無意識
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シカ「――とりあえずそこら辺に座っとけ」
『はい』
どきどきしながらシカマルさんの部屋に上がらせてもらった
部屋の中は至ってシンプル
置いてあるのは机や本棚、ベッドのみ。本棚には将棋の本や資料など、いろいろと入っていた
『……将棋、お好きなんですか?』
シカ「あ?
まぁ、な。よくアスマとやってる」
『へぇー…』
キョロキョロとシカマルさんの部屋を見回していたら、ふいに頭を叩かれた
そのまま手に置かれたのは、預けたままだった本が数冊
シカ「あんまじろじろ見んなバカ」
『はは、そんなに照れなくてもいいじゃないですか』
シカ「うっせー」
悪態をついたかと思うとすぐに部屋から出ていこうとするシカマルさん
なんとなく見つめていたら、少し気恥ずかしそうに目を泳がした
シカ「……、茶ぐらい出すって言ったろ?」
『Σえ?!いいですよ別に!!
私が勝手にお邪魔してるだけなのに!
そんな本当にお気遣いなく!』
慌てて一気にまくし立てたら、シカマルさんはぽかんとした表情を浮かべ
そして小さく笑った
シカ「…お前のそーゆーところ、いの達にも見習って欲しいぜ本当に」
『……?』
クックッと笑いながら部屋を後にし、一人シカマルさんの部屋に残された
多分お茶を淹れに行ってくれたんだろう
申し訳ないなと思いつつ、適当な本のページを開いた
――――――
シカ「あー、なんか疲れた…」
台所で湯飲みやら急須やらを準備しながら、長い長いため息をついた
アイツが今、俺の部屋にいる
女を自分の部屋に入れたことなんてねぇ
そんだけなのに心臓はばくばくと脈打ち、いたたまれなくなって逃げた
シカ「………本当に逃げ腰だな」
はっ、と自重気味な笑いが漏れた
―――――
『………。』
シカ「(……すげぇな…)」
部屋に戻ってすぐに目に入ったのは、本を熱心に読む瑞乃
いや、熱心なんてもんじゃねぇ
多分、今コイツは何も聞こえていない
図書館の時と同じだ
集中し過ぎてまわりに気付かない
湯飲みが乗ったおぼんを机に置き、瑞乃の耳元に手を近付けた
パンッ!!!!
『Σ!!!!
なっ、えっ?!
なに?!』
シカ「(あ、タメ口になった)」
びっくりして後退りする瑞乃
気付かないにも程があるだろ
仮にも特別上忍なんだし
瑞乃が驚いた拍子にタメ口になったのが新鮮で、つい口元に笑みが浮かんだ
『………シカマルさん、何時の間にそこにいたんですか?』
シカ「ぷっ、くく…
お前が本に集中し過ぎてたんだよ、ずっといたし」
ずっとじゃねーけど、まぁそこら辺はご愛嬌だ
シカ「ほら、お茶」
『あ、ありがとうございます』
手渡した湯飲みを手に取り、お茶を飲む
明るい日差しが部屋に入り、部屋の中にはほのぼのとした雰囲気が漂っていた
『…そういえば、ナルト君達はどうなったんでしょうね』
シカ「あ?
あー、サスケの任務か…
さっきアスマに会ってな、綱手様が一人用意してくれたみてぇだぞ」
『へぇー…
じゃあもう出発したんですかね?
…アレ、でもカカシさんはまだ入院中なのに…』
シカ「隊長はカカシ先生の後輩だと」
『!
そうなんですか!』
安堵したようにふぅとため息を漏らす
そういえば、カカシ先生は我愛羅の事件から帰ってきて
そっからずっと入院中だったな
「……。」
『……。』
ナルト達の話が終わったらぴたりと会話が無くなって、今度は部屋の中に静けさが漂った
そのせいで
嫌でも感じる隣の瑞乃の存在
彼女が少し動いただけでも、いちいち心臓がどくんと脈打つ
やっべ、急に緊張してきた
でもコレは、ある意味チャンスだとも思う
親父達はいねーし、キバはもちろんいねーし
この前いのに殴られて決めた、もううじうじ悩まねぇ
国なんか関係なしに瑞乃が好きだ
だから、少しでもいいから
キバより俺を見てほしい
俺の声を聞いてほしい
シカ「……瑞乃、」
ナルト君の話が終わったら、すぐに静けさが私達を包んだ
そしたら
自分でも驚くくらい緊張してきた
そうなんだよね、今私はシカマルさんの部屋にいるんだよね
男の子の部屋なんて入ったこと全然無いのに、よくもまぁ来たものだ
緊張のせいか、なぜか
明日は病院勤務だなー
とか考えてしまった
………それにしてもどうしよう
シカマルさんは喋らないし、ここはもう帰った方がいいかな…
シカ「……瑞乃、」
『!
は、い…』
急に声を掛けられて驚いて、声が上ずってしまった
シカマルさんも気まずくなったのかな?何て考えていたら
シカ「…お前、キバのことどう思う?」
『………え』
出てきた言葉は想像とは全く違うものだった
『キバさん……ですか?』
シカ「……。」
あーチクショー
なんでよりによってキバの話題振っちまったんだよ
バカか俺は
………でも、前から気になっていたことだ
瑞乃は、キバのあからさまなアピールに気付いているのか?
『………なんでキバさんなんですか?』
シカ「………いや、なんとなく
お似合いなんじゃねーかなっと」
バカか自分
何がお似合いだよ、思ってもいねーこと言うとかマジありえねー
『……そうですか…』
シカ「……?
!」
隣から聞こえてきた小さな声に目を向ければ、青い瞳を揺らしている瑞乃
どこか悲しげな表情を浮かべるのは、なぜなんだ
『……シカマルさんも…、そう思うんですか?』
シカ「……。」
瞳を揺らしながら聞いてきた瑞乃に、胸がどくんと高鳴った
今にも泣きそうな、そんな顔
無意識のうちに、手がのびていた
シカ「……。」
『……シカマルさん…?』
そっと頬に手を添えて、その後髪を撫でた
俺が好きだと言った、空色の髪の毛
手を頬に添えたまま
ゆっくりと顔を近付けた
あと数センチというところで
シカク「おいシカマルー?
誰か来てんのかー?」
『「!!!」』
シカク「開けるぞ?」
親父のその声に我に返り、あわてて瑞乃から離れた
シカク「――…お?
なんだシカマル、女の子を部屋に連れ込んでるのか?
お前もそういう年になったか!」
シカ「………。」
このくそ親父、マジで空気読め
タイミング悪すぎ
今、とてもじゃねぇが瑞乃の顔を見れない
シカク「……お嬢ちゃんアレだろ
砂からの使者さんだろ?
悪ぃな、シカマルと仲良くしてもらって!
ま、ゆっくりしていけよ!」
『いえ、もう帰ります
預けっぱなしだった本を取りに来ただけですから
――…ありがとうございました、送らなくて結構ですよ』
シカ「……。」
一度もこちらを向かずに部屋から出ていった
もちろん親父に挨拶してから
シカク「……なんか邪魔したか?」
シカ「思いっきりな」
シカク「すまん
――…それより、あの子はお前の彼女なのか?」
シカ「……そんなんじゃねぇよ
…一方的なだけだ……」
ぼそりと呟いたこの声は、親父にはバッチリ聞こえていたようだ
シカク「めんどくせーばっかのお前が、まさか他国の忍に惚れるとは…
やっぱお前もまだまだ若いねぇ
ま、せいぜい頑張れ若者よ!」
親父はわっはっはと笑いながら部屋から出ていった
一人になれば、嫌でもさっきのことを思い出す
さっき、俺は瑞乃にキスをしようとした
無意識だった、勝手に体が動いた
自分のことなのに、全く制御出来なかったんだ
でも、瑞乃は何も抵抗しなかった
もし親父が来なければ、
俺達はキスしていたんだろうか
シカ「………ワケわかんねぇ……」
―――――
『………。』
さっきのことが頭の中を駆け巡る
シカマルさんが顔を近付けたとき、全く動けなかった
………いや、動かなかった
シカマルさんのキスを拒否しようとしなかった
なんで?
自分のことなのに分からない
心拍数の上昇は、まだ収まる気配がない
もしかして、
私は心のどこかでシカマルさんのキスを嫌だと思っていなかった?
――…なぜ嫌だと思っていなかったのか
そんなの考えればすぐ分かる
でも私は、行き着いた答えに気付かないフリをすることにした
――シカマルさんのことが好き―
という答えに蓋をした
そんなの、いけないと分かっているから
.