第一の試験
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
下忍として認められ、第十班として活動を始めたトキたちは、毎日小さな任務をこなしていった
そんな日々が続いていた中、アスマに呼ばれた四人は演習場へと赴いた
『アスマ先生、今日の任務は何ですか?』
ア「今日はなぁ、特別任務だ!」
い「特別任務?」
シ「……めんどくせぇ」
チ「何するの?」
タバコをふかしながら、担当上忍のアスマが大らかに笑う
特別任務とは何だろうか、迷い猫の捜索か、草むしりか
そこらへんの任務を考えていると、アスマがタバコを口から離し、にこりと話し始めた
ア「お前たちには中忍選抜試験に出てもらう
そのために、お前らのチームワークや攻撃のパターンを組み立てる必要がある!
その特訓が、今日の特別任務だ」
広い演習場がしん、と静まり返る
木々のざわめきの方がよく聞こえるほどだ
『……中忍選抜試験、て、私たちまだ下忍になったばっかなのに』
ア「何事も経験だ
シカマルの頭脳、トキのずば抜けた戦闘能力、チョウジのパワーといのの心転身
一人一人の能力はまだ未熟ではあるが、お前らは四人いれば強い
だから、お前らの中忍選抜試験への参加を推薦した」
シ「……勝手なことしやがって」
『こら、シカマル』
ごん、と肘をシカマルの脇腹に打ち込む
う、と顔をしかめたシカマルを見てアスマが笑うと、また話を続けた
他にもカカシ班、紅班も参加の意向を示したらしく、同期が勢揃いでの中忍選抜試験となりそうだ
***
ア「トキ」
『?
先生、何ですか?』
ア「トキ、お前時遁の術は使えるのか?
使ってるところを見たことがないんだが…」
『……使えない、と思います
両親にも習った事なかったから』
ア「そうか
時遁の術を使いたいと言うのなら、俺が何かお前の一族に関する資料を探してくるよ
まぁそんな事しなくても、お前は空目の人間だ
忍者としての素質はうちはにも日向にも負けないよ
中忍試験、期待してるぞ」
ぽんぽん、と頭を撫でてからアスマが歩き去る
今日の特訓は終わりのようだ
い「……ねぇトキ、空目一族ってどんな一族なの?」
『………空目は、元々はうちはや日向にも並ぶ木の葉の旧家なんだ
時遁と呼ばれる血継限界の能力がある
多分私にもその力があるんだろうけど、残念ながら私はその力の使い方を知らない』
い「血継限界…、写輪眼とか白眼とかの事よね」
『そう
時遁はその名の通り、時を操る力
時間を巻き戻したり、止めたり出来る
その力を応用した医療忍術なんかも多いんだよ』
い「ならトキも、いつか使えるようになるんじゃない?
ほら、アスマ先生に修行つけてもらうとかさ!」
『………そうだね
私で空目の力を途絶えさせたくはない』
力強い言葉に三人は少し黙り込むも、すぐに表情をゆるめた
シ「お前なら平気だろ、サスケの次に強いし」
チ「うちの班の頼れる大黒柱だもんね!」
い「そーよ、猪鹿蝶のコンビネーションにトキの力があれば向かうところ敵ナシよ!
ぱぱっと中忍試験も突破して、あのデコリンの鼻を明かしてやる!」
『いのとサクラは本当に仲良いね』
い「仲良くないわよ!」
クスクスと笑うトキに、それまでは顔をしかめていたいのも笑い出す
そしてコンビネーションの練習を重ね続け、ついに中忍試験当日となった
第一の試験は何だろうね、なんて呑気なチョウジと話しつつ、受験者の控え室に入る
そこの空気は殺伐としており、今にも戦闘が始まりそうだ
「あっ、サスケくぅ~ん!」
『あ、サクラ、ナルトも』
いのが可愛らしい声でそう言い、サスケの腕に飛びつく
あーあ、なんて呆れる私のもとにナルトや紅班の三人がやって来た
『キバ、ヒナタにシノも、久しぶりだね』
キ「そーだな!班が違うとやっぱり会わねーもんだな」
ヒ「トキちゃん、元気そうで良かった」
同期との久しぶりの再会を喜んでいると、突き刺さるような視線を感じた
そして自分たちに近付く気配
ヒナタたちをかばうように背中に隠し、ホルスターからクナイを取り出してその気配の喉元に突きつけた
その一瞬の出来事に、相手はもちろん、ヒナタ達も驚いた
『………誰、あなた』
「…君凄いね、今の早業。下忍とは思えないよ
それに気配も隠したつもりだったんだけど…
僕は薬師カブト、とりあえずそのクナイを下ろしてもらえるかな?」
「トキ、下がってろ」
『!
サスケ』
カブトと名乗った男に突きつけていたクナイを下ろす
すぐにサスケが現れ、トキとカブトの間に入った
カブトは中忍試験を受けたことがある先輩として、騒がしいナルト達に注意をしに来たらしい
独自に集めたという下忍の情報カードを見せ、自慢げに話を始めるカブトに、他の同期たちは夢中になっていた
「トキ、どうした」
『……あの人、この部屋に入った時からずっと私たちの事を見てた
その視線が何か、他とは違うように感じて』
「違う?」
トキの隣に並んだシカマルが彼女に問いかける
その問いに、トキは声を潜めて答えた
『あの人の視線は、ライバルに向ける敵意とは異なってる
何か…、観察するような感じ
それも、かなり強い執着心を持って』
「………危険そう、って感じか?」
『………断定は出来ないけど
けどあの人、厄介そう』
そこまで話したところで、カブトの視線がトキに向いた
その視線に顔をしかめつつも、何か、と声をかける
カ「いやね、君のことも少し調べさせてもらったんだよ
それで、ちょっと面白い事がわかって」
ナ「面白いこと?」
ナルトが首を傾げる、それに笑顔を見せ、一枚のカードを見せた
そのカードにはトキが写っていた
カ「君の名前は空目トキ……
三年前に滅んだはずの空目一族の生き残りなんだってね?
まぁそれは、君の髪と瞳を見た時から薄々は感じていたよ
けど面白いのは、ここから先だ」
『………。』
ぎゅ、とトキの拳に力が入る
胸が嫌にざわめいた
何となくではあるが、この男に自分の事を知られるのは避けたいと感じたのだ
カ「君のこの三年間の記録がどこにも無いんだよ
病院、学校、居住エトセトラ…
君はまるで、三年間木の葉にいなかったかのようだ
君は空目一族が滅んだ後、一体どこにいたんだい?」
『!』
ドキ、と心臓が跳ねる
それはシカマルとチョウジ以外には話していない事だった
サ「それはそうよ、トキはあの事件の後、一旦木の葉の外に出ていたんだから
里外で三年間、保護されてたんでしょ?
カカシ先生はそう言ってたけど」
キ「トキの一族を狙った奴が、またトキを狙うかもしれないからっていう理由なんだっけか
だから、三年間里にはいなかった」
カ「………へぇ、なら君は、その三年間をどういう風に過ごしていたのか
教えてくれるかい?」
『………あなたに教える義理はありません』
おそらく三代目のおかげだろう、トキが三年間の記憶を失っていたことは、同期には伏せられているようだ
トキの答えにカブトは苦笑いを浮かべる
カ「……どうやら、君は僕のことが嫌いみたいだね」
『敵に塩を送りたくないだけです』
カ「なるほど…、確かに試験が始まれば僕は敵だもんね」
ふ、と笑うカブトを警戒混じりの視線で見つめる
だがその時、急激に近付いてくる気配に気付いた
『…!
伏せて!』
『!』
「カブトさん!」
何者かがカブトに向かって攻撃を仕掛けてきた
だがトキの咄嗟の判断で、攻撃が直撃するのは免れた
だが眼鏡が割れ、彼は激しく嘔吐する
ナルト達がカブトを守るようにその相手を睨んだ
『………音隠れの忍』
顔中が包帯で巻かれ、表情が全く分からない不気味な男
その額当てには音符のマークが入っていた
「君が空目の人間ですか、なるほど」
「!
っやいテメェ!トキとカブトさんに何しやがった!」
ナルトが憤り、サクラ達は睨みつける
トキはその間にカブトの怪我を診た
『耳、聞こえますか』
「いや……、ちょっと聞こえない」
『鼓膜が破られたのかも…
治します』
耳に手をかざし、チャクラを練り上げる
そして手からは、青白い光が溢れる
カブトの耳の怪我が治っていくのが、チャクラを通して伝わってきた
い「……トキ、アンタ医療忍術が使えるの?」
『え……』
ブゥン、と光が消えると、いのが驚いたように尋ねてくる
そこで初めて、トキはごく自然に医療忍術を使っていたことに気付いた
『………なんで、私』
「あぁすごい、耳がよく聞こえる
痛みも無くなったよ
ありがとう空目さん」
『あ…、いえ』
「にしても凄いね、医療忍術なんて会得難易度が難しいものをいとも簡単に使いこなして…
さすが、医療に精通した空目一族の人間だ」
『………。』
ドクンドクンと脈が速くなる
トキは自分の両手を見た
私は何故医療忍術が使えるんだ、やり方を知ってるんだ
自分のことなのに自分のことが分からない
それはトキの心に一抹の不安を持たせた
「トキ…?」
『シカマル……、なんで私…』
あの時と同じだ、サスケと模擬戦闘をした時と
自分では出来ないと思っていたのに、頭より先に身体が動く感覚
知らない自分がいる感覚
私だけど私じゃない
そんな感覚に襲われた
「トキ、今は試験に集中しろ
良いな?」
『………分かった』
「………よし、期待してるぜ、俺らの大黒柱」
ニッ、とシカマルが笑う
ちょうど、第一の試験の試験官が部屋に入ってきた
第一の試験が始まる
***
第一の試験は筆記テスト
チームメイトとは離れた場所に座らされた
この試験では情報収集能力を見るとの事
『(つまり、ただの試験じゃない、って事?
それにこの量の監視……、いかにうまくカンニングするかを見るって事か)』
ならテストは恐らく、かなり難しい問題で出来てるのだろう
この部屋にいる人間でも、ごく一部の人間じゃないと答えられないような問題が出る
そこでどう情報を収集するかが問われる訳だ
ちらりと後ろの方に座るいのを見る
いのもトキを見ていた
視線を交えると、いのは親指を立てて笑う
トキの考えることは伝わったようだ
幸いにも、いのはチームメイトの中で一番後ろに座っている
いのの心転身の術があれば何とかなるだろう
「おい」
『!』
作戦を頭の中で組み立てていると、隣の席に座る男の子から声をかけられた
その男の子の眼に既視感を感じた
『(……ヒナタと同じ眼)
何か』
「さっきの、見てたぞ
空目一族だとな」
『まぁ……
そういうあなたは見たところ、日向一族の方ですね』
「日向ネジだ
敵ではあるが、よろしく頼む」
『空目トキです
こっちこそ、よろしくお願いします』
ぺこ、と小さく頭を下げる
そしてすぐに試験は始まった
***
問題は確かに難問だ
アカデミーでもそう習わないような問題
『(……でも)』
解ける、答えが分かる
『(さっさと答えていのに教えなきゃ)』
鉛筆を取り、1問目から答えていく
そして9問目まで解いたところで、普段は首に巻いている額当てを額に巻いた
***
「………!
(さすがトキ、もう全部解き終わったようねー)」
問題に悩んでいるフリをして、トキの青い髪を盗み見る
何十分か経過したところで、彼女が額当てを額に巻いた
それが合図だろう
試験官にバレないように手で輪を作るような印を組み、その輪の中に彼女を捉えた
「(心転身の術!)」
『!』
ふっ、と意識が遠ざかる
後はいのに任せれば、第十班は合格できる
ニヤ、と口元を緩めたとき、隣に座るネジがちらりと彼女を一瞥した
「(……いのの奴、トキの中に入ったな)」
「(後はいのが僕たちの中に入って、トキの答えを書けばオーケー!)」
パタンと身体を机に突っ伏させたいのと、答案用紙をじっと見つめるトキ
その二人の様子を見たシカマルとチョウジは、いのが心転身でトキに入った事を察する
そして数十秒後、身体を起こしたいのとアイコンタクトを取り、自分の白紙を見つめて口元をゆるめた
ふっと意識が途切れ、また目を開けた時、白紙だったはずの答案は全て埋まっていた
***
森乃イビキ試験官の第一の試験合格、という声が部屋に響く
『……合格…!』
「そのようだな」
ふー、と長い息を吐くネジ
彼の方を向き、良かったです、と笑いかけた
そして突然窓をかち割って現れたみたらしアンコという女性が、第二の試験についての説明を始める
試験はまだ続く
気を抜くわけにはいかない
第9話
第一の試験
.