5年生6月編

18─みんなで楽しく遊ぼう

時鳴さん家の広いお庭に、わたしとテトリちゃん、響香ちゃんとリリーちゃんが出て行きました。
響香ちゃんは手に、小さな黄色のボールを持っています。
「猫さんにはやっぱりこれだね。
はーい、2人とも仲良く遊んでね」
そういって響香ちゃんがボールを軽く投げます。
リリーちゃんとテトリちゃんは喜んで追いかけていきました。
テトリちゃんがこういう喜び方をしているのを見るのは、初めてかもしれません。
前からリリーちゃんと遊んでいる響香ちゃんは、さすが猫さんの相手が上手です。
うれしそうな2匹をにこにこして見ている響香ちゃんに、わたしは感心しました。
そして庭を見回したわたしは、すばらしい物に気がつきました。
発見すると、わくわくした気持ちになっていいます。
「すごーい!響香ちゃん家はブランコもあるんだね」
庭の奥に、木でできたブランコが1つありました。
「うん。お父さんが作ってくれたんです」
わたしが瞳をきらきらさせてみつめていると、響香ちゃんが提案してくれました。
「じゃああのブランコで遊びましょうか。
みかんちゃん、お先にどうぞ」
「いいの!?わーい」
わたしは遠慮なく、喜んでブランコへと駆けていきました。
自分からすぐにはいえなかったけど、とっても乗ってみたかったんです。
少し緊張しながら乗ると、最初はゆっくりとこぎ始めます。
人のお家にある手作りのブランコって、公園にあるのとは違った感覚があるよね。
これはそのお友達だけのものなんだなって考えると、宝物を貸してもらっているような気分です。そんな気持ちを感じながら、うれしくってしばらく乗ってしまいました。
「お待たせしました。5分くらい乗ってたかな」
わたしはそう、ごめんなさいの意味も入れていいます。
すると響香ちゃんは首を振りました。
「ううん。こうやってこのブランコで、お友達と遊べるのがうれしいです。
このブランコ大好きだけど、1人だとそんなに楽しくないから」
響香ちゃんはそういってから、はっとして付け加えました。
「あ、でもほとんどはリリーちゃんとのってます。
ひざに乗せてゆっくりこげば、2人でのれるから。
リリーちゃんもブランコ喜ぶんですよ」
「そうなんだ」
その話に、わたしはうなずきます。
2人でそうやって遊んでいる様子を想像すると、ほのぼのとした気分になるね。
わたしはそう考えて、テトリちゃんとリリーちゃんのことを思い出しました。
振り返ると、2匹はとっても楽しそうに走り回っています。
「そのリリーちゃん達は、盛り上がってるねー」
ボール遊びの次は、かくれんぼか鬼ごっこでもしているのかな?
テトリちゃんが茂みの裏に隠れます。
するとリリーちゃんが追いかけたりしています。
ここまではしゃいでいる声が、微かに届いているよ。とっても楽しそうです。
わたしがそんな2匹を見ていると、響香ちゃんもうれしそうにいいました。
「やっぱり同じ猫同士気が合うんだね。
じゃあ次はわたしがのりまーす」
今度は響香ちゃんがブランコに乗って、こぎ始めました。
ここまではしゃいでいるわたしはそんな響香ちゃんとお話をしながら、待っています。
そうやって何回か換わりばんこして、満足するまで乗ったよ。
それからはテトリちゃんやリリーちゃんに声をかけて、4人で一緒にたくさん遊びました。

「あっ。もうすぐ3時半。そろそろ家に戻りましょう」
庭から家の中の時計を見て、響香ちゃんがいいました。
2時間くらい遊んでいたんだね。
元気いっぱい動いて、汗もたくさんかいちゃいました。
横にいるテトリちゃんはどうかなって、見てみます。
するとかくれんぼをした時のものか、草や土も付いたりして、大分ほこりっぽくなっていました。
「テトリちゃんも、大分汚れちゃったね」
わたしはしゃがんで、その付いているところを払ってみます。
するとテトリちゃんの場合は、簡単にきれいになりました。
汚れない魔法がかかっているって、いっていたもんね。
表面に付いていただけのようです。
でもリリーちゃんは、そうはいかないようでした。
「うーん、いつもより汚れたから、今日はお風呂だね」
玄関の前で、響香ちゃんはそういいます。
そしてタオルでリリーちゃんの足をふいてあげます。
そんな様子から、本当に慣れているんだなあと感心しちゃいます。
そう猫さん2匹が大体きれいになりました。
すると今度はわたし達の黒くなった手が気になりました。
そんな自分の手を見つめて、響香ちゃんと2人で笑います。
こういうふうに黒くなった手って、わたしは結構好きです。
元気に遊んだ印だもんね。
みんなで家の中に入ると、わたしと響香ちゃんはまっすぐ洗面所に行きます。
それから石鹸でよく手を洗います。
そしてきれいになって、石鹸のいい匂いのする手は最高に好きだよ。

リビングに戻ると、お母さん達は紅茶を飲みながら、お話を続けていたようでした。
家から持ってきたクッキーもテーブルの上に並んでいます。
「あっ!クッキーが出てる」
わたしはクッキー登場の時にいられなかったことに、がっかりしました。
でもわたし達はずっと外で遊んでいたんだもんね。しょうがないかな。
それに遊んでいる間は、クッキーのことをすっかり忘れちゃっていたしね。
そうしょんぼりとあきらめているわたしに、お母さんは笑っていいました。
「まだ食べてないわよ。みんなが揃うのを待ってたの」
「本当!?」
わたしが喜ぶと、響香ちゃんのお母さんも笑いました。なんでかな?
みんなで座って、早速いただきます。
「とってもおいしい!」
そう響香ちゃんと晴香さんがにっこり笑っていってくれました。
こういう言葉を聞きたかったから、最初の一口の時にいたかったんです。
わたしもぱあっと笑顔になります。
お母さんと作った物をほめてもらえたことと、クッキーのおいしさにね!

みんなでにこにこ食べていると、響香ちゃんがはっとしました。
「あっ!土曜日の3時半といえば、「ぽこたんの冒険」だ」
そしてテレビを点けます。
その言葉にわたしも反応しました。
「そっか!わたしも「ぽこたん」大好きで、毎週見てるよ」
こうやってお外に出る日は遊ぶ方に夢中になっちゃって、今日みたいに忘れていたりすることもあるんだけどね。
響香ちゃんに教えてもらえてよかったです。
「ぽこたんの冒険」とは、たぬきのぽこたん、きつねのこんすけ、うさぎのぴょんぴょんの3人の仲間達の旅のお話です。
わたしが1番好きなアニメだよ。
それがちょうどこれから始まります。
「みかんちゃんも好きなんだ」
うれしそうにいう響香ちゃんに、わたしはうなずきます。
「うん。いろんなところに行くのがおもしろいし、動物さんがわたし達みたいに町を作って暮らしているのが素敵だよね」
いろんな動物がみんな仲良く、しかもわたし達人間みたいに二本足で暮らしている世界なんです。
わたしは現実でも魔法で動物とお話ができるから、みんなの考えていることはわかります。
でもこうやってわたし達と暮らしているみんなとは、また違うもんね。
そんな世界が本当にあったら、行ってみたいなあ。
わたしは憧れの瞳になります。
すると響香ちゃんはそんなわたしを見て、小さなため息をつきました。
「わたし達にとっては、みかんちゃんも素敵な存在ですよ」
そうとだけいわれたので、わたしはその言葉の意味を考えてみます。
?魔法使いがってことかな?
――そうだね。みんなにとって特別な力を持っている魔法使いは、わたしがぽこたん達に憧れるのと同じくらいすごいよね。
わたし達は小さい時から教わっているから、こういう力が使えることを普通に感じています。
でもよく考えてみると、なんとも不思議なことをしているよね。
わたしの使える夢魔法でいうなら、いったことや考えたことが本当になるんですから。
その魔法は、あと3日でまた使えるようになります。
この1ヶ月、魔法でやってみたいことがあってもできなくて、とっても我慢していました。
だからその時がとっても待ち遠しいです。
そうだ!まずは動物のみんなとお話をししに行こうかな。
6月中にあった、おもしろいお話をたくさん聞かせてもらえるよね。
そう予定を立てて、わくわくしてきました。
そんなおかげもあって、今日のぽこたんはいつもよりも楽しく感じました。

ぽこたんを見た後は、みんなでずっとリビングでお話をしていました。
するともう5時、お家に帰る時間です。
お家に帰ったら、すぐにお夕飯の準備をする頃だね。
いろいろとごちそうになったから、今日はそんなにお腹は空いていないけれど。
「おじゃましました」
「ごちそうさまでした」
そうみんなで、玄関であいさつをします。
響香ちゃんとは、また遊ぼうねって約束をしました。
テトリちゃんとリリーちゃんも、とっても仲良くなっていたね。
今も仲が良さそうに、お別れのあいさつをしています。
そんなふうに、仲良くなった2匹を見るのはうれしいです。
だってわたしにとってはどっちも、家で一緒に過ごした大好きな2匹だもんね。
それからリリーちゃんが、今度はわたしの方を向いてくれました。
そしてうれしそうな顔で鳴いてくれます。
きっとわたしにもあいさつをしてくれているんだね。
そうわかって、とってもうれしくなります。
「またテトリちゃんと一緒に来るから、その時はたくさんお話しようね」
今日もテトリちゃんが通訳してくれたから、少しはお話できました。
でも2匹があんまり楽しそうなので、結構遠慮していたんです。
そしてもう1言付け加えます。
「もちろん響香ちゃんも一緒にね」
リリーちゃんの言葉をわたしが通訳すれば、みんなで話せるもんね。
そういうと、響香ちゃんはとっても喜びました。
「わあ。リリーちゃんとお話できるんだ。
とっても楽しみです。
リリーちゃん、何ていってくれているのかな?」
そういって響香ちゃんはうれしそうに、リリーちゃんの顔をのぞき込みました。
お話できないと思っていた相手と話せるっていうのは、とっても感動的だよね。
わたしも初めて動物と話せるようになった時は、うれしくってうれしくって飛び跳ねたい気分だったよ。
……「気分」じゃなくて、実際に飛び跳ねていたっけ。
響香ちゃんとリリーちゃんは、今でもちゃんと通じています。
だからお話ができたら、すぐに盛り上がるんだろうね。
そんな様子が目に浮かびます。
そうまた行く約束をして、時鳴さん家に手を振りました。
絨毯はお家に帰したので、帰りは歩きです。
お外でたくさん遊んだ後だけど、まだまだ元気に帰れます。
気分がうきうきしている時って、結構疲れないものだよね。
夕焼け空の帰り道、そうにこにこしているわたし達を見て、お母さんがいいました。
「2人とも、今日は本当に楽しかったみたいね。
―もちろん私にとっても、いいお茶会だったわよ。
久しぶりにのんびりした気分になれて」
お母さんは、いつもお仕事とかで忙しくしているもんね。
そうお母さんの言葉に心の中でうなずいてから、わたしは元気に答えます。
「うん!こうやってどんどんお友達ができていくって、うれしいな」
元々カンさんとのプルタブ集めに一緒に行って、そこでリリーちゃんに出会いました。
それからその家の響香ちゃんにも会って…。
そうかあ、お友達を大事にすると、また新しい出会いも多くなるんだね。
今回のことで、また1つお勉強になりました。
「私も、猫の友達に会えてうれしいです」
そういうテトリちゃんに、お母さんはうなずきました。
「そうね。テトリは、同じ猫の友達は初めてだったものね。良かったわね」
「はい」
にっこり笑ってうなずくテトリちゃん。
そうテトリちゃんがうれしそうなことに、またわたしとお母さんもうれしかったりします。
今日は本当に家中みんなにとって、いいお呼ばれになりました。


2006年1~4月制作
10/10ページ
スキ