光の中で
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ザザザ、と再び森の中を走る
だがチャクラはどんどん減っていく
札がまた発動した、今度はチョウジではない誰かの札だ
一気に消費が激しくなったチャクラは、もう誰のチャクラなのかを感じる事も出来なくなってしまった
あとはもう、ただすり減っていくのを待つのみ
せめて、ナルトとサスケのもとに着くまでは保ってくれ
あの2人のもとに着くまでは…!
どんどん力が入らなくなっていく
視界も霞んできた
だがここで立ち止まるわけにはいかない
ここで私があきらめたら、未来はどうなる
『………!!
ここ、は』
ゼェゼェと荒い息を繰り返しながらもたどり着いたのは、大きな大きな谷だった
大きな滝もある
この場所を知っている
『終末の谷……
………!!』
谷底を覗くと、そこには見慣れた2人の姿が
目にした光景に、どくん、と心臓が嫌な音を立てた
ナルトが倒れている
『っ、サスケぇぇぇぇぇ!!!』
力の限りを尽くして叫んだその声は、ビリビリと谷底に響いていった
ナルトの傍にいるサスケが、ゆっくりと顔を上げる
なぜナルトが倒れているんだ
なぜサスケはナルトに背を向けているんだ
ねぇ、答えてよ
あなたのその真っ暗な瞳は、もう私も写っていないのか
***
『サスケぇぇぇぇぇ!!!』
聞き慣れた、けれど初めて聞く叫び声
顔を上げて谷の上を見上げれば、曇天に似合わないほどに鮮やかな空色が目に入った
「………お前も来ると思っていた」
ひらりと舞い降りてくるその青は、今の自分の瞳には毒のようだ
『ナルトっ』
パシャパシャと水を蹴りながらナルトに駆け寄るトキに、サスケはすぐに違和感を持った
見たところ怪我はないのに、チャクラがほとんどゼロに近い
また無理をしているんだと、すぐに分かった
『……息はある』
口元に手をかざして呼吸を確認すると、キッとサスケを睨む
虚ろにも見える真っ黒な瞳に、トキの青い瞳は鮮やかに映り込んだ
『サスケ、連れ戻しに来たよ』
「……大人しく帰るとでも思ったか
俺は復讐者…、闇に生きる人間だ
お前らと一緒にはいられない」
そう言うと、サスケは背中を向けて歩き出す
トキに戦う意思がないこと、そしてもう戦えるほどのチャクラが残っていない事を悟ったからこその、拒絶の仕方だった
『そうやって、私の分も復讐するって言うの?』
凛とした声は、静かな谷底によく響いた
彼女の声に足を止め、後ろを振り返る
ナルトを抱きかかえるトキの瞳にうつる自分の姿は、汚れているように見えた
青空のような鮮やかな青に、真っ黒な自分
「お前の全てが、俺の目には眩しく見える」
ぽつりとこぼした言葉は、滝の音にかき消され、トキの耳には届かない
身体をトキに向け、サスケは真っ直ぐに目を見て口を開いた
「お前が手を汚すのは見たくない
だったら俺が、お前の憎しみも引き受けてやる」
『!
それ……』
サスケの言葉に聞き覚えがあった
その言葉は、中忍試験の本戦を控えて修行をしている時に聞いたもの
空目一族の慰霊碑の前で言われた言葉だ
「お前なら、俺を理解してくれると思ったんだがな
だが、それと同時に理解しないで欲しいという気持ちもあった」
『サスケ…』
「お前が俺のように復讐の炎に囚われるのを、俺は見たくない
そうなるくらいなら、お前の分も俺が身を焼く」
ふ、とサスケの姿が消える
そして、すぐ目の前に現れる、真っ黒な瞳
トキはしっかりと、見つめ返した
真っ黒な瞳にうつる自分の顔は、笑えるくらいに疲弊していた
ナルトを抱える力も、もうない
『そんなの望んでない
私は、サスケが木の葉に…、そばにいてくれればそれで良い
それ以上は求めない』
「………そう言うと思っていた」
ゆっくりとサスケの手が伸びて、私の頬を包む
暖かなそのぬくもりは、誰かのと似ていた
「ここで終わりだ、トキ
俺はもう戻らない」
サスケが額当てを私に託す
木の葉のマークを真っ二つにする大きな傷が、いやに目に付いた
はっきりと、目に見える拒絶が、私の心を軋ませた
「死ぬなよ、トキ」
ふ、と微かに口元をゆるめ、サスケはそう言った
あぁ、自分の限界も近い
「お前は光の中にいろ」
その言葉を最後に、ぷつんと意識が途切れた
何も、言えないまま
***
深い深い海の底にいるようだ
あたりは真っ暗で、何も見えない
なのに自分の意識がそこにある
もう何度目だろうか、この感覚は
『夢の中だ』
そう確信を持つと同時に、周囲の景色が変わる
ここはどこだろうか、見た事のない景色だ
木の葉ではない
人がたくさんいて、まるで縁日のようだ
いや、歓楽街だろうか
とにかく人がたくさんいた
「救世主だと、そう信じてる
お前たち2人が、な」
ふと聞こえてきた声は、あまり聞き覚えのないものだった
きょろ、と周りを伺うと、小さな境内の階段に誰かがいる
「救世主?俺とトキが?」
「もちろん」
「ふ~~ん、エロ仙人にそう言われちゃ、頑張るしかねぇな!
な、トキ!」
に、と太陽のような笑顔を見せるのは、ナルトだった
そして一緒に話しているのは、三忍の自来也様だ
『ナルトに、自来也様……
どうして』
つながりが分からなくて首を傾げると、また景色が変わった
また知らない場所で、私とナルトが戦闘を繰り広げている
それを見守る自来也様
少し背丈が大きくなった自分がナルトを投げ飛ばすと、自来也様が大きく笑った
「トキの一本勝ちだの、ほれナルト、ひとっ走り行ってこい」
「ちぇ~~!!」
「修行の一環じゃ、3人分の昼飯だぞ」
ぽい、と財布を渡されたナルトは、しぶしぶどこかへ消えていく
一緒に修行をしているのだろう
「………さて、トキ
この修行の旅は慣れてきたかの?
木の葉を出て、もうひと月は経つが…」
自来也様は、まるで可愛い孫に話しかけるように、優しい笑顔で私を見た
修行の旅、木の葉を出る、そしてナルト
このキーワードで何となく分かった
『……私は、ナルトと一緒に里を出て、修行をするんだ』
それも、あの伝説の三忍、自来也様のもとで
はっきりしてきた意識と、今見た予知夢
これは何かの運命なのか
それとも、この通りに進めば、何かがあるのだろうか
私には分からなかった
ふと周りを見ると、景色はまた変わっていた
「二年ぶりの木の葉の里だってばよ!!」
ずっと大人になったナルトが、太陽のような笑顔でそう笑いかける
その笑顔を見て思った
私はこの夢の通りに行動するべきだと
それが、私の運命なのだと
第20話
光の中で
.