た
それを聞いたシカマルさんは少し吹き出して、なんだそれ、と笑いながら言った
『………で、なんですか?』
シカ「あ?」
『今、名前呼びましたよね?』
シカ「………。
あー……」
私の変な返事がよほどおかしかったのか、シカマルさんはうっすらと涙を浮かべていた
が、私がなぜ名前を呼んだのかを尋ねると
今度はたちまち顔を赤く染めた
『………?
シカマルさん?』
シカ「……。」
赤い顔のまま黙り込むシカマルさんを訝しげに見つめていると、わずかに口を開いた
シカ「…、………か…?」
『え?』
ぼそりと小さくつぶやかれた言葉は、私の耳には届かなかった
シカ「……手…つないでも、いいか…?」
『っ!!』
今度ははっきり聞こえた
そして私の顔は真っ赤に染まる
二人して顔を背けているから、端からみたらかなり妙な光景だろう
言葉を発しようと口を開くが、照れるあまりうまく声にならない
仕方がないので
私は自分の手を、ゆっくりとシカマルさんの手に近付けた
シカ「――…!」
『……。』
ちょん、と彼の指に触れ
人差し指と中指だけを絡めた
最初はびくりと動いた彼の手も、やがて同じように絡んできた
最初は普通のつなぎ方をしていた
けれど、それでは二人の間に妙な空間が出来てしまう
シカ「……遠い」
『え…?何が…』
何が、と言い掛けた瑞乃の腕を引っ張り、先ほどよりも少し複雑に指を絡めた
恋人つなぎ
ってやつ
恋人つなぎをすれば、自然と互いの距離がぐんと近付く
ぐい、と引っ張られると同時に
胸もどくんと高鳴る
顔にはどんどん熱が集まり、頭がパニックになる
ちらりとシカマルさんの横顔を見上げれば、私と同じくらい顔を真っ赤にしていた
『…相変わらずですね』
シカ「……、何がだよ」
『照れ屋なところ、です』
微笑みながらそう言う瑞乃に、うっと言葉が詰まった
「「あ―――っ!!!!」」
『「?!」』
完全に二人の世界に浸っていたら、前方からよく知る奴らの叫び声が聞こえてきた
『……げ』
シカ「うわ」
前方から勢いよく走ってくるのは
サクラといのだ
『……!』
これはやばい
今、私達は思い切り手をつないでいる
咄嗟に手を離そうとした
『……………えっ…』
シカ「………。」
手に力を入れても離れなかった
これに驚いてシカマルさんを見れば、少しだけ頬を染めていた
シカ「……いまさら隠すこともねーだろ
付き合ってるのは事実だしよ」
『………。』
少し仏頂面で言えば、瑞乃はたちまち頬を染めた
サク・イノ「「アンタ達―――!!!!」」
シカ「うっせーなめんどくせぇ」
『どうも…』
俺に寄り添うように少し後ろに下がった瑞乃にどきっとしつつ、今は目の前のめんどくせぇ奴らをどう対処するか考えることにした
―――――
イノ「シカマルー!アンタもたまにはやるわねー!」
サク「恋人つなぎだなんて、見せ付けてんのー?」
イノ「なーんでシカマルなのかはいまいち分からないけど、うまくいってるみたいね!」
サク「うまくいってるに決まってるでしょ!
アンタそんなことも分からないのー?
まだまだねー?」
イノ「なぁんですってぇ?!
このデコデコー!!」
サク「なによ、いのブタのくせにー!!」
シカ「……はぁ…」
『……あはは…』
矢継ぎ早に口を開いたと思えば、最後は結局ケンカをするサクラといの
仲が良いのは分かるが、放置されたこっちの身にもなってもらいたい
という意味を込めたため息を漏らしていると、二人のケンカを瑞乃が止めた
―――――
シカ「そんじゃ、俺はこっちだから」
『私はこっちなので
頑張ってくださいね』
シカ「お前もな」
騒いでいたサクラ達を撒き、二人で歩いていた
やがて分かれ道に着き、軽く挨拶をしてから俺と瑞乃は反対方向に歩き出した
俺は暗号部室
瑞乃は木の葉病院だ
笑顔で手を振るお前を見て
俺の心は幸せでいっぱいになっていた
だが、束の間の幸せでさえ、非情にも奪われたんだ
もしあの時、お前を病院まで送っていたら
何か変わったのだろうか
.