決意
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
イノ「シカマルはどこ?」
チョ「おばちゃんに聞いたらもう出たって……
瑞乃知らない?」
『……いいえ』
イノ「ったく、何やってんのよアイツ…」
アスマさんの葬儀には見知った顔が多く参列した
私はサクラに借りた喪服を着て参列していたが
先ほどからシカマルさんの姿が見えない
いのちゃんとチョウジ君に行方を聞かれたが、私は何も知らなかったし
他の人も見ていないようだ
『……。(シカマルさん……)』
聞けば、第十班の三人の目の前でアスマさんは息を引き取ったらしい
そして
アスマさんを殺したのは暁の二人組
それを聞いて思い出すのは
我愛羅やチヨばあ様のこと
目の前で恩師が亡くなりそうなのに、何も出来ないもどかしさや悔しさを
この三人も味わったのか
私に優しくしてくれたアスマさんとチヨばあ様が重なり、涙が頬を流れた
忍に死はつきもの
分かっていても、頬を流れる涙は止まらない
―――――
葬儀が終わり、私は着替えるために帰路についた
人気の少なくなった夕方の路地に響く、自分の足音
やけに静かなこの空間が、妙に不気味だった
少し足早に歩いていると、前方から誰かが歩いてきた
『…シカマルさん……?』
シカ「…………!」
うつむきながら歩いてきたのは
シカマルさんだった
―――――
『…シカマルさん……?』
シカ「…………!」
ぼんやり歩いていたら、前から遠慮がちに声をかけられた
ゆっくり顔を上げれば
そこには心配そうにこちらを見つめる瑞乃がいた
『シカマルさん…、どこに行ってたんですか?
いのちゃんやチョウジ君も心配して―――……っ?!』
近寄って心配そうな声色のまま声を掛けてきた瑞乃の腕を引っ張り、そのまま夢中で抱き締めた
なぜ抱き締めたのか、俺にもよく分からない
ただ
誰かに触れていたかった
突然アスマがいなくなって、まだ自分の中で何も整理はついていない
今はとにかく瑞乃に会いたかった、会って抱き締めたかった
瑞乃が側にいることを感じたかった
『……シ…、シカマルさん…?』
シカ「………頼む
今は…、このままでいさせてくれ……」
『……。』
そっとシカマルさんの背中に腕を回すと、抱き締める力が少し強くなった
そして気付いた、腕がかすかに震えていることに
どのくらいそうしていたのだろう
私にはとても長く感じた
シカマルさんは腕を解く時、「悪ぃ」と言った
その顔はまだ暗く、でも何か踏ん切りがついたような
複雑な顔だった
腕を解くと、瑞乃の頬がまだ濡れているのに気付いた
目も少し赤い
『……!』
シカ「頬、濡れてる」
喪服の袖で強引に涙を拭い、髪の毛に触れた
鮮やかな空色
俺の好きな色だ
――アスマが死んでからずっと考えていたことがある
それが頭の中でパズルのように組みあがり、すべてのピースが揃った
固い決意
瑞乃のおかげで、今ようやく決意が固まった
チョウジやいのにこの決意を伝えなければ
『……シカマルさん?
大丈夫ですか?』
シカ「……あぁ
お前のおかげで、やっと決心した
――――俺は、行く」
『え?
どこに……
――――!!』
ふわっと笑ったシカマルさんの笑顔はいつもと違っていて、何か不吉な予感が体を支配した
行く?
行く、ってまさか
シカ「――…じゃあな」
『!
待って……っ!』
呼び止める声は、彼には届かなかった
シカマルさんの意味深な言葉を聞いた翌日の未明
第十班の三人は
ひそかに準備を進めていた
――――――
綱「わざわざこんな明け方にご苦労」
『いえ、こちらこそ申し訳ありません
どうもナルト君には昼夜の差が無いようでして……』
あはは、と苦笑いを浮かべると
綱手様は大きなため息をもらした
綱「瑞乃、お前修業が始まってからずっと付きっきりだったろう
今日くらいゆっくり休め、カカシにはこちらから伝えておくから
ナルトのバカのせいであまり眠れていないだろう?」
『…すみません、お言葉に甘えさせて頂きます……』
眠い目をこすりたくなる衝動に耐えながら、明け方に綱手様のもとを訪れた
もちろんナルト君の報告だ
かなり疲れていたのは事実なので、綱手様のご厚意に甘えさせて頂こうと頭を下げて感謝した時
シズネさんがあわてて入ってきた
綱「どうした騒々しい!」
シズ「綱手様大変です!
第十班の三人が勝手に里の外に出ようと……!!」
綱「何ィ?!
――シカマル達か!!」
『!!!!』
――ダッ!
シズ「あっ…!
瑞乃さん?!
どこへ……!」
綱「待て瑞乃!
―――ったく…
シズネ!私は少し席を外す!」
シズ「は、はいっ!」
飛び出した瑞乃を追い掛け、綱手も部屋を飛び出した
もちろん、行き先は
木の葉の大門
―――――
イノ「準備はいい?」
チョ「行くよシカマル!」
シカ「あぁ」
ゆっくりと立ち上がり、木の葉の大門をくぐろうと足を踏み出したその時
『何してるんですかっ!!』
みんなが寝静まっているこの空間に
凛とした、どこか心地よい声が響いた
シカ「………瑞乃…」
今は
一番会いたくなかった
『…三人ともどこへ行く気ですか?』
イノ「瑞乃……」
彼女から伝わるのは
静かな怒り
怒ってる彼女を見るのは初めてかもしれない、なんて呑気に考えていた
シカ「俺達は筋を通しに行くんだよ」
『…!!
我愛羅でさえ適わなかった暁に、あなた方三人が勝てるとでも?
砂隠れの精鋭達だって、暁の一人に何十人もやられたんですよ』
イノ・チョ「「……!!」」
少し、いのとチョウジの顔が引きつった
話の内容のせいもあるが、何より
瑞乃のまとっている雰囲気が怖いからだろう
普段は温厚な彼女らしからぬ怒りの感情
そしてかすかに出ている特別上忍の殺気
シカ「……いくらお前に言われても、俺達は行く」
『…!』
シカマルさんの瞳は強く、全く揺らがない
それだけでも強い覚悟は感じ取れた
『任務は四人一組が原則
あなた方は今三人しかいないじゃありませんか』
「瑞乃の言う通りだ」
『「「!!」」』
イノ「五代目様……」
後ろから現れたのは、綱手様だった
綱「…勝手な行動は許さん
現実を見ろ
お前達は三人しかいないだろう」
シカ「……。」
「小隊は四人いればいいんですよね?」
『……!!
カカシさん…』
綱「カカシお前……!」
突然現れたのはカカシさん
ナルト君達と寝ていたハズなのに
そんな私の戸惑いを気にせず、カカシさんはゆっくり綱手様に近寄り、何かを耳打ちした
その間、私はただ俯いていた
やがて綱手様は大きくため息をもらした
綱「はー……、勝手にしろ!」
イノ・チョ「「!」」
『っ!!(そんな……っ!)』
シカ「……ナルトはいいんすか?カカシ先生」
シカマルさんが尋ねると、カカシさんは右手を見せた
包帯が巻かれた、痛々しい腕
カカ「……ま!
アイツにとっちゃもう俺は用無しってワケ
それに瑞乃もいるしね」
『……。』
綱「……瑞乃、お前は家に帰れ
疲れているだろう」
ぐっと手を握り締める
このまま行って欲しくない
行かないで欲しい
シカ「瑞乃」
『!』
シカマルさんが目の前に来て、優しく名前を呼んだ
『…行かないで……、ください…っ……』
シカ「……。」
『あなたまで…、あなたまでいなくなるのは嫌です…』
シカ「……勝手に殺すなバーカ」
ぽんぽんと頭を軽く叩くと、瑞乃が俺の胸に寄りかかってきた
どくん、と胸が高鳴り
一瞬何が起きたのか分からなかった
驚いて瑞乃を見ると、彼女の肩は震えていた
シカ「……。」
『……。』
ぎゅっと強く抱き締めた
温もりを確かめるように
チョ「……シカマル、そろそろ…」
シカ「……あぁ
―――……瑞乃」
腕の中で肩を揺らしている彼女に声を掛けると、ぴくりと体が動いた
顔を上げない瑞乃の耳元に顔を近付け、口を開いた
シカ「 」
『――…!
シカマルさんっ……』
顔を上げて名前を呼べば、またシカマルさんは優しく笑い
背中を向けた
全てが終わったら、特等席で待ってる
.