不思議な夜の おひなさま
[chapter:1おひなさまを出す日にち]
わたしは並べ終わったおひなさまを見て、うきうきしています。
今日は2月22日。もうすぐおひな祭りです。
第4土曜日で学校がお休みの今日、しまってあったおひなさまをお母さんと出しました。
わたしの家のおひなさまは、五人囃子までの3段です。
クリスマスツリーとか、こうして1年のうち少ししか見られないおひなさま達に会えた時は、すごくうれしくなります。
こんなわたしは白石みかんです。10歳の小学4年生だよ。
そして生まれた時から魔法使いです。
魔法使いは、みんなを幸せにできるように、神様から特別な力をもらっているんだよ。
魔法には種類があって、そのかけ方を覚えた種類のは使えるようになります。
小学校の1年生にほうきで飛ぶ練習から始めて、2年生になったらペンダントなどの魔法のアイテムの使い方を教えてもらえます。
だから生まれつきといっても、わたしはちゃんと魔法を使うようになってからまだ3年です。
魔法の方はまだまだだけど、一生懸命がんばってます。
「おひなさま達にあげるもの、買いに行きましょう」
そう後ろからお母さんに声をかけられて、わたしは張り切って返事をしました。
「はーい!」
そうしてお買い物に出掛けて、おひな祭り用に並んでいるお菓子を買ってきました。
ここは雪がたくさん降る地方だから、外にはまだ少し雪が残っています。
でもお菓子をおひなさまの前に並べながら、わたしはもう春になったような気分です。
月曜日学校に行くと、クラスのお友達もほとんど、このお休みの間におひなさまを出したそうです。
それで、その話題になりました。
「もう、ちょうど1週間後だもんね」
麻緒ちゃんの言葉に、わたしはうなずいていいました。
「うん。早いね。もう春になるんだね」
そうおひなさまを出した時の気分を思い出します。
すると秋子ちゃんがもうちょっと先の、そしてもっとしみじみすることをいいました。
「あと1ヶ月で、わたし達も5年生か。
クラスは同じだから、そんなには変わらないと思うけどね」
その言葉にクラスのみんながはっとします。
わたし達の雪湖小学校は、4年生になる時に1回クラス替えをします。
今年からこのクラスになったので、来年も今のみんなと一緒です。
でもわたしも高学年になるのかあ。
そう考えても、あんまり実感がわかなくて不思議な気分です。
でも健治くんは元気に笑っていいました。
「今から先のことを考えてなくていいって。
4年生のうちは、4年生の気分でいなくちゃ」
その言葉に優香里ちゃんがうなずきます。
「そうだね。今は今で楽しくいようよ」
そうこの話が終わったところで、みゆきちゃんがおひなさまの方に戻しました。
「それにしても、おひなさまって1番出ている時期が短いよね。
今年も大体のみんなは、10日間ってことだもん。
クリスマスツリーだったら、20日くらいあるのにね」
その言葉にみんなうなずきます。
わたしが出した日から3月3日まで指折り数えたら、本当にぴったり10日でした。
うーん、本当に短いよね。
「2月はバレンタインデーがあるから、その後じゃないと、ひな祭りの気分にならないからね」
そう美穂ちゃんが納得な意見をいったので、わたしは考えてみました。
「じゃあ遅くまで出していればいいんじゃないかな?
3学期の終わる頃までとか」
そうしたら、お祝いは終わっているけど、おひなさまを長く出しておいてあげられるよね。
だって1年間のうち10日以外は押し入れの中なんて、あんまり寂しいから。
でも彩ちゃんは首を振りました。
「それはだめだよ、みかんちゃん。
おひなさまはひな祭りが終わったらすぐにしまわないと」
よくそう聞くけど、わけは知らなかったのでたずねます。
「どうして?」
すると彩ちゃんは首をひねりました。
「あれ?どうしてだったかな?聞いたことあるんだけど…」
女の子みんなでわからずに困っていると、修くんがひょっこり現れて教えてくれました。
「ぼく知ってるよ。家のウエイトレスのお姉さんに教えてもらったんだ。
結婚が遅くなるんだって」
修くん家は喫茶店をしていて、修くんもよくお店に行っているそうです。
そこで働いているお姉さんに聞いたんだね。
その言葉を聞くと、みんな困りながらも、遅くまで出しておくことをあきらめたようです。
「うーん。それは困るな。ちゃんと結婚したいもん。
おひなさまには悪いけど、ちゃんとしまおう」
でもわたしは、それくらいなら大丈夫かなって思いました。
「ちょっと遅くなるくらいなら、出しておいてもいいかなあ」
結婚できなくなるっていわれたら、やっぱりわたしも困ります。
大人になってもずうっと1人だったら寂しいもんね。
ううん、魔法使いは必ず子どもがもらえるから、1人ってことはないんでした。
けどおじいちゃんとおばあちゃんみたいに、ずっと仲良くしていける人にもいてほしいです。
でもそういうんじゃなくて遅れるくらいなら、おひなさまを外に出しておいてあげた方がいいな。
わたしがそう考えると、みんなに必死に止められました。
「だめだめ。ちょっとどころか、何十年かもしれないよ!」
あ、確かにどれくらいかはわからないもんね。
美穂ちゃんに続いて、秋子ちゃんにも落ち着いていわれました。
「それに数年だったとしても、毎年続けていけば、遅れが増えていくかもしれないよ」
「ああ、そっかあ」そうだね。今年だけの話じゃなくて、これから毎年ずっとあるもんね。
2人の話両方ともに納得です。
「そうそう。みかんちゃんは人気あるから、ずっと1人でいるってことはないと思うけど、用心に越したことはないからね」
そう彩ちゃんにも付け加えられました。
なんだかみんな真剣です。
わたしはそんなみんなにちょっとびっくりしながらも、うなずきました。
「うん、ちゃんとしまうね」
こうしておひなさまを長く出しておく計画は、なしになりました。
するとももちゃんと桜ちゃんが、わたしとは逆のことをいいました。
「わたし達の家は、今年は15日に、家に帰ってから出したよ。
毎年バレンタインデーの次の土曜日に出すことにしてるんだ。
そうすれば安心して長く出しておけるでしょ」
バレンタインデーが終わった、本当にすぐ後に出してるんだね。
その日付から指折り数えてみたす。
「15日も入れて数えると、20日間になるね。
だったらクリスマスツリーと同じだよ」
わたしがぱっと笑顔になると、桜ちゃんがいいました。
「ね、いいでしょ。みかんちゃん。
みんなもそうすれば問題ないんじゃない?」
「うん。来年からそうしよう」
そうみんなでうなずきました。
これで問題は解決です。
そんな時、わたしはお呼びがかかりました。
「みかんちゃん、廊下から呼ばれてるよ」
そう港くんの言葉に教室のドアを見ると、前の扉に2人の女の子がいました。
2人とも1年生くらいに見えます。
「きっと『魔法使いへの頼みごと』だね」
そうかっこよくいう麻緒ちゃんの言葉にうなずきます。
「うん、そうだね」
わたしが魔法使いだということはみんなが知っていることなので、時々頼みごとをされます。
わたしが解決できないこともたくさんあるけど、魔法使いは人助けがお仕事なので、できるかぎりがんばろうと思ってるよ。
こういう時、もっとたくさんの魔法が使えたらいいなあって思います。
「はーい」
わたしは前のドアに駆けていきました。
廊下に出ていくと、その2人が自己紹介をしてくれました。
「こんにちは。はじめまして。わたし、1年2組の三条真美です」
「こんにちは。同じ1年2組の沢田千枝です。
今日はぜひみかんちゃんに相談したいことがあってきました。
ね、真美ちゃん」
めがねをかけている千枝ちゃんが、長い髪の真美ちゃんにいいます。
真美ちゃんはうなずきました。
「そうなんだ。はじめまして。みかんです。
相談したいことってなあに?できる限りお手伝いするよ」
わたしがいつものようにそういうと、真美ちゃんが話してくれました。
「もうすぐおひな祭りだから、わたしの家、いつものようにおひなさまを出したの」
今みんなと話したばかりのことなので、余計まじめにわたしは聞きます。
「わたしおひなさまが大好きで、毎日朝起きたらあいさつしてるんです。
他にもよくおひなさまに会いに行くけど、不思議なのはその朝最初に行った時なの。
出してからずっと1週間くらい、なんだかおひなさま達お人形の場所が毎日動いているみたいなんです。
その時にちゃんと元通りに直すんだけど、次の日にはまた少し動いてるの。
わたしの家のおひなさま、もしかして夜に動いているのかな?
それをぜひ魔法使いのみかんちゃんに、教えてもらおうと思ったんです」
「ひな人形って動いたりするんですか?」
真美ちゃんの説明の後、千枝ちゃんにそう聞かれて、わたしはまじめに考えました。
「うーん。普通おひなさまは動いたりしないよねえ」
本当にとっても不思議なお話です。
魔法使いのわたしも、そういう話は聞いたことないなあ。
──普通はないけど、でも毎日動いているなんて何かありそうだよね。
確かめてみなくっちゃ。
わたしはそう考えて聞いてみました。
「じゃあその真美ちゃん家のおひなさま、見に行ってもいい?見たら何かわかるかも」
魔法はそんなに使えなくても、魔法使いとして不思議なものがわかる力はあるからね。
もし不思議な物だったら、お話とかできるかもしれません。
すると真美ちゃんはぱっと笑顔になりました。
「うん。ありがとうございます!じゃあ今日、家に来てください」
「よかったね!真美ちゃん。じゃあ帰りにまた来ます」
そういって2人はうれしそうに、トタトタと走って帰っていきました。
そんな真美ちゃん達を見送りながら、考えます。
うーん、動くおひなさまかあ。やっぱり普通のお人形じゃないのかなあ。
物というのも実は、使われることによって心を持ってきます。
その物の心というのが普通はとても弱いから、300年は生きた魔法使いがやっと、心の強いものからわかるようになっていくそうです。
でもたまに普通の人でもわかるくらい、とても強い心を持った物もいます。
真美ちゃん家のおひなさまはそれなのかな?
…まだ全然わからないけど、悪い理由じゃなさそうだなあって予感がします。
なんだか今回のお仕事はとってもわくわくします」
わたしは並べ終わったおひなさまを見て、うきうきしています。
今日は2月22日。もうすぐおひな祭りです。
第4土曜日で学校がお休みの今日、しまってあったおひなさまをお母さんと出しました。
わたしの家のおひなさまは、五人囃子までの3段です。
クリスマスツリーとか、こうして1年のうち少ししか見られないおひなさま達に会えた時は、すごくうれしくなります。
こんなわたしは白石みかんです。10歳の小学4年生だよ。
そして生まれた時から魔法使いです。
魔法使いは、みんなを幸せにできるように、神様から特別な力をもらっているんだよ。
魔法には種類があって、そのかけ方を覚えた種類のは使えるようになります。
小学校の1年生にほうきで飛ぶ練習から始めて、2年生になったらペンダントなどの魔法のアイテムの使い方を教えてもらえます。
だから生まれつきといっても、わたしはちゃんと魔法を使うようになってからまだ3年です。
魔法の方はまだまだだけど、一生懸命がんばってます。
「おひなさま達にあげるもの、買いに行きましょう」
そう後ろからお母さんに声をかけられて、わたしは張り切って返事をしました。
「はーい!」
そうしてお買い物に出掛けて、おひな祭り用に並んでいるお菓子を買ってきました。
ここは雪がたくさん降る地方だから、外にはまだ少し雪が残っています。
でもお菓子をおひなさまの前に並べながら、わたしはもう春になったような気分です。
月曜日学校に行くと、クラスのお友達もほとんど、このお休みの間におひなさまを出したそうです。
それで、その話題になりました。
「もう、ちょうど1週間後だもんね」
麻緒ちゃんの言葉に、わたしはうなずいていいました。
「うん。早いね。もう春になるんだね」
そうおひなさまを出した時の気分を思い出します。
すると秋子ちゃんがもうちょっと先の、そしてもっとしみじみすることをいいました。
「あと1ヶ月で、わたし達も5年生か。
クラスは同じだから、そんなには変わらないと思うけどね」
その言葉にクラスのみんながはっとします。
わたし達の雪湖小学校は、4年生になる時に1回クラス替えをします。
今年からこのクラスになったので、来年も今のみんなと一緒です。
でもわたしも高学年になるのかあ。
そう考えても、あんまり実感がわかなくて不思議な気分です。
でも健治くんは元気に笑っていいました。
「今から先のことを考えてなくていいって。
4年生のうちは、4年生の気分でいなくちゃ」
その言葉に優香里ちゃんがうなずきます。
「そうだね。今は今で楽しくいようよ」
そうこの話が終わったところで、みゆきちゃんがおひなさまの方に戻しました。
「それにしても、おひなさまって1番出ている時期が短いよね。
今年も大体のみんなは、10日間ってことだもん。
クリスマスツリーだったら、20日くらいあるのにね」
その言葉にみんなうなずきます。
わたしが出した日から3月3日まで指折り数えたら、本当にぴったり10日でした。
うーん、本当に短いよね。
「2月はバレンタインデーがあるから、その後じゃないと、ひな祭りの気分にならないからね」
そう美穂ちゃんが納得な意見をいったので、わたしは考えてみました。
「じゃあ遅くまで出していればいいんじゃないかな?
3学期の終わる頃までとか」
そうしたら、お祝いは終わっているけど、おひなさまを長く出しておいてあげられるよね。
だって1年間のうち10日以外は押し入れの中なんて、あんまり寂しいから。
でも彩ちゃんは首を振りました。
「それはだめだよ、みかんちゃん。
おひなさまはひな祭りが終わったらすぐにしまわないと」
よくそう聞くけど、わけは知らなかったのでたずねます。
「どうして?」
すると彩ちゃんは首をひねりました。
「あれ?どうしてだったかな?聞いたことあるんだけど…」
女の子みんなでわからずに困っていると、修くんがひょっこり現れて教えてくれました。
「ぼく知ってるよ。家のウエイトレスのお姉さんに教えてもらったんだ。
結婚が遅くなるんだって」
修くん家は喫茶店をしていて、修くんもよくお店に行っているそうです。
そこで働いているお姉さんに聞いたんだね。
その言葉を聞くと、みんな困りながらも、遅くまで出しておくことをあきらめたようです。
「うーん。それは困るな。ちゃんと結婚したいもん。
おひなさまには悪いけど、ちゃんとしまおう」
でもわたしは、それくらいなら大丈夫かなって思いました。
「ちょっと遅くなるくらいなら、出しておいてもいいかなあ」
結婚できなくなるっていわれたら、やっぱりわたしも困ります。
大人になってもずうっと1人だったら寂しいもんね。
ううん、魔法使いは必ず子どもがもらえるから、1人ってことはないんでした。
けどおじいちゃんとおばあちゃんみたいに、ずっと仲良くしていける人にもいてほしいです。
でもそういうんじゃなくて遅れるくらいなら、おひなさまを外に出しておいてあげた方がいいな。
わたしがそう考えると、みんなに必死に止められました。
「だめだめ。ちょっとどころか、何十年かもしれないよ!」
あ、確かにどれくらいかはわからないもんね。
美穂ちゃんに続いて、秋子ちゃんにも落ち着いていわれました。
「それに数年だったとしても、毎年続けていけば、遅れが増えていくかもしれないよ」
「ああ、そっかあ」そうだね。今年だけの話じゃなくて、これから毎年ずっとあるもんね。
2人の話両方ともに納得です。
「そうそう。みかんちゃんは人気あるから、ずっと1人でいるってことはないと思うけど、用心に越したことはないからね」
そう彩ちゃんにも付け加えられました。
なんだかみんな真剣です。
わたしはそんなみんなにちょっとびっくりしながらも、うなずきました。
「うん、ちゃんとしまうね」
こうしておひなさまを長く出しておく計画は、なしになりました。
するとももちゃんと桜ちゃんが、わたしとは逆のことをいいました。
「わたし達の家は、今年は15日に、家に帰ってから出したよ。
毎年バレンタインデーの次の土曜日に出すことにしてるんだ。
そうすれば安心して長く出しておけるでしょ」
バレンタインデーが終わった、本当にすぐ後に出してるんだね。
その日付から指折り数えてみたす。
「15日も入れて数えると、20日間になるね。
だったらクリスマスツリーと同じだよ」
わたしがぱっと笑顔になると、桜ちゃんがいいました。
「ね、いいでしょ。みかんちゃん。
みんなもそうすれば問題ないんじゃない?」
「うん。来年からそうしよう」
そうみんなでうなずきました。
これで問題は解決です。
そんな時、わたしはお呼びがかかりました。
「みかんちゃん、廊下から呼ばれてるよ」
そう港くんの言葉に教室のドアを見ると、前の扉に2人の女の子がいました。
2人とも1年生くらいに見えます。
「きっと『魔法使いへの頼みごと』だね」
そうかっこよくいう麻緒ちゃんの言葉にうなずきます。
「うん、そうだね」
わたしが魔法使いだということはみんなが知っていることなので、時々頼みごとをされます。
わたしが解決できないこともたくさんあるけど、魔法使いは人助けがお仕事なので、できるかぎりがんばろうと思ってるよ。
こういう時、もっとたくさんの魔法が使えたらいいなあって思います。
「はーい」
わたしは前のドアに駆けていきました。
廊下に出ていくと、その2人が自己紹介をしてくれました。
「こんにちは。はじめまして。わたし、1年2組の三条真美です」
「こんにちは。同じ1年2組の沢田千枝です。
今日はぜひみかんちゃんに相談したいことがあってきました。
ね、真美ちゃん」
めがねをかけている千枝ちゃんが、長い髪の真美ちゃんにいいます。
真美ちゃんはうなずきました。
「そうなんだ。はじめまして。みかんです。
相談したいことってなあに?できる限りお手伝いするよ」
わたしがいつものようにそういうと、真美ちゃんが話してくれました。
「もうすぐおひな祭りだから、わたしの家、いつものようにおひなさまを出したの」
今みんなと話したばかりのことなので、余計まじめにわたしは聞きます。
「わたしおひなさまが大好きで、毎日朝起きたらあいさつしてるんです。
他にもよくおひなさまに会いに行くけど、不思議なのはその朝最初に行った時なの。
出してからずっと1週間くらい、なんだかおひなさま達お人形の場所が毎日動いているみたいなんです。
その時にちゃんと元通りに直すんだけど、次の日にはまた少し動いてるの。
わたしの家のおひなさま、もしかして夜に動いているのかな?
それをぜひ魔法使いのみかんちゃんに、教えてもらおうと思ったんです」
「ひな人形って動いたりするんですか?」
真美ちゃんの説明の後、千枝ちゃんにそう聞かれて、わたしはまじめに考えました。
「うーん。普通おひなさまは動いたりしないよねえ」
本当にとっても不思議なお話です。
魔法使いのわたしも、そういう話は聞いたことないなあ。
──普通はないけど、でも毎日動いているなんて何かありそうだよね。
確かめてみなくっちゃ。
わたしはそう考えて聞いてみました。
「じゃあその真美ちゃん家のおひなさま、見に行ってもいい?見たら何かわかるかも」
魔法はそんなに使えなくても、魔法使いとして不思議なものがわかる力はあるからね。
もし不思議な物だったら、お話とかできるかもしれません。
すると真美ちゃんはぱっと笑顔になりました。
「うん。ありがとうございます!じゃあ今日、家に来てください」
「よかったね!真美ちゃん。じゃあ帰りにまた来ます」
そういって2人はうれしそうに、トタトタと走って帰っていきました。
そんな真美ちゃん達を見送りながら、考えます。
うーん、動くおひなさまかあ。やっぱり普通のお人形じゃないのかなあ。
物というのも実は、使われることによって心を持ってきます。
その物の心というのが普通はとても弱いから、300年は生きた魔法使いがやっと、心の強いものからわかるようになっていくそうです。
でもたまに普通の人でもわかるくらい、とても強い心を持った物もいます。
真美ちゃん家のおひなさまはそれなのかな?
…まだ全然わからないけど、悪い理由じゃなさそうだなあって予感がします。
なんだか今回のお仕事はとってもわくわくします」
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