再会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ふと目を開けると、白い壁が目の前に広がっていた
いや、壁というよりは天井だ
知らない場所、ここはどこだ
自分がどこかに寝ているという事を理解し、なんとか身体を起こす
周りを見ると、病院の一室であることが分かった
「起きたかね」
『!』
がら、と扉を開き、老人が入ってくる
その相手に思わず目を見開いた
「……その顔は、ワシが誰か分かっとるようじゃの」
『………三代目、さま』
「正解じゃ」
にこりと穏やかに笑うその老人は、木の葉隠れの里の長
三代目火影だった
三代目はトキに近寄ると、じ、と彼女の顔を見た
トキは戸惑いながらも、その視線を真っ直ぐに見つめ返した
「………名は、何という?」
『…空目トキです』
「!
………やはりか
青い髪に青い瞳、確かに空目の人間の特徴じゃ
トキよ、家族の名前は言えるか?」
何故こんな事を聞かれているのか、自分は何故病院にいるのだ
様々な疑問が頭をよぎるが、大人しく三代目の質問に答えた
父と母、それぞれの名前を言うと、三代目は目を見開いた
「……そうか」
『………あの、私は、何でここにいるんですか』
「覚えておらんのか?
木の葉の大門の前に倒れていたのだよ、それを門番が見つけ、ここまで運んだ
トキ、君は今までどこで何をしていたのか、分かるか?」
『………私、は、今まで…』
私は今までどこで何をしていたのか、思い出そうとすると、頭がズキンズキンと痛み出した
あまりの激痛に、頭を抱えてうずくまる
異変に気付いた三代目はすぐに医療忍者を呼んだ
「大丈夫か?!」
『あ……あ、わた、私、何も分からない…
思い、出せない……』
「思い出せない?」
バタバタと人が病室に現れ、一気に騒がしくなる
身体の検査を受け、しばらくすると医者達は部屋を出て行った
「思い出せないのか?」
『……思い出そうとしたら、突然頭が痛くなって…
………今も、頭が』
ズキズキと鈍い痛みが断続的に頭を襲う
三代目は、そうか、と困ったようにつぶやいた
「ではトキ、頭が痛くならない範囲でなら、何か分かることはあるか?」
『………空目一族が襲われた事は、覚えています
私をかばって、父と母が大きな蛇に食われたのも覚えてる
………けどその後、何があったのかは思い出せません
頭が痛くなります』
「一族が滅んだ事は理解しておるのだな?」
『………はい』
淡々と答える彼女の様子に不信感を抱くも、三代目はそのまま質問を続ける
「君はおそらく、一族を襲った輩に誘拐されていた
三年間近くそいつらに捕まっていたのだろう
だが幸いにも、君は十分に食事を与えられ、健康上には何の問題もない
だが、何かの理由で輩は君を手放した
記憶を消し去って、じゃ
そう我々は考えておる」
『………。』
「あの日、君は何をしていた?
覚えている限りで良い、ワシに話してはくれぬか」
優しい笑顔を浮かべる三代目に、トキはぽつぽつと話していった
シカマル達と遊んでいた事、予知夢を見た事、夜中にシカマルの家を抜け出して集落に戻った事
そして集落では、夢と同じ事が起きていた事
全てを話し終え、三代目を見ると、彼はとても驚いていた
「夢、予知夢の能力があるのか」
『?』
「………なら、君が誘拐された理由がいくつか生まれてくる
夢見の能力はこの世に二つとない代物じゃ、また君を狙う輩が現れるやもしれん
トキ、君の身柄は木の葉が責任を持って保護する
これからは、木の葉の人間として暮らすんじゃ」
『え……』
「早速ではあるが、君にはアカデミーに行ってもらおうかの
あぁもちろん、アカデミーの手続きや衣食住の心配はいらんよ」
はっはっは、と大きな笑い声をあげ、三代目は病室を出て行った
突然の事で頭がついていかない
まだ分からない事だらけなのに、不思議と不安はなかった
三年ぶりに戻ってきた故郷
そこで、新しい生活が始まる
***
数日間、念のために木の葉病院で入院させられたトキ
彼女の存在はまだシークレットという事で、見舞いに来るのは三代目、そして最初に彼女を保護したコテツとイズモだった
コテツとイズモがトキの住む場所やら生活用品やらといった環境を準備してくれたらしく、退院しても住む場所は確保されているらしい
『外に出ても良いんですか?』
イ「おう、三代目の許可が降りたからな
けど、俺とコテツが監視する
離れたところからだけどな」
コ「お前はまだトップシークレットな存在、下手に存在がバレても面倒なことになるからな」
『……トップシークレット』
イ「あ、でも安心しろよ
準備が整えば、お前が無事に戻ってきたって公にするそうだ
今日さえ我慢してくれれば、すぐに胸張って木の葉を歩けるようになるさ」
はいこれ、とイズモがトキに白いフード付きのパーカーを渡す
首を傾げる彼女に、二人は申し訳なさそうに口を開いた
イ「お前の髪は外じゃ目立つからな、外出てる間はフードをかぶっててくれ」
コ「青い髪なんて、空目一族以外にはそういないからな」
『……分かりました』
サイズがぴったりのそのパーカーを羽織り、フードをかぶる
少し視界が狭まるが、今の彼女にはむしろ見えすぎない方が安心感を与えた
コ「さて、どこに行く?道は分かるか?」
『………空目一族の集落に行きたいです、あの場所がどうなったのか見ておきたい』
イ「………そうか、じゃあ行こう
俺たちは後ろからついて行く」
はい、と返事をし、病院を出て歩き出す
一歩外に出れば、そこにはたくさんの人がいた
ガヤガヤと賑やかな木の葉の街並みは、三年前となんら変わらない
よくお使いに行った店など、思い出のある場所も目に入った
だがそれには構わず、真っ直ぐに里のはずれに向かった
そこが空目一族の居住区だからだ
遠くにコテツとイズモの気配を感じながらも、なるべく人目につかないように急いだ
***
賑やかな歓楽街から離れると、一気に自然が多くなり、静かになる
この静けさが懐かしい
『…あ………』
集落に着いたトキは、目の前の景色を見て言葉を失った
何も無い、家も、店も、空目一族の集落は跡形も無くなっていた
代わりにあるのは、たくさんの墓石
そして墓石の一番奥には、大きな大きな石碑が建てられていた
空目一族の民よ
安らかに
そう刻まれた石碑には、たくさんの名前が彫られていた
名字はすべて空目
『………!!
お父さん、お母さん……』
一人一人の名前をなぞっていく中で、見つけてしまった見慣れた名前
最愛の人の名前
『………空目は、滅んだんだ…』
じわじわと胸が重くなる
ショッキングな事実のはずなのに、頭は冷静だった
いや、実感が無いだけなのかも知れない
他の名前も順番に、同じようになぞっていく
隣人、遊んでくれた友人、お世話になったおじさんやおばさん、他にも、知ってる名前ばかりだ
みんな、大好きな人
『………ごめんね』
私があんな夢を見たから、こんな事になったのだろうか
ふと、そんな思いにかられて謝罪の言葉を口にする
もう誰にも、届かないというのに
石碑に額をつけ、ごめんね、ともう一度つぶやく
トキの頬からは、一筋の涙が流れ落ちた
***
ザ、ザ、と足音が聞こえてきたのは、そのすぐ後だった
「ーー…マル!待ってってば、歩くの早いよー」
「ったく、寄り道してっからだろーが…
花がしおれたらどーすんだよ
………!
誰だ、お前?」
子どもの声がトキの背中に投げかける
くる、と振り返り、その相手と視線を交えた
切れ長の瞳に、高く結わえた黒髪の男の子
そして、頬にうずまきのマークがあるふくよかな男の子
二人を見た瞬間、息を飲んだ
一族が滅んだあの日、ずっと一緒にいた幼馴染がそこにいたのだから
***
山中花店で花束を購入すると、いのがシカマル達を見て不思議そうに問いかけた
い「アンタ達、たまーに花買ってくけど誰にあげてんの?しかもいつも青い花ばっかり……」
シ「おめーには関係ねぇだろ」
い「教えてくれたって良いじゃない!」
チ「ごめんいの、アカデミーでね」
青を基調とした、鮮やかな花束をいのに作ってもらい、店を出る
途中チョウジが買い食いをするなどの寄り道はあったものの、そのまま二人で里の外れまで歩いて行った
三年前に滅んだ幼馴染が住んでいた集落跡地
そこはもう人が住んでた跡は消え去り、墓標と弔いの石碑があるだけの寂しい場所になってしまった
チ「トキ……」
シ「………。」
青い花束を大事そうに抱え、チョウジが悲しげに幼馴染の名前をつぶやく
物心ついた時から一緒にいた幼馴染は、あの夜忽然と姿を消した
生きているのか、それとも死んでいるのか
何も情報が入らないまま、三年が過ぎた
一年に一度は必ず花束を持って、この場所に来る事を提案したのはシカクとチョウザだった
里の人間の記憶から薄れていっても、お前たちは絶対に忘れるなと、そう悲しそうに笑いながら言う父親たちに、自分たちは頷くしか出来なかった
「誰だ、お前?」
そして今日、空目一族の集落跡地に行くと、フードをかぶった子どもが石碑の前に立っていた
ほとんど人が来ない場所に、子どもが一人でいる事を不審に思ったシカマルが声をかけると、その子どもはシカマル達を振り返る
「………………!!」
振り向いた子どもは、涙を流していた
けど嗚咽をこぼす訳でもなく、ただ、静かに、泣いていたのだ
それにも驚いたが、それ以上に、シカマルは目を見て驚いた
「(……青い瞳)」
フードで顔はよく見えないが、涙を流す瞳は青く、澄み切った青空のようだ
ナルトの目と似てる、と漠然と既視感を感じてると、一陣の風が三人の間を通り抜けて行った
強い風に思わず目をつむる
『あ……』
そんな小さな声が聞こえて目を開ける
「………っ!!」
風にあおられ、フードがはずれる
そのフードの下に現れたのは、鮮やかな青色の髪だった
そしてはっきりと露わになった顔に、自身の幼馴染の面影が重なる
「………………トキ、か?」
声が震えた
隣にいたチョウジは、彼女を見て固まっている
まさか、そんな
本当にアイツなのか、いなくなった幼馴染なのか
聞きたい事が溢れるが、ノドがカラカラで言葉が出てこない
「お、まえ、は、まさか」
やっとの思いで声を振り絞った時、突然二人の影が現れた
***
風にあおられフードがはずれる
しまった、と思った時にはもう遅かった
「………トキ、か?」
『!!』
トキの顔を見て、シカマルとチョウジが大きく目を見開いている
あぁ、私を覚えていてくれたのか
嬉しさで視界がかすむ、だが言葉は出なかった、ノドがカラカラになってしまったのだ
「お、まえ、は、まさか」
途切れ途切れに言うシカマルに、何かを答えようと口を開く
だがその時、二人の気配が急激に近付いてきた
「そこまでだ」
ザ、と目の前に現れたのは、監視をしているコテツとイズモ
二人の登場に驚くシカマルとチョウジだが、それには構わずにトキを振り返る
イ「必要以上の人との接触は良くない
一旦戻るぞ」
『………は、い』
コ「お前らも、今のは誰にも話すな
花を置いたら真っ直ぐ帰れよ」
チ「え……、でも、その子はトキじゃないの?!
間違えるはずないよ!僕たちずっと一緒にいたんだから!
ねぇトキ!僕だよ!チョウジだよ!
分かるでしょ…?!」
チョウジの声が静かな跡地に響く
だが彼女が返事をする前に、ふっ、と三人は消えてしまった
***
一瞬で姿を消した三人
「ねぇシカマル!今の…、今のはトキだよね?!僕たちの幼馴染の……!
ねぇ!やっと帰ってきたんだよ!トキが!」
「………なら、何でいなくなったんだよ…
あの夜みたいに、また、何も言わないで…」
三年前の記憶が蘇る
何も言わずにいなくなった彼女、そして、また目の前で何も言わずにいなくなった彼女
トキが帰ってきた、なのにまたいなくなった
そんな気がしてシカマルは複雑な心境だ
「……確かにアイツはトキだ、間違いねぇ
間違えるはずがねぇ」
「……うん、うん、そうだよ!トキが帰ってきた…!」
「……チョウジ、あの二人に言われた通り、一応この事は親父たちには黙ってろよ」
「分かった!
………でも、早く会いたいな…トキ…」
泣き笑いをするチョウジを見て、ふ、と頬をゆるめる
そのチョウジから花束を奪い、石碑の前にそっと置いた
「……ここにアイツの名前、無くて良かったな」
石碑に並ぶ名前を見て静かにつぶやいたその言葉は、風とともに消えていった
***
しゅ、と視界が変わると、そこはもう集落からは離れた場所だった
どくんどくんと激しい鼓動を抑えるように深く呼吸をすると、イズモが声をかけてくる
イ「今のはシカクさんとチョウザさんの子ども達だよな
知り合いだったのか」
『……幼馴染、です
あの日、本当はシカマルの家に三人で泊まるはずだったんです
けど私は夜に抜け出して…そのまま……』
コ「久しぶりの再会、か
ごめんな、邪魔して」
『……いえ…、二人が私の事を呼んでくれただけで、もう、良いです…』
三年間の空白があっても、二人は彼女の事を覚えてた
そして幼馴染と言ってくれた
その事が嬉しくて、ボロボロと大粒の涙をこぼした
『会えて、良かった…!』
大人びた子だと思っていたトキが子どもらしく嗚咽を漏らしながら泣く
そんなトキを見てコテツ達は驚いた
だが、すぐに表情をゆるめ、彼女が泣き止むまで背中をさすってくれた
第6話
再会
あとがき
やっと会えた…!てか原作に入れる…!
次かその次からは原作に添いつついきます!中忍試験とかな!!!
私自身が早く書きたいので頑張ります!!!
.