少しの拒絶
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シカマルさんの家に行ってから数日
私はシカマルさんと普段通りに接していた
何もなかったかのように
そんなある日、親しくなった看護師さんに
カカシさんの担当になるよう言われた
―――――
『――…失礼します、カカシさんいますかー?』
カカ「アレ、なんで瑞乃なの?」
病室の扉を開け、中に声を掛けると
愛読書を片手にベッドに座っているカカシさんが返事をしてくれた
『担当変わったんです、今日から私ですよ』
カカ「瑞乃かぁ…」
顎に手を当てて考え込むカカシさん
『すみませんね、美人なお姉さんとかじゃなくて』
わざとニヤリと笑ってみせれば、カカシさんはあははと苦笑いをした
カカ「瑞乃も十分可愛いデショ
ただねー…
………瑞乃が担当だと約1名…、いや2名に恨まれそうなんだよねー…」
『何か言いましたか?』
カカ「なーんにも?」
『?』
カカシさんの言動が気になりつつも、私は自分の仕事を全うした
カカ「ねー瑞乃」
『はい』
ふいにカカシさんが口を開いたので、私は作業の手を止めた
カカ「ぶっちゃけ、シカマルとキバのどっちが好きなの?」
『…………はい?』
思わず手に持っていたカルテを落としそうになった
『……え?
シカマルさんとキバさん?
なんでですか?』
カカ「前から気になっててね
サクラがね、瑞乃は恋とかに興味なさそうだって話してたから」
『……サクラか…』
カカ「――で、どうなの?
好きな人とかいないの?
あ、もしかして我愛羅君?」
片目しか見えていないカカシさんの目がニッコリと細められた
何もかも見透かすような瞳が私を射ぬく
『……好きな人…ですか』
その時、ふっとシカマルさんの顔が頭をよぎった
普段通りに話し掛けると、すごく困ったような顔をするシカマルさん
時々目を逸らしたり、顔を赤くしたりする
それを思い出すと、知らず知らずの内に頬が緩む
頬が緩んでいることに気付き、口を固く引き結ぶ
『……好きな人なんかいませんよ』
カカ「そうなの?
せっかく木の葉にいるんだし、ここの男の子を好きになるのもいいんじゃない?
まだ若いんだしサ」
その言葉に体が異常に揺れた
『……木の葉で好きな人とか恋人を作る気はありません
私は砂の忍です、いつかは砂隠れに帰ります
いつか簡単には会えなくなると分かってて好きになるほど
私はバカじゃありません』
手に持っていたカルテを強く握り締め、力強く言い切った
そのまま病室から出ていこうと足を進めた時、後ろから声を掛けられた
カカ「……そーいって誤魔化してたら、いつか後悔するよ?
木の葉と砂だからって、一生会えないワケじゃないでしょ
そりゃ簡単には会えないけど…
瑞乃の口寄せは鳥だよね?
それ使って手紙のやり取りも出来るんだし、何もしないで諦めるよりかは
何かしてからでもいいんじゃない?」
『……。』
カカシさんの言葉は、やけに胸に重くのしかかった
――――――
イノ「――…瑞乃にキスしたぁぁぁぁぁぁ?!!」
シカ「っ、バッカ声でけぇーよ!!!
てかしてねぇ!!未遂だ未遂!!」
チョ「キスしようとしたのは本当なんだ?」
シカ「……。」
第十班での任務の帰り、いのに半強制的に連れられて
焼肉Qに来た
肉を食べ始めるや否や、いのに問い詰められた
最近、瑞乃に対する俺の態度がおかしい、と
チョウジにも言われた
しばらくは白を切っていたが、いのの尋問にしぶしぶ吐いた
そして上に戻る
イノ「ちょっ、シカマルあんた!
なにげグイグイいってんじゃないの!!
いつの間に?!てかあんたそーゆーキャラじゃないでしょー!!」
シカ「なんだよキャラって…」
チョ「――で?瑞乃の反応はどうだったの?
思い切り拒否されたとか?」
焼肉を頬張りながら核心を突いてくるチョウジに、心臓がぎくりと音を立てた
いのの目がギラリと光る
イノ「未遂とはいえ、いきなりしようとしたんでしょー?
瑞乃の反応はどうだったのよ?
ここまで来たら全部吐きなさい!!」
シカ「……………あー、…………だった」
イノ・チョ「「なに?」」
二人してずいと聞いてくるので、少したじろいだ
反応はどうだったのか
あの時のことを思い出すと、今でも顔に熱が集まる
間近で見た瑞乃の顔、瞳
唇
ダメだ、なんか暑くなってきた…
どうにかこの状況から逃げられねーかな
イノ「逃げようなんて思わないことね、絶対に吐かせるから」
チョ「こればっかりはねー…」
シカ「…。(くっそ、めんどくせー…)」
イノ「で、どうなのよ?」
チョ「拒否された?」
拒否されたかどうかと聞かれれば、瑞乃のあの態度は――…
シカ「……何にもなかった
アイツ、動かなかったんだよ」
イノ・チョ「「え?!!」」
いのとチョウジが目を見開いた
おもしれぇ顔だな
なんて呑気に考えていた
チョ「……動かなかった、って」
イノ「拒否しなかったの?
そのままキスしてたかもしれないの?」
シカ「………かもな」
「「「………………。」」」
イノ・チョ「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!」」
シカ「なっ!!
バカ!!うっせーよ!!!!」
焼肉Qに響き渡った三人の大声
この後店の主人に怒られたのは言うまでもない
――――――
『――…誤魔化してたら後悔する、か…』
カカシさんの言葉を頭の中で反芻する
そのたびに胸はどきりと反応してしまう
恋愛うんぬんの前に、私が木の葉の人を好きになるわけない
なっちゃ駄目
私は任務で木の葉にいるのに
それに、好きになったら
つらくなるのは自分
会えないと分かってて好きになるなんて…、そんなの嫌
だから、私は木の葉の人に恋なんかしない
決めたの、ここに来る前に
それから数日、ナルト君達が帰ってきたと聞いた
今回もうちはサスケを連れ戻せなかったらしい
アス「瑞乃ー」
『……!
アスマさん!』
カカシさんの病室に向かう途中、後ろからアスマさんに声を掛けられた
アスマさんの後ろには
いのちゃん、チョウジ君、シカマルさんの三人の姿も
『カカシさんのお見舞いですか?』
アス「まーな、話もあるし
瑞乃は確かカカシの担当だったよな?
案内してもらってもいーか?」
『はい、構いませんよ
私も今から行くところでしたから』
こちらです、と前を歩き出した瑞乃。いのがその横に並び、何やら楽しそうに話している
俺の方は見ていない
チョ「……一回さ、二人きりで話してみたら?
このままは嫌でしょ?」
シカ「……。そりゃ、な
謝ってねーし…」
チョ「ちゃんとしなきゃね
告白しちゃうのもアリじゃない?」
シカ「こっ…?!
バカ、んなの出来るかっ!」
アス「いいなーお前ら、青春しててー」
チョ「シカマルだけだよ」
シカ「うっせー!!//」
イノ「あんた達うっさいわよー」
『病院ではお静かにー』
「「「……。」」」
『―カカシさんの病室はここです』
アス「悪ぃな、案内させちまって」
そう言うや否や、アスマさんはノックも無しに扉を開いた
『?!
ちょっ「ちょっとアスマ先生!ノックくらいしなさいよ!」』
いのちゃんが怒るが、アスマ先生はただ苦笑いを浮かべるだけだ
仕方無しに5人で病室に入っていく
カカ「…あれ、なになに?
どうしたのよ、みんなでぞろぞろと…」
『カカシさん、検診の時間で――…
――!!!』
シカ「?」
アスマの後ろから室内を覗いた瑞乃が俺の隣で固まった
すぐに瑞乃は、咄嗟に俺の後ろに隠れるように一歩後退した
何かと思い、彼女と同じように室内を覗いてみれば
カカシ先生とナルトとサクラと
シカ「!
お前……!!」
チョ「あ!」
イノ「え?なに、知り合い?」
サイ「どうも」
この間急に俺達を襲ってきた男がいた
聞けば、このサイとかいう男は
サスケの穴を埋めるためにカカシ班に入ってきたらしい
『………。』
まだ俺の後ろで固まってる瑞乃に、コイツが何を言ったのかを思い出した
シカ「――…おい、お前
瑞乃に言うことがあんじゃねーの?」
ナル「あ!そうだってばよサイ!」
サク「ちょっとサイ!瑞乃にも何か失礼なこと言ったの?!
今すぐ謝らないとぶん殴るわよ!」
サクラに凄まれ、サイが一歩前に出た
それに対し、瑞乃はびくりと体を揺らして俺の中忍ベストの裾を握った
『…!
あ…、』
咄嗟にシカマルさんの服を握ってしまい、我にかえって放そうとしたら
手を握られた
まるで私を落ち着かせるように
優しく、温かく
その手の温もりに安心した
サイ「―…この間は、失礼なことを言ってしまってすみませんでした」
『!
いっ、いいえ…
私も、悪かった、です…』
答えてる時、無意識にシカマルさんの手を強く握り締めてしまった
でもシカマルさんは、そんな私を落ち着かせるように
強く握り返してくれた
ぎこちない返事を言い終えると、すぐにアスマさんが口を開いた
シカ「――…大丈夫か?」
『…っ!
大丈夫、です』
シカマルさんの気遣う声に気付いて顔を上げたら、心配そうに私の顔を覗き込んでいて
少しほっとした
サイさんと話す時にやけに緊張して、気が抜けた今はアスマさんの話がほとんど耳に入らない
分かるのは、シカマルさんの確かな手の温もりだけ
チョ「シカマルはどうする?」
シカ「何が?」
ふいにチョウジに話し掛けられ、咄嗟に瑞乃の手を放した
話の内容は、第七班と第十班で焼肉に行こうというもの
シカ「俺はパス、ちょっと用事あっからよ」
イノ「瑞乃も行きましょうよ!」
『あー…ごめんなさい
まだ仕事があるし、勉強したいから…』
申し訳なさそうに断る瑞乃を見て、サクラが声をかけた
サク「瑞乃、アンタ最近ほとんど休み無しで働いてるんでしょ?
無理しないで今日くらい休んだら?ちょっと顔色悪いし…」
サクラの言葉に瑞乃を見ると、確かにいつもより顔色が悪い
最近はろくに寝ていないんだろう
『別に大丈夫ですよ
…じゃ、私はこれで失礼します』
カカ「ありがとうね瑞乃」
サク「無理すんじゃないわよ?」
チョ「またね」
『はい、それじゃ…』
そう言って病室から出ようとしたら
シカ「…瑞乃っ」
『!』
シカ「ちょっとこっち来い」
『え?』
シカマルさんに手を掴まれ、二人で病室を出た
―――――
『……。』
シカ「…あー……」
なんか引っ張ってしまったが、どうする
この間のこと、なんて言えば…
キスしようとして悪かった?
なんて言えるか
シカ「あー、だめだ。何も浮かばねぇ」
『?』
きょとんとする瑞乃に視線を合わせ
シカ「この間は、悪かった
いきなりあんな事しようとして…」
『…………あんな事…?』
シカ「………え?
覚えてねーのか…?」
意外なリアクションに戸惑いつつ、目の前の彼女を見つめていたら
『……!!!
あっ…!!』
シカ「!
(えっ…)」
急に顔を真っ赤にさせて、目を逸らした
なぁ、それって…
期待していーのか?
『……、シカマルさんは木の葉の忍で、私は砂の忍です
…私なんかより可愛い木の葉の女の子はたくさんいますよ?』
シカ「え?
おい瑞乃…」
急に感情を押し殺したような声色で話し、にこりと笑った
でもその笑顔は、いつもの彼女のそれとは違うものだって
すぐに分かった
『失礼します』
シカ「……。」
木の葉と砂
俺と瑞乃の間には
国という大きな壁が立ちふさがっているように思えた
国が違ったら好きになっちゃ駄目なのかよ
なんで拒絶すんだよ
そんな悲しそうな顔で言われたって、俺にはただの強がりにしか見えねー
なんで本当のお前の気持ちを聞かせてくれねーんだよ
瑞乃…
.