対白ゼツ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『怪我人をこちらのテントに、症状によって優先順位を考えて!』
「「「「はい!」」」」
第4次忍界大戦の一日目は、あっという間におわった
とはいっても、医療忍者はまだまだ仕事が残っている
怪我人の治療や部隊の忍者の健康管理
はっきり言ってしまえば、戦っている間よりも忍者達が集まっている今の方が忙しい
『……死体を安置所へ』
「はい」
テントから一人、また一人と人が運ばれていく
知ってる人もいれば、全く知らない他里の忍まで
次から次へと亡くなっていく
自分が手を尽くしても、助けられなかった
「……瑞乃さん、ここは私たちに任せて、どうか休んで
お疲れでしょう?」
『いえ、そういうわけには…』
死体をぼんやり見送っていると、後ろから同じ砂隠れの里で医療忍者をしている知人に声をかけられた
私の顔を心配そうに覗き込み、しきりにテントから出るよう言う
「……確かにあなたはここで一番偉い隊長よ
でも、隊長がすぐへばったら元も子もないでしょ?
ここはベテランの私たちに任せて、あなたは休みなさい
どうせまた忙しくなるわ」
『……。』
「大人の言うことも聞きなさい
子供が無茶しちゃダメ」
ね?と微笑む女性
私が医療忍者になったばかりで、チヨばあ様にお世話になっていた頃からの知り合いで、年上で経験豊富なベテラン医療忍者
彼女は私の先輩にあたる
『……分かりました
ですが、何かあったらすぐ呼んでください』
「…ハイハイ、隊長さん」
やれやれ、と肩をすくめる彼女にお礼を言い、テントを後にした
正直、ちゃんと休めるとは思えない
たくさんの人が目の前で息絶えていくのを、今日だけでも数えきれないほど見届けた
いまだに神経が張り詰めている
忍者になってから数年経過する
それなりに修羅場は乗り越えてきた
色々な経験も積んだ
けれど、やはり死体は慣れない
自分が助けられなかった人の死体は特に、だ
「――瑞乃隊長」
『!』
テントを後にし、ふらふらと本部を歩いていたら、後ろから声をかけられた
ゆっくり振り返ると、そこには砂隠れの里の忍
通信部隊に配属された後輩だ
神妙な面持ちで近寄ってくる後輩の男の子
何かあったのか、と自然と眉をひそめていた
「………奇襲部隊のカンクロウ隊長から、瑞乃隊長に通達です」
『カンクロウから?』
思わぬカンクロウの名前に、少し目を見開く
しかし、今の後輩の口振りからカンクロウは無事だと分かる
それにいくばくか安心しながら、続きの言葉を待つ
「今日、奇襲部隊は穢土転生された忍数名と対峙したそうです
その中に
チヨ様のお姿もあったそうです」
『!!』
ふっと目の前が真っ暗になる感覚がした
私の異変に気付いたのか、後輩があわてて肩を揺すった
大丈夫ですか?
と心配する声が聞こえてくる
『………他には?』
「……。」
『それだけでは、ないですよね?』
ぐ、と押し黙る後輩に、いやな予感を感じた
どうか、この予感が当たらないように――…
「 」
『!!!!!!』
当たってしまった
――――
チョ「――…瑞乃を探してるの?」
シカ「……………あ?」
ガヤガヤと騒がしい本部を、チョウジと休憩がてらうろうろする
いのは医療班の手伝いに行き、他の奴らも自分の仕事で忙しそうだった
所々では、亡くなった忍を運ぶ姿もみられる
その亡骸にすがりつくように泣く姿も
瑞乃が無事なのは分かっている
アイツが治療している間、ずっと俺たち三人がそばにいたから
それでも姿を探してしまうのは、なせだろう
チョ「……あれ、瑞乃じゃない?」
シカ「! ホントだ」
チョウジが人々の先にいる彼女の姿を見つける
なんせあの空色の髪の毛だ。見間違えるはずがない
自然と速まる足に、隣にいたチョウジがクスッと笑った
視界が開けてくる
どうやら瑞乃は砂忍と話しているようだ
彼女の横顔は髪の毛に隠れて見えないが、話している相手の男は神妙な面持ちだ
なにか重要な話をしているのかもしれない
後にしようか、その考えが頭によぎった時
男が神妙な面持ちのまま、瑞乃に何かを言った
次の瞬間彼女はうつむき、両手で顔を覆った
それにあわてて男が声をかけるが、瑞乃は一言何かを告げると、足早にその場から去った
シカ「瑞乃っ」
すぐに後ろ姿に声をかけたが、届かなかったようだ
頭をポリポリとかき、とりあえず先ほどまで彼女と話していた男を見る
男も俺を見ていた
「隊長のお知り合いですか?」
チョ「うん。瑞乃が木の葉にいた頃、よく一緒にいたんだ」
シカ「……アイツ、何かあったのか?」
チョウジの言葉を少しさえぎり、男をじっと見る
知り合いなら、と男は口を開いた
「瑞乃隊長の師匠が穢土転生されていました」
チョ「え……」
シカ「……。」
言葉を失った
脳裏では、アスマの姿が鮮明に思い出された
だが、男はさらに言葉を続けた
「それと……、瑞乃隊長のご両親が、殉職されました」
目の前で哀しそうに顔を歪める男
目を見開き驚くチョウジ
俺はというと
シカ「アイツのとこ行って来る」
それしか思い付かなかった
すぐに駆け出した俺を、チョウジが不安げに見送る
気にせず俺は空色を探した
――――
「……あの方は、瑞乃隊長の何なんですか?」
チョ「ん?」
男が訝しげにシカマルの背中を見る
他里の忍をあそこまで気にするのか、と言葉を続けた
チョ「シカマルと瑞乃はね、恋人同士なんだよ」
「え」
びっくりしてチョウジの顔を見る男
それに笑顔を返して
チョ「恋人の心配するのは当たり前でしょ?」
にこりと笑い、男のもとを去った
瑞乃はシカマルに任せておけば、きっと大丈夫
―――――
シカ「(どこだ?)」
男から瑞乃のことを聞き、すぐに探しに出た
途中見かけた医療班に彼女の行方を尋ねたが、今は休憩中だと言われた
人で溢れる本部を足早に歩く
だが、よく目立つ空色は見付からなかった
どこかのテントの中か?
と思い、一旦足を止める
何気なく見た、本部から少し離れたところにある、闇が包む森のある木の下
暗くて少し見えにくいが、特徴的な空色は月の光にもよく映えている
シカ「瑞乃、」
瑞乃がぼんやりと空を見上げていた
シカ「瑞乃、」
『……!』
木に寄りかかって空を見上げていたら、シカマルさんがこちらに来た
その顔が少し気まずそうに歪んでいるのを見て
『………聞いたんですか?』
「……あぁ
お前の師匠のことも、ご両親のことも」
『そうですか』
特に表情を変えず、淡々と受け答えをする瑞乃
その横顔を見つめていたが、彼女の顔には泣いた形跡は見られなかった
『私は、』
「?」
ポツリポツリと口を開く彼女の言葉に耳を傾ける
空を見上げていた顔をうつむかせると、綺麗な空色の髪の毛が横顔にかかった
『私は医療部隊の副隊長です
医療忍者として、手を尽くして人命救助に当たったつもりでした
でも、助けられなかった人はたくさんいました
それだけじゃない
私の下で戦場に行って治療活動に取り組んだ医療忍者も、何人も亡くなりました
私の指示が駄目だった
私の力が、足りなかったから…』
じょじょに声が小さくなる彼女
その肩が小刻みに揺れていた
「……もう、いい
無理すんな…」
『……っ、ちがっ…
無理なんか、してません
そもそもっ、両親が亡くなったくらいで狼狽えていたら示しがつかないし、この部隊をひっぱる立場にあるのに、私は何も出来ないっ…!』
ぽろぽろと涙をこぼす瑞乃の腕を引っ張り、そっと抱き締める
カタカタと揺れる彼女をなだめるように、少し力を入れた
それでも彼女はひどく狼狽している
『っ!』
「落ち着け!」
一瞬だけ唇をふさぐと、ピタリと止まった
驚いたように俺の顔を見る彼女の瞳からは、涙がとめどなく溢れている
「……落ち着け、な?」
『……っ』
ぽんぽんと頭を軽く撫でると、瑞乃は口をつぐんだ
多分、瑞乃は精神的に参っているんだろう
16歳で医療部隊の副隊長に任命され、今は第3部隊に配属された医療忍者を統括している
そのプレッシャーは、きっと凄まじいのだろう
現に、普段は冷静沈着な彼女がここまで狼狽しているのだから
それに加えて、両親の訃報
多くの仲間の死
普通でいられる方がおかしいというものだ
「無理して我慢するな
両親が亡くなって普通でいられるわけないだろ?
一人で抱え込み過ぎるな」
『………すみません』
「謝る必要もねぇよ。そんだけお前は頑張ってるんだ、みんな知ってる」
ゆっくりなだめるように話すシカマルさんのおかげで、いくらか落ち着きを取り戻した
でも、落ち着くと両親が亡くなった事実がまた襲い掛かってくる
父さんも母さんも、死んだんだ
チヨばあ様は敵として現れ、カンクロウ達が苦戦している
自分の大切な人達が死んで、大好きな師匠は敵に利用されている
平常心でいられるわけがない
「………今なら誰も見てねぇ」
『……?』
シカマルさんが小さくつぶやくと、また腕の中に閉じ込められた
「…泣きたかったら泣け
俺がそばにいるから…」
『っ!』
優しい声が耳に届く
それをきっかけに、また涙が溢れだした
『……父…さ…っ…。母、さん……!チ…ヨ、ばあ…様……っ!
うあぁ、ぁ……っ!!』
「……。」
堰を切ったように嗚咽まじりに泣き叫ぶ瑞乃
その小さな体を強く抱き締めた
強く、でも、壊れないように優しく
医療班の副隊長、その任の重さは計り知れない
何人もの命を救える反面、目の前で死に逝く人を見てしまうのも事実
瑞乃の背負うものの大きさは、自分のそれとは比にならないのだというのも、よく分かった
俺はただ、震えている背中をさすることしか出来ないということも
「………悪い、瑞乃…」
小さくつぶやいた言葉は、泣いている彼女には届かなかった
守りたい、でも、力がない
何かしてやりたいのに、何も出来ない
自分に無性に腹が立った
――――
「―――…落ち着いたか?」
『……は、い。すみませんでした…』
泣き続けることしばらく
涙をぬぐい、瑞乃が顔を上げた
泣いていたせいで声が少し擦れているが、支障はないだろう
「………その謝り癖、どうにかしろよ」
『え……、すみませ「謝り過ぎだっつのバカ」………。
バカって、酷いですよ…』
ふっと笑ったその顔にいつもの明るさがないのが気になるが、今は仕方がない
とりあえず、頭をくしゃくしゃと撫でた
『………どうしたんですか?』
「……別に。なんとなく、だよ」
『珍しいですね、シカマルさ…………痛い』
ぐいぐいと袖で涙をぬぐうと、不平をこぼした瑞乃
少しは落ち着いたようだ
「瑞乃隊長――!!」
二人を和やかな空気が包む中、本部の方から一人の忍が瑞乃を呼んだ
それに気付いた彼女の顔つきが、すぐに鋭いものへと変わる
『どうかしましたか?』
「急患です!早く医療テントに来て下さい!」
『! 分かりました
―――シカマルさん、私はいったん戻ります
ありがとうございました』
「俺は別に何もしてねぇよ
それより早く行ってこい、隊長さん」
小さく笑うシカマルさんに背中を押され、私を呼びに来た忍とともに木の下から出た
いつまでも泣いてなんかいられないんだ
「――隊長、こちらです!」
急かす忍とともに瑞乃が本部の方へ向かう
その後ろ姿をなんとなく見つめていた
「…あ?
(アレは…、クナイ?なんで手に持ってるんだ…)」
瑞乃と一緒にいる忍が、片手にクナイを持っている
おそらく瑞乃からは見えていない死角だ
心臓が嫌な音を立てた
</font>
「――――……!!
瑞乃っ!!
そいつから離れろっ!!」
『――?!』
シカマルさんが叫ぶ
すぐに隣の忍を見ると、不気味に口元を釣り上げていた
『なっ、!?』
「瑞乃!!」
すぐさま後ろに飛び退いた瑞乃を追い掛ける忍
あわてて影真似をし、忍の動きを止めた
すると、忍の姿がみるみる変化し、戦場にいた白ゼツの姿へと変わった
「あーらら、バレちゃった」
『なんで…?!なんでここに…!!』
シカ「……目的はなんだ」
瑞乃も俺もクナイをかまえ、白ゼツを睨む
白ゼツはニヤニヤと笑みを浮かべながら、彼女を見た
「目的ぃ~?そんなの簡単さ
忍連合の本部を混乱させること
医療忍者の暗殺
あわよくば、医療忍者のトップの暗殺……かな」
『!!!』
シカ「………狙いは瑞乃か…」
「そ。医療忍者は邪魔だから
ま、失敗しちゃったけどね~
でも、他に侵入した奴らが上手くやってくれてるかもね?」
さぁっと血の気が引くのを感じた
シカマルさんが何か言っているような気もするが、耳に入らなかった
「瑞乃隊長!ご無事ですか!?」
イノ「瑞乃っ!」
チョ「シカマル!瑞乃!
大丈夫?!」
『……みん、な…』
複数の人影が集まってくる
医療班の忍や、いのちゃんにチョウジ君
みんな心配して駆け付けてくれたようだ
シカ「………“俺は”平気だ。悪いがこいつを頼む
瑞乃、こっち来い。とりあえず安全なところに行くぞ」
『え、あ……、…はい』
シカマルさんに話し掛けられ、慌てて返事をする
何か言おうとシカマルさんが口を開いたが、頭をがしがしと掻くだけで何も言わなかった
久しぶりにつながれた右手は、いつもより力強かった
.