宣戦布告
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
木の葉と砂
同じ忍でも、国が違う
『…シカマルさんは木の葉の忍で、私は砂の忍です』
違うんです
自分が言ったこの言葉は
まるで
呪印のように私の気持ちを締め付けた
木の葉にいるのは任務
でも、ここにいる間に色々なことがありすぎた
あの人と一緒に居すぎた
あの人のことを知りすぎた
私はぐちゃぐちゃになる頭を振り払い、以前にも増して修行に励むようになった
『……はぁー…』
シカマルさんに言った言葉を思い出すと、胸がぎゅうっと掴まれたような感覚になる
私は砂の忍
この言葉を言うだけで、こんな気持ちになるなんて
あれからシカマルさんは任務が立て続けに入ったようで、最近はほとんど会っていない
寂しい、と思ってしまったが
勘違いだと自分に言い聞かせた
キバ「瑞乃ー!」
『……!
キバさん、お久しぶりです』
ぼんやりと木の葉で人通りの多い道を歩いていたら、後ろから肩を叩かれ、振り向いたらキバさんだった
キバ「しばらく任務だったからなー、なんか久しぶりだな!
親睦会から会って無かったんじゃねぇか?」
親睦会
無意識に自分の手を見下ろした
数分間だけ、シカマルさんと手をつないで歩いた
キバ「……瑞乃?
どうかしたのか?」
『…!
いいえっ、何でもありません』
キバ「??」
手を握り締め、キバさんに笑顔を向けた
キバ「………。
瑞乃は今ヒマか?」
『はい、今日はおやすみです
家にいても退屈なので、外をうろうろと』
キバ「ふーん…
じゃ、ちょっと俺に付き合え!」
『えっ?
どこに…「いーから!」…キバさん!?』
半ば強引に腕を引かれ、私はワケも分からずにキバさんの後ろについていった
―――――
『――…公園?』
キバ「おぅ!
俺と赤丸のお気に入りの散歩道だ!」
キバさんが入っていったのは、とある公園
昼下がりだからか、公園内には小さな子供や女性がいた
そのまま公園内にあるベンチに腰掛けたキバさん
私も隣に座った
キバ「…なぁ瑞乃
お前、なんか悩み事とかあんじゃねーの?」
『!!』
ふいに投げ掛けられたキバさんの言葉に驚き、彼の顔を見た
いつもの無邪気な笑顔じゃなく、真剣な顔
じっと見つめられ、少し困った
『………悩み事、と言いますか…、何ていうか…』
何と言えばよいのか分からずに言い淀む
そしたらキバさんは、柔らかい笑顔を私に向けた
キバ「…ま、俺は女じゃねーし
まともな事言えるか分かんねーけど、話して楽になることもあんじゃねぇ?」
『……。』
話して楽に
キバさんにこの胸の中のもやもやを打ち明けたら、何か変わるだろうか?
『……じゃあ…
もしキバさんに気になる人がいて、でもその人とはいつか必ず離れなきゃいけないって分かってたら
キバさんはどうしますか?』
キバ「………なんかややこしいな…
えーと?気になる奴がいつか離れるのか?」
『簡単に言うと』
キバ「ふーん…」
顎に手を当てて、しばらく考え込むキバさん
やっぱ話さなきゃよかったかな
隣で俯いている瑞乃を見る
今の話は…、
キバ「……今の話は、シカマルとのことだよな?」
『…!!』
ぱっと顔を上げてこちらを見る
その後すぐに複雑そうに顔を歪めた
でも頬はほんのり赤くなっている
なんだ、やっぱ瑞乃はシカマルが好きなのか
認めたくなかった事実が胸に突き刺さる
キバ「好きだ」
『え?』
キバ「今の話、俺なら
離れてもそいつのことを思い続ける
木の葉がどーとか砂がどーとか関係ねぇ、距離なんか関係ねぇよ
俺はお前が好きなんだ」
『……キバさん何を…』
キバ「シカマルじゃなくて俺を見ろよ
俺は、お前の言葉が聞きたい
お前自身の答えが聞きたい」
だんだん心拍数が上がっていくのが分かった
キバさんの突然すぎるこの告白は、私の迷いを掻き立てるには十分すぎた
『わ…、私は砂の「だから!砂とか木の葉とか、そーゆー言い訳は聞きたくねぇ!」…。』
「今言っただろ?お前の言葉が聞きたいって
俺が聞きたいのは
瑞乃の気持ちだよ」
『………っ』
私の気持ち
本当は心のどこかで分かってる
でも認めるワケにはいかない
『…ごめんなさい……』
キバ「……。」
『キバさんをそういう風に見たことがありません…
ごめんなさい…』
長い沈黙の後、キバさんがふーとため息をもらした
キバ「……やっぱシカマルか?」
『……ち、がいます
決めてるんです、任務でここに来る前から
木の葉の人を好きにならないって』
キバ「……そか。
――でも俺は諦める気ねぇから
離れても好きでいる自信ならある」
『……。』
キバさんの言葉がすべて心に響き、うれしい反面
正直に答えられない自分に苛立った
真正面から気持ちをぶつけてくれているのに、私はただ傷つける事しか出来ない
『……ご「瑞乃ちゃーん!!!!」……!!
ナルト君…?』
キバ「何の用だよナルト」
口を開きかけた時、ちょうど私の声と重なったのは
ナルト君が私を呼ぶ声
公園内に入ってきて、私とキバさんが座っているベンチに駆け寄ってきた
ナル「………なんでキバがいるんだってばよ?」
キバ「邪魔すんなっつの、ったくよー…」
『……。
ナルト君、私に何か?』
隣でキバさんがぼやくのを聞きながらナルト君に話し掛ければ
ナル「瑞乃ちゃん!
来てくれってばよ!!」
『えっ?
ちょっと…?!』
ナルト君に腕を引っ張られ、あわててキバさんを見た
少しだけ複雑そうな顔をしていた
キバ「瑞乃ー!
俺は諦める気ねぇからー!!」
『……!』
ニカッと笑い、手を振ってくれるキバさんに
なんて答えればいいのか分からなかった
そのまま何も言えずにナルト君と公園を後にした
―――――
キバ「お、シカマル」
シカ「――…!
なんだ、キバか」
瑞乃がナルトに取られた後、里内をうろうろと歩いていた
その時たまたま会ったのは、任務帰りらしいシカマル
シカ「何してんだ?
赤丸無しで歩いてるなんて珍しいじゃねーか」
キバ「…ちょっとな
てか、もう報告書出したのか?」
シカ「今日はアスマ班で任務だったんだよ
だから報告書はアスマが出しに行ってる」
キバ「ふーん…
――ならよ、ちょっと付き合え」
シカ「…は?
何でだよ」
キバ「いーから、行くぞ」
シカ「はぁ?
―ったくめんどくせぇなぁ…」
めんどくせぇと言いながらも、コイツは絶対に付き合ってくれる
そんなの分かってるぜ
シカマルを連れてきたのは、さっきの公園
さっきと同じベンチに腰掛け、シカマルを隣に座らせる
ここまで黙っていたせいか、シカマルは訝しげに俺の顔を見ていた
シカ「……どうかしたのか?」
さっきから黙っているキバを不思議に思い、ベンチに腰掛けたまま尋ねてみた
キバ「さっき、ここで瑞乃に告白した」
シカ「―――!!」
どくん、と心臓が嫌な音を立てた
キバ「…でも、断られた」
シカ「えっ…」
瑞乃が断った?
キバの答えに、どこかホッとする自分がいた
けど、その安心もつかの間
キバ「瑞乃がな、木の葉の人は好きにならないって
そう言ってたんだよ」
シカ「……。」
キバ「でも俺は諦めねぇ
国なんて関係なしでアイツが好きだ
――…お前には負けねぇ」
シカ「!!」
最後の一言は俺の顔を見て言った
キバの静かな宣戦布告
.