青空の約束
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トキが入院する病室には、不自然なほどの沈黙が広がっている
ベッドのそばの椅子に腰をかけるシカマルを見て、彼女は目を伏せた
「トキ、話がある」
『…何?』
「これについてだ」
ぴ、とシカマルの指にはさまれた一枚の札。見覚えのありすぎるそれと、シカマルの顔を見て、あぁ、と小さくこぼした
「この札…、空目一族の禁術だと聞いた
術者に相当な負担がかかる危険な医療忍術…、到底、俺たちみたいなガキが扱える術ではない
アカデミーでサスケに次ぐ成績を収めていたお前でも、な」
『………術の仕組みも、知ってるんだね』
「親父と五代目が教えてくれた」
『シカクさん……、そっか、お父さんとシカクさんは仲良しだったもんね』
ふ、と息を吐くトキに構わずシカマルは言葉を続けた
「この札の事、わざと黙ってたな」
『………うん』
「それと、他にも俺に隠してること、あるだろ」
『………。』
札を仕舞い、シカマルはじっとトキを見つめる
彼が何の事を言ってるのか、何となく分かっている
「俺がお前を迎えに行った後、出かけるから準備しろって言ったよな
で、準備が終わって五代目のもとに行ってサスケ奪還の任務を言い渡され、そのままチョウジやナルトを呼びに外に出た
メンバーを集めて大門に集まり、そのまま出発した
覚えてるだろ」
『うん』
「俺が早朝に呼びに行ってから任務に出るまで、お前は一度も家に帰ってない
五代目に任務を言い渡された時点では、あの任務に何人集まるかは分かってなかったはずだ
なのにお前は、大門に集まった時にこの札を、メンバー全員に渡した
過不足なく、だ」
『………。』
どき、と心臓が嫌な音を立てる
あぁこの幼馴染は、自分のことをよく見ているなと思った
「普通、任務は四人一組であたる
だがサスケ奪還任務の人数は全員で6人
……けどお前は、この札を5枚用意していた」
『………。』
「本当は知ってたんだろ、あの任務に誰が集まるのかを
だからお前は、朝の時点で札を5枚用意しておいた」
まるで将棋だな、と笑う
どんどん事実を突きつけて、そこに彼の考察が入って、そこから導かれた結論は、もうすぐ言われるのだろう
シカマルが導いた結論は、きっとこうだ
「お前はあの日、サスケが里を抜ける夢以外にも夢を見た
そうだな?」
『………さすがだね』
「……。
夢の内容は?」
シカマルの言葉を肯定すると、シカマルは眉を寄せた
続けざまに飛ぶ質問に、トキは観念したように口を開いた
『………任務の直前に見た予知夢は、まずサスケが里を抜ける夢
サクラが説得に失敗して気絶させられる場面も見た
それと、サスケ奪還任務のためにあの5人が集まって、木の葉の大門にいた
サクラとリーさんが見送りに来てた』
いたでしょ、大門に
そう笑いかけるトキに、確かに、と小さく返す
任務に出る直前、目を覚ましたサクラと、ネジと一緒にいたリーが大門まで見送りに来ていた
『見送られて木の葉を出た後の夢は断片的でよく分からなかったけど、どの場面も共通点があった』
「共通点?」
『………みんなが、血まみれで倒れてた』
「!」
『…私の夢は、みんなの死を予知してた
シカマルもチョウジも、ナルトもキバもネジさんも、みんな死んでたの
だから私は、未来を変えようとした』
吸い込まれそうなほどに澄んだ青い瞳が、シカマルの瞳をとらえる
その瞳に後悔の色はなかった
トキの真っ直ぐな目に、シカマルは思わず視線をそらす
「……俺たちを守るために、自分の命を投げたっつーのかよ」
『………全員が死ぬより、私一人の方が「ふざけんなよ!!」
!』
びく、と肩が揺れる
シカマルの本気で怒った表情は、初めて見た
「……もしお前が死んで、俺が生き残ったら、俺は死ぬほど後悔する
チョウジも同じだろーよ
それにいのだって、お前を許さない
そんな事されたって、俺たちは誰も嬉しくねぇよ」
『………シカマル…』
「……もう二度と、そんな事考えるな
自分は死んでもいいなんて、二度と言うな
………俺は、お前がいなくなったら悲しい
こう思ってるのは俺だけじゃねぇって、分かってるだろ」
『………ごめん、なさい』
震える声でつぶやくトキに、シカマルはふっと表情をゆるめる
「………次、俺に隠し事したら絶交だからな」
『……分かった』
少しおどけてそんな事を言えば、トキも表情をやわらげて笑う
穏やかな空気が、病室の中に広がった
***
意識を取り戻し、体力が回復した頃、リハビリにと病室を歩いてある部屋へと向かっていた
ノックして入る許可をもらい、カラカラと控えめに扉を開ける
眩しいほどの笑顔が目に入った
「トキ!!」
『久しぶり、ナルト』
いたるところに包帯が巻かれているナルトは、まだベッドの上から出ることが出来ない
そのそばには、三忍の自来也様がいらっしゃった
「おぉトキ、早かったの」
「どうしたんだってばよ?」
『ん、自来也様に呼ばれてたの』
「え?」
ぽかん、とナルトが不思議そうに首を傾げる
そう、この日は病室に現れた自来也様に、後でナルトの病室に来いと言われていたのだ
『自来也様、ご用件は何ですか?』
「うむ、単刀直入に言おうかの
トキ、ナルトと一緒にワシと修行の旅に出る気はないか?」
「えっ?!」
ナルトの大きな声がビリビリと響く
あまりのうるささに顔をしかめる自来也様に、苦笑いをした
「前から考えていたんがのぅ…
ナルトもお前も、理由は違えど暁に狙われている身
自分の身は自分で守らねば
だが、お前たちはまだ弱い」
『……。』
「特にトキ、お前はまだ空目の力を完全に扱いきれておらん
潜在能力は高くてもそれを扱うことができなければ、力は意味を失う
空目の力と予知夢の力、その力が狙われているお前は、特に注意しなければならん」
『……自来也様は、空目の事をよくご存知なのですね』
「年寄りだからの」
ケラケラと楽しげに笑う自来也に、トキは口を開いた
『自来也様とナルトと一緒に行きます』
「!」
「……たった今話したのに、即決かの
大丈夫か?」
『夢で見たんです、私が自来也様とナルトと一緒に旅をしているのを
何となくですけど、その夢の通りにすべきだと思ったんです
私は知らないことが多すぎる
自分のことも、空目のことも、何も知らない
だから、知りたいんです
私の力を、私の未来を』
「………なるほど」
自来也は顎をさすり、じっとトキを見下ろす
真っ直ぐな瞳に、迷いはなかった
「……ナルト、お前はどうだ
異論はあるか?」
「んなもんねぇってばよ!
トキと修行すれば、もっと強くなれるに決まってる!」
「決まりだの」
ふっ、と自来也は2人を見て笑う
ナルトとトキは、お互いを見て笑った
***
自来也とナルトと共に木の葉を出て修行をする
そう決めてすぐ、シカマルを探した
「………は?
木の葉を出る?ナルトと?」
『うん』
無事退院し、すぐにシカマルに会いに行った
この場所は、小さい頃によく3人で遊んだ場所だ
『シカマルに最初に言っておこうと思って』
「………なんで、出る必要があんだよ」
『……………私は、私のことが分からないから
空目のことも、時遁も、予知夢のことも
私が暁に狙われる理由も
三年間の記憶も
何もかも、私は分からない
だから、知るために外に出ることにした』
「………。」
トキの空色の髪が風になびく
今真上に広がるこの空のようだ
「……すぐ出んのか」
『……うん
この後いのたちにも言ってくる』
「そうか…」
『ねぇ、シカマル』
くる、と身体を反転させて、トキがシカマルを見つめる
青い瞳にシカマルの顔がうつった
『私、諦めてないよ、サスケのこと
あの任務は失敗だったけど、私の中ではまだ続いてる
必ず、連れ戻す』
「…おう」
『強くなって帰ってくるから、期待してて』
「おう」
に、と明るく笑うトキは、もう吹っ切れたようだ
『しばらくのお別れだよ、シカマル
けど戻ってくるから、待ってて』
「……めんどくせぇけど、待っててやるよ」
2人で青空の下で交わした数年後の約束
それを胸に、ナルトと自来也と共に、木の葉の里を出た
ナルトと共に、強くなって帰ると
少年編 最終話
青空の約束
あとがき
少年篇終了です。この後はブックを変えて、疾風伝に入ります
暁の登場とともに大きく変わるトキの運命、未来、それらはどこに向かうのか
サスケは、イタチは
そして彼女が最後に選ぶのは
木の葉か、暁か
以後お楽しみに
.
1/1ページ