魔法の森編

6─魔法の学校の新入生

魔法の森での2日目です。
昨日しっかり眠れたので、気持ちよく目が覚めました。
朝ごはんを食べて少ししたら、早速初めての授業の時間になります。
双葉クラスの帽子をかぶって、わくわくします。
この帽子は小学校に入った年にもらえます。
帽子の色はどのクラスもみんな緑色で、先に☆が付いています。
そして区別はワッペンでしています。
クラス名の通り、わたし達のは可愛い黄緑色の双葉です。
去年までは、何のワッペンも付いていませんでした。
こう模様が付いておしゃれになって、うれしいです。
「つばめくん、包丁で手を切らないように、気を付けるのよ。
もし切っちゃったら、すぐに先生とお母さんにいいなさい」
そうつばめくんのお母さんは、つばめくんの手を取って心配していました。
授業前に、わたしもお母さんに注意されました。
小学校の家庭科の時間では、まだ包丁を使ったことがないもんね。
だから練習も兼ねて、夏休みになってからちょっとお手伝いをしてきました。
つばめくんも、お母さんとちょっと練習をしてきたそうです。
そんな包丁を使うのは、魔法のお薬を作る授業です。
小学校みたいに、ペンケースとノートを持っていきます。
それから用意してきた、みかん印のシールも一緒に。
自分で作ったお薬には、名前のマークのシールを貼るのが慣わしです。
誰が作ったお薬か、ブランドのようになっています。
今までお薬を作れるのは、家ではお母さんだけでした。
だからお家の研究室の薬は、全部いちご印になっています。
わたしもきちんと作れるようになったら、これからはみかん印も棚に置けるんです。
その様子を思い浮かべると、楽しみです。
そのためには、しっかり覚えなくちゃ。
家庭科室や図工室のように、同じ大きさの長方形の机が並んでいる教室でした。
横に3個、縦に4個、そして入り口近くにはありません。
そう全部で11個の机があります。
そして机にはそれぞれ2,3個のイスが置いてあります。
その席について、きりんくんが教えてくれます。
「歳ごとに作るものが違うから、その分机があるんだ」
そしてタルトちゃんは、1つの机に座りました。
きりんくんも向かいの、同じ机に座ります。
そしてわたし達におしえてくれます。
「ここが12歳の机なの。
みかんちゃんとつばめくんの席はあそこよ」
そう左斜め前の机を指差しました。
小学校の教室でいうなら、1番前の真ん中の机です。
わたしとつばめくんは、いわれた通りに座りました。
えびさんはわたし達の後ろの、2番目の真ん中の机に座っています。
「ドキドキするね」
「ちゃんと作れるかな?」
そうつばめくんといっていると、木諸先生が入ってきました。
そしてみんなを見回していいます。
「みなさん、こんにちは。木諸です。
 今年も元気なみなさんに会えて、うれしいですよ」
そう先生がにっこりあいさつをします。
それからわたしとつばめくんに目をとめました。
「では今年から一緒にお勉強を始める、2人とあいさつをしましょう。
 みかんちゃん、つばめくん、出て来て」
そう木諸先生に呼ばれます。
わたしとつばめくんは先生の隣に行きました。
木諸先生はわたし達にいいます。
「じゃあ簡単でいいから、みんなにあいさつをしてね」
こっくりうなずいて、わたしからあいさつをします。
「みかんです。ここでのお勉強、とっても楽しみにしていました。
 どうぞよろしくお願いします」
そう元気にお辞儀をします。
すると、クラスの中でも大きい人達がいいました。
「みかんちゃんって、いちごさんの子どもなんだよね。
 同じクラスにいた時、憧れてたんだー」
お母さんは6年前まではこのクラスにいました。
だから今15歳以上の人は、同じ教室で勉強したことがあるんだよね。
そうお母さんの人気があって、うれしいです。
お母さんに後で伝えておかなくちゃ。
それからつばめくんがあいさつをします。
「つばめです。今までやったことのない魔法のかけ方を教えてもらえるのがうれしいです。
がんばるので、仲良くしてください」
すると応援の声がかかりました。
「みかんちゃーん。つばめくーん。2人ともがんばれー」
その言葉に2人で気合いが入りました。
うん。お母さんの子だもん。しっかりがんばります!
あいさつが終わると、歳ごとに違う紙をもらいました。
わたし達の紙には「傷薬の材料」と書いてあります。
今年はこれの作り方を覚えるんだね。
毎年1つずつ教えてもらえると、前もって聞いていました。
そう考えていると、木諸先生がいいました。
「では今年は、その薬の作り方を覚えましょうね。
まずはそれぞれの薬を作るために、みんなで材料を採りに行きましょう」
そう木諸先生は入り口から出て行きます。
周りのみんなを見ると、文房具は机に置いたまま、先生に付いていきます。
わたし達もそれに続きました。
そしてみんなで森の中へと出ます。
つばめくんは、これから集める材料の確認をします。
「ぼく達の材料は――くりたけ、やなぎまつたけ、かりん……かあ。
 普通に食べられそうな材料が多いね」
それを聞いて、わたしもうなずきます。
「うん。お料理するみたいだね」
タルトちゃんがいっていた通り、きのこも入っています。
そしてひまわりの花びらなんて、お花も入っているよ。
見たこともないものもたくさんあります。
そしてどういうところに生えているのかもわかりません。
すると木諸先生が手を叩いていいました。
「では最初は去年の復習ね。
奇数の歳の子が偶数の歳の子に、材料の場所へ案内してあげてね。
去年採りに行った場所を、ちゃんと覚えているかしら?
全員戻ってきたら、交代しますよ」
なるほど。そうすれば2回分の時間で済むもんね。
わたし達は10歳と偶数だし、最初の学年なので、教えてもらう側です。
わたし達のところに、11歳の3人が来てくれます。
小さな頃から1番同じクラスになることが多かった、身近な子達なのでよく知っています。
そのすすきちゃんが、とってもうれしそうに歓迎してくれます。
「うれしーい!わたし達にも後輩ができたわ!
みかんちゃん、つばめくん、双葉クラスにようこそ!
わたしがバッチリ教えてあげる。任せて!」
そう手のポーズを変えながら、とっても張り切っています。
そのすすきちゃんに、もみじくんがため息をつきました。
「すすき、張り切りすぎだよ。みかんちゃん達が困るだろ。
時間がなくなる。早く行こう」
そう周りの様子を見ていいます。
他のグループは、早速移動を始めていました。
その言葉に、すすきちゃんはほっぺをふくらませました。
「いいじゃない。うれしいんだから」
そんな2人を、とんぼくんが慌ててとりなします。
「その大切な後輩の前で、2人ともケンカをしないでね」
とんぼくんはわたし達と同じ5年生です。
そしてすすきちゃんともみじくんは6年生なので、ちょっと大変だそうです。
わたしとつばめくんもいいます。
「わたし達、全然困ってないです」
「うん。お兄さん、お姉さんに教えてもらえてうれしいです」
するとすすきちゃんは喜びました。
「そうでしょ?もみじも心配しないで。
 ちゃんと案内するから」
その言葉に、とんぼくんがうなずきます。
「そうだね。ぼく達も一緒だし」
そんな3人に案内してもらいます。
最初は、このお薬を作るために森の人が育てている畑に行きます。
どのグループもここから摘んでいます。
わたし達も、どれを摘めばいいか教えてもらいました。
「じゃあ次はひまわりね」
そうすすきちゃんが、お目当てのものを指差して教えてくれます。
するととんぼくんが摘み方を教えてくれます。
「花びらはこうやって採るんだよ」
そうその物を持って、いい摘み方を教えてくれます。
そして摘み終わると、もみじくんがノートを見ていいます。
「じゃあ次はやなぎまつたけを採りに行こうか」
こういう案内は初めてのはずなのに、そう役割分担されていました。
立派なチームワークです。
そして自然に生える物は、その場所に採りに行きます。
これはお使いでお目当てのものが揃っていく時に、似ています。
こうやってみんなで森の中を歩くのも楽しいです。
そして植物のお勉強にもなりました。
そう最初のグループの材料が揃ったら、今度は教える側と教えられる側の交代です。
木諸先生は19歳の子へ案内しています。
だからわたし達は、みんなが見える範囲のところで自由にしていました。
そしてみんなの材料が揃ったら、また教室に戻ります。
材料の入った籠をそれぞれの机に置きます。
すると先生がみんなを見回していいました。
「今日は最初なので、グループごとに協力して作ってみましょう」
わたしとつばめくんは、お薬作りは本当に初めてです。
だから1人じゃないって聞いて、ちょっと安心しました。
「まずは材料をきっちり計りましょう。
 魔法を上手く発揮させるには、それぞれの材料のバランスが肝心なの。
 だから1gも差がないように、気を付けましょうね」
さすが魔法のお薬。繊細なんだね。
そういわれて、みんなではかりを合わせるところから始めました。
木諸先生は、みんなの机を回り始めます。
まずは材料をよく洗いました。
土が取れたら、材料の重さを合わせます。
きのこなどは、どのくらいの大きさでその重さになるのかがわかりません。
だから何回も切って、合わせていきます。
「あと3gって、このくらいかな?」
そう予想を立てて切るのが、わたしはなかなか得意でした。
「ぴったり!みかんちゃん、すごいね」
そうつばめくんも感心してくれます。
つばめくんは、粉類をきっちり計るのが得意でした。
すりきりのやり方もバッチリです。
「そういうのも勉強してきたんだあ」
わたしも感心します。
そこに木諸先生も来て、ほめてくれました。
「2人とも、ちゃんと材料を調えられているわね」
うれしくて、2人でにっこり顔を見合わせます。
「材料を揃えられたら、その材料をできるだけ細かく刻みましょう。
材料をまな板から落とさないように、気を付けてね」
そういわれて、きのこや花びら、葉っぱを刻み始めます。
2人とも普通に切ることはできました。
でもお母さんみたいに、細くは切れません。
そして小さくするために、仕上げにみじん切りのように、細かくしていきます。
みじん切りなら、包丁を動かす程小さくなるので、ちゃんとできたかな?
まな板にうっすら葉っぱの色が付きました。
そしてその材料を落とさないように、そっとおなべの中に入れます。
「材料を平らにならしてから、ひたひたになるまで水を入れてね。
それをお湯にして、煮溶かします」
材料が少ないので、小さなおなべが用意されていました。
それでもお湯も材料の高さまでなので、うっすらです。
これを火にかけて、たまに混ぜます。
クツクツと煮えてきたら、いい匂いがしてきました。
そして最後に一つまみ、わたし達の髪の毛を少し入れます。
髪の毛は不思議とスウッと溶けて、魔法になりました。
それで完成です。
魔法の効果もあって、とってもなめらかなお薬に変わりました。
「やった。ちゃんと作れたね」
そうつばめくんと手を取り合って喜びます。
どの位正しく、効果のあるように作れたかは、お薬の色でわかるそうです。
いいお薬ほど、真っ白に近くなるんだって。
わたし達のお薬は、クリーム色になりました。
それを見た木諸先生はいいます。
「うん。これ位なら合格ね。
材料をもっと細かく刻めると、魔法が行き渡りやすくなるの。
それができるようになると、もっといい薬を作れるようになりますよ」
そうなんだ。もっと包丁を上手に使えるようにならなくちゃ。
そうアドバイスしてもらって、目標ができました。
大体のグループはそう合格することができました。
合格のお薬は瓶に詰めます。
そして木諸先生が受け取りました。
「今回のは共同作品なので、この森でもらいますね。
 明日からは1人ずつ作るようになります。
それでいいのが作れたら、みなさんが持って帰っていいですよ。
だからがんばりましょうね」
そう木諸先生に励まされます。
明日は1人かあ。がんばらなくちゃ。
最後はノートにメモをします。
材料の生えていた場所や、アドバイスしてもらったことを忘れないようにしておかないとね。
生えている場所をしっかりわかっていると、これからいい回り方ができそうです。
材料の紙は、わたしが持っていることになりました。
そして余った材料は、明日使えるように籠にまとめます。
それを先生が預かってくれました。
教室を出ると、タルトちゃんがいいます。
「今年のもなんとか作れるようになりそうね」
きりんくんもうなずいて、わたし達に教えてくれます。
「早くいい薬を作れるようになれれば、それだけたくさん持って帰れるからお得だよ。
材料を1から揃えるのは大変だし」
その言葉にえびさんが付け加えます。
「だから欲しい薬があったら、自由時間に作って持って帰る人も多いの」
そのお話にわたしも思い当たりました。
「そういえば、お母さんもいつもそうしています」
今年も来る前に、作りたいお薬をメモしていました。
このお薬は、お仕事でもとっても役に立つそうです。
だからお家の分の他にも、たくさん作っています。
お母さんはもう14種類もレパートリーがあります。
だからそれを全部作らなくても、凄い数に見えるんだよね。
毎年、休み時間も忙しくしています。
その分、しばらくはお仕事前にお薬作りをしなくていいから、楽なんだって。
「魔法が入っている薬だから、時間が経っても新鮮なままだしね。
使う予定があるなら、来年来るまでに使う分を作っちゃってもいいんだ」
そうきりんくんが付け足しました。
「私も傷薬は作って帰ろう!」
そうタルトちゃんがいいます。
それにえびさんときりんくんもうなずきました。
「私も必要ね」
「僕も後で作ろう」
そうみんなが、わたし達がこれからがんばるお薬を選びます。
それを聞いて、つばめくんが思わずいいました。
「傷薬って、そんなに役に立つんだあ」
するとみんなうなずきます。
「うん。最初に教えてもらえるだけあって、傷薬はとっても役に立つんだから」
タルトちゃんの言葉に、えびさんもうなずきます。
「そう。教えてもらえる順番は、作り方が簡単かどうか、というだけではないのよね」
それからきりんくんが、難しい言い回しを使っていいます。
「普通にもあるからって、あなどること無かれ。
 普通の傷薬よりも、ずっとよく効くからね」
そう先輩達が揃っていいます。
そんな言葉を聞いて、わたし達はますますがんばる気持ちがわきました。
「そうなんだあ。
ぼく達もちゃんと作れるようになりたいね」
そうつばめくんは、目を輝かせます。
わたしもにっこりうなずきました。
「うん。明日からもがんばろうね」
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