運命の色
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
目の前が真っ白になる
そして、次いで襲ってくるのは、深い闇に沈む感覚
あの時と同じだ、ヒナタちゃんを守ってペインに刺された時と同じ
そこで一度意識が無くなると、視界が変わった
「俺と、結婚してください」
そう言って目の前で跪くシカマルさん
その顔は少し大人びていた
ここは、シカマルさんの特等席だ
私たちが初めて思いを打ち明けた、思い出の場所
あたりは夕焼けのオレンジ色に包まれていて、とてもあたたかかった
特等席に座り、シカマルさんの言葉をはっきりと理解すると、私の視界がどんどん涙で滲んで行く
そんな私を見たシカマルさんは、苦笑いを浮かべた
「…………泣いたら返事聞けねぇだろ?」
『だ……って…』
「……返事、聞いてもいいか?」
『……そんなの…っ、決まってます…!』
「ちゃんと聞きたい
──!」
ベンチの前で跪いたままのシカマルさんに抱きつく
驚きながらも、しっかりと私を抱き留めてくれた
『……返事は、もちろん“はい”です…!』
「………ありがとな」
ぎゅっ、と抱き締める力を強くしたシカマルさん
私の左手の薬指には、控えめに、けれどキラキラと輝くリングがはめられていた
そこでまた視界が変わる
目の前に広がるのは少し変化した木の葉の風景と、シカマルさんによく似た、私と同じ青い瞳を持った男の子
「なぁ母ちゃん」
『なに?』
「どうしてあんな面倒くさがりの父ちゃんと結婚したの?」
『へっ?』
「あ、こらバカ!何聞いてんだ!」
「本人に聞けよ面倒くせぇ、って言ったのは父ちゃんだろ!
だから母ちゃんに聞いてんだよ
で?何で?」
『………。』
くす、と微笑む
すると二人は揃って首を傾げた
仕草がそっくりだ
『私がシカマルさんと結婚したのはね………』
そこまで言った時、またぐるりと視界が暗転した
深い闇から引っ張りあげられるような、海底から海面に上がるかのような、上昇する感覚
訳も分からずそのままになっていると、視界が真っ暗になった
「瑞乃!!」
あぁ、あの人の声が聞こえる
大好きな人が、私を呼ぶ声が
***
月を見た後、一度意識を手放した
そして次に視界にとらえたのは、あの空色の髪だった
『!
おかえりなさい、シカマルさん』
「ただいま」
ふわりと微笑む彼女に、同じように笑い返す
彼女がいるのは俺の家、その台所だ
「父ちゃん父ちゃん」
「あ?何だよ、アカデミーの宿題を手伝うとかは無しだぜ」
「言うと思った……、違うよそうじゃない
聞きたいことがあるんだけど」
「何だよ?」
自分の部屋で任務服から私服に着替えると、部屋にひょこりと顔を出す小さな影
瑞乃と同じ、吸い込まれそうなほどに真っ青な瞳を持った、俺によく似た男の子
「俺、父ちゃんと母ちゃんの息子だよな?」
「………は?何言ってんだお前、当たり前だろ」
「だって、あんま似てねーじゃん
みんな父ちゃんに似てるしか言わないから…」
「ま、俺の方に似てるよな、お前は
何、アイツに似たかったのか?」
うん、と小さくつぶやくコイツの頭をわしゃわしゃと撫でる
恥ずかしそうに手を払ったのを見て小さく笑うと、また話を続けた
「だって、母ちゃんの髪の毛綺麗じゃん」
「!」
「真っ青で……、そうだ、今みたいな雲ひとつない青空によく似てる
空色の髪の毛」
「………お前、アイツの髪の毛が綺麗だと思うか?」
「?
当たり前だろ」
「……っはは、そうか
やっぱお前は、俺の子だよ」
「???
意味分かんねー」
ぶつくさ文句を言う息子にもう一度笑いかけ、コイツの頭を撫でる
親子とは本当によく似ているものだ
「父ちゃんもな、瑞乃の髪はすげぇ綺麗だと思う
あの色も、大好きなんだよ
お前もそう思うってことは、やっぱ感性が似てんのかね」
「………ふーん」
「あとな、お前の目は母ちゃんにそっくりだぞ
アイツの髪と同じ、青空みたいな綺麗な目だ」
「!
なんだよ、気持ち悪いな」
「っ、はは」
恥ずかしそうにそう突っぱねると、パタパタとどこかに走って行ってしまった
照れた時の様子だって、瑞乃によく似てる
『シカマルさん?』
「!」
ふと、聞きなれた声がして振り向く
だがその時、視界が真っ暗になった
***
「…………!!」
真っ暗な視界の中、わずかに見えてきた光
それがどんどん大きくなって、まぶしくて目を開けた
「………これは」
あたりは、戦場だった
今まで見ていたのは、夢なのか
そうだ、無限月読でみんなが眠らされて…
そこまで思い出した時、彼女の姿が頭をよぎった
「瑞乃!!」
徐々に起きていく忍、だが中にはまだ眠りから覚めない者もいた
多くの人間がいてもすぐに分かる空色、すぐに駆け寄ると、彼女はまだ眠りの中にいた
「瑞乃!」
『…………!』
声をかけて身体を揺すると、ゆっくりと瞼を開ける
青い瞳が自分の姿を捉えると、彼女はすぐに起き上がった
『………シカマルさん…?』
「…はー、良かった……」
『………夢、を見てたみたいです…』
「!
……それが無限月読だろ、俺たちは幻術の世界で夢を見てたんだ」
『……‥。』
じ、とシカマルさんを見上げる
夢の中で見た彼は、やはり今より少し歳をとった姿…
おそらく20~22歳くらいの姿だろう
あの夢は、幻術だったのか
少し残念に思う反面、正夢になれば、と願った
第四次忍界大戦は、日の出とともに終わりを告げた
***
戦争が収束し、無事に生き残った忍者達は各隠れ里に帰還しようと準備を進める
同じテントにいたシカマルと瑞乃も、それぞれ業務連絡や片付けに追われながらも、帰還する準備を進めていた
『…はい、それは我愛羅に直接お願いします
カンクロウからの連絡も聞いてます
……里の病院はどうですか、大丈夫ですか?』
《大丈夫ですよ、優秀な部下達が頑張ってますからね》
『……班長がいてくれたからですよ、ありがとうございました』
《ふふ、今の班長はこの老いぼれではなくあなたですよ、瑞乃くん
………そうそう、君のご両親のご遺体は、チヨ様のお墓の近くに埋葬しました
帰ってきたら会いに行きなさい》
『………お心遣い、感謝します』
失礼します、と連絡を切る
連絡の仲介をしてくれた砂忍の男の子にお礼を言い、その場を後にして連絡に向かう
連絡係の彼が言うには、あと半時で砂隠れに戻るとのこと
テマリが他の部隊の砂忍を指揮し、私はこの部隊の砂忍の指揮を取ることになった
『!
シカマルさん』
「よぉ、諸々の報告は終わったのか?」
『はい、あとは片付けをして…』
「………。」
ぴた、と言葉を止めた瑞乃
その先に続けようとした言葉はきっと、「帰還する」だろう
他の砂忍に聞いた、連中はあと数刻で砂隠れに帰還すると
それはもちろん、彼女にも当てはまる
「ちょっと話、しよーぜ」
くい、と手を引いて歩き出す
彼女は何も言わず、黙って俺のあとをついて来てくれた
***
連合のざわめきとは切り離されたかのような、静かな森の中
戦争の被害をほとんど受けなかったこの場所は、まるで平和そのものだ
『…あの、シカマルさん
私たち、すぐ砂に………』
「分かってる、そんな時間は取らせねぇよ」
『………。』
適当な場所で立ち止まり、後ろにいる瑞乃を振り返る
少しだけ不安げな顔を浮かべる彼女の髪に手を伸ばし、さらりと撫でた
「…生きててくれて、ありがとう」
『!
……私の方こそ…っ、シカマルさんが無事でいてくれて本当に嬉しいです…!』
目に涙をためて、今にも泣きそうな顔でそんな事を言う
彼女との別れまで、もう時間が無いというのに
「瑞乃、しばらくお互いに忙しくなると思う
里の復興もあるし、色んな事が山積みだ
だから、次にいつ会えるのかは分からない」
『…はい、分かってます』
「けど、必ず迎えに行く
俺には、お前しかいない」
『私も、シカマルさん以外考えられません
……待っています
待ちきれなくなったら、私が迎えに行きます』
「……ったく、お前どんどんカッコよくなるな
ま、お前が迎えに来てくれるのも、いいかもな」
ふっと笑えば、瑞乃も同じように柔らかく笑う
戦争中は見れなかった穏やかな笑顔に、胸がどきりと高鳴った
『! ん』
「……。」
堪らず唇にキスを落とせば、彼女もそれに応えるように目を閉じる
無限月読の中で見た、今の彼女より大人になったあの姿
あれが正夢になれば良いのに
心の底からそう願った
何度もキスを重ね、やがて惜しむように唇を離す
ぱち、と至近距離で目が合うと、瑞乃は優しく微笑んだ
青空を連想させる瞳と、空色の綺麗な髪
自分が幼い頃から大好きな、空と同じ色
この色はきっと、運命の色なんだ
「またな、瑞乃」
『はい、また』
最後にもう一度口付けを落として、彼女と別れた
俺は木の葉へ、彼女は砂へ
再会の約束を胸に
瑞乃の空色の髪が運命の色なら、きっとまた、あの空色が俺たちを繋げてくれる
『空を見上げて』
完結
.
1/1ページ