5年生5月編
5-リリーちゃんと一緒
20分くらいしてお家に到着!
晴れた日にゆっくり歩いて帰ったのは久しぶりです。
傘を差してほうきには乗れないから、雨の日は歩いて学校に行ってるんだよ。
「ただいま!お母さん」
「お帰り、あら?」
リリーちゃんを持って家へ入ると、お母さんはそうびっくりした顔をしました。
誤解されないように、わたしは急いで説明します。
「お母さん、このリリーちゃん怪我をしてるの。
ちゃんと他の家の子なんだけど、今お家の人は留守なんだって。
それでお家の人が帰ってくるまでの3日の間だけ、家にいてもいい?」
そういうと、お母さんはすっかりわかってくれたみたいです。
リリーちゃんに手を差し出していいました。
「怪我をしてるの?
みかん、その子をこっちに貸して」
わたしがそっと渡すと、お母さんはリビングへと運びました。
わたしも玄関から上がって、付いていきます。
「まずは消毒をして…」
そうお母さんは薬箱から色々取り出します。
そして手際良く手当てをしてくれます。その様子を見て、わたしは改めて感心しちゃいます。
お母さんって、やっぱりすごい!
何でも上手なんだもん。
わたしもがんばって出来るようになろうって思います。
お母さんは最後に包帯を巻きました。
そうすっかり終わると、リリーちゃんは安心した顔になりました。
そしてお母さんにお礼をいいます。
「ありがとうございました」
そしてわたしにも向き直っていってくれます。
「みかんちゃんも、連れてきてくれてありがとう」
そんなリリーちゃんの様子を見て、わたしも安心しました。
お母さんは、そんなリリーちゃんをみてうなずきます。
「私も言葉がわからないとね」
そうペンダントを外して呪文を唱えます。
「マジカル・テイク・シー」
すると呪文の通りにカチューシャに変わります。
聞いた通り、わたしとお母さんの呪文はほとんど同じです。
わたしの『ミラクル』の部分が『マジカル』に変わるだけだよ。
お揃いみたいで嬉しいです。
お母さんはカチューシャをして、さっきの話の続きを始めました。
「そうね。怪我のこともあるし、少しの間なら神様も気にしないと思うわ。
いつ家の人は帰ってくるのかしら?」
お母さんが聞き直すと、リリーちゃんはわたしに教えてくれたように、もう1度しっかり答えます。
「今度の日曜日です」
その答えにお母さんはうなずいて、もう1つたずねました。
「家の人の名前とか、場所なんてわかる?」
「はい。桃山町1丁目の時鳴さん家です」
すぐ答えられたリリーちゃんに、わたしは感心しました。
町の名前とかって人が付けたものだから、他の生き物はあんまり知らないものだと思っていました。
もしかしたら他の動物も知っているのかな?
ちなみに空を飛ぶ鳥さん達は、知らないみたいです。
「わかったわ。そこなら遠くないから、すぐに送っていけるわね」
場所がはっきりわかったので、お母さんは安心した顔になりました。
桃山町はわたしの家から見ると、色瀬川を越えた向こうにある、リサイクルセンターの辺りです。
確かセンターは3丁目だったかな。
ちなみにわたしの家のあるここは、芽吹町っていうんだよ。
「じゃあリリーちゃん、少しの間だけど家族の一員ね。
怪我が治るように、ゆっくり休んでて。
お家の人が帰ってきたようだったら、送ってあげるわね」
そうお母さんに優しくいわれて、リリーちゃんは本当にうれしそうな顔でお礼をいいました。
「はい。本当にありがとうございます」
そんな2人を見ていて、わたしも笑顔になりました。
「よかったね、リリーちゃん。しばらく一緒にいられるね」
わたしはそういってから、すごいことに気が付きました。
あ!さっき考えていたお願いが叶っちゃった!
猫さんが3日も家にいるんだもんね。
絶対無理なことってあきらめていたから、叶うなんて本当に夢みたいです。
「今わたしの家にね、白猫のリリーちゃんがいるの。
これから2日も家にいるんだよ」
リリーちゃんが家に来た次の日、わたしはうきうきしてクラスのみんなにお話します。
「預かっている猫なの?」
美穂ちゃんがそう聞いたので、わたしは首を振りました。
「ううん。昨日色瀬川で、怪我していたのを見つけたの。
家の人は今お出掛けしてるから、その間わたしの家にいることになったんだよ」
そう説明すると、みんなは心配そうな顔をしました。
「そうなんだ。その猫、大変だな」
温広くんがそういった後、龍太郎くんが聞きました。
「飼い主はわかってるのか?」
「うん。桃山町の時鳴さんだって」
そう答えると、港くんが驚きました。
「時鳴さん!?ぼく知ってるよ。近所だから。
じゃああの猫が…」
そうもっと心配そうな顔になります。
時鳴さん家の前を通ると、リリーちゃんと低学年の女の子が庭で楽しそうに遊んでいるのを、よく見かけるそうです。
「でもみかんちゃん、よかったね。
家に動物がいたらいいなって、ずっといってたもんね。
短くても、そのお願いが叶ったんだから」
優香里ちゃんが、そう雰囲気を明るく変えました。
わたしは正直な気持ちを答えます。
「うん。そうなの。
本当は喜んでちゃいけないのかもしれないけど、わたしはリリーちゃんが来てくれて、とってもうれしいんだ」
「そうだね」
そうみんなも一緒に喜んでくれました。
リリーちゃんは怪我をしているから、しばらく動いちゃいけなかったので、いろいろお話をしていました。
家にいる時は、ずっとカチューシャを使っています。
そうそう、変化させたアイテムをペンダントに戻す方法はね、そのアイテムを首の後ろに回すと、自然に戻るのです。
ペンダントはいろいろなアイテムに変えられるから、それぞれの呪文を唱えないといけません。
でもステッキなど変化したアイテムは、他のアイテムには変えられないので、呪文なしで戻るそうです。
お母さんもステッキを使う時以外は、カチューシャにしています。
リリーちゃんとお話しているみたいだよ。
リリーちゃんがいると、学校から帰ってくるのがとっても楽しみです。
わたしは早速港くんのことを聞いてみました。
「わたしのクラスにね、リリーちゃんを知っている子がいたよ。
港くんっていうんだけど、知ってる?
リリーちゃん家のご近所に住んでいて、よく家の前を通るんだって」
するとリリーちゃんはすぐにうなずきました。
「知ってます。
告さんがよく朝に会うそうです。
とてもいい子だっていってましたよ」
港くんは、ご近所でもほめられているんだね。
そうリリーちゃんがいってたよって港くんにいったら、照れながらもうれしそうでした。
リリーちゃんとのお話は、わたしからは学校のこと、リリーちゃんからは家の人のことが多いです。
本当に家の人が大好きなんだって。
「私、あの家に来れて、とっても幸せなんです。
みんな優しくて、ほっとのびのびしていられます」
そう落ち着いた笑顔でいっていました。
お父さんの告さんに、お母さんの晴香さん、それから2年生の響香ちゃんの3人家族だそうです。
港くんがいっていたのは、その響香ちゃんのことだね。
リリーちゃんが家に帰ったら、たまに会いに行きたいなと思っています。
響香ちゃんともお友達になれるといいな。
「響香ちゃんって、どんな子なの?」
聞いたら、リリーちゃんはうれしそうに答えてくれました。
「とっても優しくて、しっかりしているんですよ」
お話を聞いていると、とってもいい子みたいで、会うのが楽しみです。
わたしは学校で習ったおもしろい話や、友達の話などをしました。
お勉強の話では、リリーちゃんは特に理科で習ったことに興味しんしんでした。
リリーちゃんにも身近なお話だもんね。
そうそう、わたしが学校のことを話すとね、
「響香ちゃんからも聞いたことがあります」
よくそういっていました。
本当にとっても仲良しなんだね。
図書室から借りてきた本も一緒に読みました。
本って読んでいると、わたし達も一緒にその世界に行って体験した気分になれるよね。
だから今動けないリリーちゃんも、退屈しないんじゃないかなって思ったんです。
リリーちゃんは猫なので、猫さんが活躍する本を選びました。
選ぶ時に、よく本を読んでいる秋子ちゃんにお勧めを教えてもらったよ。
わたしが聞いてみると、秋子ちゃんはとっても乗り気になってくれました。
「みかんちゃん、本を読んであげるんだ。
うん、それとってもいいよ。
おとなしくしてなきゃいけないんだったら、本は最高に楽しいから」
そう図書室に一緒に来てくれました。
「猫が活躍する本だね。おもしろいのたくさんあるよ。
リリーちゃんと一緒に読むなら、挿し絵がたくさんあった方がいいよね。
それとちゃんと読み終わりそうと考えると、この辺りがいいんじゃないかな」
そう熱心に選んでくれました。
わたしは本のことをよく知らなかったので、とってもありがたかったです。
「秋子ちゃん、ありがとう。リリーちゃんもきっと喜ぶよ」
わたしはそう感謝しました。
すると秋子ちゃんは親切にいってくれました。
「また本を探したい時は、いつでも聞いてね」
そんな秋子ちゃんは、今長編物語に挑戦中なんだって。
秋子ちゃんがおすすめしてくれた本は、やっぱりとってもおもしろかったです。
わたしが読んであげると、リリーちゃんもわくわくして聞いていたよ。
カンさんもリリーちゃんの様子を見に、何度か家に来てくれました。
「リリーちゃん、怪我の調子はどうだい?」
「カンさん!」
カンさんが訪ねてきてくれると、リリーちゃんはとってもうれしそうでした。
カンさんの宝物を持ってきて、見せてくれたりもしたよ。
リリーちゃんも楽しそうに見ていました。
他にもリリーちゃんのことを聞いて、わたしに伝言を頼む猫さんもいました。
「リリーちゃん、今みかんちゃん家にいるんだって?
お大事にって伝えてね」
「うん。伝えておくね」
その猫さんの名前を聞いて、ちゃんとリリーちゃんに伝えました。
それから魔法のこともちょっと話しました。
「魔法って、どんな力なんですか?」
リリーちゃんもやっぱり興味があったみたいです。
「神様からもらった、普通の人にはできないいろいろなことができる力なんだよ」
そう簡単に説明した後、実際にリリーちゃんにおひろめすることにしました。
わたしやお母さんが簡単な魔法を見せると、リリーちゃんは目を丸くしながらも喜んでいました。
お母さんは移動魔法で、リリーちゃんをリビングのあちこちに移動させました。
「じゃあリリーちゃん、今からいろいろなところに行くわよ」
そうお母さんは、リリーちゃんにステッキを向けていいました。
そしてお母さんが「はいっ!」とステッキを振るたびに、リリーちゃんは移動します。
食堂のイスやソファーの上、机の下などに次々と現れては消えました。
リリーちゃんには、目の前の景色がくるくる変わるように見えるんだろうね。
「え?え?」
そう戸惑っていましたが、喜んでいるみたいでした。
「じゃあわたしは、クッションの絵のにんじんを出すね!」
そうわたしがステッキを振ると、クッションの絵とそっくりなにんじんが現れました。
毎日使っているものだから、イメージはバッチリだよ。
普通は見られないかわいいにんじんです。
「わあ。すごい」
リリーちゃんはそう感心してくれました。
そんなふうにリリーちゃんと過ごせて、とってもうれしかったです。
毎日家に帰って、リリーちゃんとお話したり、遊んだりするのが楽しみでした。
お母さんもそうだったみたいです。
いつもよりもっと笑顔だったよ。
そしてリリーちゃんが家に来て4日目。
「ほとんど治っているわね」
リリーちゃんの包帯を取って、お母さんがいいました。
まだ傷は見えるけれど、もう普通に動いても大丈夫なくらいになっています。
「リリーちゃん、よかったね」
わたしもそういって、3人とも笑顔になりました。
浅い怪我でよかったよね。
こうやって怪我が治るのもね、神様が全ての生き物にくれた、元通りになる魔法のおかげなんだよ。
動物だけじゃなくて、水や空気もその力を持っています。
その魔法は弱くかけられているので、ひどいと治らないけれど、それでもすごい力だよね。
つまり全ての生き物は、自分では使えなくても、魔法を持っているんだよ。
今日リリーちゃんがお家に帰ります。
お母さんの水晶玉占いによると、時鳴さん家は今日帰ってくるそうです。
リリーちゃんがいっていた通りだね。
そこで午前中は、公園でちょっと遊ぶことにしました。
今日がお休みでよかったです。
家の近くの公園に3人で行きました。
また走れるようになって、リリーちゃんはうれしそうです。
わたしとリリーちゃんは追いかけっこをしたり、競争をしてみたり、思う存分遊びました。
わたしもこんなに走ったのは久しぶりだよ。
しばらくはリリーちゃんが帰っちゃうってことも忘れて、さわやかな気分です。
お母さんも時々参加しましたが、走るのは1番早いんだよ。
そんなふうにお昼頃まで遊んで、楽しかったです。
20分くらいしてお家に到着!
晴れた日にゆっくり歩いて帰ったのは久しぶりです。
傘を差してほうきには乗れないから、雨の日は歩いて学校に行ってるんだよ。
「ただいま!お母さん」
「お帰り、あら?」
リリーちゃんを持って家へ入ると、お母さんはそうびっくりした顔をしました。
誤解されないように、わたしは急いで説明します。
「お母さん、このリリーちゃん怪我をしてるの。
ちゃんと他の家の子なんだけど、今お家の人は留守なんだって。
それでお家の人が帰ってくるまでの3日の間だけ、家にいてもいい?」
そういうと、お母さんはすっかりわかってくれたみたいです。
リリーちゃんに手を差し出していいました。
「怪我をしてるの?
みかん、その子をこっちに貸して」
わたしがそっと渡すと、お母さんはリビングへと運びました。
わたしも玄関から上がって、付いていきます。
「まずは消毒をして…」
そうお母さんは薬箱から色々取り出します。
そして手際良く手当てをしてくれます。その様子を見て、わたしは改めて感心しちゃいます。
お母さんって、やっぱりすごい!
何でも上手なんだもん。
わたしもがんばって出来るようになろうって思います。
お母さんは最後に包帯を巻きました。
そうすっかり終わると、リリーちゃんは安心した顔になりました。
そしてお母さんにお礼をいいます。
「ありがとうございました」
そしてわたしにも向き直っていってくれます。
「みかんちゃんも、連れてきてくれてありがとう」
そんなリリーちゃんの様子を見て、わたしも安心しました。
お母さんは、そんなリリーちゃんをみてうなずきます。
「私も言葉がわからないとね」
そうペンダントを外して呪文を唱えます。
「マジカル・テイク・シー」
すると呪文の通りにカチューシャに変わります。
聞いた通り、わたしとお母さんの呪文はほとんど同じです。
わたしの『ミラクル』の部分が『マジカル』に変わるだけだよ。
お揃いみたいで嬉しいです。
お母さんはカチューシャをして、さっきの話の続きを始めました。
「そうね。怪我のこともあるし、少しの間なら神様も気にしないと思うわ。
いつ家の人は帰ってくるのかしら?」
お母さんが聞き直すと、リリーちゃんはわたしに教えてくれたように、もう1度しっかり答えます。
「今度の日曜日です」
その答えにお母さんはうなずいて、もう1つたずねました。
「家の人の名前とか、場所なんてわかる?」
「はい。桃山町1丁目の時鳴さん家です」
すぐ答えられたリリーちゃんに、わたしは感心しました。
町の名前とかって人が付けたものだから、他の生き物はあんまり知らないものだと思っていました。
もしかしたら他の動物も知っているのかな?
ちなみに空を飛ぶ鳥さん達は、知らないみたいです。
「わかったわ。そこなら遠くないから、すぐに送っていけるわね」
場所がはっきりわかったので、お母さんは安心した顔になりました。
桃山町はわたしの家から見ると、色瀬川を越えた向こうにある、リサイクルセンターの辺りです。
確かセンターは3丁目だったかな。
ちなみにわたしの家のあるここは、芽吹町っていうんだよ。
「じゃあリリーちゃん、少しの間だけど家族の一員ね。
怪我が治るように、ゆっくり休んでて。
お家の人が帰ってきたようだったら、送ってあげるわね」
そうお母さんに優しくいわれて、リリーちゃんは本当にうれしそうな顔でお礼をいいました。
「はい。本当にありがとうございます」
そんな2人を見ていて、わたしも笑顔になりました。
「よかったね、リリーちゃん。しばらく一緒にいられるね」
わたしはそういってから、すごいことに気が付きました。
あ!さっき考えていたお願いが叶っちゃった!
猫さんが3日も家にいるんだもんね。
絶対無理なことってあきらめていたから、叶うなんて本当に夢みたいです。
「今わたしの家にね、白猫のリリーちゃんがいるの。
これから2日も家にいるんだよ」
リリーちゃんが家に来た次の日、わたしはうきうきしてクラスのみんなにお話します。
「預かっている猫なの?」
美穂ちゃんがそう聞いたので、わたしは首を振りました。
「ううん。昨日色瀬川で、怪我していたのを見つけたの。
家の人は今お出掛けしてるから、その間わたしの家にいることになったんだよ」
そう説明すると、みんなは心配そうな顔をしました。
「そうなんだ。その猫、大変だな」
温広くんがそういった後、龍太郎くんが聞きました。
「飼い主はわかってるのか?」
「うん。桃山町の時鳴さんだって」
そう答えると、港くんが驚きました。
「時鳴さん!?ぼく知ってるよ。近所だから。
じゃああの猫が…」
そうもっと心配そうな顔になります。
時鳴さん家の前を通ると、リリーちゃんと低学年の女の子が庭で楽しそうに遊んでいるのを、よく見かけるそうです。
「でもみかんちゃん、よかったね。
家に動物がいたらいいなって、ずっといってたもんね。
短くても、そのお願いが叶ったんだから」
優香里ちゃんが、そう雰囲気を明るく変えました。
わたしは正直な気持ちを答えます。
「うん。そうなの。
本当は喜んでちゃいけないのかもしれないけど、わたしはリリーちゃんが来てくれて、とってもうれしいんだ」
「そうだね」
そうみんなも一緒に喜んでくれました。
リリーちゃんは怪我をしているから、しばらく動いちゃいけなかったので、いろいろお話をしていました。
家にいる時は、ずっとカチューシャを使っています。
そうそう、変化させたアイテムをペンダントに戻す方法はね、そのアイテムを首の後ろに回すと、自然に戻るのです。
ペンダントはいろいろなアイテムに変えられるから、それぞれの呪文を唱えないといけません。
でもステッキなど変化したアイテムは、他のアイテムには変えられないので、呪文なしで戻るそうです。
お母さんもステッキを使う時以外は、カチューシャにしています。
リリーちゃんとお話しているみたいだよ。
リリーちゃんがいると、学校から帰ってくるのがとっても楽しみです。
わたしは早速港くんのことを聞いてみました。
「わたしのクラスにね、リリーちゃんを知っている子がいたよ。
港くんっていうんだけど、知ってる?
リリーちゃん家のご近所に住んでいて、よく家の前を通るんだって」
するとリリーちゃんはすぐにうなずきました。
「知ってます。
告さんがよく朝に会うそうです。
とてもいい子だっていってましたよ」
港くんは、ご近所でもほめられているんだね。
そうリリーちゃんがいってたよって港くんにいったら、照れながらもうれしそうでした。
リリーちゃんとのお話は、わたしからは学校のこと、リリーちゃんからは家の人のことが多いです。
本当に家の人が大好きなんだって。
「私、あの家に来れて、とっても幸せなんです。
みんな優しくて、ほっとのびのびしていられます」
そう落ち着いた笑顔でいっていました。
お父さんの告さんに、お母さんの晴香さん、それから2年生の響香ちゃんの3人家族だそうです。
港くんがいっていたのは、その響香ちゃんのことだね。
リリーちゃんが家に帰ったら、たまに会いに行きたいなと思っています。
響香ちゃんともお友達になれるといいな。
「響香ちゃんって、どんな子なの?」
聞いたら、リリーちゃんはうれしそうに答えてくれました。
「とっても優しくて、しっかりしているんですよ」
お話を聞いていると、とってもいい子みたいで、会うのが楽しみです。
わたしは学校で習ったおもしろい話や、友達の話などをしました。
お勉強の話では、リリーちゃんは特に理科で習ったことに興味しんしんでした。
リリーちゃんにも身近なお話だもんね。
そうそう、わたしが学校のことを話すとね、
「響香ちゃんからも聞いたことがあります」
よくそういっていました。
本当にとっても仲良しなんだね。
図書室から借りてきた本も一緒に読みました。
本って読んでいると、わたし達も一緒にその世界に行って体験した気分になれるよね。
だから今動けないリリーちゃんも、退屈しないんじゃないかなって思ったんです。
リリーちゃんは猫なので、猫さんが活躍する本を選びました。
選ぶ時に、よく本を読んでいる秋子ちゃんにお勧めを教えてもらったよ。
わたしが聞いてみると、秋子ちゃんはとっても乗り気になってくれました。
「みかんちゃん、本を読んであげるんだ。
うん、それとってもいいよ。
おとなしくしてなきゃいけないんだったら、本は最高に楽しいから」
そう図書室に一緒に来てくれました。
「猫が活躍する本だね。おもしろいのたくさんあるよ。
リリーちゃんと一緒に読むなら、挿し絵がたくさんあった方がいいよね。
それとちゃんと読み終わりそうと考えると、この辺りがいいんじゃないかな」
そう熱心に選んでくれました。
わたしは本のことをよく知らなかったので、とってもありがたかったです。
「秋子ちゃん、ありがとう。リリーちゃんもきっと喜ぶよ」
わたしはそう感謝しました。
すると秋子ちゃんは親切にいってくれました。
「また本を探したい時は、いつでも聞いてね」
そんな秋子ちゃんは、今長編物語に挑戦中なんだって。
秋子ちゃんがおすすめしてくれた本は、やっぱりとってもおもしろかったです。
わたしが読んであげると、リリーちゃんもわくわくして聞いていたよ。
カンさんもリリーちゃんの様子を見に、何度か家に来てくれました。
「リリーちゃん、怪我の調子はどうだい?」
「カンさん!」
カンさんが訪ねてきてくれると、リリーちゃんはとってもうれしそうでした。
カンさんの宝物を持ってきて、見せてくれたりもしたよ。
リリーちゃんも楽しそうに見ていました。
他にもリリーちゃんのことを聞いて、わたしに伝言を頼む猫さんもいました。
「リリーちゃん、今みかんちゃん家にいるんだって?
お大事にって伝えてね」
「うん。伝えておくね」
その猫さんの名前を聞いて、ちゃんとリリーちゃんに伝えました。
それから魔法のこともちょっと話しました。
「魔法って、どんな力なんですか?」
リリーちゃんもやっぱり興味があったみたいです。
「神様からもらった、普通の人にはできないいろいろなことができる力なんだよ」
そう簡単に説明した後、実際にリリーちゃんにおひろめすることにしました。
わたしやお母さんが簡単な魔法を見せると、リリーちゃんは目を丸くしながらも喜んでいました。
お母さんは移動魔法で、リリーちゃんをリビングのあちこちに移動させました。
「じゃあリリーちゃん、今からいろいろなところに行くわよ」
そうお母さんは、リリーちゃんにステッキを向けていいました。
そしてお母さんが「はいっ!」とステッキを振るたびに、リリーちゃんは移動します。
食堂のイスやソファーの上、机の下などに次々と現れては消えました。
リリーちゃんには、目の前の景色がくるくる変わるように見えるんだろうね。
「え?え?」
そう戸惑っていましたが、喜んでいるみたいでした。
「じゃあわたしは、クッションの絵のにんじんを出すね!」
そうわたしがステッキを振ると、クッションの絵とそっくりなにんじんが現れました。
毎日使っているものだから、イメージはバッチリだよ。
普通は見られないかわいいにんじんです。
「わあ。すごい」
リリーちゃんはそう感心してくれました。
そんなふうにリリーちゃんと過ごせて、とってもうれしかったです。
毎日家に帰って、リリーちゃんとお話したり、遊んだりするのが楽しみでした。
お母さんもそうだったみたいです。
いつもよりもっと笑顔だったよ。
そしてリリーちゃんが家に来て4日目。
「ほとんど治っているわね」
リリーちゃんの包帯を取って、お母さんがいいました。
まだ傷は見えるけれど、もう普通に動いても大丈夫なくらいになっています。
「リリーちゃん、よかったね」
わたしもそういって、3人とも笑顔になりました。
浅い怪我でよかったよね。
こうやって怪我が治るのもね、神様が全ての生き物にくれた、元通りになる魔法のおかげなんだよ。
動物だけじゃなくて、水や空気もその力を持っています。
その魔法は弱くかけられているので、ひどいと治らないけれど、それでもすごい力だよね。
つまり全ての生き物は、自分では使えなくても、魔法を持っているんだよ。
今日リリーちゃんがお家に帰ります。
お母さんの水晶玉占いによると、時鳴さん家は今日帰ってくるそうです。
リリーちゃんがいっていた通りだね。
そこで午前中は、公園でちょっと遊ぶことにしました。
今日がお休みでよかったです。
家の近くの公園に3人で行きました。
また走れるようになって、リリーちゃんはうれしそうです。
わたしとリリーちゃんは追いかけっこをしたり、競争をしてみたり、思う存分遊びました。
わたしもこんなに走ったのは久しぶりだよ。
しばらくはリリーちゃんが帰っちゃうってことも忘れて、さわやかな気分です。
お母さんも時々参加しましたが、走るのは1番早いんだよ。
そんなふうにお昼頃まで遊んで、楽しかったです。
