二年越しの恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヒナタちゃんにシカマルさん達が無事に帰ってきたと聞き、自然と足が動いていた
しかしそれを遮ったのは
キバ「――…待てよ」
『…キ、バさん』
キバさんだった
―――――
イノ「――…全部、終わったのね……」
チョ「うん…」
シカ「……。」
綱手様への報告を終え、元アスマ班の三人で帰路についていた
太陽はすでに落ち始め、空は青からオレンジ色に変わろうとしていた
アスマの墓に行かねぇとな
シカ「……二人とも悪ぃ、俺こっちだから」
イノ「え?
アンタの家こっちでしょー?」
シカ「ちょっとな
じゃあな」
足早に二人と別れ、アスマの墓へ急いだ
とにかく一報入れたくて
それが済んだら
早く特等席に行かねぇと
男が女を待たせるのは格好つかねーからな
―――――
『……。』
キバ「シカマルのところに行くんだろ?」
ヒナ「キ…、キバ君…っ」
すぐ近くでヒナタが困っている
だが、気にしていられねー
今聞かないといけないような気がするんだ
キバ「俺はお前が好きだ
だから、お前の返事が聞きてぇ
……もう、誤魔化すのは無しだぜ」
『…っ』
ぐっ、とキバさんに握られている腕に力が入る
いい加減、答えを告げなければいけない
これ以上先延ばしにしたって意味は無いんだから
決めたはずなのに、いざ言葉にしようとすると喉が詰まる
それに目の前が霞んできた
キバ「瑞乃…『ごめんなさい…っ』……。」
『ごめんなさいキバさん…
私は、あなたの気持ちには答えられませんっ…
シカマルさんのことが好きなんです…っ!』
キバ「……。」
ヒナ「瑞乃ちゃん……」
『ごめ、んなさい…っ
こんなに良くしてもらっているのに…、優しくしてくださるのに…
私はあなたを傷つけることしか出来ない……っ』
『ごめ――…!』
キバ「もういいから…
…ありがとな」
自分の服の袖で瑞乃の涙を拭った
フラれたけど、アイツならいいか
って心のどっかで思っている自分がいて、少し可笑しかった
キバ「ありがとな、返事
――――ほら、早くアイツのところ行ってやれよ!
アイツが待ちくたびれるぞ?」
ぽん、と軽く背中を押すと少しだけ笑顔になった
その顔にまだ胸が高鳴ってしまうのは
今は見逃してくれ
『―――…キバさん、こんな私を好きになってくれて
本当に嬉しかったです
ありがとうございます』
キバ「へっ!
なーに言ってんだよ!
俺達のことはいーから、早くアイツのとこ行ってやれって!」
『……はい』
敢えて名前を呼ばないのは、俺の最後の悪あがきだ
ガキくせーけどな
ヒナ「キバ君…」
キバ「はーぁ、初恋終わっちまったぜ!
しかも、あのシカマルに負けるとか
うわ無いわー!」
ヒナ「…また…、いい人がいるよ
きっと」
キバ「…サンキューな、ヒナタ」
この時は、隣で静かに慰めてくれるチームメイトにすごく感謝した
―――――
シカ「……まだいねぇか…」
アスマの墓に行って、紅先生と少し話した
かっこいー大人にならねぇと
と言ったら、紅先生は小さく笑って
それじゃ、まずは守りたい大切な人を見つけないとね
って言われた
守りたい大切な人
お前は俺より強いし頼りになるけど、でもどっか弱くて少し頼りない時もある
そんなお前だから、守りたいって思っちまう
お前が泣いてるんなら、俺がそばにいたい
慰めるなんて器用なことは出来ねーけど、ただそばにいることは出来る
お前が砂の忍だってのは分かってる
でも好きになっちまったんだよ
めんどくせぇが口癖の俺が
めんどくせぇくらい遠い存在のお前に
惚れちまったんだ
だから、何も言えずにいなくなるのは嫌だから
アスマみたいに突然いなくなったら嫌だから、怖いから
早く伝えたい
瑞乃、伝えたい言葉があるんだ
お前の本当の気持ちは気になるけど、今はとにかく会いたい
早く――…
『――…シカマルさん……?』
シカ「――…!!」
『――…シカマルさん……?』
シカ「――…!!」
キバさんに背中を押され、すぐに特等席に来た
屋上につながる階段を一気に駆け上がり、いつものベンチを見ると
疲れたような、だけど清々しい顔をしたシカマルさんが
空を見上げながら座っていた
シカ「――…瑞乃」
『……っ!!』
名前を呼ぶ声が温かくて、嬉しかった
シカマルさんが無事だって実感出来て
そう思ったら膝の力が抜けてしまい
ベンチから二メートルほど離れたところで座り込んでしまった
シカ「ちょっ…?!
どうしたんだよ瑞乃っ」
急に座り込んだ瑞乃に驚き、ベンチから立ち上がって彼女に駆け寄った
『……良かった…!
シカマルさんが無事で…っ…』
シカ「!」
顔を覗きこめば両手で顔を覆う
けれどその手から零れ落ちるのは、彼女が流している涙だと、すぐに分かった
ぐいっ
『……!!』
シカ「……。」
瑞乃を抱き締めた
シカ「…ごめんな、心配かけて」
『……っ』
小さくつぶやかれた言葉に気付いた瑞乃が、胸に寄りかかってきた
顔を埋めるように
そのまま胸の中にいる彼女の髪の毛に触れてみた
空色の髪の毛
指を通せばさらりと引っ掛かることなく擦り抜けて、心地よかった
『……シカマルさん…』
シカ「…!
な、んだよ?」
瑞乃が涙を拭い、ゆっくり俺から離れた
それにいくばくかの寂しさを抱きながらも、言葉を続けようとする彼女に目を向けた
『……伝えたい、ことがあるんです…』
シカ「……!」
真っ直ぐ俺を見つめる瞳に、胸がどきりと騒めく
吸い込まれそうなほど澄んだ青い瞳
それが今は涙に濡れている
『……シカマルさん、私――「待ってくれ」…!』
シカ「俺も、お前に言いたいことがある
先に言わせてくれ」
『……?』
少しだけ不安そうに瞳を揺らした彼女が、どうしようもなく愛しく見えた
すぅっと深呼吸をして、もう一度瑞乃を見る
そして、少しだけ震えている唇を開き
シカ「好きだ、瑞乃」
『――!!』
シカ「二年前の中忍試験の時からずっと
ずっと好きだった」
『……う、そ…』
目を見開き俺を凝視する
かと思えば、また両手で顔を覆った
シカ「なっ…!
おい瑞乃、泣いて『私もです』………え?」
『私も、シカマルさんのことが好きなんです…っ!』
細い肩を揺らしながら、涙声でつむがれたその言葉は
はっきり俺の耳に届いた
『木の葉とか砂とか関係なしに、あなたが好きで…っ
だから、だから
―――……!!』
瑞乃の両手を無理やり退かし、彼女の唇にキスした
最初は驚きで固まっていたけれど、彼女はやがて目を閉じた
長かった二年越しの恋が、
ようやく実った時だった
空を見上げて
第一章:完結
.
1/1ページ