新しい家族
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次に目を覚ました時、あたりは暗く、どこなのか分からなかった
段々と暗闇に目が慣れると、周りが土の壁に覆われていることが分かった
『私は……』
そうだ、私はシカマルの家から抜け出して集落に戻って、そしたら集落が襲われて、みんな、みんな
頭に浮かぶ残酷な映像が、トキの胸を締め付ける
恐ろしさで呼吸が荒くなる、息が苦しい
みんな、私の目の前で
『死んだ……』
「けど貴方は生きてるわ」
『!』
突如聞こえてきた女性の声
声がした方に目を向けると、そこには、短めの黒髪に白い花飾りをつけた女性が立っていた
『……誰』
「小南よ、初めまして
あなた、名前は?」
『………トキ、空目トキ』
「そう、トキ
具合はどう?
丸2日も寝てたのよ、貴方は」
『2日……?』
目の前の小南と名乗る女性
知らない人だ
そしてここはどこなのか
私はなぜここにいるのだ
一族は、木の葉は、シカマルとチョウジは、みんなはどうなったんだ
様々な疑問が頭に浮かび、少し目の前が暗くなった
「トキ、今から貴方をここに連れてきた人と会わせる
聞きたいことは、その人に全部聞きなさい
聞き足りなかったら、また聞きに行けば良い
いつでもペインは答えてくれる」
ペイン、人の名前だろうか、知らない
訳がわからない
けどその人に会えば、今のこのぐるぐるとした混乱から逃れられるような気がした
そして連れ出されたのは、ある部屋
ここも周りが土の壁でできている、まるでアジトだ
「ペイン、連れて来たわ」
「ご苦労、小南
起きたか、空目一族の子供」
『……………。』
ペイン、と呼ばれたその男は、鼻や耳にいくつものピアスをつけている
そして何より、目が特徴的だった
あんな目は見たことがない、まるで、演習場にある丸太の年輪のようだ
「名は」
『……トキ』
「トキ、ひとつお前に言っておこう
木の葉が先日、空目一族が滅んだことを正式に公表した」
『?!』
「空目一族の血を引くものは、全て死んだ
空目の血は途絶えたと……、そう決定付けた
お前がいるというのに」
がつん、と頭を殴られたような衝撃が走る
あぁ、私が見たあれは、本当だったんだ
悪夢は、現実だった
私以外はみんな死んだ、けど私は生きている
今のペインの言葉に、トキは大きく動揺した
『私は、生きてる』
「あぁ。だが木の葉隠れの里は、お前の捜索はとうに打ち切った
お前は生きているのか、死んだのか、どこにいるのか
そして何者に滅ぼされたのか、犯人を探すこともしていない
全てを放棄したのだ」
『そんな………』
「それと、一族の集落があった場所に一族をとむらう石碑が建てられたようだが、そこにお前の名はない
お前が生きていたという事実を、木の葉にいたという事実を、木の葉隠れの里は全て消し去ったのだ」
『………。』
「分かるか?この意味が
お前は確かに一族の一員として生きて、そして今ここにいるというのに、木の葉はそれを見ていない、考えてもいない
お前の存在を消そうとすらしている
お前は木の葉に捨てられたのだ」
ぐさり、言葉で表現するならばこれが適切であろう
幼いトキには重すぎる事実を淡々と突きつけられ、彼女は目の前が真っ暗になる
ふらりとよろめく身体を、近くにいた小南が支えた
「いいかトキ
木の葉はお前を見捨てた、だが我々は違う
お前は選ばれた人間だ、そして何より、特別な力を宿している
その力を、我々のために使ってくれないか」
ペインはなおも言葉を続ける
一方、トキはいまだに頭が混乱していた
「トキ、確かにお前の一族は滅んだ
お前の家族も、仲間も、みな死んだ
だがこれからは、我々がお前の家族となり、仲間となり、一緒に生きていこう
だから、俺の手を取るんだ、トキ」
そう言うと、ペインは真っ直ぐに手を差し出す
差し出された手を見て、トキはどこか心が落ち着くのを感じた
家族となり、仲間となり、一緒に
ペインの言葉は、トキの不安定な気持ちを落ち着かせたのだ
トキは意を決し、ペインの手に自分の手を重ねる
トキがペインの手に自分の手を重ねると、ペインはわずかに口元をゆるめた
「ようこそ、暁へ
歓迎しよう、空目トキ」
そして彼女の運命の歯車のひとつが、今、動き出した
一族は突然滅ぼされ、愛する家族は目の前で死亡
大切な一族の仲間たちも死に、絶望に打ちひしがれる幼い心
そして心の拠り所となるはずだった木の葉からは、まるで最初からいなかったかのように扱われ
一族の滅亡とともに存在が消え去られた
そんな彼女の目に届いた、唯一の光
それが、暁の光
どこの誰なのか、何のためにトキを導いたのか
それはまだ分からない
けど彼女は、何となく、ペインの手を取ることが正しいと感じたのだ
生きるために
自分の存在を証明するために
彼女は暁を名乗ることとなる
それが茨の道だったとしても、彼女にはこの道しか残されていないのだから
***
暁の仲間入りを果たしそれからというもの、トキはすっかり小南に懐いていた
そんなある日、ペインに呼ばれたトキは、ある場所へと向かった
それは、大きな像がある洞窟だった
両手を前に広げ、そしていくつもの目がある
指先に人ひとりが乗っても問題は無さそうだ
「トキ、これから他の暁のメンバーにお前のことを紹介しよう」
『他?
他にもメンバーがいたんですか?』
「あぁ、全員任務で外に出ていたのだがな、今日は久しぶりに全員が揃う
お前のことはまだ話していなかったから、ちょうどいい機会だろう」
ペインはそう言うと、巨大な石像の指先に飛び乗った
しばらくすると、他の指先に人影が現れる
時空間忍術か
「…全員揃ったようだな」
『!』
その一言を皮切りに、続々と姿を表す”影”
これが、他のメンバーということか
「紹介しよう、トキ
彼らが我々の仲間…、暁のメンバーだ
そしてこの子は、木の葉の空目一族の生き残り、トキだ
我々の仲間となった」
ペインの言葉に、トキは恐る恐る顔を出す
だがすぐに小南の後ろに隠れた
しばしの沈黙の後、一人の男が声を発する
「……空目一族は、この間何者かに滅ぼされ、一族が全滅したと発表されたはずよ…
なぜ生き残りがいるのかしら?」
「トキは事件当時、空目一族の集落にはいなかった
だが、襲撃がほとんど終わった頃に集落へと戻ってきたのだ
そこを保護した」
「トキと言ったわね…
どうして襲撃が終わった頃に戻ってきたのかしら?」
声は男だが、話し方は女のようだ
違和感を感じるも、影では顔までは分からない
戸惑いながらも、その男に向かって口を開いた
『……夢を視たんです
集落が襲われる夢を、誰かが私に手を差し伸べる夢を
それを思い出したら、行かなきゃって思ってシカマルの家を飛び出して……、集落に戻ったんです
………そしたら、本当にみんな死んだ
その後で、暁の衣を着た人が私に手を差し伸べたんです
お前を悪夢から救ってやる……って
私はその手を取りました
全ては夢で視たままに』
トキの答えにまた沈黙が広がる
だがやがて、先ほどの男が小さく笑い始めた
「……素晴らしい、気に入ったわ
私は大蛇丸よ、よろしくねトキ」
「不謹慎ですが……、確かにこの子は何か面白いところがありそうですねぇ
私は鬼鮫です、以後、お見知り置きを」
女のような口調だった男は大蛇丸、そして背中に大きな刀を携えた男は鬼鮫と名乗った
他にもサソリ、角都という男が名乗る
年齢も、額当てのマークもバラバラだった
「お前たちには今後、トキを鍛えてもらう
忍術、体術、幻術、その他諸々…
我々と一緒に任務に出ても問題のないようにだ
良いな?」
ペインはその言葉を残し、解散させた
トキはペインと小南の後を追い、その場を後にした
『あの、鍛えるって?』
ぺ「お前には今後、暁として任務に行ってもらう
そのためには十分に戦える力が無いといけない
そのために鍛えさせる」
『……なるほど』
***
トキが忍者としての修行を始めて数ヶ月
そんなある日の夜の事だった
『………!
また、夢』
寝ていたはずなのに、私の意識ははっきりしている
地に足を着いて、視界もハッキリしている
キョロ、と周りを見回す
ここはどこだ、知らない場所だ
あたりは薄暗く、遠くに薄っすらとオレンジ色が見える
夕方から夜の間、だろうか
見覚えのない風景だが、どこか既視感があった
それは、塀で囲まれた集落に見えたから
『……私の集落に、似てる』
自分が生まれ育った一族の集落によく似ている場所だった
キョロキョロと周りを見ながら歩き出す
人は誰もおらず、閑散としていた
『……!
このマークは…』
ふと、塀に描かれたマークが目に入った
赤と白の、うちわを模したマーク
自分はこれを知っている
『うちは一族の家紋だ』
日向、そして空目と並ぶ木の葉の旧家で、力のある大きな一族だ
何故自分がこんなところに、不思議に思いつつもトキは歩みを進める
「愚かなる弟よ、恨め、憎め、そして醜く生き延びるがいい…!
そして俺と同じ眼を持って、俺の前に来い……!」
『!』
どこだ、この声は、どこから聞こえてる
トキが声の主を探そうと周りを見渡すと、彼女の青い瞳が緑色に変化した
だが当の本人は気付かず、首を動かし続ける
その時、ザアッと視界がぼやけた
視界がクリアになると、彼女は違う場所へと移動していた
『!
男の人…
!!』
クリアになった視界に入ってきたのは、一人の男性とトキと同じくらいの年齢の男の子
そしてその二人の周りには、何人もの人間が横たわっていた
『あ……あ、ぁ』
ガクガクと足が震える
同じだ、あの時と全く同じ
同じ一族の人間が、正気のない顔で横たわる姿
この一族は、滅ぼされた
そう彼女は直感で理解した
そしてその犯人があの男であることも
赤い両眼の、あの男が犯人だと
『何でこんな事を…
!』
同い年くらいの少年が地面に倒れる
それを見つめる男の両眼からは、涙が一筋流れていた
苦しそうに、悲しそうに、男は静かに涙を流していたのだ
そして、姿を消した
『!
視界が…』
男が消え、少年に駆け寄ろうとした瞬間、また視界が攫われる
夢にはまだ続きがある
トキはゆっくりと、目を閉じた
「うちはイタチだ」
次に目を開けた時、そこは見慣れた洞窟の中だった
見慣れた人間達に囲まれたその男はそう名乗った
トキと同じ暁の衣を身に纏って
***
『………!!』
はっ、と目を開けると、そこは見慣れた土の壁
身体を起こし、ドクドクと激しい鼓動を落ち着かせようと深呼吸をした
『ペインさんのところに、行こう』
今がどのくらいの時間なのかも分からない
朝なのか昼なのか夜なのか、だがそんな事は気にしていられなかった
『ペインさん!』
「トキか……
! お前、その瞳は…」
ペインのもとに行くと彼はいつもの無表情でトキを見た
だが少しだけ目を見開いたのだ
「瞳が緑色……
予知夢を見たのか」
『!
はい、見ました
木の葉の里のうちは一族で大量の死者が出て…、その犯人と思しき男の人の姿を見ました』
「その男について、他に何か見たか?」
『……その人が、うちはイタチと名乗っているのを夢で見ました
暁の、この衣を着て』
「そうか」
話しているうちに、彼女の瞳の色が青に戻る
それをじっくり観察しながら、ペインは彼女の話に耳を傾けていた
トキが話し終えたのを確認すると、彼も口を開いた
「ではトキ
お前は”うちはイタチ”なる男が自分の一族を滅ぼし、里を抜け、暁に入ってくると……
そう言うんだな?」
『はい』
「……他に、何か見たか?
暁に関連すること以外でも、何でも良い」
そう尋ねられ、トキは少し思案する
ふと、あの空間にいたもう一人の少年のことを思い出した
『男の子がいました、私と同い年くらいの
うちはイタチさんがその子に、愚かなる弟よ、と言っていたので、彼の弟さんかと
その子だけは、生きていた』
あの少年はどうなったのだろうか、見たところ酷く疲弊しているようだったが
少し少年について考えていると、ペインがふっと笑った
「素晴らしい」
『え?』
「お前の、未来を夢で見るその力、間違いない
お前は選ばれし人間…、神に未来を操ることを唯一認められた、特別な存在だ
お前の夢の通りならば、近い将来、うちは一族は滅ぶ
そしてイタチは、暁に接触してくるだろう
その時は快く受け入れよう、お前が夢で見た男だ
暁にとって、きっと有益な存在だろう」
ふ、と珍しく笑うペインに、トキは少し戸惑う
そして、彼女が夢を見た夜から一週間後
暁のメンバーはペインに招集された
「うちはイタチだ」
トキは目の前の出来事に目を大きく見開いた
夢で見たまんまの光景、声、言葉
あの夢は、正夢となったのだ
『本当だったんだ…』
「!
お前は……」
小さな声でつぶやいたトキにイタチが気付き、目を見開く
何故子どもがいるのだと
その様子を見ていたペインは、ゆっくりと口を開いた
「最初に紹介しよう…
その子は空目トキ、木の葉の空目一族の唯一の生き残りだ」
「!
なら君が、族長の娘さんなのか?
行方不明だと聞いていたが…、何故ここに」
『………。』
真っ黒い眼がトキを見つめる
その眼から逃れるように、彼女は小南の後ろに隠れた
「その子は我々の手を取った…、だからここにいる」
「………。」
「同じ里同士、仲良くなれるだろう
トキも、そんなに警戒せずとも良い
それに第一、お前は夢で見たのだろう?
この未来を」
「!
夢だと?」
イタチの表情が険しくなる
だがトキは、それ以上は言わずに小南の背中に隠れたままだった
第3話
新しい家族
あとがき
イタチさんとーじょー回です、それだけです、そのためだけの章です(真顔)
.