5年生7月編
27─変わりゆく、みんなの気持ち
お散歩の出発地に戻ると、先に行っていた子達はみんな集まっていました。
わたしはすぐに麻緒ちゃんに聞きます。
「麻緒ちゃん、あれからどうだった?」
「うん。みかんちゃんのおかげで、帰り道も不思議と怖いと思わなかったよ」
そう聞いて安心していたら、麻緒ちゃんは意外なことを付け加えます。
「ただ浜辺に着くまでは、港くんと手をつないでいたから、その間はちょっと緊張しちゃった」
「そうなの?」
そう聞いて、わたしは考えます。
わたしが手をつないで緊張した時って…?
「そういえばわたしも、ファンの人と握手した時はドキドキしたなあ」
すると麻緒ちゃんは、少し困ったように笑いました。
「うーん。そういうことでもないんだけど、なんなんだろうね?」
クラスのみんなが帰ってくると、少し前から来ていた友子先生が呼びかけました。
「みんな、無事に行ってこれた?
他のクラスの子達はもうお風呂からあがっているから、みんなもすぐに入りましょう」
もうそんな時間だね。
「はーい」
突然のイベントを許してもらったばかりのわたし達はしっかり返事をして、すぐにお風呂の支度を始めました。
お風呂場で健治くんは、すぐに高志くんに聞きました。
「おお高志!みかんと一緒でどうだった?
時々立ち止まってただろ?
追いつかないように、こっちも進むスピードを調節してたんだぜ」
そう言われて高志くんは初めて気が付きました。
「いわれてみれば、星を見た時とかに立ち止まったりしたな…」
それから高志くんは、さっきから健治くんにいいたかったことを話し始めます。
「おれ、肝試しでみかんとペアを組ませられた時は、泣きたい気分だったけど…」
そこまではうつむいていってから、今度は健治くんの顔を見て続けます。
「でもみかんと一緒に行って良かった。だからありがとう」
そう感謝の言葉を聞いて、健治くんは喜びます。
「おお、そっか!オレ、グッジョブだったな」
「でももう勝手に決めるのは、体に悪いからやめてほしい」
高志くんがそう付け加えると、健治くんはうなずきました。
「ああ、わかったよ。今度は急には言わないぜ」
健治くんが意気揚々と立ち去ると、今度は龍太郎くんが高志くんに聞きに来ました。
「高志、大丈夫だったか?みんな心配してたぞ」
龍太郎くんを信頼している高志くんは、さっき思っていたことを打ちあけました。
「みかんがいろいろしてくれたから大丈夫だった。
おれ正直みかんがあんなに優しくしてくれるなんて、思ってなかった」
「そっか。結果オーライになったってことか」
「うん。ただいろいろ疲れたから、今晩は早く寝たい」
「お疲れ!」
そう龍太郎くんは、高志くんの頭を優しくなでました。
お風呂場でみんなを見て、わたしは戸惑いました。
あれ?なんだか去年よりも、少し大人っぽい体型になっている子もいる!
わたしは身長以外、去年と変わらないのに…。
周りと自分を比べてそう思っていると、美穂ちゃんにたずねられました。
「ねえ、みかんちゃん。行く前に高志くんは大分抵抗してたけど、どうだった?」
そう心配されているので、わたしは明るく答えます。
「高志くんも大丈夫だったよ。
たくさんお星さまが出ていたから、一緒に星座を探したりして、楽しかったよ」
そういうと秋子ちゃんもうなずきます。
「うん。空が明るくてキレイだったよね」
「ちょっと怖かったけど、ペアの子と色々話す機会にもなって、結構楽しかったよね」
みゆきちゃんも龍太郎くんと、たくさんお話し出来たようです。
「海でもたくさん遊べて、楽しい日だったー」
そう優香里ちゃんもにこにこしています。
そう海も、林でのお散歩もどっちも楽しかったなあ。
わたしにもみんなにとっても、いい日になったみたいで、本当に良かったです。
お風呂から上がると、そろそろ寝る時間なのでパジャマを着ます。
みんなの前で着ることもあって、特にお気に入りのを持ってきました。
わたしのは黄色とオレンジ色のチェックです。
そしてトップスの下の部分がひらひらと、少しスカートみたいに広がっている形をしています。
いつもは着ていないミニワンピースっぽくてかわいいので、とっても気に入っています。
そんなわたしのパジャマを見て、秋子ちゃんが聞きました。
「そのたぬきのってアップリケ?」
「そう。お母さんが貼ってくれたの」
お母さんが左側のひらひらの上に、わたしの大好きなぽこたんのアップリケをつけてくれました。
これもとってもかわいいです。
ほかのみんなもえりの形が大きくてかわいいものとか、逆に大人っぽいのを着てる子もいて、みんなオシャレです。
「やっぱりみんなに見られるから、かわいいのを持ってくるよね」
そうみゆきちゃんもうなずいています。
中でも、とびきり目を引いたのが…。
「キャー!麻緒ちゃんかわいい!」
そうわたしは思わず叫びました。
長いワンピースのようなパジャマ姿の麻緒ちゃんが、とんでもなくかわいかったからです。
「うん。麻緒ちゃんはそういうの似合うねえ」
そう彩ちゃんが言うように、みんなもかわいいと思っているようです。
「ありがとう。これ、一目ぼれして、おばあちゃんにおねだりしたものなんだー」
そう麻緒ちゃんははにかみました。
ハミガキなどもして、寝る支度ができたら、
同じ部屋のももちゃん、桜ちゃん、麻緒ちゃんと一緒にお部屋に戻ります。
お部屋に戻ると、もう男の子達はそろっていました。
「早いね?」
そう桜ちゃんが聞くと、光くんが答えてくれます。
「こっちは髪を乾かすのに、時間がかからないから」
それから健治くんがわたし達をジーッと見ていいます。
「女子みんな、パジャマかわいいじゃん」
「ありがとう」
お気に入りのパジャマをほめてもらえたので、わたし達はお礼を言います。
ももちゃんと桜ちゃんのは星柄で、仲良く色違いです。
健治くんは、トップスに大きく怪獣が描かれているのを着ています。
そういえば健治くんは、特撮番組が好きって聞いたことがあるのを思い出しました。
「それは健治くんの好きなテレビのキャラ?」
そう麻緒ちゃんが聞くと、健治くんはうなずきます。
「そう!」
うれしそうな健治くんに、わたしも言います。
「わたしのパジャマにもね、好きなぽこたんが付いてるんだー」
そう楽しくお話している時に、突然ももちゃんが部屋の奥を向いて聞きました。
「ところで高志くん、どうしたの?」
その言葉に、みんなが高志くんを振り返ります。
高志くんはその言葉でこちらを見ましたが、すぐにうつむきました。
「え?高志くんがどうかしたの?」
麻緒ちゃんが不思議そうにたずねると、ももちゃんが首をひねります。
「うーん。いつもより動揺してるから…。
あっ、そうか」
そう思い当たることがあったようで、ももちゃんはそれ以上いいませんでした。
それでわたしも考えます。
高志くんが動揺するようなことって…?
そしてさっきのことを思い出しました。
「あ!もしかして、麻緒ちゃんのパジャマ姿がかわいすぎて、びっくりしたんだよね?
わたしもさっきそう思ったの!」
わたしがそういうと、高志くんは照れたようにうなずきました。
「ああ…、うん。みんなかわいいからね」
「高志くんは浮気をしないタイプだと思うよ?」
「えっ?浮気?」
ってどういうこと?と、ももちゃんに聞こうと思ったら、高志くんは急に大きな声で言いました。
「みんな揃ったし、おれ今日は疲れたから、もう寝る!」
そして布団の中に入ってしまいました。
「うん。おやすみ、高志くん」
みんな驚きながらも、そうあいさつします。
そして10分程たってからーー。
「いやー。高志が一番先に寝るとは、予想外だったな」
そう健治くんが驚きます。
わたしもさっき高志くんのベッドをのぞきに行ったら、すやすやと眠っているのが見えました。
「みかん、何かした?」
そう健治くんに、さっきのお散歩のことを聞かれているとわかったわたしは、思い出してみます。
「え~!?特に走ったりとか、疲れるようなことはしてないはずだけどなあ」
「きっと高志くんは、今日いろんなことと戦っていたんだよ」
ももちゃんの言葉に思い出してみれば、確かに高志くんは、今日苦手なことを一生懸命がんばったんだもんね。
そう思うと、なんだかたまらない気持ちになりました。
高志くんのところまで行って、起こさないように髪の毛だけ「よしよし」ってなでます。
「ぼくも疲れたから、もう寝よう」
「わたしもー」
そう港くんと麻緒ちゃんもあくびをします。
わたしも眠たいなあって思ったら、お家ではいつも眠っている時間になっていました。
「じゃあみんながベッドに入ったら、電気消すか」
そう光くんがいうので、わたしもベッドに入ります。
今日はお母さんとテトリちゃんの代わりに、持ってきたカメさんのぬいぐるみと一緒に寝るんだよ。
じゃあみんな、おやすみなさい。
2006年8月~2007年1月制作
お散歩の出発地に戻ると、先に行っていた子達はみんな集まっていました。
わたしはすぐに麻緒ちゃんに聞きます。
「麻緒ちゃん、あれからどうだった?」
「うん。みかんちゃんのおかげで、帰り道も不思議と怖いと思わなかったよ」
そう聞いて安心していたら、麻緒ちゃんは意外なことを付け加えます。
「ただ浜辺に着くまでは、港くんと手をつないでいたから、その間はちょっと緊張しちゃった」
「そうなの?」
そう聞いて、わたしは考えます。
わたしが手をつないで緊張した時って…?
「そういえばわたしも、ファンの人と握手した時はドキドキしたなあ」
すると麻緒ちゃんは、少し困ったように笑いました。
「うーん。そういうことでもないんだけど、なんなんだろうね?」
クラスのみんなが帰ってくると、少し前から来ていた友子先生が呼びかけました。
「みんな、無事に行ってこれた?
他のクラスの子達はもうお風呂からあがっているから、みんなもすぐに入りましょう」
もうそんな時間だね。
「はーい」
突然のイベントを許してもらったばかりのわたし達はしっかり返事をして、すぐにお風呂の支度を始めました。
お風呂場で健治くんは、すぐに高志くんに聞きました。
「おお高志!みかんと一緒でどうだった?
時々立ち止まってただろ?
追いつかないように、こっちも進むスピードを調節してたんだぜ」
そう言われて高志くんは初めて気が付きました。
「いわれてみれば、星を見た時とかに立ち止まったりしたな…」
それから高志くんは、さっきから健治くんにいいたかったことを話し始めます。
「おれ、肝試しでみかんとペアを組ませられた時は、泣きたい気分だったけど…」
そこまではうつむいていってから、今度は健治くんの顔を見て続けます。
「でもみかんと一緒に行って良かった。だからありがとう」
そう感謝の言葉を聞いて、健治くんは喜びます。
「おお、そっか!オレ、グッジョブだったな」
「でももう勝手に決めるのは、体に悪いからやめてほしい」
高志くんがそう付け加えると、健治くんはうなずきました。
「ああ、わかったよ。今度は急には言わないぜ」
健治くんが意気揚々と立ち去ると、今度は龍太郎くんが高志くんに聞きに来ました。
「高志、大丈夫だったか?みんな心配してたぞ」
龍太郎くんを信頼している高志くんは、さっき思っていたことを打ちあけました。
「みかんがいろいろしてくれたから大丈夫だった。
おれ正直みかんがあんなに優しくしてくれるなんて、思ってなかった」
「そっか。結果オーライになったってことか」
「うん。ただいろいろ疲れたから、今晩は早く寝たい」
「お疲れ!」
そう龍太郎くんは、高志くんの頭を優しくなでました。
お風呂場でみんなを見て、わたしは戸惑いました。
あれ?なんだか去年よりも、少し大人っぽい体型になっている子もいる!
わたしは身長以外、去年と変わらないのに…。
周りと自分を比べてそう思っていると、美穂ちゃんにたずねられました。
「ねえ、みかんちゃん。行く前に高志くんは大分抵抗してたけど、どうだった?」
そう心配されているので、わたしは明るく答えます。
「高志くんも大丈夫だったよ。
たくさんお星さまが出ていたから、一緒に星座を探したりして、楽しかったよ」
そういうと秋子ちゃんもうなずきます。
「うん。空が明るくてキレイだったよね」
「ちょっと怖かったけど、ペアの子と色々話す機会にもなって、結構楽しかったよね」
みゆきちゃんも龍太郎くんと、たくさんお話し出来たようです。
「海でもたくさん遊べて、楽しい日だったー」
そう優香里ちゃんもにこにこしています。
そう海も、林でのお散歩もどっちも楽しかったなあ。
わたしにもみんなにとっても、いい日になったみたいで、本当に良かったです。
お風呂から上がると、そろそろ寝る時間なのでパジャマを着ます。
みんなの前で着ることもあって、特にお気に入りのを持ってきました。
わたしのは黄色とオレンジ色のチェックです。
そしてトップスの下の部分がひらひらと、少しスカートみたいに広がっている形をしています。
いつもは着ていないミニワンピースっぽくてかわいいので、とっても気に入っています。
そんなわたしのパジャマを見て、秋子ちゃんが聞きました。
「そのたぬきのってアップリケ?」
「そう。お母さんが貼ってくれたの」
お母さんが左側のひらひらの上に、わたしの大好きなぽこたんのアップリケをつけてくれました。
これもとってもかわいいです。
ほかのみんなもえりの形が大きくてかわいいものとか、逆に大人っぽいのを着てる子もいて、みんなオシャレです。
「やっぱりみんなに見られるから、かわいいのを持ってくるよね」
そうみゆきちゃんもうなずいています。
中でも、とびきり目を引いたのが…。
「キャー!麻緒ちゃんかわいい!」
そうわたしは思わず叫びました。
長いワンピースのようなパジャマ姿の麻緒ちゃんが、とんでもなくかわいかったからです。
「うん。麻緒ちゃんはそういうの似合うねえ」
そう彩ちゃんが言うように、みんなもかわいいと思っているようです。
「ありがとう。これ、一目ぼれして、おばあちゃんにおねだりしたものなんだー」
そう麻緒ちゃんははにかみました。
ハミガキなどもして、寝る支度ができたら、
同じ部屋のももちゃん、桜ちゃん、麻緒ちゃんと一緒にお部屋に戻ります。
お部屋に戻ると、もう男の子達はそろっていました。
「早いね?」
そう桜ちゃんが聞くと、光くんが答えてくれます。
「こっちは髪を乾かすのに、時間がかからないから」
それから健治くんがわたし達をジーッと見ていいます。
「女子みんな、パジャマかわいいじゃん」
「ありがとう」
お気に入りのパジャマをほめてもらえたので、わたし達はお礼を言います。
ももちゃんと桜ちゃんのは星柄で、仲良く色違いです。
健治くんは、トップスに大きく怪獣が描かれているのを着ています。
そういえば健治くんは、特撮番組が好きって聞いたことがあるのを思い出しました。
「それは健治くんの好きなテレビのキャラ?」
そう麻緒ちゃんが聞くと、健治くんはうなずきます。
「そう!」
うれしそうな健治くんに、わたしも言います。
「わたしのパジャマにもね、好きなぽこたんが付いてるんだー」
そう楽しくお話している時に、突然ももちゃんが部屋の奥を向いて聞きました。
「ところで高志くん、どうしたの?」
その言葉に、みんなが高志くんを振り返ります。
高志くんはその言葉でこちらを見ましたが、すぐにうつむきました。
「え?高志くんがどうかしたの?」
麻緒ちゃんが不思議そうにたずねると、ももちゃんが首をひねります。
「うーん。いつもより動揺してるから…。
あっ、そうか」
そう思い当たることがあったようで、ももちゃんはそれ以上いいませんでした。
それでわたしも考えます。
高志くんが動揺するようなことって…?
そしてさっきのことを思い出しました。
「あ!もしかして、麻緒ちゃんのパジャマ姿がかわいすぎて、びっくりしたんだよね?
わたしもさっきそう思ったの!」
わたしがそういうと、高志くんは照れたようにうなずきました。
「ああ…、うん。みんなかわいいからね」
「高志くんは浮気をしないタイプだと思うよ?」
「えっ?浮気?」
ってどういうこと?と、ももちゃんに聞こうと思ったら、高志くんは急に大きな声で言いました。
「みんな揃ったし、おれ今日は疲れたから、もう寝る!」
そして布団の中に入ってしまいました。
「うん。おやすみ、高志くん」
みんな驚きながらも、そうあいさつします。
そして10分程たってからーー。
「いやー。高志が一番先に寝るとは、予想外だったな」
そう健治くんが驚きます。
わたしもさっき高志くんのベッドをのぞきに行ったら、すやすやと眠っているのが見えました。
「みかん、何かした?」
そう健治くんに、さっきのお散歩のことを聞かれているとわかったわたしは、思い出してみます。
「え~!?特に走ったりとか、疲れるようなことはしてないはずだけどなあ」
「きっと高志くんは、今日いろんなことと戦っていたんだよ」
ももちゃんの言葉に思い出してみれば、確かに高志くんは、今日苦手なことを一生懸命がんばったんだもんね。
そう思うと、なんだかたまらない気持ちになりました。
高志くんのところまで行って、起こさないように髪の毛だけ「よしよし」ってなでます。
「ぼくも疲れたから、もう寝よう」
「わたしもー」
そう港くんと麻緒ちゃんもあくびをします。
わたしも眠たいなあって思ったら、お家ではいつも眠っている時間になっていました。
「じゃあみんながベッドに入ったら、電気消すか」
そう光くんがいうので、わたしもベッドに入ります。
今日はお母さんとテトリちゃんの代わりに、持ってきたカメさんのぬいぐるみと一緒に寝るんだよ。
じゃあみんな、おやすみなさい。
2006年8月~2007年1月制作
