親友の消失
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼間の陽気な里とは違う様子を見せる、夜の木の葉の里を走り抜け、自分の家へと走る
しばらくして見えてきた、見慣れた門
『……空目一族の集落』
木の葉隠れの里の中心からは離れた一角にある、私が住んでる場所
今日もここから遊びに来たのに、いつも私が見てる風景とは違う
何だろう、この違和感は
胸がざわつく、落ち着かない、不安にかられる
夜だから、という理由だけではない
不自然なほどに、静かだ
ぎゅ、と両手を胸の前にもってきて、恐る恐る集落へと足を踏み入れた
その瞬間
遠くから何かが爆発する音がした
『!!
家の方だ……!』
自分の家に向かって走り出す
だが、走り出してすぐに、暗闇だったあたりが真っ赤に包まれた
『あっつ…!
?!
火柱が……!!』
熱風とともに火柱が上がる
その火柱が上がった場所は、私の家があるあたりだ
『お母さん!お父さん!?
みんな!どこにいるの?!』
火柱が上がったのは、私の家だった
でも誰もいない、人の声がしない
お母さんの姿もお父さんの姿も見えない
「トキ!?
どうしてここにいるの?!あなたは逃げなさい!!」
『!!
お母さん!』
「ここは父さんたちが防ぐから!お前は早くシカクのところへ逃げるんだ!!」
『えっ?!』
バッ、と目の前に現れたお母さんとお父さん
二人はいたるところから血を流し、ボロボロになっていた
二人は私の身体を抱き上げ、走り出す
けれどそのとき、私たちの目の前に大きな蛇が現れた
「トキを頼む!!」
「!!
お父さん!後ろ!!」
『蛇が……!!』
「なっ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
何が起きているんだ
目の前に鮮やかな赤色が舞う
それは紛れもなく、父の背中から溢れ出た血だった
『お父さん!!!』
お父さんが力なくその場に倒れる
恐怖で固まる私は、すぐ目の前に迫っている大蛇から逃げることが出来ず、立ち尽くしていた
「トキ!!!」
どん!と身体が突き飛ばされる
小さな身体は簡単に飛んで、集落を囲む壁にぶつかった
夢と同じ痛みが身体を走る
『………!!
お母さんっ!!!』
身体を強く打ち付け、一瞬目の前が白くなった
けどすぐに身体を起こし、自分を突き飛ばしたお母さんの姿を探すも、もういなくなっていた
違う、いなくなった訳ではない
お母さんがいたであろう場所には、真っ赤な血溜まりが出来ていた
『あ………ぁ、あぁ……!』
何が起きてるの
夢と同じだ、昼間に見たあの悪夢と
なんで、どうして
ふと周りを見まわす
そして気づいてしまった
火柱や崩れた壁、土煙に包まれていて分からなかったが、あたりには人がいた
けど、誰も生きていない
『………みんな、しん、で、る』
力なく倒れている人々、その頭は空のような真っ青な髪
この髪色は、一族の特徴だ
つまりこれはみんな、空目一族の人
全部、何もかも、夢と同じだ
「残りはお前だけか」
『!!』
「まさか一族ごと潰すとは思わなかったが、生き残りがいてくれて良かった」
突然聞こえてきた声、けど、聞き覚えのある声だ
恐る恐る顔を上げると、目の前には螺旋状の仮面をつけた、黒い衣を身にまとった男の姿
さっきも見た、この男を
恐怖で固まるトキの眼が緑色に染まる
一族の特徴として知られる青色ではなく、緑色だ
「………!
お前、その瞳は…」
『…………?』
「……これは運が良いな
来い、お前を悪夢から救ってやろう」
仮面の男がゆっくりと手を差し伸べる
トキは誘われるように、その手を掴もうと、自分の小さな手を伸ばした
悪夢、そう、これは悪夢なんだ
現実ではない
どうか、この悪夢から私を救って
悪夢から逃れられるなら、何でもいい
私は仮面の男の手を取った
その瞬間、視界が渦巻く
私は視界に入るすべてを拒絶するように、目を閉じた
***
空目一族の全滅の悲報は、翌日の早朝に親父の口から伝えられた
チョウジが大声で親父やチョウザさんに何かを言っているが、俺の耳には一切入って来なかった
空目一族は昨夜、何者かの襲撃にあったらしい
集落から火柱が上がったのと、敵の口寄せと思しき大蛇の姿が確認されたという
「……トキは、どこにいるんだよ!!」
今朝、起きたら彼女の姿が無かった
先に起きていたのかと思ったが、家の中はおろか、靴も無くなっていた
不思議に思った俺とチョウジだったが、トキを見つけられずに居間へ行くと、親父とチョウザさんが神妙な面持ちで俺たちを待っていたのだ
そして、空目一族が全滅した、とだけ言われたのだ
「全滅って、どういう事だよ!!
トキは、どこにいるんだよ!!
アイツは俺たちと一緒に寝てたはずだ!!
なのに起きたらアイツはいなくなってて、靴もなくてっ…!
説明しろよ!!!」
シカマルがシカクの胸ぐらを掴む
チョウザがシカマルを剥がそうとしたが、シカクはそれを制止した
「……よく聞け、シカマル、チョウジ
昨夜、トキはこっそり家から抜け出して、集落に戻ってたんだ
お前らが眠ってる間に、な」
「は…?何で、そんなこと!」
「それは俺たちにも分からない
けど、トキが集落に着いたのとほぼ同時刻に、集落から火の手が上がった
俺や他の上忍が急いで空目一族の集落に向かったが、到着した時にはすでに、一族のほとんどが息絶えていた」
「……トキの死体も、あったのか…?」
シカマルの声が震える
彼の後ろにいたチョウジは、目からボロボロと涙を流していた
けれど、受け入れたくないとばかりに、しきりに首を左右に振っていた
うつむくシカマルを見たシカクは、ゆっくりと息を吸い、彼の顔を上げさせた
「トキの死体は、どこにも無かった」
「………え?」
「今も捜索中だが、トキの死体が見つかったという報告は出ていない
だが、それ以外の全員の死亡は確認されている
トキのお母さんもお父さんも、死んだ
けどトキだけは、見つかっていないんだ」
「………なんで…、じゃあアイツはまだ…!!」
「けどな、集落の様子を見ると、相当激しい戦闘があったはずなんだ
まだ7歳のトキが、そんな戦闘の中で無事でいられる可能性は低い…
残念だが、トキが生きてる保証はないんだ…」
ガツン、と鈍器で頭を殴られたような衝撃だった
だが不思議と、涙は出てこなかった
その後、何日も集落付近で捜索が行われたが、トキの死体は発見されなかった
トキは生死不明、または行方不明
そして木の葉の里には、空目一族は何者かに滅ぼされたと伝えられた
目撃者もなく、犯人は分からない
この事件は、後に起こるうちは一族滅亡と同様、悲惨な大事件として世に残った
空目一族の集落跡地には石碑が建てられ、一族の人間の名前が全て彫られた
遺骨もすべて、そこに収められている
だがそこに、トキの名前は無かった
俺とチョウジの親友は、まるで最初からいなかったかのようにどこにも記録されず、何も残されず、世間から消されていった
空目一族は全滅した
トキは、その事実とともに、その存在すら消されてしまった
俺たちといた7年間は確かなものなのに、まるでいなかったかのように扱われることが心底許せなかった
けど幼い俺たちは何も出来ず、ただ、トキを忘れずにいることしか出来なかった
あの青い髪と、青い眼を
そして花のような笑顔を
俺たちだけは忘れないでいようと、そう誓った
第2話
親友の消失
.