不思議な夜の おひなさま
[chapter:5 みんなの大事な おひなさま]
「真美ー。もう起きなさいねー」
わたしと真美ちゃんは、そんな真美ちゃんのお母さんの声で目が覚めました。
「あれ?」
わたし達はいつの間にか、ちゃんとおふとんに入って眠っていたようです。
もう元気なお陽さまの光が入ってきています。
目を開けたらちょっとまぶしいくらいでした。
時計を見ると10時になっています。
真美ちゃんのお母さんは、階段の下から声をかけてくれたようです。
起き上がったわたしと真美ちゃんは、不思議さいっぱいの気持ちで顔を見合わせます。
「どうして?
わたし達、あの後ちゃんと戻ってきたんでしたっけ?」
そう首をかしげる真美ちゃんに、わたしも同じ顔をしてうなずきます。
「うん。覚えてないね」
これはもしかして、ポッコロさんの力なのかな?
妖精さんはいろんな不思議な力を持っていました。
その力でわたし達のこともおくってくれたのかもしれません。
それから真夜中に起きていたのに全然眠たくなくて、頭もすっきりしています。
これはあの出来事の前に、たくさん寝ておいたおかげかもしれないけどね。
どうなのかな?
でも考えてもわからないし、そういう疑問はひとまずおいておくことにしました。
それにそういうことよりも、わたし達の心はもう他のことでいっぱいです。
「それにしても…」
そうわたしと真美ちゃんは、2人揃っていい始めます。
あの出来事は、わたし達にとってはついさっきのことでした。
だから気持ちは、あの時のドキドキを持ったままです。
わたしも真美ちゃんも、とってもはずんだ声でいいます。
「おひなさま達と遊べたなんて、本当に夢みたいです」
真美ちゃんが、そう輝いた顔をします。
わたしはうなずきながら、自信を持った笑顔でこたえます。
「妖精さんが来ていたなんてね。
びっくりするようなお話だったけど、でも夢じゃないよ」
わたしの言葉に、真美ちゃんもしっかりうなずきました。
思い出すと楽しくって、2人で笑ってしまいます。
それから真美ちゃんは改まって、でもにっこり笑っていいました。
「みかんちゃん、本当にありがとうございました。
もう心配もなくなったし、とっても楽しかったです」
わたしもそんな真美ちゃんに、感謝の気持ちをお返しします。
「わたしもとっても素敵なことがわかって、来て良かったよ」
わたし達2人とも、がんばって調べてみて本当に良かったと思っていました。
そして午後に千枝ちゃんがやってきました。
報告する約束通りの時間です。
千枝ちゃんは昨日の夜は特に気になって、なかなか眠れなかったそうです。
このひな人形のことを、千枝ちゃんも一生懸命考えていたもんね。
それなのに大事な時にいられなかったんだから、本当に残念だったと思います。
だからできるだけ詳しくお話しました。
そんなわたし達2人のお話に、千枝ちゃんはやっぱりびっくりしました。
でも笑顔になってこたえます。
「へえ。そんな素敵な理由だったんだね。
わたしもそのポッコロさんに会いたかったな」
そういう千枝ちゃんに、わたしは前向きに答えます。
「ポッコロさんは毎年来てくれるみたいだから、これからきっと会えるよ。
わたしも、自分のひな人形のところに来てくれた時に会ってみたいなあ」
そう期待を込めていうと、千枝ちゃんも元気にこたえました。
「そうですね。
わたしのひな人形が動いているのを見られたら、感動するんだろうなあ」
そう2人で、その様子を想像してみます。
そんなわたし達に、真美ちゃんはにっこり笑っていいました。
「千枝ちゃんのも、みかんちゃんのおひなさまも、楽しそうだといいね」
そう幸せなおひなさまの持ち主の真美ちゃんがいうと、重みがあります。
だからわたしは元気にいいました。
「うん。おひなさま達がさびしいって思ったりしないように、わたし達も真美ちゃんを見習わなくちゃね」
千枝ちゃんもしっかりうなずきます。
「そうですね。
そして本当に、真美ちゃんのひな人形はすごかったんだね」
その言葉にわたし達3人は、またそのひな人形を見ました。
ポッコロさんがいっていた通り、おひなさま達はすっかり普通の顔に戻っていました。
こうすっかり元通りだと、本当にあれは夢だったみたいだね。
でも本当にあったことだって、わたしの心がいっています。
「動いている理由はきっと、怖いことじゃない」って予感もバッチリ合ってたし、これも大丈夫だよ。
真美ちゃん家のひな人形の立派さと、そして何よりも真美ちゃんとお母さんの2人がおひなさまを大事にしていたからこそわかった、本当に素敵な出来事でした。
「あら?またお雛さまを見てるの?」
その真美ちゃんのお母さんが、わたし達3人のところに来ます。
その顔を見たら、わたしは真美ちゃんのお母さんにも教えてあげたくなりました。
昨日はせっかくの機会だったのに、いろいろあって呼べなかったことがやっぱり気になっていたんです。
それに今度真美ちゃんのお母さんも、そんなおひなさま達に会える時があるかもしれないもんね。
ううん、こんなにひな人形を大事に思っているんだから、会ってほしいです。
そんな気持ちを込めていいました。
「このひな人形は、妖精さんも特別お気に入りなんですよ。
真美ちゃんとお母さんの2人がとっても大事に思ってくれているから、おひなさま達はとっても幸せなんだそうです」
わたしがそうあんまり正直にいうので、真美ちゃんと千枝ちゃんは慌てました。
「みかんちゃん⁉︎」
でもこの世界の不思議なことは、子どもだけのものじゃないからね。
そう思うわたしは、真美ちゃんのお母さんにも知ってほしいです。
だからわたしは、そんな真美ちゃん達の様子を気にしないで堂々としていました。
すると真美ちゃんのお母さんは、やっぱりこの言葉に不思議そうな顔をしました。
でもそれから、わたしをまっすぐに見て答えてくれます。
「そうなの?
お雛さま達が幸せだって思ってくれているなら、本当にうれしいわね」
そうにっこりいってからちょっと止まって、また続けます。
「魔法使いのみかんちゃんにそういわれると、本当に妖精が来てくれているような気がするわ。
私もその妖精を見かけられるといいのにね。
この雛人形について、好きな者同士、お話できたら楽しそうだもの」
真美ちゃんのお母さんなら、そううなずいてくれると思いました。
期待以上のお返事だったので、わたしは元気に答えます。
「妖精さんは、毎年来ているんですよ。
来年ひな人形を出したら、真美ちゃんと一緒に夜起きてみてください」
そういっても、今は信じられない気持ちの方が大きいと思います。
でも会えたら、全然違うよね。
今年ポッコロさんは、このひな人形には毎日のように会いに来ていました。
だから来年も、たくさん来てくれるんじゃないかな?
会える可能性は高そうです。
妖精さんだけじゃなくって、家のおひなさま達が動くのを見たら、すごく感動するよね。
そんな場面を、またわたしも見てみたいなあって思います。
真美ちゃんの時以上に、説明も必要だろうしね。
でもそれは、また頼まれた時は別として、やめておこうかな。
このひな人形を大事に思っている、真美ちゃんとお母さんの2人きりの方がいいと思います。
家族だからこその話もあるだろうしね。
本当に真美ちゃんのお母さんも、いつか元気なおひなさま達に会えるといいです。
「来年お母さんがこのお話を信じてくれていたら、案内してあげてね」って、真美ちゃんにお願いしました。
そしてわたしはそろそろ帰る時間だなって、真美ちゃんのお家を後にしました。
家に帰るとすぐに、わたしのおひなさまのところに行きます。
昨日の出来事を思い出すと、今までとは違う思いでね。
こうやってみると、おひなさま達にもちゃんと気持ちがあるように見えてきます。
いつもは動かなくても、お話できなくても、わたし達を見ているんだね。
そうわかると、今まで以上に話しかけたくなります。
それをしっかり聞いてくれているんだし、気持ちもあるならお友達のようなものだもんね。
そして昨日は、このわたしのおひなさまも動いていたということでした。
そういわれてみると、少し動いているようにも見えます。
でもそう教えてもらってなきゃ気付かないだろうから、わたしはまだまだです。
そうよくよくひな人形を見ているわたしに、お母さんが後ろから声をかけました。
「お帰り。
帰ってきてすぐにお雛さまのところに来たってことは、ポッコロさんに会えたの?」
そういわれて、わたしはびっくりして振り返りました。
「え?お母さん、ポッコロさんのことを知っていたの?」
よく考えてみれば、お母さんはたくさんお勉強しているし、こういうことには詳しいはずです。
だから知っていても、不思議じゃありません。
でも名前まで知っているってことは、会ったこともあるのかな?
そう考えた通りで、お母さんは余裕を持った笑顔でうなずきます。
「ええ。毎年会っているわよ。楽しい人よね。
『今年はみかんが、他の家でこのことを調べようとがんばっているから、会ったらよろしくね』っていっておいたけど」
そうだったんだあ。
そういえばポッコロさんはわたし達を見つけても、ちっとも驚いていませんでした。
あれはお母さんから聞いて、前もって知っていたからっていうのもあったのかな。
そう考えているわたしに、お母さんが付け加えます。
「本当に何にも知らなかったら、私があんなに明るく送り出したりしないわよ。
話を聞いた時に、すぐにピンと来たわ」
「じゃあ、何でそう教えてくれなかったの?」
わたしは不思議に思ってたずねます。
するとそれは、わたしのためにあえてそうしてくれていたのでした。
「自分で直接会ってみた方が、みかんにとってはおもしろいだろうと思ったからよ。
その様子だと、ちゃんと会えたみたいね」
そのお母さんの言葉に、わたしは大きくうなずきました。
そしてきらきらした笑顔になって答えます。
「うん。とっても楽しかったよ。
おひなさま達が毎年あんなふうに遊んでいるなんて、本当にびっくりしちゃった」
そう思い出しながらいいます。
それから少し深い気持ちになって続けました。
「わたしは魔法使いだからいろいろ知っているつもりだったけど、まだまだ知らない素敵なこともいっぱいあるんだね」
そんなわたしの答えに、お母さんは満足そうにうなずきました。
そして元気にウインクして、顔の横で右手の人差し指と親指を立てていいます。
「そうよ。私だって何でも知っているわけじゃないんだから。
こうやってわからないことがたくさんあるから、知らなかったものに出合った時にとってもおもしろいのよね」
「うん」
わたしは元気にうなずきます。
本当にそうでした。
わからなかったから、ポッコロさんや動くおひなさまを見た時に、あんなにびっくり、わくわくしたんだよね。
もしお母さんから前もって話を聞いていたとしたら、どうだったかな
わたしがまたそのことを真美ちゃんに教えたら、ああやって調べたりしなかったのかなあ?
うーん、きっとその妖精さんに会いたくなって、2人で会ってみようって話になったと思います。
そして初めて見るものだから、わくわくはしたと思います。
でもそれは、全然予想が付かない時のドキドキとは違うもんね。
そう自分で見つけて良かったです。
さすがお母さんだね。
そしてこれからもたくさん、あんな気持ちを味わっていけるんだね。
だったら、色々知りながら大人になっていくのも楽しみです。
お母さんはひな人形を見ながら、そう考えているわたしにいいました。
「じゃあ今年も楽しそうに遊んでいたこのお雛さま達と、明日は楽しくお祝いしましょうね」
その言葉に、わたしは張り切って聞き返します。
「本当におひなさま達、楽しそうだった?」
ポッコロさんのお話を聞いてから、それがとっても気になっていたんです。
真美ちゃん家のはとっても幸せそうだけど、わたしのはどうなのかなあって。
わたしは大事に思っていたけど、それをおひなさま達がどう思っているのかはわからないもんね。
するとお母さんは、にっこりうなずいてくれました。
「もちろん。みかんだってよくお雛さまをながめているし、大事に思っているでしょ?
毎年元気で、楽しそうにしているわよ」
そう聞いたら安心して、とってもうれしくなりました。
良かったあ。
うん、わたしもこのおひなさまが大好きです。
その気持ちがちゃんと、おひなさま達に伝わっているんだね。
そうわかったわたしは、元気にいいます。
「そっかあ。
じゃあ明日のおひな祭りは、わたしとお母さんとおひなさま達と、家族みんなで仲良くお祝いしようね」
今年はこういうことがわかった記念に、今までで1番楽しいパーティーにしたいです。
そのために、わたしも色々考えようっと。
明日学校から帰ってくるのが、楽しみです。
その前に月曜日学校に行ったらすぐに、クラスのみんなに約束のご報告をしました。
みんな心配してくれていたし、どういうことかも気になっていたよね。
それにぜひたくさんの人に教えてあげたい、いいことだもん。
張り切ってわたしがお話すると、やっぱり女の子はみんな大喜びです。
「ええっ!?そんな妖精さんがいるんだ」
「家にも、そのポッコロさんの来た日があったんだー」
そうとっても盛り上がりました。
お話するわたしもちょっと得意気で、幸せな気分です。
時々聞かれる正くんからの質問にも、元気に答えます。
「だからね、ちっとも怖いことはなかったの。
それどころかとっても楽しかったよ」
わたしがそうにっこりいうと、みんなほっとしたようでした。
「そうか。良かった」
そう高志くんがほーっと息をつきました。
特に高志くんはそうやってよく気にかけてくれる、優しいお隣さんです。
いつもの感謝の気持ちも込めて、わたしは心配ないよって元気に笑い返しました。
話し終わると、みゆきちゃんがきらきら輝いた顔でいいます。
「さすがみかんちゃんの予想通り、本当に素敵なことだったね。
ひな人形みんなを妖精さんが動かしているなんて、とっても感動的だよ。
そしてわたしが憧れていた妖精が、そんな近くに来ていたんだね」
特にみゆきちゃんは、魔法使いや妖精などが大好きなんです。
だからうれしい気持ちが、誰よりも大きかったみたいだね。
そしてその言葉に、他の女の子達もうなずきます。
「そうだよね。
妖精って、わたし達にとっては幻のような存在だったもんね。
それが実は毎年自分の家に来てくれていたなんて、すごいよ」
美穂ちゃんの言葉に、そうみんなでうんうんといっています。
妖精さんのことはしっかり知っていたわたしも、会ったのは今回が初めてでした。
それに家に来てくれていたことは知らなかったから、びっくりしました。
だからわたしも、みんなと似たような思いです。
やっぱり妖精さんは誰にとっても、会ってみたい素敵な存在なんだね。
そして会ったことはなくても、意外と近くにいるものなんだね。
そんな話をしていると、柾紀くんが残念そうにいいました。
「女の子はいいなあ。
ぼくの家は女の子の姉妹がいなくてひな人形はないから、そんな妖精が来てないってことだもんね。
ぼくも会ってみたいのに」
その言葉にわたしも考えます。
うーん、そうだね。
女の子がいない家には来ないっていうのは、確かに不公平です。
男の子には何かなかったかなあ?
そう考えてみて、思い出しました。
女の子にとってのおひな祭りとそっくりな、子どもの日のことをです。
人差し指を立てて、それをいってみます。
「そうだ!男の子の家には鯉のぼりがあるよね。
もしかしたらそれにも、何か不思議なことがあるかもしれないよ」
わたしは知らなくても、不思議な楽しいことはまだまだたくさんあるというお話でした。
だからそういう他のものにも、きっとね。
そういうと、柾紀くんはわくわくした顔になりました。
「そうかあ。ぼくも探してみようっと」
「何かわかったら、わたしにも教えてね」
わたしはそう付け加えます。
柾紀くんは張り切ってうなずいてくれました。
本当に何かあったらうれしいね。
それに出会うにはまず、大切に思う気持ちが何よりの近道みたいです。
だから柾紀くんが本当に鯉のぼりを大切に思っていたら、見つけられるかもしれません。
そうまた不思議な相談をされたら、みかんはまた張り切っちゃうよ。
そうみーんな解決した今日が、おひな祭りの3月3日です。
こんなに清々しくって、そしてうきうきした気分で迎えられて、とってもうれしいです。
みんなそれぞれのお祝いの仕方があるんだろうね。
真美ちゃん家は、どんなお祝いをするのかなあ?
わたしは昨日お話した通り、お家でお母さんとお祝いします。
今日はわたしのおひなさまとお祝いしたいもんね。
クラスのみんなも、自分のおひなさまと大切に過ごそうって思っているみたいです。
おひなさま達、とっても喜ぶよ。
みんな、いい日になるといいね。
そして明日は、ももちゃんと桜ちゃんのお家でするパーティーに行く約束もしています。
みんなでお祝いするのも楽しいよね。
ももちゃん家のおひなさまは、どうかな?
ひな人形をできるだけ長く出しておいてあげようって、考えているお家だもん。
そのおひなさま達も幸せだと思います。
そんなももちゃんと桜ちゃんのひな人形に会うのも楽しみです。
みんなも、楽しいおひな祭りを過ごしてね。
そしておひなさま達がみんなうれしい気分になれますように。
みかんからのお祈りです。
それからみんながとっても大切に思っているものがあったら、ずっと思い続けていてね。
そうしたらわたしも知らない不思議なことに、あなたが出会えるかもしれないよ。
みんなで、不思議で素敵なことをいっぱい見つけていこうね!
おしまい
2006年1~7月制作
「真美ー。もう起きなさいねー」
わたしと真美ちゃんは、そんな真美ちゃんのお母さんの声で目が覚めました。
「あれ?」
わたし達はいつの間にか、ちゃんとおふとんに入って眠っていたようです。
もう元気なお陽さまの光が入ってきています。
目を開けたらちょっとまぶしいくらいでした。
時計を見ると10時になっています。
真美ちゃんのお母さんは、階段の下から声をかけてくれたようです。
起き上がったわたしと真美ちゃんは、不思議さいっぱいの気持ちで顔を見合わせます。
「どうして?
わたし達、あの後ちゃんと戻ってきたんでしたっけ?」
そう首をかしげる真美ちゃんに、わたしも同じ顔をしてうなずきます。
「うん。覚えてないね」
これはもしかして、ポッコロさんの力なのかな?
妖精さんはいろんな不思議な力を持っていました。
その力でわたし達のこともおくってくれたのかもしれません。
それから真夜中に起きていたのに全然眠たくなくて、頭もすっきりしています。
これはあの出来事の前に、たくさん寝ておいたおかげかもしれないけどね。
どうなのかな?
でも考えてもわからないし、そういう疑問はひとまずおいておくことにしました。
それにそういうことよりも、わたし達の心はもう他のことでいっぱいです。
「それにしても…」
そうわたしと真美ちゃんは、2人揃っていい始めます。
あの出来事は、わたし達にとってはついさっきのことでした。
だから気持ちは、あの時のドキドキを持ったままです。
わたしも真美ちゃんも、とってもはずんだ声でいいます。
「おひなさま達と遊べたなんて、本当に夢みたいです」
真美ちゃんが、そう輝いた顔をします。
わたしはうなずきながら、自信を持った笑顔でこたえます。
「妖精さんが来ていたなんてね。
びっくりするようなお話だったけど、でも夢じゃないよ」
わたしの言葉に、真美ちゃんもしっかりうなずきました。
思い出すと楽しくって、2人で笑ってしまいます。
それから真美ちゃんは改まって、でもにっこり笑っていいました。
「みかんちゃん、本当にありがとうございました。
もう心配もなくなったし、とっても楽しかったです」
わたしもそんな真美ちゃんに、感謝の気持ちをお返しします。
「わたしもとっても素敵なことがわかって、来て良かったよ」
わたし達2人とも、がんばって調べてみて本当に良かったと思っていました。
そして午後に千枝ちゃんがやってきました。
報告する約束通りの時間です。
千枝ちゃんは昨日の夜は特に気になって、なかなか眠れなかったそうです。
このひな人形のことを、千枝ちゃんも一生懸命考えていたもんね。
それなのに大事な時にいられなかったんだから、本当に残念だったと思います。
だからできるだけ詳しくお話しました。
そんなわたし達2人のお話に、千枝ちゃんはやっぱりびっくりしました。
でも笑顔になってこたえます。
「へえ。そんな素敵な理由だったんだね。
わたしもそのポッコロさんに会いたかったな」
そういう千枝ちゃんに、わたしは前向きに答えます。
「ポッコロさんは毎年来てくれるみたいだから、これからきっと会えるよ。
わたしも、自分のひな人形のところに来てくれた時に会ってみたいなあ」
そう期待を込めていうと、千枝ちゃんも元気にこたえました。
「そうですね。
わたしのひな人形が動いているのを見られたら、感動するんだろうなあ」
そう2人で、その様子を想像してみます。
そんなわたし達に、真美ちゃんはにっこり笑っていいました。
「千枝ちゃんのも、みかんちゃんのおひなさまも、楽しそうだといいね」
そう幸せなおひなさまの持ち主の真美ちゃんがいうと、重みがあります。
だからわたしは元気にいいました。
「うん。おひなさま達がさびしいって思ったりしないように、わたし達も真美ちゃんを見習わなくちゃね」
千枝ちゃんもしっかりうなずきます。
「そうですね。
そして本当に、真美ちゃんのひな人形はすごかったんだね」
その言葉にわたし達3人は、またそのひな人形を見ました。
ポッコロさんがいっていた通り、おひなさま達はすっかり普通の顔に戻っていました。
こうすっかり元通りだと、本当にあれは夢だったみたいだね。
でも本当にあったことだって、わたしの心がいっています。
「動いている理由はきっと、怖いことじゃない」って予感もバッチリ合ってたし、これも大丈夫だよ。
真美ちゃん家のひな人形の立派さと、そして何よりも真美ちゃんとお母さんの2人がおひなさまを大事にしていたからこそわかった、本当に素敵な出来事でした。
「あら?またお雛さまを見てるの?」
その真美ちゃんのお母さんが、わたし達3人のところに来ます。
その顔を見たら、わたしは真美ちゃんのお母さんにも教えてあげたくなりました。
昨日はせっかくの機会だったのに、いろいろあって呼べなかったことがやっぱり気になっていたんです。
それに今度真美ちゃんのお母さんも、そんなおひなさま達に会える時があるかもしれないもんね。
ううん、こんなにひな人形を大事に思っているんだから、会ってほしいです。
そんな気持ちを込めていいました。
「このひな人形は、妖精さんも特別お気に入りなんですよ。
真美ちゃんとお母さんの2人がとっても大事に思ってくれているから、おひなさま達はとっても幸せなんだそうです」
わたしがそうあんまり正直にいうので、真美ちゃんと千枝ちゃんは慌てました。
「みかんちゃん⁉︎」
でもこの世界の不思議なことは、子どもだけのものじゃないからね。
そう思うわたしは、真美ちゃんのお母さんにも知ってほしいです。
だからわたしは、そんな真美ちゃん達の様子を気にしないで堂々としていました。
すると真美ちゃんのお母さんは、やっぱりこの言葉に不思議そうな顔をしました。
でもそれから、わたしをまっすぐに見て答えてくれます。
「そうなの?
お雛さま達が幸せだって思ってくれているなら、本当にうれしいわね」
そうにっこりいってからちょっと止まって、また続けます。
「魔法使いのみかんちゃんにそういわれると、本当に妖精が来てくれているような気がするわ。
私もその妖精を見かけられるといいのにね。
この雛人形について、好きな者同士、お話できたら楽しそうだもの」
真美ちゃんのお母さんなら、そううなずいてくれると思いました。
期待以上のお返事だったので、わたしは元気に答えます。
「妖精さんは、毎年来ているんですよ。
来年ひな人形を出したら、真美ちゃんと一緒に夜起きてみてください」
そういっても、今は信じられない気持ちの方が大きいと思います。
でも会えたら、全然違うよね。
今年ポッコロさんは、このひな人形には毎日のように会いに来ていました。
だから来年も、たくさん来てくれるんじゃないかな?
会える可能性は高そうです。
妖精さんだけじゃなくって、家のおひなさま達が動くのを見たら、すごく感動するよね。
そんな場面を、またわたしも見てみたいなあって思います。
真美ちゃんの時以上に、説明も必要だろうしね。
でもそれは、また頼まれた時は別として、やめておこうかな。
このひな人形を大事に思っている、真美ちゃんとお母さんの2人きりの方がいいと思います。
家族だからこその話もあるだろうしね。
本当に真美ちゃんのお母さんも、いつか元気なおひなさま達に会えるといいです。
「来年お母さんがこのお話を信じてくれていたら、案内してあげてね」って、真美ちゃんにお願いしました。
そしてわたしはそろそろ帰る時間だなって、真美ちゃんのお家を後にしました。
家に帰るとすぐに、わたしのおひなさまのところに行きます。
昨日の出来事を思い出すと、今までとは違う思いでね。
こうやってみると、おひなさま達にもちゃんと気持ちがあるように見えてきます。
いつもは動かなくても、お話できなくても、わたし達を見ているんだね。
そうわかると、今まで以上に話しかけたくなります。
それをしっかり聞いてくれているんだし、気持ちもあるならお友達のようなものだもんね。
そして昨日は、このわたしのおひなさまも動いていたということでした。
そういわれてみると、少し動いているようにも見えます。
でもそう教えてもらってなきゃ気付かないだろうから、わたしはまだまだです。
そうよくよくひな人形を見ているわたしに、お母さんが後ろから声をかけました。
「お帰り。
帰ってきてすぐにお雛さまのところに来たってことは、ポッコロさんに会えたの?」
そういわれて、わたしはびっくりして振り返りました。
「え?お母さん、ポッコロさんのことを知っていたの?」
よく考えてみれば、お母さんはたくさんお勉強しているし、こういうことには詳しいはずです。
だから知っていても、不思議じゃありません。
でも名前まで知っているってことは、会ったこともあるのかな?
そう考えた通りで、お母さんは余裕を持った笑顔でうなずきます。
「ええ。毎年会っているわよ。楽しい人よね。
『今年はみかんが、他の家でこのことを調べようとがんばっているから、会ったらよろしくね』っていっておいたけど」
そうだったんだあ。
そういえばポッコロさんはわたし達を見つけても、ちっとも驚いていませんでした。
あれはお母さんから聞いて、前もって知っていたからっていうのもあったのかな。
そう考えているわたしに、お母さんが付け加えます。
「本当に何にも知らなかったら、私があんなに明るく送り出したりしないわよ。
話を聞いた時に、すぐにピンと来たわ」
「じゃあ、何でそう教えてくれなかったの?」
わたしは不思議に思ってたずねます。
するとそれは、わたしのためにあえてそうしてくれていたのでした。
「自分で直接会ってみた方が、みかんにとってはおもしろいだろうと思ったからよ。
その様子だと、ちゃんと会えたみたいね」
そのお母さんの言葉に、わたしは大きくうなずきました。
そしてきらきらした笑顔になって答えます。
「うん。とっても楽しかったよ。
おひなさま達が毎年あんなふうに遊んでいるなんて、本当にびっくりしちゃった」
そう思い出しながらいいます。
それから少し深い気持ちになって続けました。
「わたしは魔法使いだからいろいろ知っているつもりだったけど、まだまだ知らない素敵なこともいっぱいあるんだね」
そんなわたしの答えに、お母さんは満足そうにうなずきました。
そして元気にウインクして、顔の横で右手の人差し指と親指を立てていいます。
「そうよ。私だって何でも知っているわけじゃないんだから。
こうやってわからないことがたくさんあるから、知らなかったものに出合った時にとってもおもしろいのよね」
「うん」
わたしは元気にうなずきます。
本当にそうでした。
わからなかったから、ポッコロさんや動くおひなさまを見た時に、あんなにびっくり、わくわくしたんだよね。
もしお母さんから前もって話を聞いていたとしたら、どうだったかな
わたしがまたそのことを真美ちゃんに教えたら、ああやって調べたりしなかったのかなあ?
うーん、きっとその妖精さんに会いたくなって、2人で会ってみようって話になったと思います。
そして初めて見るものだから、わくわくはしたと思います。
でもそれは、全然予想が付かない時のドキドキとは違うもんね。
そう自分で見つけて良かったです。
さすがお母さんだね。
そしてこれからもたくさん、あんな気持ちを味わっていけるんだね。
だったら、色々知りながら大人になっていくのも楽しみです。
お母さんはひな人形を見ながら、そう考えているわたしにいいました。
「じゃあ今年も楽しそうに遊んでいたこのお雛さま達と、明日は楽しくお祝いしましょうね」
その言葉に、わたしは張り切って聞き返します。
「本当におひなさま達、楽しそうだった?」
ポッコロさんのお話を聞いてから、それがとっても気になっていたんです。
真美ちゃん家のはとっても幸せそうだけど、わたしのはどうなのかなあって。
わたしは大事に思っていたけど、それをおひなさま達がどう思っているのかはわからないもんね。
するとお母さんは、にっこりうなずいてくれました。
「もちろん。みかんだってよくお雛さまをながめているし、大事に思っているでしょ?
毎年元気で、楽しそうにしているわよ」
そう聞いたら安心して、とってもうれしくなりました。
良かったあ。
うん、わたしもこのおひなさまが大好きです。
その気持ちがちゃんと、おひなさま達に伝わっているんだね。
そうわかったわたしは、元気にいいます。
「そっかあ。
じゃあ明日のおひな祭りは、わたしとお母さんとおひなさま達と、家族みんなで仲良くお祝いしようね」
今年はこういうことがわかった記念に、今までで1番楽しいパーティーにしたいです。
そのために、わたしも色々考えようっと。
明日学校から帰ってくるのが、楽しみです。
その前に月曜日学校に行ったらすぐに、クラスのみんなに約束のご報告をしました。
みんな心配してくれていたし、どういうことかも気になっていたよね。
それにぜひたくさんの人に教えてあげたい、いいことだもん。
張り切ってわたしがお話すると、やっぱり女の子はみんな大喜びです。
「ええっ!?そんな妖精さんがいるんだ」
「家にも、そのポッコロさんの来た日があったんだー」
そうとっても盛り上がりました。
お話するわたしもちょっと得意気で、幸せな気分です。
時々聞かれる正くんからの質問にも、元気に答えます。
「だからね、ちっとも怖いことはなかったの。
それどころかとっても楽しかったよ」
わたしがそうにっこりいうと、みんなほっとしたようでした。
「そうか。良かった」
そう高志くんがほーっと息をつきました。
特に高志くんはそうやってよく気にかけてくれる、優しいお隣さんです。
いつもの感謝の気持ちも込めて、わたしは心配ないよって元気に笑い返しました。
話し終わると、みゆきちゃんがきらきら輝いた顔でいいます。
「さすがみかんちゃんの予想通り、本当に素敵なことだったね。
ひな人形みんなを妖精さんが動かしているなんて、とっても感動的だよ。
そしてわたしが憧れていた妖精が、そんな近くに来ていたんだね」
特にみゆきちゃんは、魔法使いや妖精などが大好きなんです。
だからうれしい気持ちが、誰よりも大きかったみたいだね。
そしてその言葉に、他の女の子達もうなずきます。
「そうだよね。
妖精って、わたし達にとっては幻のような存在だったもんね。
それが実は毎年自分の家に来てくれていたなんて、すごいよ」
美穂ちゃんの言葉に、そうみんなでうんうんといっています。
妖精さんのことはしっかり知っていたわたしも、会ったのは今回が初めてでした。
それに家に来てくれていたことは知らなかったから、びっくりしました。
だからわたしも、みんなと似たような思いです。
やっぱり妖精さんは誰にとっても、会ってみたい素敵な存在なんだね。
そして会ったことはなくても、意外と近くにいるものなんだね。
そんな話をしていると、柾紀くんが残念そうにいいました。
「女の子はいいなあ。
ぼくの家は女の子の姉妹がいなくてひな人形はないから、そんな妖精が来てないってことだもんね。
ぼくも会ってみたいのに」
その言葉にわたしも考えます。
うーん、そうだね。
女の子がいない家には来ないっていうのは、確かに不公平です。
男の子には何かなかったかなあ?
そう考えてみて、思い出しました。
女の子にとってのおひな祭りとそっくりな、子どもの日のことをです。
人差し指を立てて、それをいってみます。
「そうだ!男の子の家には鯉のぼりがあるよね。
もしかしたらそれにも、何か不思議なことがあるかもしれないよ」
わたしは知らなくても、不思議な楽しいことはまだまだたくさんあるというお話でした。
だからそういう他のものにも、きっとね。
そういうと、柾紀くんはわくわくした顔になりました。
「そうかあ。ぼくも探してみようっと」
「何かわかったら、わたしにも教えてね」
わたしはそう付け加えます。
柾紀くんは張り切ってうなずいてくれました。
本当に何かあったらうれしいね。
それに出会うにはまず、大切に思う気持ちが何よりの近道みたいです。
だから柾紀くんが本当に鯉のぼりを大切に思っていたら、見つけられるかもしれません。
そうまた不思議な相談をされたら、みかんはまた張り切っちゃうよ。
そうみーんな解決した今日が、おひな祭りの3月3日です。
こんなに清々しくって、そしてうきうきした気分で迎えられて、とってもうれしいです。
みんなそれぞれのお祝いの仕方があるんだろうね。
真美ちゃん家は、どんなお祝いをするのかなあ?
わたしは昨日お話した通り、お家でお母さんとお祝いします。
今日はわたしのおひなさまとお祝いしたいもんね。
クラスのみんなも、自分のおひなさまと大切に過ごそうって思っているみたいです。
おひなさま達、とっても喜ぶよ。
みんな、いい日になるといいね。
そして明日は、ももちゃんと桜ちゃんのお家でするパーティーに行く約束もしています。
みんなでお祝いするのも楽しいよね。
ももちゃん家のおひなさまは、どうかな?
ひな人形をできるだけ長く出しておいてあげようって、考えているお家だもん。
そのおひなさま達も幸せだと思います。
そんなももちゃんと桜ちゃんのひな人形に会うのも楽しみです。
みんなも、楽しいおひな祭りを過ごしてね。
そしておひなさま達がみんなうれしい気分になれますように。
みかんからのお祈りです。
それからみんながとっても大切に思っているものがあったら、ずっと思い続けていてね。
そうしたらわたしも知らない不思議なことに、あなたが出会えるかもしれないよ。
みんなで、不思議で素敵なことをいっぱい見つけていこうね!
おしまい
2006年1~7月制作