また会うために
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どのくらい経っただろうか
戦場には相変わらず鉄の匂いが散漫しており、さらにその匂いが濃くなったように感じる
怪我人を見付けては、まわりに細心の注意を払って治療にあたり、安全な場所まで運ぶ
それをひたすら繰り返していた
自分のことで精一杯だった
だから、気付かなかった
自分が最も恐れていたことが、すぐ近くで繰り広げられていたことに
――――
シカ「――…しっかりしろチョウジ!!」
チョ「………。」
アス「チョウジ…!」
私が恐れていたこと
それは
シカ「俺達が……っ、俺達がアスマ先生を止めるんだ!!」
シカマルさん達とアスマさんが戦うことだ
チョ「やっぱり僕にはできないよ……!!
アスマ先生に攻撃するなんて!!」
イノ「チョウジ?!」
シカ「(ダメだ、チョウジの奴完全に戦意喪失してやがる…!)」
シカマルやいのが声を荒げても、チョウジは動けなかった
恩師に拳を向けられないのだ
アス「……!
よけろチョウジっ!!」
戦意を失って立ち尽くすチョウジ
しかし、アスマの体は操られたままだから、止まらない
手が勝手に印を結んでしまう
自分が得意とする火遁の術だ
イノ「チョウジよけてぇっ!!」
アス「火遁・灰積焼!」
チョ「!!」
炎が一直線にチョウジにのびる
完全に反応に遅れたチョウジにシカマル達が慌てて声を上げたが、間に合わないと気付いた
シカ「っ、チョウジ!!」
――――やばい
チョウジを助けようと足を踏み出すと同時に
聞き慣れた、でも少し懐かしい声が耳に届いた
『――…水遁・水陣壁!!』
ひらりと現れた空色がチョウジの前に飛び降りると同時に、彼女は地面に両手をついた
そこから溢れだす大量の水が壁となり、アスマの炎からチョウジを守った
シカ「瑞乃…?!」
炎が水に触れ、大量の蒸気を発生させる
見えにくくなった視界を利用して、瑞乃がチョウジをシカマル達のもとへ引っ張った
アス「ナイスだ瑞乃
……さっきぶりだな」
ホッとしたように息をついたアスマに、瑞乃は小さな笑みを見せた
イノ「瑞乃、なんでここに?!」
『ここの部隊の医療忍者を統括しています
間に合って良かった』
チョ「………。
ありがとう瑞乃…、助かったよ」
気まずそうにお礼を言うチョウジに、瑞乃は珍しく眉を釣り上げた
『――…何をしているんですか』
「「「!!」」」
静かにつむがれた言葉の中に、怒りの感情が交じっているのがありありと伝わってきた
『何をためらっているんですか
あなたが…、チョウジ君達がやらなければアスマさんを止められる人はいない
アスマさんを止められなければ
…仲間が殺されるんですよ』
チョ「……。
分かってる、よ『いいえ、分かっていません。分かろうとしていない』
っ、違う!」
イノ「……。(瑞乃…?)」
シカ「……。」
普段の温厚な彼女とは違って、今の瑞乃は静かにチョウジを責めている
それにいのが驚いて目を見開くが、シカマルはじっと二人を見ていた
『現実から目を背けるな、逃げるな
…私達はもう子供じゃない
今、私達が戦わなければ未来はない
自分もこの世界を守るために戦っていることを自覚しなさい!』
チョ「っ!!」
瑞乃が声を荒げると、チョウジが体をびくりと揺らす
さらに瑞乃が言葉を続けようと口を開くが、それを遮るように彼女の名前が呼ばれた
「隊長!!」
「瑞乃隊長何してるんですか!
あなたが前線に出ては困ります!!」
四人のもとに現れたのは、先ほどまで瑞乃と行動を共にしていた医療忍者二人
突然いなくなった彼女を連れ戻しに来たのだ
『…すみません、すぐ戻ります』
抑揚のない声で返事をし、シカマルと目を合わせた
大丈夫か、と少し不安げな顔でシカマルを真っ直ぐ見つめる瑞乃
シカマルは彼女を安心させるように頷いた
瑞乃がアスマに目を向ける
それを待っていたかのように、アスマはにこりと微笑んだ
アス「早く戻ったらどうだ?
“隊長”さん?」
『そうさせてもらいます』
ふ、と笑う。だがすぐに表情を引き締めて、チョウジを振り返った
『……辛いのはあなただけじゃない』
チョ「!!」
はっと瑞乃の言葉で目を見開く
それを確認した彼女は、後ろに控えていた医療忍者二人に声をかけてこの場から移動しようとしていた
シカ「瑞乃!」
『!』
足を踏み出した彼女にシカマルが声をかける
振り返って目を合わせると、真剣な瞳が真っ直ぐ瑞乃を見つめた
シカ「……“また”、後でな」
『!』
また
生き残れるかさえ不確かな戦場で、場違いな台詞
それをあえて言ったシカマルの気持ちが分からない瑞乃ではない
“また”
つまり
“死ぬな”
『……はい!
“また”、必ず…!』
力強く返事をすると、シカマルはふっと微笑んだ
そして、今度こそ瑞乃達は走り去った
***
アス「また…、か
お前にしては珍しいな」
シカ「………確かにそっすね
不確かなことはあんまり言いたくないんすけど
こればっかりは、そんなこと言ってられねーっすから
………もう、あんな思いをするのはごめんだ」
イノ「…シカマル……」
チョ「……。」
シカマルの言葉に、いのとチョウジが彼の横顔を見やる
暁の木の葉襲撃でのことを言っているのはすぐに分かった
三人の表情から察したのか、アスマはそれ以上口を挟まなかった
アス「………来い!!」
シカ「…。
―――…行くぞ!」
ここで死ぬわけにはいかない
また、アイツに会うために
瑞乃を守るために
死ぬなよ瑞乃
お前がいなくなるのは嫌なんだ
***
「隊長、今のは木の葉の忍ですよね」
「どういったご関係で?」
『任務で木の葉に滞在していた時に、いろいろと良くしてくださった方々です』
戦場を走りながら、後ろの砂の医療忍者二人の質問に簡単に答える
それで合点がいったように、二人は黙ってまわりを警戒し出した
『(……アスマさん…)
あの三人なら大丈夫です。きっとアスマさんを封印してくれる
―――…さぁ、私達も頑張りましょう
この戦争では、私達は必要不可欠な存在ですから』
「「はい!」」
***
アス「――…まさに完璧な猪鹿蝶だった!」
イノ「アスマ先生…」
チョ「先生…」
シカ「…。」
アスマをなんとか追い詰め、どうにか封印する手前まで事を運んだ
封印班に封印される直前に、本当の最期の言葉を伝えられ、目頭が熱くなる
にこりと穏やかに笑うアスマは生前となんら変わりなく、いまだに安心感を抱く
アス「……最期に、シカマル」
シカ「! なんだよ…」
きっと情けない顔をしているのだろう。アスマは俺の顔を見て一瞬苦笑いをすると、静かに口を開いた
アス「瑞乃を大事にしろよ
あの子はお前のことを信じてるし、大切に思ってる
何より愛してる
……あんないい子、逃したら二度と見つからないぞ?」
いたずらっぽく微笑むアスマに、負けじと不敵に笑う
そんなこと、百も承知だ
シカ「誰にもわたさねーし逃がさねーよ
アイツは最高の女だっつの
………瑞乃は、俺が必ず守る」
拳を握り締め、自分に言い聞かせるように力強く言葉をつむぐ
アスマがふ、と小さく笑ったのに気付いた
アス「男に二言はないな?」
シカ「ったりめーだ」
好きな女も守れない奴が、玉を守れるわけねーだろ
そう続けると、アスマは心底嬉しそうに微笑んだ
アス「末永く幸せにな」
――――
「隊長!白ゼツです!」
『!(またか…!)
時間を稼いでください!この方の治療が終わるまでの時間を!』
「「はっ!!」」
シカマルさん達と別れたあと、また色々な場所を移動しながら治療に当たった
しかし、治療中に何体もの白ゼツが襲い掛かってきて、思うように治療が進まない
ただ体力とチャクラをそがれるだけだった
「……ぐ……っ!!」
『あと少しです!』
ブゥゥウンという独特な音と光を放ちながら傷をふさいでいく
まわりでは、部下二人が白ゼツを押さえ込んでいる
白ゼツ「ぐあっ!!」
「よし!一人は倒した!」
「分かった!あと一人だ!」
部下達の声を聞きながら自分の仕事に集中する
あと少しで傷をふさぎ終わるという時、
「瑞乃隊長後ろです!!」
『?!』
部下の一人が声を荒げた
すぐに後ろを振り向くと、土煙の中から白ゼツが現れ、私に向かって突っ込んでくるのが確認できた
すぐさまホルスターからクナイを数本取り出し、ゼツに向けて投げつける
それらは全てゼツの体に刺さり、ゼツは大きく後ろに仰け反ってそのまま倒れた
ふぅ、と一安心して治療を再開しようと前を向くと
「…まだ、…だ…っ…。お嬢…ちゃん……っ!」
『え…』
治療中の忍者に息も絶え絶えに言われ、さぁっと血の気が引くのを感じた
とたん、感じる背後の気配
ばっ!とすぐさま後ろを振り向くと、クナイが体に刺さったままの白ゼツが、すぐ後ろにいた
―――しまった
長時間の治療活動の疲れからか、普段なら気付かないワケがない背後の気配に気付けなかった
いや、クナイを刺しただけで安心してしまった自分のミスだ
「「瑞乃隊長っ!!」」
二人が叫ぶ声が聞こえる
私はこれから来るであろう衝撃を覚悟し、目を強く瞑った
「――忍法、影真似の術!!」
――――
アスマを無事封印し、チョウジが一族秘伝のカロリーコントロールを成功させ、第3部隊は一気に優勢になった
戦場を走り回り、残りの白ゼツ達を一掃する
そんな中、チョウジやいのと移動していると
「「瑞乃隊長っ!!!」」
アイツの名前を叫ぶ声が聞こえてきた
すぐさまそちらの方向に目をやると、さっき瑞乃と一緒に行動していた砂の忍二人が、白ゼツを押さえながらある方向を見ていた
シカ「―――!!」
チョ「わっ?!」
イノ「ちょっとシカマル?!どこ行くのよ!!」
急に方向転換した俺に、後ろにいた二人が声を荒げた
しかし、そんなことは気にしていられなかった
瑞乃が危ない
シカ「忍法、影真似の術!」
――――
『………?』
いつまでたっても訪れない衝撃に疑問を持ち、そっと目を開ける
すると、目の前にいる白ゼツが中途半端な格好で固まっていた
あわてて周りを見渡すと、
『…!
シカマルさん?!』
シカマルさんが離れたところに片膝をつき、印を組んでいた
影真似の術か、と合点がつく
すぐに体が動かない白ゼツの首をはねた
完全に動かなくなった白ゼツを確認し、シカマルさんをもう一度見る
『ありが―――……!
シカマル後ろっ!!!』
シカ「?!」
瑞乃が俺の後ろを見て叫ぶ
すぐさま後ろを振り向くと、土煙から白ゼツが現れた
術を解いたばかりで反応に遅れた俺はあわててクナイを取り出す
だが
チョ「部分倍化の術!!」
イノ「シカマル、瑞乃!
大丈夫?!」
チョウジ君が白ゼツを殴り飛ばし、いのちゃんが私のところへ駆け付けた
チョ「瑞乃!さっきはありがと!
ここは僕たちに任せて、瑞乃は自分がやるべきことをやって!」
イノ「私たちでサポートするから!」
『……。』
そう言うやいなや、すぐに部下二人の援護に回ってくれるいのちゃん
チョウジ君はたった今治療が終わった忍者を運んでくれた
シカ「瑞乃、ありがとな
大丈夫か?」
『…シカマルさん……』
シカマルさんがそばに来て、肩をぽんと叩く
不安げに眉を寄せるその顔を見たら安心してしまった
今は戦場にいると言うのに
シカ「安心しろ
お前は、俺が必ず守る」
ほら、すぐに私を安心させる
会いたかった、シカマルさん
.