5年生5月編
6-みかんちゃんのテトリちゃん
そして午後、リリーちゃんが時鳴さん家に帰る時がやってきました。
家の前でリリーちゃんは、とっても礼儀正しくわたし達にあいさつをしました。
「今まで本当にありがとうございました。
おかげで怪我も良くなったし、みかんちゃんやいちごさんと過ごせてうれしかったです。
私の家にもぜひ遊びに来てくださいね」
そう笑っていうリリーちゃんを、わたしは寂しい気分でみつめます。
「リリーちゃん…」
そんな言葉を聞くと、リリーちゃんが帰るのを実感して悲しくなるよ。
今まで一緒にいて毎日楽しかったのに、いなくなっちゃったら寂しいです。
わたしとは違って、お母さんも笑って答えました。
「私もとっても楽しかったわ。
またリリーちゃんに会えるのを楽しみにしているわね」
そしてリリーちゃんに両手を差し出します。
「さあ、行きましょう!」
リリーちゃんがその手に飛び乗ると、お母さんはほうきにまたがりました。
わたしも乗ったのを確認して、お母さんと一緒に飛び立ちます。
ほうきに乗るのは初めてのリリーちゃんは、落ちないように気を付けながらも、下を見てうれしそうです。
わたし達は今、4階くらいの高さを飛んでいます。
「わあっ。こんなに高いところは初めてです」
そうリリーちゃんがいっているように、これくらい高く飛ぶことって、わたしもそんなにないです。
そんなわたし達のところに、いつもの鳥さん達がやってきました。
真っ先に来たのはカンさん。
「よっ。いちごちゃん、みかんちゃん、リリーちゃん。
とうとう今日帰るんだな」
そうカンさんはわたし達の隣を飛びます。
カンさんは、お母さんとも仲がいいんだよ。
「そうなんです。カンさんも、いろいろありがとうございました」
リリーちゃんは、そうすがすがしい顔で答えます。
そして今年1番のたくさんの小鳥さん達。
もう5月も終わりに近い今日なので、ヒナちゃん達も飛べるようになって、一緒に来てくれたみたいです。
ヒナちゃん達は一緒懸命羽を動かしながらも、わたし達に元気に話しかけてきました。
「こんにちは。ぼくボルンだよ。よろしくね」
「元気になって、おめでとう」
そう小さくて、とっても可愛いヒナちゃん達です。
覚えた言葉を一緒懸命いってくれています。
そんなヒナちゃん達を見て、お母さん鳥達はうれしそうにいいました。
「せっかくお見送りするなら、人数が多い方がいいかなって連れてきちゃったの。
うちの子達どう?やっと飛び方を覚えたのよ」
「うん。とってもかわいいね」
わたしもお母さんも、にっこり笑ってうなずきました。
リリーちゃんは、こんなにたくさんのみんなに送ってもらって驚いていたけど、うれしそうです。
そうたくさんの鳥さん達と一緒に、リリーちゃんの家に向かいました。
やっぱり寂しいけれど、鳥さん達のおかげで大分明るい気持ちで行くことができたよ。
リリーちゃんの家が見えてきました。
時鳴さんはもう帰ってきていて、リリーちゃんを探しているようでした。
リリーちゃんを呼ぶ声が聞こえてきます。
リリーちゃんはここにいるよって、早く教えてあげなくちゃね。
心配しているお家の人の声を聞くと、わたしはやっぱりそう思いました。
わたし達は早めに地面に降ります。
そして鳥さん達はにぎやかに帰っていきました。
お母さんはリリーちゃんをわたしに渡してくれました。
そう3人で時鳴さん家に行きます。
門から見ると、広い庭に1人女の子がいて、リリーちゃんの名前を呼んでいました。
そしてすぐにわたし達を見つけて、駆けよってきました。
響香ちゃんかな?
リリーちゃんがとってもうれしそうなので、そうみたいです。
「リリーちゃん!よかった。心配してたんだよ。
おじいちゃん家にいても、ずっとリリーちゃんのことを考えてたんだから」
そう響香ちゃんは、リリーちゃんを見てほっとしたみたいです。
そうだよね。一緒に出掛けたリリーちゃんが迷子になっちゃって、何日も会えなかったんだもん。
最初に怪我はしちゃったけど、その後は無事にしていたから安心してね。
そう思いながら、わたしはまず謝りました。
「心配かけてごめんね。
リリーちゃんが怪我をしていたから、帰ってくるまで預かってました」
そういったら、響香ちゃんは驚きました。
「えっ!?リリーちゃん、怪我してたの?」
そしてリリーちゃんを抱き上げて、調べ始めました。
「あ、大丈夫。もうほとんど治ったよ」
わたしがそういった後、響香ちゃんは前足の傷跡を見つけました。
「本当だ。戻ってくる途中に怪我しちゃったの?
リリーちゃん、外では気を付けなくちゃだめだよ」
そうまじめな顔でいう響香ちゃん。
「ごめんなさい」
リリーちゃんはシュンとして謝りました。
響香ちゃんにその言葉はわからないけれど、リリーちゃんの気持ちは伝わったみたいです。
それから響香ちゃんはわたし達に向かって、元気に笑ってお礼をいいました。
「リリーちゃんをありがとうございました。
わたしは響香といいます」
やっぱり響香ちゃんだったんだね。
リリーちゃんのいっていた通り、本当にしっかりしてみえます。
わたしより3歳も下とは思えないくらいだよね。
今回はリリーちゃんや響香ちゃんとお友達になれて、とってもよかったです。
でもリリーちゃんがいなくなった家に帰ると、ほっと気が抜けました。
そうなんとなく寂しくなっているわたしに、お母さんがたずねました。
「みかん、元気ないわね。やっぱり家に動物がいてほしい?」
「うん」
お母さんに無理なことはいえないけど、正直な気持ちなのでわたしはうなずきました。
「そう。わかったわ」
そうお母さんがうなずいた意味を、その時のわたしはわかっていませんでした。
次の日わたしは学校で、昨日のことをうれしい気持ちで話しました。
港くんはわたしの話を聞いて、安心したようでした。
本当にリリーちゃんのことを心配していたんだね。
やっぱり港くんは、時鳴さんやリリーちゃんがいっていた通りの子です。
「お茶会にも招待してもらえたんだよ」
最後にそういうと、みんなはにっこり笑って答えてくれました。
「よかったね。時鳴さん一家と仲良くなれて」
「うん!」
美穂ちゃんの言葉に、わたしは元気にうなずきました。
そんなわたしに、高志くんがいいました。
「みかん、思ってたよりもずっと元気だな」
その言葉に、わたしは明るく答えます。
「うん。だってもう会えないわけじゃないもんね。
近くに住んでいるんだから、会いたくなったら、すぐに会いに行けるもん」
昨日は急に静かになっちゃったから寂しい感じがしたけど、もうわたしは元気です。
だって美穂ちゃんがいったように、リリーちゃんや時鳴さん一家と仲良くなれたことがうれしいから。
そう前向きに考えられたわたしに、みゆきちゃんがこういってくれました。
「みかんちゃんって、本当に友達たくさんだよね。
魔法の力のおかげもあるのかもしれないけど、やっぱりみかんちゃんの人柄がいいからだよね」
そうほめてもらえて、わたしはとっても幸せな気持ちになりました。
これからもそう思ってもらえる子でいたいです。
その頃お母さんは、デパートの中の大きなぬいぐるみ売り場にいました。
ぬいぐるみを1つ1つよく見ています。
そして首に赤いリボンを巻いて鈴を付けた、かわいい黒猫さんを手に取りました。
お母さんはそのぬいぐるみを見て微笑むのでした。
「ただいまーっ」
わたしが元気に学校から帰ると、玄関に黒い猫さんがいました。
「お帰りなさい、みかんちゃん。
はじめまして、テトリです」
笑顔で、そう丁寧にあいさつをしてくれます。
声から女の子みたいです。
テトリちゃんっていうんだ。
家にいたし、わたしの名前はお母さんから聞いたんだね。
「こんにちは、テトリちゃん。はじめまして」
わたしも笑ってそうあいさつを返します。
でもすぐに不思議なことに気が付きました。
あれ?何で言葉がわかるのかな?
今はペンダントのままだから、わからないはずです。
そしてよくよく見てみると、そのテトリちゃんは普通の猫さんじゃありません。
大きな瞳や毛の感じといい、ぬいぐるみみたいです。
でもおもちゃみたいじゃなくて、動きは普通の猫さんです。
そのテトリちゃんがわたしに向かってジャンプしてきました。
わたしは思わずだっこします。
不思議だけど、とってもかわいいです。
その黒猫さんは首に赤いリボンを巻いて、鈴を付けています。
テトリちゃんが動くと、その鈴がチリンチリン鳴ります。
そこにお母さんが来ました。
「ご主人様!」
テトリちゃんは振り向いてうれしそうにいいます。
やっぱりお母さんの知り合いなんだよね?
そう考えているわたしに、お母さんはいいました。
「どう?その子は。
今日から家族の仲間入りをするテトリよ」
「え?」
家族の仲間入りって、今日から一緒に住むってこと?
でも動物と暮らすのは、禁止だったんじゃなかったのかな?
その話にわたしがびっくりしていると、お母さんが説明してくれました。
「魔法使いは他の生き物を飼ってはいけないっていう、きまりがあるわね」
わたしはその言葉にうなずきます。
他のお友達みたいに家に動物がほしいって初めていった時に聞きました。
その後も何度か詳しく教えてもらっています。
だからわたしは今まであきらめていたのです。
それからお母さんは、わたしが初めて聞く話をしてくれました。
「でも魔法使いの親はね、1つだけ物に命を吹き込んで、子どもに贈ることができるの。
それがその子の一生のパートナーになるのよ」
そんなすごい魔法があるんだあ。
そう感動してから、話の流れから考えます。
「それって、テトリちゃんはお母さんが創ったっていうこと?」
だから普通の猫さんと違っているし、お母さんのことをご主人様って呼んでいるんだね。
そう感心しながらも、話をよくはわかっていないわたしに、お母さんがはっきりいいました。
「そうよ。このテトリがみかんのパートナー。
これからずっとみかんの側にいるの」
「みかんちゃん、これからよろしくお願いします」
そのお母さんとテトリちゃんの言葉で、わたしはやっとわかりました。
うれし涙が出てきます。
これからずっと、こんなかわいいテトリちゃんと一緒にいられるんだね。
リリーちゃんが来た時もとってもうれしかったけど、テトリちゃんは本当にわたしの家族になるので、もっともっとうれしいです。
わたしはすぐに涙をふいて、テトリちゃんににっこり笑っていいました。
「こちらこそ!よろしくね」
お母さんはそんなわたし達を見て、にこにこ笑っています。
お母さん、本当にありがとう!
わたし、とってもうれしいよ。
こうして、今日からわたしの家は3人家族になりました。
2001~02年制作
そして午後、リリーちゃんが時鳴さん家に帰る時がやってきました。
家の前でリリーちゃんは、とっても礼儀正しくわたし達にあいさつをしました。
「今まで本当にありがとうございました。
おかげで怪我も良くなったし、みかんちゃんやいちごさんと過ごせてうれしかったです。
私の家にもぜひ遊びに来てくださいね」
そう笑っていうリリーちゃんを、わたしは寂しい気分でみつめます。
「リリーちゃん…」
そんな言葉を聞くと、リリーちゃんが帰るのを実感して悲しくなるよ。
今まで一緒にいて毎日楽しかったのに、いなくなっちゃったら寂しいです。
わたしとは違って、お母さんも笑って答えました。
「私もとっても楽しかったわ。
またリリーちゃんに会えるのを楽しみにしているわね」
そしてリリーちゃんに両手を差し出します。
「さあ、行きましょう!」
リリーちゃんがその手に飛び乗ると、お母さんはほうきにまたがりました。
わたしも乗ったのを確認して、お母さんと一緒に飛び立ちます。
ほうきに乗るのは初めてのリリーちゃんは、落ちないように気を付けながらも、下を見てうれしそうです。
わたし達は今、4階くらいの高さを飛んでいます。
「わあっ。こんなに高いところは初めてです」
そうリリーちゃんがいっているように、これくらい高く飛ぶことって、わたしもそんなにないです。
そんなわたし達のところに、いつもの鳥さん達がやってきました。
真っ先に来たのはカンさん。
「よっ。いちごちゃん、みかんちゃん、リリーちゃん。
とうとう今日帰るんだな」
そうカンさんはわたし達の隣を飛びます。
カンさんは、お母さんとも仲がいいんだよ。
「そうなんです。カンさんも、いろいろありがとうございました」
リリーちゃんは、そうすがすがしい顔で答えます。
そして今年1番のたくさんの小鳥さん達。
もう5月も終わりに近い今日なので、ヒナちゃん達も飛べるようになって、一緒に来てくれたみたいです。
ヒナちゃん達は一緒懸命羽を動かしながらも、わたし達に元気に話しかけてきました。
「こんにちは。ぼくボルンだよ。よろしくね」
「元気になって、おめでとう」
そう小さくて、とっても可愛いヒナちゃん達です。
覚えた言葉を一緒懸命いってくれています。
そんなヒナちゃん達を見て、お母さん鳥達はうれしそうにいいました。
「せっかくお見送りするなら、人数が多い方がいいかなって連れてきちゃったの。
うちの子達どう?やっと飛び方を覚えたのよ」
「うん。とってもかわいいね」
わたしもお母さんも、にっこり笑ってうなずきました。
リリーちゃんは、こんなにたくさんのみんなに送ってもらって驚いていたけど、うれしそうです。
そうたくさんの鳥さん達と一緒に、リリーちゃんの家に向かいました。
やっぱり寂しいけれど、鳥さん達のおかげで大分明るい気持ちで行くことができたよ。
リリーちゃんの家が見えてきました。
時鳴さんはもう帰ってきていて、リリーちゃんを探しているようでした。
リリーちゃんを呼ぶ声が聞こえてきます。
リリーちゃんはここにいるよって、早く教えてあげなくちゃね。
心配しているお家の人の声を聞くと、わたしはやっぱりそう思いました。
わたし達は早めに地面に降ります。
そして鳥さん達はにぎやかに帰っていきました。
お母さんはリリーちゃんをわたしに渡してくれました。
そう3人で時鳴さん家に行きます。
門から見ると、広い庭に1人女の子がいて、リリーちゃんの名前を呼んでいました。
そしてすぐにわたし達を見つけて、駆けよってきました。
響香ちゃんかな?
リリーちゃんがとってもうれしそうなので、そうみたいです。
「リリーちゃん!よかった。心配してたんだよ。
おじいちゃん家にいても、ずっとリリーちゃんのことを考えてたんだから」
そう響香ちゃんは、リリーちゃんを見てほっとしたみたいです。
そうだよね。一緒に出掛けたリリーちゃんが迷子になっちゃって、何日も会えなかったんだもん。
最初に怪我はしちゃったけど、その後は無事にしていたから安心してね。
そう思いながら、わたしはまず謝りました。
「心配かけてごめんね。
リリーちゃんが怪我をしていたから、帰ってくるまで預かってました」
そういったら、響香ちゃんは驚きました。
「えっ!?リリーちゃん、怪我してたの?」
そしてリリーちゃんを抱き上げて、調べ始めました。
「あ、大丈夫。もうほとんど治ったよ」
わたしがそういった後、響香ちゃんは前足の傷跡を見つけました。
「本当だ。戻ってくる途中に怪我しちゃったの?
リリーちゃん、外では気を付けなくちゃだめだよ」
そうまじめな顔でいう響香ちゃん。
「ごめんなさい」
リリーちゃんはシュンとして謝りました。
響香ちゃんにその言葉はわからないけれど、リリーちゃんの気持ちは伝わったみたいです。
それから響香ちゃんはわたし達に向かって、元気に笑ってお礼をいいました。
「リリーちゃんをありがとうございました。
わたしは響香といいます」
やっぱり響香ちゃんだったんだね。
リリーちゃんのいっていた通り、本当にしっかりしてみえます。
わたしより3歳も下とは思えないくらいだよね。
今回はリリーちゃんや響香ちゃんとお友達になれて、とってもよかったです。
でもリリーちゃんがいなくなった家に帰ると、ほっと気が抜けました。
そうなんとなく寂しくなっているわたしに、お母さんがたずねました。
「みかん、元気ないわね。やっぱり家に動物がいてほしい?」
「うん」
お母さんに無理なことはいえないけど、正直な気持ちなのでわたしはうなずきました。
「そう。わかったわ」
そうお母さんがうなずいた意味を、その時のわたしはわかっていませんでした。
次の日わたしは学校で、昨日のことをうれしい気持ちで話しました。
港くんはわたしの話を聞いて、安心したようでした。
本当にリリーちゃんのことを心配していたんだね。
やっぱり港くんは、時鳴さんやリリーちゃんがいっていた通りの子です。
「お茶会にも招待してもらえたんだよ」
最後にそういうと、みんなはにっこり笑って答えてくれました。
「よかったね。時鳴さん一家と仲良くなれて」
「うん!」
美穂ちゃんの言葉に、わたしは元気にうなずきました。
そんなわたしに、高志くんがいいました。
「みかん、思ってたよりもずっと元気だな」
その言葉に、わたしは明るく答えます。
「うん。だってもう会えないわけじゃないもんね。
近くに住んでいるんだから、会いたくなったら、すぐに会いに行けるもん」
昨日は急に静かになっちゃったから寂しい感じがしたけど、もうわたしは元気です。
だって美穂ちゃんがいったように、リリーちゃんや時鳴さん一家と仲良くなれたことがうれしいから。
そう前向きに考えられたわたしに、みゆきちゃんがこういってくれました。
「みかんちゃんって、本当に友達たくさんだよね。
魔法の力のおかげもあるのかもしれないけど、やっぱりみかんちゃんの人柄がいいからだよね」
そうほめてもらえて、わたしはとっても幸せな気持ちになりました。
これからもそう思ってもらえる子でいたいです。
その頃お母さんは、デパートの中の大きなぬいぐるみ売り場にいました。
ぬいぐるみを1つ1つよく見ています。
そして首に赤いリボンを巻いて鈴を付けた、かわいい黒猫さんを手に取りました。
お母さんはそのぬいぐるみを見て微笑むのでした。
「ただいまーっ」
わたしが元気に学校から帰ると、玄関に黒い猫さんがいました。
「お帰りなさい、みかんちゃん。
はじめまして、テトリです」
笑顔で、そう丁寧にあいさつをしてくれます。
声から女の子みたいです。
テトリちゃんっていうんだ。
家にいたし、わたしの名前はお母さんから聞いたんだね。
「こんにちは、テトリちゃん。はじめまして」
わたしも笑ってそうあいさつを返します。
でもすぐに不思議なことに気が付きました。
あれ?何で言葉がわかるのかな?
今はペンダントのままだから、わからないはずです。
そしてよくよく見てみると、そのテトリちゃんは普通の猫さんじゃありません。
大きな瞳や毛の感じといい、ぬいぐるみみたいです。
でもおもちゃみたいじゃなくて、動きは普通の猫さんです。
そのテトリちゃんがわたしに向かってジャンプしてきました。
わたしは思わずだっこします。
不思議だけど、とってもかわいいです。
その黒猫さんは首に赤いリボンを巻いて、鈴を付けています。
テトリちゃんが動くと、その鈴がチリンチリン鳴ります。
そこにお母さんが来ました。
「ご主人様!」
テトリちゃんは振り向いてうれしそうにいいます。
やっぱりお母さんの知り合いなんだよね?
そう考えているわたしに、お母さんはいいました。
「どう?その子は。
今日から家族の仲間入りをするテトリよ」
「え?」
家族の仲間入りって、今日から一緒に住むってこと?
でも動物と暮らすのは、禁止だったんじゃなかったのかな?
その話にわたしがびっくりしていると、お母さんが説明してくれました。
「魔法使いは他の生き物を飼ってはいけないっていう、きまりがあるわね」
わたしはその言葉にうなずきます。
他のお友達みたいに家に動物がほしいって初めていった時に聞きました。
その後も何度か詳しく教えてもらっています。
だからわたしは今まであきらめていたのです。
それからお母さんは、わたしが初めて聞く話をしてくれました。
「でも魔法使いの親はね、1つだけ物に命を吹き込んで、子どもに贈ることができるの。
それがその子の一生のパートナーになるのよ」
そんなすごい魔法があるんだあ。
そう感動してから、話の流れから考えます。
「それって、テトリちゃんはお母さんが創ったっていうこと?」
だから普通の猫さんと違っているし、お母さんのことをご主人様って呼んでいるんだね。
そう感心しながらも、話をよくはわかっていないわたしに、お母さんがはっきりいいました。
「そうよ。このテトリがみかんのパートナー。
これからずっとみかんの側にいるの」
「みかんちゃん、これからよろしくお願いします」
そのお母さんとテトリちゃんの言葉で、わたしはやっとわかりました。
うれし涙が出てきます。
これからずっと、こんなかわいいテトリちゃんと一緒にいられるんだね。
リリーちゃんが来た時もとってもうれしかったけど、テトリちゃんは本当にわたしの家族になるので、もっともっとうれしいです。
わたしはすぐに涙をふいて、テトリちゃんににっこり笑っていいました。
「こちらこそ!よろしくね」
お母さんはそんなわたし達を見て、にこにこ笑っています。
お母さん、本当にありがとう!
わたし、とってもうれしいよ。
こうして、今日からわたしの家は3人家族になりました。
2001~02年制作
