それぞれの戦い方
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「…それ被って、帰りなよ…。今からじゃあまり役に立たないと思うけど…」
「でも。夜天の服が濡れるじゃない。私は少しくらい濡れても平気だもの」
「いいから!」
その上着を返そうとした真珠にもう一度無理やり被せる。真珠はその行動に驚いた顔をしていたが、観念したのかクスリと笑ってその上着をしっかりと握りしめてくれた。
そう、それは今の自分に出来る精一杯の彼女を守る方法。せめて、その上着が自分の代わりに彼女の体を打ちつける雨から守ってくれるように。その思いを込めて…。
「さようなら…。風邪引かないようにね…」
自分の上着を被りながら去って行く彼女の姿をいつまでも見送る。次に会う確実な約束は出来ない。だから「またね」じゃなく「さようなら」なのだ。
「プリンセスは星野が先に連れて帰ってくれました。私たちも帰りましょう」
真珠が去ったのを確認して大気が夜天の近くに来る。
「私達にはやるべき事があるのですから…」
「…わかってるよ…。ちゃんと」
そう、それが自分の大切なあなたが望むことならば…。
今は辛いけど、いつかもう一度一緒にいられる時が来るって思っていてもいいよね…?
だから僕も今は祈るよ…遠く離れたその輝く星に。君が大切な人達を守れますようにって…。
夜天の上着を被りながら真珠は雨の街を走り抜けていた。
通り過ぎる街の人々は真珠と同じように突然の雨から濡れないように上着をかぶったり、鞄で頭を守っていたり。中には折り畳み傘を持っている人もいた。
『いいから!』
あまりに強い言い方にこの上着を借りて来てしまったけれど、正直なところ彼の物は今近くに置いておきたくはない。自分が最後の戦いに向かう時に離れられなくなりそうだから…。
思い出して、思いとどまってしまいそうだから…。
(夜天はそれを分かっていたのかしら…。それとも…)
何を気にする必要がある?自分はこの星を、大切なプリンセスを守るために戦いに行かなくてならない運命を背負っているのだから。
思いとどまる必要なんてないはずなのに…。
(だけど、私はやっぱり寂しいみたい…。近くにあなたの輝きが感じられない事が…)
自分のクリスタルの中にちゃんと彼の輝きは入っている。だけど、そうじゃない、彼の温もりを近くで感じられないのがとても辛い…。
けれど、それは自分達が選んだそれぞれの運命だから。どこかできっと繋がる事が出来ると信じているから。
家の鍵を開け、暗い玄関を通り抜ける。濡れた体を拭きとり、彼の上着をハンガーにかける。その時に香る微かな金木犀の香り。
自分を抱きしめてくれている彼を思い出しながら、濡れているその服をギュッと握りしめた。そっと冷たいその服の遠くに彼の温もりを感じながら…。