予選
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドクドクと大蛇丸に噛まれた跡が脈打つ感覚が抜けない
私じゃない何かが身体の中にいる感覚も抜けない
身体が熱い、傷跡が痛い、頭が痛い、目が良く見えない
戦うコンディションとしては最悪だった
チ「やった!巻物両方揃ったよ!」
い「よーっし!良くやったわねチョウジー!」
シ「後はこのまま中央の塔に向かうだけだ…!
トキ、歩けるか?」
『…大丈夫』
い「無理しなくても、まだ時間はあるわよ!休む?」
『休むなら塔に着いてからにしよう…、大丈夫、まだ動ける
…ぐ、うっ…!』
ズキン、と大蛇丸につけられた傷が断続的に痛む
耐えきれずに足を止め、傷跡を押さえた
この痛みはきっとサスケにも残ってる
彼は大丈夫なのだろうか
がく、と膝から力が抜けてその場に倒れそうになる
手をつく余裕もなく、身体が地面とぶつかりそうになった
「トキ!」
だが倒れる直前にシカマルが身体を抱き留め、何とか防いでくれた
『…は…ぁ、ごめん
足引っ張ってる…』
シ「んな訳あるか、お前がいなけりゃそもそも第二の試験にまで来れなかったんだしよ
いの、チョウジ、一気に塔まで走るぞ
トキは俺が連れてくから、巻物は二人が持ってくれ」
「「了解!」」
「行くぞトキ、しっかり掴まってろ」
『……ありがとう』
シカマルに抱き上げられ、首に腕を回してしがみつく
いのとチョウジが二人を守るように並走し、一気に塔まで走り抜けた
***
塔の中には誰もいなかった
四人であたりを警戒しつつ、人気がないのを確認する
『……誰もいないね』
い「時間切れって事はないし、どうすれば良いのかしら」
チ「このまま待つ?」
シ「………。」
会話の途中、シカマルが手を組み座り込む
これは彼が熟考するときのクセだ
少しの間、三人で黙ってシカマルの様子を見守る
すると彼は目を開け、巻物、とだけつぶやいた
シ「巻物を開くんだ」
い「えっ…、良いの?」
チ「大丈夫だよ、シカマルが言うんだから
いの、開こう」
い「………知らないわよ、どうなっても…」
恐る恐る、いのとチョウジが天と地の書を開く
それを覗き込むと、二つの巻物には両方とも「人」の文字が書いてあった
『……!口寄せの術式!
二人とも巻物を離して!』
トキの言葉に巻物を投げる二人
そして巻物からは白い煙が上がった
キン、とクナイをかまえ、その煙を睨む
煙の中にシルエットが浮かび上がってきた
『………!
アスマ先生…!?』
い「うっそー!アスマ先生何で?!」
煙の中に見えたシルエットに見覚えがあると思ったら、それは担当上忍のアスマ先生の影だった
クナイを下ろし、胸をなで下ろす
いのとチョウジは嬉しそうに先生に駆け寄った
ア「よくここまで無事にたどり着いた
第二の試験合格だ!」
にっ、と大らかに笑うアスマ先生に、今まで気張っていた神経がぷつんと途切れたように、トキがその場に崩れた
「うおっ…と
いきなりぶっ倒れるなよ、心臓に悪い…」
『シカマルが支えてくれると思って…なんてね…』
「毎度毎度できるかアホ、時間になるまで休んでろ」
肩を抱きかかえられ、トキはシカマルに力無く笑いかける
疲れが見えるその笑顔に苦笑いし、休める場所まで運んだ
そして数時間後
合格者が一箇所に集められた
***
合格者が多いため、今から予選を行うという試験官
その話を聞きながら、近くにいるサスケに視線を向けた
肩を押さえ、顔をしかめている
まだ痛みは続いてるんだ
『(…私の術じゃ、気休め程度にしかならないか
それに私自身も、だいぶキツくなってきてる)』
サスケと同じように肩を押さえ、痛みを誤魔化そうとする
だが無意味だった
誰かが身体を蝕んでいく感覚が取れない
「……トキ、本当に大丈夫か」
『!
………大丈夫、ここまできて落ちたくないもの』
「そう言う事じゃなくて…
その首のアザ、どんどん濃くなってる
アスマに話した方が良いんじゃねーのか
サスケの奴と似てるぞ…」
『………。』
パーカーでアザを隠し、シカマルに笑いかける
けど彼は顔をしかめたままだ
ふとサスケを見ると、サスケも私の事を見ていた
「では最初の対戦者を発表します…
空目トキ、そして薬師カブト
両名以外は速やかに上にあがってください」
『!!』
試験官の口から自分の名前が呼ばれ、ち、と舌打ちをした
頑張れ、とエールを送ってくれるいのにチョウジ、ヒナタにキバ、そしてナルトとサクラ
『……サスケは何も言ってくれないの?』
「………お前の肩にあるアザは、俺のと同じか?」
『………似てるけど、恐らく違う
サスケのそれ、まだ痛む?』
「お前が術をかけてくれてからはまだマシだ
………気を付けろよ」
サスケはそう言うと、私の頬を軽くぺし、と叩いた
分かってる、そう呟き、対戦相手を見た
「君が相手なんて…、少し楽しみだよ、空目さん」
『………一次試験の時の怪我、治さなきゃ良かったと反省してます』
「手厳しいね」
身体をカブトに向け、大きく深呼吸をした
上を見上げ、第十班の四人を見る
シカマルの顔が少し怖い
「それにしても君…、良い跡があるね」
『!』
トントン、とカブトが自身の肩のあたりを指で示す
そこは大蛇丸の傷跡がある場所だった
『(………何、コイツ)』
まさか、この傷のことを知っているのか
そんな不安に駆られた時、試験官の試合開始の合図が上がった
『………?』
だがカブトはその場を動かず、構えすら取らず、ニヤリと笑うだけ
何だ、間合いを取り、カブトの出方を待つ
「少し昔話をしてあげようか」
『は……?』
「木の葉に古くから存在していたある一族の、悲しい最期のお話しさ」
『!』
どくん、と鼓動が大きく響いた
「ふふ……、聞く気になったかな
その一族は木の葉が誕生した時からあったと言われる古い一族…、それこそ、うちはにも劣らない歴史を持つ一族だった
けれどその一族は三年前、一夜にして滅んだ」
会場中の空気が静まり返る
大蛇丸が付けた傷が痛み、顔をゆがめた
その背中を、木の葉の面々が不安げに見つめる
ナ「……カブトさん、何の話してるんだってばよ?」
サ「……多分、空目一族の話よ」
ナ「空目って、トキの一族か!」
ヒソヒソと二人が話す声が聞こえる。だがサスケはじっと、黙ってトキの背中を見ていた
「その一族はうちは、日向にも並ぶ大きな一族にも関わらず、一夜にして滅んだ
犯人は分からず、生き残りもいない
これはもう有名な話だね
………けどこれには続きがある」
『………。』
「……っふ、止めないのなら続けるよ
その一族が滅んですぐ、木の葉は生存者がいないと里に発表した
けどその情報は嘘、里の上層部は嘘の情報を流したんだ
本当は生き残りがいたはずなんだ」
はっ、と誰かが息をのむ気配がした
だがカブトは言葉を続ける
「その女の子は一族が滅んだ日、友達の家にいたそうだ
けど彼女は、なぜか一族の集落に戻ってきた
一族が襲撃されている、もっとも危険な時にね
凄惨な現場に戻ってきた彼女はそこで消息を絶った
里の上忍も暗部も、彼女を見つけられなかった」
『………。』
「………だが三年後
消息を絶っていた女の子が突然木の葉に戻ってきた
誰のことか、もう分かるよね?」
『………えぇ、分かりますよ
私のことです』
「ふふふ……、さすがに分かるよね
さて、ここで本題だ」
ピシッと人差し指を立て、カブトがニヤリと笑う
本題とは何だ、と嫌悪感を露わにした顔でカブトをにらむ
その視線に肩をすくめるも、カブトは話をやめなかった
「まだ君の存在は里に知られている訳じゃない…
けどね、里の上層部の中には君を知ってる人間もいる
そしてその人たちは、こう考えている
”空目一族を滅ぼしたのは、空目トキではないのか”……とね」
『!!
ふざ…っ、けるな!』
「ふざける?まさか
この場にもいるんじゃない?君が犯人だと思っている人間は…
それに君が犯人だと考える方が辻褄が合うんだよ」
『私は家族を殺してなんてー……
!!』
しゅ、と目の前からカブトの姿が消える
しまった、と周りを見ようとした時、自分の真後ろにカブトが現れた
すぐに拳を向けるが、それより一瞬早く、カブトが傷跡に手を当ててきた
そこから感じるチャクラが、自分の中にあるチャクラと反応する
『!
が…っ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
大蛇丸がつけた傷が激しく痛み、身体中に激痛が走る
立つことすら困難で、その場に崩れた
地面に手をつき、傷跡を押さえ、痛みに苦しむ
カブトはゆっくりとトキに近付き、彼女にしか聞こえないよう耳元に顔を寄せた
「痛みで動けないだろう?その傷はあの方がつけた傷だからね、そう耐えられるものじゃないはずだよ」
『!
なんで、アイツを…!』
「さぁね……
まぁ安心しなよ、あの方の命で君は殺せないからさ…
それにしても」
す、と立ち上がり、カブトが声を張る
まるで周りに聴かせるように、だ
***
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
会場中に響くトキの叫び声
それは森の中で聞こえた声と同じだった
「トキ!!」
「何?!どうしたの?!」
カブトとかいう奴がトキの背後に回り、トキの肩に手を当てた
その瞬間、トキが叫び、その場に崩れる
「……何しやがったアイツ…!」
カブトがトキに近寄り、何かを言う
距離があって聞こえなかったが、攻撃された訳ではないようだ
話を終えると、カブトは距離をとって声を上げた
「それにしても、たった一夜で滅ぶなんてね
木の葉を代表する一族が聞いて呆れるよ
……あぁそれとも」
ちら、とわざとらしくトキに目を向け、ニヤリと笑う
顔は笑っているが、目は笑っていない
「君の一族は大した事ないのかな?
滅ぼされるに値する、しょうもない一族だったんだろうね」
『!!』
肩を押さえ、微動だにしないトキ
その様子にカブトは笑い、試験官の方を向いた
「彼女はもう動けませんよ
僕の勝ちだ」
「………それは君の判断ではありません」
「なに……
ぐあっ!!」
ドゴッ、と大きな音を立ててカブトが壁にぶつかる
土煙が舞った
「よっしゃぁー!トキー!!」
「いっけー!!」
いのとサクラの歓声が聞こえる
だがそれに答えるほどの余裕は無かった
壁に埋まったカブトに飛び蹴りをかまし、ふらつく足で何とか立つ
傷跡の痛みは強くなっていた
「な……っ、ゲホッ
バカな…、動けるはず…!
ぐはっ!!」
しゃべる間を与えず、さらに蹴りを繰り出す
カブトの身体を地面に叩きつけ、ゼェゼェと荒い息で奴を睨みつけた
『空目を……!
私の一族を馬鹿にするなよ!!』
そう叫ぶトキに、会場は静まり返る
トキの怒りによる感情の高ぶりがアザに影響し、ズズ、と身体に広がっていた
肩から腕、そして顔の一部にまで広がるアザ
森の中でのサスケと似たその姿に、森での出来事を知っている何人かが息を飲む
「………参りました、降参です」
『!!』
ガラガラと瓦礫の中からカブトが現れ、覚束ない足取りでそれだけ告げた
それを見た試験官であるハヤテは二人を見比べ、手を高らかに上げて口を開いた
「薬師カブトのギブアップにより、勝者……
空目トキ!」
わっと木の葉側から歓声が上がる
歓声に答えようと顔を上げるが、その直後に身体中に広がっていたアザが無くなり、代わりに激しい身体の痛みと頭痛に襲われた
そして意識を手放した
***
「勝者…、空目トキ!」
その言葉にいのとサクラ、ナルトが歓声を上げる
その声が聞こえたのかトキが顔を上げる、だがその直後にふらりと倒れたのだ
危ない、とキバの声がする
身体を地面にぶつける直前、俺たちの後ろに立っていたはずのアスマが現れ、トキの背中を支えた
そのまま俺たちのもとに戻ってくると、トキを壁に寄りかからせる
ア「……気を失ってるみたいだな」
い「良かったぁ……」
目を閉じ、ぐったりするトキ
その顔色は悪く、みんなが心配する
彼女の頭に手を伸ばし、ぽん、と手を乗せた
シ「………頑張ったな」
ぐしゃぐしゃと軽く撫でると、かすかにトキの表情がゆるんだ
ふとその時、彼女の首のアザが目に入る
そのアザに触れようと手を伸ばした時、誰かにその手を掴まれた
シ「っ……、サスケ?」
サ「……………それには触るな」
それだけ言うと、ぱ、と手を放される
俺とサスケの様子を見ていた上忍二人は顔を見合わせ、真剣な表情になった
ア「……あー、みんな、トキは医療班に任せよう
トキがいつ気がつくか分からないしな」
チ「……うん、そうだね、ここじゃまともに休めないだろうし」
い「後で様子見に行きましょ!」
よし、とアスマは笑うと、トキを抱えていったん会場からいなくなる
次の試合はサスケだった
第三の試験の予選が終わるまでトキが戻って来ることはなかった
第12話
予選
.