兄と妹
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「トキと言ったな、そう警戒しないでくれ
俺と少し話さないか?」
『………。』
ぎゅ、と小南の服を掴んで離さないトキに、イタチが困った表情を浮かべる
それを見た小南が、身体を屈めてトキの顔を覗き込んだ
「トキ、彼はもう暁の仲間なのよ
家族が増えたの、分かる?」
「家族…?」
小南の言葉にイタチが眉を寄せる
だがトキは、こくんと小さく頷き、イタチを見た
***
アジトの外に出て、大木の枝に二人で腰掛ける
するとすぐに、イタチが口を開いた
「初めて会った時、ペインがお前に”夢で見た”と言っていたが、それはどういう意味なのか聞いても良いか?
お前はまるで、俺が来ることを分かっていたように見えたのだか」
『……予知夢です』
「!」
ぼそ、とつぶやいた言葉にイタチのまゆがぴくりと動く
だが何も言わず彼女の話を促した
『イタチさんが暁に来る一週間ほど前、夢を見ました
うちは一族の集落で、たくさんの人が死んでいた
それに、あなたは小さな男の子と話していた
男の子の年齢は私と同じくらい…、それに、イタチさんはその男の子にこう言っていました
愚かなる弟よ、恨め、憎め、そして「醜く生き延びるが良い」
………はい、そう言っているのを見ました
そのあと視界が変わって、イタチさんが暁に入ってきました
ちょうど、イタチさんが初めて私を見た時の、自己紹介の場面でした』
「………なるほど
お前は予知夢が見れるのか
他にも見た事があるのか?そういった夢を」
『………初めて見たのは、私の一族が滅ぶ夢でした』
「!」
トキの言葉にイタチが息を飲む
彼女はぽつぽつと、自分が見た夢と、集落で実際に見たものを話した
『大きな蛇が私達を襲ってきて、お母さんもお父さんも、私を庇って蛇に食われました
その場で立ち尽くしていた私のもとに、暁の衣を着た人が現れたんです
顔は覚えていないんですけど…
その人が私に、悪夢から救ってやる、って言って、手を差し伸べました』
ぎゅ、と自分の手を握ったり開いたりしながら、トキは言葉を慎重に選んでいる
イタチは視線をそらし、穏やかな森を見つめる
『私はその手を取りました
夢から逃げるために』
しん、と一瞬の静寂が訪れる
張り詰めるような空気の中、イタチが大きく息を吐いた
「……お前の行方が分からなかったのは、暁に来たから
そして俺が来るのが分かっていたのも、警戒していたのも、予知夢で見ていたから……
そういうことか」
『………あの、ひとつ聞いても良いですか』
「何だ?」
イタチの口調はいたって優しく、幼いトキは少しずつ警戒心を緩めていく
彼女は意を決したように、ひとつ深呼吸をしてからイタチを見上げた
『どうして、自分の一族を滅ぼしたのにあの男の子だけは生かしたんですか
弟だけを生かしたのは何故ですか』
「………。」
『私は暁という心の拠り所をすぐに手に入れることが出来ました
けどあの子には、頼れる相手はいません
あの子が今後、どんな苦しみを味わうか、分かっているんでしょう?
彼もいっそ……』
そこで口をつぐむ
だがイタチは言いたい事が分かったのか、ふ、と息を吐いた
「生かしたのは、理由があったから
それだけさ」
『………けどあなたは、あの時…』
涙を流していた
そう言おうとしたが、やめた
きっとこの人は、答えてはくれないだろうから
「……お前と弟は、歳が同じだ」
『!』
「だから、空目一族の女の子が行方知れずになっていると聞いた時、俺はお前と弟を重ねた
俺も捜査に関わっていたが、見つけられなかった
……だがまさか、こんなところにいたとはな」
ぽん、と優しく頭を撫でられる
その手のぬくもりが、自分の両親の手と重なった
『(……この人はなぜ)』
自分の一族を滅ぼしたのだろうか
この人は優しい人だ、理由もなく一族を滅ぼすとは思えない
それに、弟に手をかけなかったのは生かす理由があるから、と答えたが、それも違うような気がした
『(本当は、殺せなかったんじゃ)』
愛する弟には、手をかけられなかったのではないか
自分の頭を撫でる手は、優しさと暖かさに満ち溢れていた
トキは答えを聞けずに、ただイタチに頭を撫でられていた
***
ブゥゥゥン、と独特の青白い光がトキの手からあふれる
『……治った』
「上出来よ、トキ」
にこり、と上品に大蛇丸が笑う
彼の腕から流れていた血は止まり、傷口はふさがっていた
「その歳でこれだけの技術…、すでに一端の医療忍者ね
さすが、医療忍術に精通した空目一族の子…
素晴らしいわ」
『……大蛇丸さんが教えてくれたから』
「私は基礎を教えただけ、人間の身体の作りとかね
術自体は、あなたが独学で学んだ、努力の賜物よ
偉いわ」
ぽん、と頭を撫でられ、トキは嬉しそうにはにかむ
大蛇丸の笑顔は、まるで自分の子どもを見るかのような優しさがあった
「トキ」
『あ、イタチさん!』
大蛇丸と話しているところにイタチが現れる
彼は衣を身に纏い、出かける準備を済ませていた
イタチに呼ばれたトキは嬉しそうに笑い、イタチのもとに走る
その姿を見た大蛇丸は、くっくと笑った
「まるで兄と妹ね」
『?』
「………。」
「トキは最初に比べたら表情も明るくなったし、よく笑うようになったわ
イタチが入ってきた頃は少し警戒もしていたようだけど、今じゃすっかり懐いちゃって
兄妹みたいよ、あなた達」
ふふ、と笑う大蛇丸にトキはまた笑う
だがイタチは、少しだけ眉を寄せるだけだった
「……トキ、少し外にいろ
俺は大蛇丸に話がある」
『?
はーい!』
トキが元気良く返事をすると、イタチは表情を少しだけ緩めた
***
トキの気配が完全に無くなってから、イタチは大蛇丸を見る
そして口を開いた
「お前は何を企んでいる」
「あら、いきなり何かしら」
「トキの一族を襲撃したのはお前だろう
アイツは大きな蛇に親を殺されたと言っていた
蛇の口寄せを使い、なおかつ木の葉隠れの里の内部にある空目一族の集落に侵入出来る忍は、お前しかいない
お前は何の理由があって、アイツの一族を滅ぼした」
イタチが一度眼を閉じる
そしてゆっくりと眼を開けると、黒い瞳は真っ赤な写輪眼に変わっていた
それを見た大蛇丸は少し目を見開くものの、すぐにニヤリと口元を歪めた
「……ふっふっふ、さすがにあなたにはバレてしまうと思っていたわ
そうよ、トキの一族を皆殺しにしたのは私…
といっても私の部下とマンダだけだけどね」
「何故そんな事をした」
「空目一族の持つ血継限界に興味があったのよ
時を操るその力がね…
だからちょっとばかり研究に協力してほしくて何度か頼んでみたんだけど、良い返事がもらえなかったのよ
それで」
「………そんな理由で」
ギロ、とイタチの目付きが鋭くなる
だが大蛇丸は気にせず、笑うだけだ
「まさか仕留め損ねた子どもがいたとは思わなかったけど…、それ以上にラッキーだったわ
トキは空目一族の中でも特殊な人間…、予知夢を見る力を持っていた
あの子は、”時の姫君”と呼ばれる存在だったのよ」
「…時の、姫君?」
「そう……
神に認められた、ただ一人の人間
”未来”を操る事を、神と同等の力を持つ事を許された、特別な人間
それが、トキよ」
「………………その力を狙うつもりか」
「そうねぇ…、それも興味深いわね」
顎に手を当て、ニヤリと笑顔を浮かべる大蛇丸
だがイタチの殺気を感じ取ると、やれやれと肩をすくめた
「確かに興味はあるけれど、あの子はまだ、自分の力の大きさに気付いていない
まだ、時期じゃないわ」
「時期が来たら、狙うと言う事か」
「それはその時次第…
トキが今以上に面白い子になってたら、奪うのも視野に入れるわ
けど今は、写輪眼の方が欲しい」
に、と蛇を彷彿とさせる鋭い目を細める
イタチはその言葉を聞き、写輪眼を解いた
「トキには手を出すな」
「………まるで、本物のお兄ちゃんね
けど何故かしら、あなたがあの子に固執する要素は見つからないけれど」
「…………。」
大蛇丸の言葉には答えず、イタチは部屋を出ようと背中を向ける
だが部屋を出る直前に立ち止まり、口を開いた
「トキは、ここにいるべきではないからだ」
「………暁にいない方が良いって言うの?
なら、どこにいるべき?
木の葉はトキを見捨てた…
今さらあの子の居場所にはならないわよ」
「里だけが居場所じゃない」
イタチは短く答えると、部屋を出て行った
***
『!
イタチさん、任務ですよね!』
アジトを出ると、装備を整え終えたトキが身体をひねっていた
そしてイタチに気付くと、パタパタと駆け寄る
『岩隠れの抜け忍を暁に勧誘するんですよね?鬼鮫さん』
「えぇ、そうです
ターゲットの名前はデイダラ、若い男です
………イタチさん?どうされました?」
鬼鮫がイタチの様子がおかしいのに気付き、声をかける
だがイタチはそれには答えず、トキに近寄った
「トキ」
『はい?』
「木の葉には、お前と親しい人間はいるか?」
『!』
「イタチさん?どうしたんです、急に」
「答えろ、トキ」
イタチの目は真っ直ぐにトキに向けられる
トキは顔を歪めたが、口を開いた
『……幼馴染が二人、いました』
「その二人はお前のことを待ってる、そうは思わないのか」
『………なんでこんな話するんですか』
「必要だからだ」
『………知りません、会っていないんですから
私が木の葉を出てからどのくらい経ってると思ってるんですか
もう、半年ですよ』
忘れられててもおかしくない、そう悲しげに笑うトキに、イタチは眉を寄せた
「お前の帰る場所は、まだある」
『私の帰る場所は暁です、それ以外は無い』
「決めつけるのはまだ早い
お前はまだ子どもだ、これから色んな事が起こる
決めるのは、それを知ってからにしろ」
『イタチさん、一体こんな話に何の意味がありますか
私は暁です、それが分かってれば良い
私にはその答えがあれば十分です』
トキの声に怒りが混ざる
それを察し鬼鮫は、イタチさん、と静かに名前を呼んだ
これ以上の問答は無意味だと
「……お前の未来はお前が決めろ
他人のことは気にせず、お前がしたいように生きるんだ
お前には、そうする権利がある」
『………?』
「行こう」
ザ、とイタチは歩き出す
トキは首を傾げて鬼鮫を見上げるが、鬼鮫も首を傾げてトキを見るだけだった
***
空目一族滅亡事件、そしてトキの失踪から約3年
11歳になったトキは、暁という特殊な環境の中にいながらも、メキメキと忍者としての素質を磨いていった
「おいトキー!怪我治してくれー!」
『げっ、デイ兄また怪我したの?!』
「コイツが不注意なだけだ、グズが」
「おいおいサソリの旦那、その言い方はねぇぜ」
『喧嘩しないで良いから怪我見せて!』
血まみれのデイダラを地面に座らせ、トキが患部を診察する
患部から怪我の深さを調べ、医療忍術で手当てをした
「おー、相変わらずうめぇな」
「良い練習台がいるからな」
「旦那ァ…、それはオイラの事か?」
『また喧嘩する』
はぁ、とため息を吐くトキを見て、大蛇丸と鬼鮫が笑った
「トキ」
そんなある日
ペインが彼女を呼んだ
傍らには小南も控えている
何となくいつもと違う重い空気に、トキは表情を引き締めた
「トキ、お前に単独任務を課す」
『単独?』
「あぁ、単独の、長期の任務だ
そしてこの任務は、お前にしか出来ない」
『………それは、何ですか?』
トキはこの数年で暁として任務をこなし、数々の修羅場を潜り抜けてきた
危険な場所にも潜入した
忍者としてのスキル、根性は、同じ年頃の子どもと比べればずば抜けている
だが単独での任務は初めてだ
トキが幾分か強張った顔つきで尋ねると、ペインはじっと彼女の目を見返した
「木の葉隠れの里に潜入し、九尾の人柱力に接触、および木の葉の内情を調査してこい」
『!!』
木の葉
その単語に、鼓動が大きくなる
『………私、が、木の葉に』
戻るのか
ドクンドクンと激しい鼓動に、頭が痛くなりそうだ
第4話
兄と妹
あとがき
次回、ついに木の葉に戻ります
オリジナル色強めのぬるっと原作に沿います
余談?ですが、トキが攫われたのが7歳の頃
そして約3年を過ごし、11歳で木の葉に潜入
また続きで書く予定ですが、トキの潜入はアカデミー卒業前です。班も決まってない時、NARUTOの一巻くらい
アカデミーの話を入れつつ、キャラと絡ませていく予定です
時系列は管理人の都合の良いように変えてありますので、違和感などもあるかも知れませんが、夢小説ということでご容赦ください
そしてこの話はあまり明るい話ではないです、それと再三言ってますが厨二全開です。ご注意を
.