不思議な夜の おひなさま
[chapter:3 魔法使いのお仕事]
そして約束の土曜日になりました。
この4日間、気になって待ち遠しかったよ。
学校から帰ってきて3時間は充分眠れたわたしは、約束の30分前に家を出ます。
予定だと、真美ちゃん家に着くのは5分前くらいかな。
「じゃあ、頑張って行ってきまーす」
昨日のうちに準備しておいた荷物を持って出発します。
お母さんが手を振って見送ってくれました。
「はーい。気をつけていってらっしゃい」
思っていた通り、今回のお話をすると、お母さんは応援して送り出してくれました。
今日は大きな荷物があるからほうきで行けないので、歩きです。
荷物っていっても、おひなさまの計画で使う物が多いんじゃないよ。
パジャマとか、そういう普通のお泊まりに必要な物です。
今回はお仕事のためとはいっても、お泊まりするなんて、めったにないことです。
だからこうやって準備するのは、なかなか楽しかったよ。
3月の5時なので、上を見るときれいな夕焼け空になっています。
今日はこれがすっかり夜になってから本番なんだよね。
いつもは夜にやることってないので、少し緊張します。
それから初めての挑戦にドキドキとわくわくもある、不思議な気分です。
みかんが今日、きっと解決してみせるよ。
真美ちゃん、がんばるからね!
わたしはそう気合いを入れて、張り切って真美ちゃんの家へと向かいました。
「こんにちは。おじゃましまーす」
わたしがそうあいさつをすると、真美ちゃんとお母さんが迎えてくれました。
真美ちゃんはわたしを見て、ほっとした顔になります。
「みかんちゃん!いらっしゃい」
「はじめまして。真美に、みかんちゃんのことは前から聞いていたのよ」
そう真美ちゃんのお母さんにも、歓迎してもらえました。
前って、真美ちゃんがお泊まり会の話をしてくれた時のことかな?
そんなことを思いながら、しっかりあいさつをしました。
「はじめまして。みかんです。お世話になります」
明日の午前中まで、とってもお世話になるんだもんね。
お家に上がると、まず今日お泊まりさせてもらう2階の真美ちゃんのお部屋に行きます。
荷物を置いて、早速ここでこれからの確認をします。
「本当に今日はありがとうございました。これからは…」
千枝ちゃんも一緒に話し合って決めた、計画ノートを広げて話します。
これには、その時間にすることなどをまとめてあるんだよ。
「お夕飯を食べたら、すぐに寝る準備をして、12時までは寝るんですよね」
そう真美ちゃんのいう通り、夜になったらずっと眠ることにしています。
夜中にしっかり起きていられるようにね。
真美ちゃんの言葉にうなずいて、わたしは考えました。
「今からお夕飯の時間までは空いているんだよね。
じゃあ今のうちに、もう1度おひなさまを見にいってみよっか」
あれから何か変わったことがあるかもしれないし、夜中に調べる前にしっかり確めておいた方がいいよね。
わたしは大人になったみたいに、まじめにそう考えました。
「うん、お願いします」
真美ちゃんもうなずいて、2人でおひなさまの置いてある部屋に行きました。
またおひなさまをよーく見てみます。
「…やっぱり普通だね」
もう1度見ても、いたって普通のお人形です。
「でも今朝も動いていたのに…」
そう一生懸命いう真美ちゃんに、わたしはうなずきます。
「そっか。その不思議な夜を調べるために来たんだもんね」
また夜の時にがんばろって、わたしは力が抜けました。
そしてのんびり気分に戻ったわたしは、また立派なおひなさまに感心してしまいます。
「本当に、真美ちゃん家のおひなさまは大きいねえ」
お友達の家のも見せてもらったことがあるけれど、その中でも1番大きいです。
そしてお人形1つ1つがきれいで、大切にされているのがわかります。
ほこりもかぶったりしていないんだよ。よくお手入れされているんだね。
そうよくよく見ていると、後ろから思いがけず声がしました。
「大きな雛人形が夢だったの」
突然の真美ちゃんのお母さんの登場に、わたし達はびっくりして振り返ります。
今の話、聞かれちゃったかな?
わたし達は、作戦が知られて、真美ちゃんのお母さんに変な顔をされないかと、どきどきしました。
でも真美ちゃんのお母さんは、おだやかな顔をしています。
聞かれていなかったようです。
お母さんはそんなわたし達の様子を気にしないで、話を続けます。
「私の雛人形は、2段の三人官女まででね…。
──それでも、大事な物にはかわりなかったのよ。
ひな祭りが近付くと早くに出してもらって、毎日見ていたくらいなの」
そうわたし達に慌てて付け加えてから、またおひなさまを見てうれしそうにいいます。
「でもこうやって何段もあるような雛人形を飾るのが、子どもの頃からの憧れだったの。
どう?素敵な雛人形でしょ?」
お母さんの言葉に、わたし達はうなずきます。
そしてうれしい気持ちにもなりました。
真美ちゃんのお母さんは、その夢をずっと持っていて叶えたってことだもんね。
だからか、とっても誇らしそうに見えます。
それから大切なことをいってくれました。
「でもね、その私の雛人形も、今でも大切に部屋に飾っているの。
家に大きいのが増えたって、小さい頃からの私の宝物だからね」
そうおちゃめにウインクします。
その言葉に、真美ちゃんも元気に答えました。
「うん。わたしも、お母さんみたいに大事にするよ」
そんな話を聞いていて、わたしはこの親子に感心しました。
2人ともとっても素敵だなあ。
真美ちゃんもお母さんも、本当におひなさまを大切に思っているんだね。
真美ちゃんがおひなさまを特別大事に思っているのって、もしかしてそんなお母さんを見ていたからもあるのかな。
よーし、そんな大事なおひなさまなんだもん。
何で動いたりするのか、絶対に謎をとかなくちゃ。
わたしはますます気合いが入りました。
それからすぐに、真美ちゃんのお父さんも帰ってきました。
みんなからのリクエストで、お夕飯の前にちょっと魔法を披露したよ。
いろいろな物を出してみせたら、みんなびっくりしていました。
真美ちゃんのお父さんもお母さんも、魔法はテレビで見たりすることはあっても、実際に見るのは10年に1度もないっていっていました。
だからとっても喜んでもらえたよ。
感心してもらうと、わたしはやっぱり得意気な気分になっちゃいます。
その後で、真美ちゃんのお母さんが腕によりをかけて作ってくれたお夕飯を食べました。
気を使って、わたし達子どもが好きなメニューにしてくれました。
真美ちゃんの家族に混ぜてもらってのお夕飯は、とっても楽しかったし、おいしかったよ。
こういうふうにお父さんがいたり、兄弟がいる家族に、わたしは憧れちゃいます。
わたしには最初からお父さんがいないし、4歳の時におばあちゃんの家を出てからは、ずっとお母さんと2人暮らしだからです。
あ、でもお母さんはわたしのことをよく考えてくれているから、普段寂しい思いはしてないよ。
それからわたし達の計画では、すぐに寝る時間です。
パジャマを着たり、歯磨きをするわたし達は、不思議そうな顔をされました。
「こんなに早く寝るの?」
そう聞かれた時は、ちょっと返事に困りました。
普通お泊まり会って、逆にいつもより遅く起きているものだもんね。
お友達と遅くまで遊んだり、お話するのが楽しみで来るんですから。
すぐに寝るなんて、おかしいって思われてしまいます。
「いつ眠くなってもいいように、準備だけしているの」
そう真美ちゃんが上手に答えてくれました。
でも本当は用意ができたら、すぐに眠ります。
真美ちゃんのお部屋で遊ぶといって、わたし達は2階へ昇っていきました。
今は8時少し前だから、4時間もあるよ。
お昼寝したのと合わせると、7時間にもなるね。
いつもよりは少ないけど、調べ終わったらまた眠れるんだし、バッチリです。
真美ちゃんが目覚まし時計を12時にセットしました。
わたしは使ったことがないけれど、合わせた時間になると音が鳴って知らせてくれる、便利な時計です。
こんなに早いのは、サンタさんが来るクリスマスイブくらいだけど、わりとすぐに眠れました。
ピピピピピピ…♪
?何の音かな?
真っ暗な中、わたしは何かの音で目が覚めました。
何だかわからないまま起き上がります。
それから、寝ぼけたまま周りをきょろきょろ見回しました。
でも聞き慣れていない音なので、今のわたしには何だかわかりません。
すると一緒に起きた真美ちゃんが、眠そうに目をこすりながらいいました。
「もう時間なんだね…」
そして目覚まし時計の上にあるボタンを押しました。
すると音が止まります。
そうか。あれは目覚ましの音だったんだね。
…ということは、今は夜中の12時なんだ。
そうわかると、わたしはバッチリ目が覚めました。
眠たさよりも、おひなさまの謎を知りたい気持ちの方が大きいんです。
今までにたくさん寝たから、もう充分!
「よーし!がんばって原因をみつけようね」
わたしは右手を挙げて、そう気合いを入れました。
でも真美ちゃんのお父さんとお母さんに聞こえないように、小さな声でね。
2人の部屋も同じ2階で、そしてお隣がお母さんの部屋なんだもんね。
気を付けないと、すぐにみつかっちゃうよ。
真美ちゃんはわたしの言葉に、まじめな顔でうなずきます。
そして急いで簡単な準備をすると、わたし達はそっと階段を降りていきました。
そして約束の土曜日になりました。
この4日間、気になって待ち遠しかったよ。
学校から帰ってきて3時間は充分眠れたわたしは、約束の30分前に家を出ます。
予定だと、真美ちゃん家に着くのは5分前くらいかな。
「じゃあ、頑張って行ってきまーす」
昨日のうちに準備しておいた荷物を持って出発します。
お母さんが手を振って見送ってくれました。
「はーい。気をつけていってらっしゃい」
思っていた通り、今回のお話をすると、お母さんは応援して送り出してくれました。
今日は大きな荷物があるからほうきで行けないので、歩きです。
荷物っていっても、おひなさまの計画で使う物が多いんじゃないよ。
パジャマとか、そういう普通のお泊まりに必要な物です。
今回はお仕事のためとはいっても、お泊まりするなんて、めったにないことです。
だからこうやって準備するのは、なかなか楽しかったよ。
3月の5時なので、上を見るときれいな夕焼け空になっています。
今日はこれがすっかり夜になってから本番なんだよね。
いつもは夜にやることってないので、少し緊張します。
それから初めての挑戦にドキドキとわくわくもある、不思議な気分です。
みかんが今日、きっと解決してみせるよ。
真美ちゃん、がんばるからね!
わたしはそう気合いを入れて、張り切って真美ちゃんの家へと向かいました。
「こんにちは。おじゃましまーす」
わたしがそうあいさつをすると、真美ちゃんとお母さんが迎えてくれました。
真美ちゃんはわたしを見て、ほっとした顔になります。
「みかんちゃん!いらっしゃい」
「はじめまして。真美に、みかんちゃんのことは前から聞いていたのよ」
そう真美ちゃんのお母さんにも、歓迎してもらえました。
前って、真美ちゃんがお泊まり会の話をしてくれた時のことかな?
そんなことを思いながら、しっかりあいさつをしました。
「はじめまして。みかんです。お世話になります」
明日の午前中まで、とってもお世話になるんだもんね。
お家に上がると、まず今日お泊まりさせてもらう2階の真美ちゃんのお部屋に行きます。
荷物を置いて、早速ここでこれからの確認をします。
「本当に今日はありがとうございました。これからは…」
千枝ちゃんも一緒に話し合って決めた、計画ノートを広げて話します。
これには、その時間にすることなどをまとめてあるんだよ。
「お夕飯を食べたら、すぐに寝る準備をして、12時までは寝るんですよね」
そう真美ちゃんのいう通り、夜になったらずっと眠ることにしています。
夜中にしっかり起きていられるようにね。
真美ちゃんの言葉にうなずいて、わたしは考えました。
「今からお夕飯の時間までは空いているんだよね。
じゃあ今のうちに、もう1度おひなさまを見にいってみよっか」
あれから何か変わったことがあるかもしれないし、夜中に調べる前にしっかり確めておいた方がいいよね。
わたしは大人になったみたいに、まじめにそう考えました。
「うん、お願いします」
真美ちゃんもうなずいて、2人でおひなさまの置いてある部屋に行きました。
またおひなさまをよーく見てみます。
「…やっぱり普通だね」
もう1度見ても、いたって普通のお人形です。
「でも今朝も動いていたのに…」
そう一生懸命いう真美ちゃんに、わたしはうなずきます。
「そっか。その不思議な夜を調べるために来たんだもんね」
また夜の時にがんばろって、わたしは力が抜けました。
そしてのんびり気分に戻ったわたしは、また立派なおひなさまに感心してしまいます。
「本当に、真美ちゃん家のおひなさまは大きいねえ」
お友達の家のも見せてもらったことがあるけれど、その中でも1番大きいです。
そしてお人形1つ1つがきれいで、大切にされているのがわかります。
ほこりもかぶったりしていないんだよ。よくお手入れされているんだね。
そうよくよく見ていると、後ろから思いがけず声がしました。
「大きな雛人形が夢だったの」
突然の真美ちゃんのお母さんの登場に、わたし達はびっくりして振り返ります。
今の話、聞かれちゃったかな?
わたし達は、作戦が知られて、真美ちゃんのお母さんに変な顔をされないかと、どきどきしました。
でも真美ちゃんのお母さんは、おだやかな顔をしています。
聞かれていなかったようです。
お母さんはそんなわたし達の様子を気にしないで、話を続けます。
「私の雛人形は、2段の三人官女まででね…。
──それでも、大事な物にはかわりなかったのよ。
ひな祭りが近付くと早くに出してもらって、毎日見ていたくらいなの」
そうわたし達に慌てて付け加えてから、またおひなさまを見てうれしそうにいいます。
「でもこうやって何段もあるような雛人形を飾るのが、子どもの頃からの憧れだったの。
どう?素敵な雛人形でしょ?」
お母さんの言葉に、わたし達はうなずきます。
そしてうれしい気持ちにもなりました。
真美ちゃんのお母さんは、その夢をずっと持っていて叶えたってことだもんね。
だからか、とっても誇らしそうに見えます。
それから大切なことをいってくれました。
「でもね、その私の雛人形も、今でも大切に部屋に飾っているの。
家に大きいのが増えたって、小さい頃からの私の宝物だからね」
そうおちゃめにウインクします。
その言葉に、真美ちゃんも元気に答えました。
「うん。わたしも、お母さんみたいに大事にするよ」
そんな話を聞いていて、わたしはこの親子に感心しました。
2人ともとっても素敵だなあ。
真美ちゃんもお母さんも、本当におひなさまを大切に思っているんだね。
真美ちゃんがおひなさまを特別大事に思っているのって、もしかしてそんなお母さんを見ていたからもあるのかな。
よーし、そんな大事なおひなさまなんだもん。
何で動いたりするのか、絶対に謎をとかなくちゃ。
わたしはますます気合いが入りました。
それからすぐに、真美ちゃんのお父さんも帰ってきました。
みんなからのリクエストで、お夕飯の前にちょっと魔法を披露したよ。
いろいろな物を出してみせたら、みんなびっくりしていました。
真美ちゃんのお父さんもお母さんも、魔法はテレビで見たりすることはあっても、実際に見るのは10年に1度もないっていっていました。
だからとっても喜んでもらえたよ。
感心してもらうと、わたしはやっぱり得意気な気分になっちゃいます。
その後で、真美ちゃんのお母さんが腕によりをかけて作ってくれたお夕飯を食べました。
気を使って、わたし達子どもが好きなメニューにしてくれました。
真美ちゃんの家族に混ぜてもらってのお夕飯は、とっても楽しかったし、おいしかったよ。
こういうふうにお父さんがいたり、兄弟がいる家族に、わたしは憧れちゃいます。
わたしには最初からお父さんがいないし、4歳の時におばあちゃんの家を出てからは、ずっとお母さんと2人暮らしだからです。
あ、でもお母さんはわたしのことをよく考えてくれているから、普段寂しい思いはしてないよ。
それからわたし達の計画では、すぐに寝る時間です。
パジャマを着たり、歯磨きをするわたし達は、不思議そうな顔をされました。
「こんなに早く寝るの?」
そう聞かれた時は、ちょっと返事に困りました。
普通お泊まり会って、逆にいつもより遅く起きているものだもんね。
お友達と遅くまで遊んだり、お話するのが楽しみで来るんですから。
すぐに寝るなんて、おかしいって思われてしまいます。
「いつ眠くなってもいいように、準備だけしているの」
そう真美ちゃんが上手に答えてくれました。
でも本当は用意ができたら、すぐに眠ります。
真美ちゃんのお部屋で遊ぶといって、わたし達は2階へ昇っていきました。
今は8時少し前だから、4時間もあるよ。
お昼寝したのと合わせると、7時間にもなるね。
いつもよりは少ないけど、調べ終わったらまた眠れるんだし、バッチリです。
真美ちゃんが目覚まし時計を12時にセットしました。
わたしは使ったことがないけれど、合わせた時間になると音が鳴って知らせてくれる、便利な時計です。
こんなに早いのは、サンタさんが来るクリスマスイブくらいだけど、わりとすぐに眠れました。
ピピピピピピ…♪
?何の音かな?
真っ暗な中、わたしは何かの音で目が覚めました。
何だかわからないまま起き上がります。
それから、寝ぼけたまま周りをきょろきょろ見回しました。
でも聞き慣れていない音なので、今のわたしには何だかわかりません。
すると一緒に起きた真美ちゃんが、眠そうに目をこすりながらいいました。
「もう時間なんだね…」
そして目覚まし時計の上にあるボタンを押しました。
すると音が止まります。
そうか。あれは目覚ましの音だったんだね。
…ということは、今は夜中の12時なんだ。
そうわかると、わたしはバッチリ目が覚めました。
眠たさよりも、おひなさまの謎を知りたい気持ちの方が大きいんです。
今までにたくさん寝たから、もう充分!
「よーし!がんばって原因をみつけようね」
わたしは右手を挙げて、そう気合いを入れました。
でも真美ちゃんのお父さんとお母さんに聞こえないように、小さな声でね。
2人の部屋も同じ2階で、そしてお隣がお母さんの部屋なんだもんね。
気を付けないと、すぐにみつかっちゃうよ。
真美ちゃんはわたしの言葉に、まじめな顔でうなずきます。
そして急いで簡単な準備をすると、わたし達はそっと階段を降りていきました。
