一族の仇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先に攻撃を仕掛けてきたのは音忍だった
空気の振動を利用する攻撃だと言うのは気付いている
だがそんな分析よりも早く、手は動いていた
『時遁・時空壁!』
パン、と空気が止まる
空気の振動は、トキの目の前で止まった
分が悪いと判断したのか、包帯男が一度下がる
「……なるほど、それが時遁の血継限界
すべての時を止め、何もかもを無効化するという
これでは分が悪そうだ」
『だったら今すぐにここから消えろ!』
「そうはいかない、大蛇丸様の命令だからね
君と、うちはサスケは逃がさないよ」
『大蛇丸…?!
アイツの仲間か?!』
「えっ…、トキ?!あなた知ってるの…?!」
サクラの驚く声が背中から聞こえる
だがそれには答えず、目の前の男を睨み続けた
その時、トキの前に三人の影が現れた
***
トキを追い、サクラを守るためにシカマル・いの・チョウジが現れる
三人の背中に驚く中、いのが素早く指示を出す
い「トキ!詳しいことは後で聞くとして、今はサクラ達をお願い!
さー、いのチーム行くわよ!
フォーメーション、猪鹿蝶ー!!」
チ「オーケー!」
三人が一斉に攻撃を仕掛ける
その隙にサクラ達のもとに走った
『サクラ、怪我は?!』
サ「私は大丈夫、だからリーさんとサスケくん達を!」
『分かった』
リーの身体に手をかざし、医療忍術で怪我の手当てをする
それを終え、すぐに寝ているサスケとナルトに近寄るが、思わず顔をしかめた
『……サクラ、このアザ…』
「……大蛇丸って奴が付けたの
それをつけられた途端、サスケくんが苦しみ出して…!
ナルトもやられちゃって…!私…!」
『………大蛇丸が……
サクラ、よく耐えたね、偉いよ
後は私たちに任せて』
に、と優しく笑いかける
だがその時、サスケが起き上がった
『………サスケ…?』
立ち上がったサスケの身体中に黒いアザが広がる
まるで別人のように悪に満ちたチャクラがビリビリと伝わってきて、背筋がゾッとした
「……サクラ…、誰だ、お前をそんなにした奴は…」
地を這うように恐ろしい声でサクラに問いかける
すると音忍の一人が名乗りを上げた
『………!
いの!心転身を解いて!!
早く!!』
「!
解!」
いのの身の危険を感じ、声を上げる
それを聞いたいのが慌てて術を解いた
音忍の少女の身体から、精神がいのに戻ったのを確認し、慌ててそちらに走った
先ほどの戦いで怪我をしたいのをすぐさま治療する
そこからは酷い戦いだ
サスケが別人のように、恐ろしい戦いをした
敵の両腕を折り、残酷なまでに追い詰める
見てられない、といのが目を背けた
だがそれは、サクラの身を呈した制止によって収まった
『……今の力は何…、何があったの』
まだ肌がビリビリする
チャクラも人格も、全てがガラリと変わったかのような戦いだった
サスケじゃないような、恐ろしさ
サスケの暴走と、仲間二人の重傷
そして日向ネジ達の登場によって、包帯の男は巻物を置いて去ろうとした
『待て!』
立ち去ろうとする音忍の背中を呼び止める
周りが騒めくのを感じた
だがここでこのまま逃がすわけにはいかない
聞かなければいけないことがある
いののそばを離れ、音忍の前に立つ
サクラの離れろ、という声が響いた
『あなた達は大蛇丸の仲間なんでしょ?!
だったら答えろ!
奴の目的は何?!私とサスケを狙う理由は?!』
「………。」
『それにアイツが操ってたあの巨大な蛇…!
私はあの蛇を知ってる!!
あの蛇は、父さんと母さんを殺した蛇だ!!』
しん、とあたりが静まり返る
みんなの戸惑いが、手に取るように分かった
けれど、ここでやめる訳にはいかない
『大蛇丸が空目一族を滅ぼした理由は何?!
どうして私の一族は滅ぼされなきゃいけなかったの…!!
どうして私の家族は殺されなきゃいけなかったの……!!』
「!」
頭が痛くなる、それにさっきの首の痛みも残ってる
身体が鉛のようにだるい
「トキ!もう止めろ!」
『っ、シカマル…』
シカマルに後ろから腕を引かれた
私の眼を見たシカマルが顔をしかめ、緑だ、と呟いた
どうやら今の私の眼は緑色になっているらしい
「……あの方の考えは、私には分からない」
『!』
「だが大蛇丸様は君を欲してる
空目ではなく、君自身を、だ」
『何で私なの…!』
「失われた記憶、そこに答えがある」
『!!』
そう言い残し、男が姿を消す
後に残ったのは、不気味な静寂だった
「……おいトキ、今の話はどういう事だ」
戦いの傷を癒すため、一時休戦し、十班と七班はその場に留まる
ネジはリーを連れ、テンテンと共に去っていった
ずるずると力無く座り込んだトキに、黙って寄り添うシカマル
だがそこに、サスケがやって来た
シ「おい…、今その話はやめろ」
サ「俺はトキに聞いてるんだ
あの男は、お前の一族の仇なのか」
シカマルの制止もむなしく、サスケは淡々と尋ねる
それに顔を上げず、うつむいたまま口を開いた
『……さっき、大蛇丸っていう人に会った
その人が、空目一族を滅ぼしたって
私の親を殺したのも、大蛇丸』
震える唇で、抑揚のない声で答えるトキ
その背中に手を当て、落ち着かせるようにゆっくりと撫でる
こんなに取り乱しているトキを見たことが無かった
『……私の知らない私を知ってる、ってアイツは言った
それに、サスケと私がアイツを求めるようになる…って』
サ「!
俺が…」
シ「……お前の知らないお前、って何だ?」
『………私の、三年間の記憶』
そこまで話したところで、トキの目の前に誰かが立つ
顔を上げると、そこには怒りに満ちた表情で彼女を見下ろすいのがいた
「トキ、全部話しなさい
今あったこと、今までのこと
シカマルとチョウジが知ってて、私が知らないこと
全部よ!」
『!
何、言って』
「私が気付いてないとでも思った?!
アンタ達三人、私に何か隠してるでしょう?!
さっきのアンタの緑色の眼に、夢のこと、それにアカデミーに来る前のことも、何か隠してる
全部話しなさい!!」
『……いのには、関係ない事だよ』
「関係あるわ!私も第十班の仲間よ!
もし今後アンタに何かあったら、嫌だもの…!!」
『………いの…』
「……お願いだから、無茶しないでよ…!
どんだけ心配したと思ってんの…!
帰ってきたら倒れてて、起きたと思ったらいきなりいなくなって…!それに狙われてるとかもう…何なのよ!」
いのの目に涙が溢れる
そして涙は頬を伝った
『……分かった、全部話す
サスケ達も、聞いてて』
「おいトキ!」
『良いのシカマル』
ありがと、と悲しげに笑うその姿に、胸が締め付けられそうだった
***
事の起こりである一族の消滅
予知夢の力
消えた三年間の記憶
そして、大蛇丸との接触
それらを全て話し終えると、トキは困ったように笑った
『一族が滅んでからアカデミーに入る直前まで、私は自分がどこで何をしていたのかを思い出せない
けど私はその三年間で、少なくとも医療忍術と時遁の使い方を学んでる…
身体が覚えてるくらい、私はその力を使ってた…』
サ「……敵に、利用されてたかも知れないの?」
『………今も利用されてるのかも知れない
木の葉にスパイとして潜入してる可能性も、私は否定出来ない』
ナ「トキが悪い奴なわけないってばよ!!
だって、サクラちゃんを守ろうとしたんだろ?!」
い「そうよ!
私たちはアンタの事信用してるし信頼してる、変な心配しないで、アンタは堂々としてれば良いの!」
『………ありがとう』
優しいことばと仲間たちに、思わず涙が出てくる
けどそれをぬぐい取り、にっこりと笑った
***
『サスケ』
「………何だ」
『肩にあるアザ、診せて』
サスケの腕を掴み、そう頼む
他のメンバーは、まだ休んでいた
「何かあるのか」
『私の術なら、その力を遅らせることが出来る』
「遅らせる?」
『そう
この呪印は、おそらくチャクラに反応してサスケの身体を蝕んでいく
それを止める事は出来ないけど、蝕むスピードを遅くすることは出来る』
ババ、と素早く印を結び、呪印に手を当てる
トキのチャクラが身体の中に入ってくるのが分かった
「………トキ」
『何?』
「お前は復讐したいと思った事は無いのか」
チャクラを感じながら、サスケが背中を向けたまま尋ねる
その言葉に少しの間沈黙した
『………分からない』
「………。」
『私はサスケと違って、一族を滅ぼした犯人を知らなかったから
けど、犯人が大蛇丸だと知った今…、次に奴に会った時、私がどうするのかは分からない』
「そうか…」
『けどもし私が復讐してやる、なんて言ったら、シカマルがきっと怒る』
フッ、とチャクラを流すのを止める
どう?と尋ねると、サスケは軽く肩を回し、私を振り返った
『……それにサスケ、もしサスケがうちはイタチに復讐する事を考えてるのなら、私は止める
ナルトもサクラも止めるよ、きっと
何があっても
サスケはそっちに行っちゃいけない』
「………俺は復讐者だ
イタチは必ず殺す」
『そんな事に何の意味があるの』
「………お前には関係ない」
『………。』
助かった、そう小さく告げ、サスケがナルトとサクラのもとに行く
だがその途中で私を振り返った
「お前の仇が大蛇丸で、そいつがお前を狙ってたとしても
お前は渡さねーよ」
『!
………私だって、サスケを大蛇丸に渡すつもりはないよ』
「フン……、そーかよ」
小さく口元をゆるめ、サスケが穏やかな表情になる
まだ疲れは見えたものの、いつもの彼に戻ってくれたようだ
***
「……サスケくんて」
「あ?」
少し離れたところで、トキとサスケが二人で何か話している
二人の雰囲気は何となく、近寄りがたかった
ぼんやりとその二人を眺めていると、いのがボソッと口を開いた
「……サスケくんて、トキの事好きなのかしら」
「!」
二人が小さく笑い合っている
二人には二人の、誰にも割って入れない絆があるように見えた
同じ境遇だからだろうか
「……知らねぇよ」
少しだけ、胸が痛くなった
第11話
一族の仇
.