縮まる距離と離れる距離
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バタバタと廊下を走る音が聞こえて、リビングの扉が開いた。
「真珠が倒れたって、ほんとかよ!!」
「静かに!もう夜も遅いです」
「わりぃ、で、真珠は?あいつ無理してたのか?」
ミュージカルの稽古中の彼女はいつものように見えたが、もしかしたら付き人として引っ張りまわして無理をさせていたのかもしれない。心配する星野に大気は落ち着く様に言った。
「ただ眠っているだけの様です。夜天が側についていますが、前世のことを思い出しているのではないかと言っていました」
「前世を…?」
真珠が自分たちのことを思い出してくれるのは嬉しい。またキンモク星での時のように過ごせるようになるかもしれないと思った。
だけど前世を思い出すということは、彼女が背負っていた使命、戦ってきたこと、星を壊した辛い記憶を思い出すことになる。
彼女と過ごすうちにこのまま、戦いも何も知らないままでいて欲しいという気持ちもあった。スピカは自分の使命を受け入れはしていたが、悩んでいたから。
それを思い出すことによってスピカを押し潰してしまうのではないかと。リビングにいる2人は、夜天の部屋で眠る彼女を思っていた。
「真珠…。僕の前からいなくならないで…」
目覚めない彼女の手を握る。スピカの光を失ったと感じた時、体中の力が抜けていった。戦いの中で散ったと報告を受けた時、頭の中が真っ白になった。だから、再び会えることを信じて同じ輝きを持つ人を探していた。
キンモク星が再び襲われた時、火球の後を追いかけたのはもうスピカのように自分のいないところで失いたくないと思ったから。銀河を巡っていた時に火球が降り立った気配がしたこの地球。まさか、そこで出会えるとは思わなかった。
記憶がないことはショックだったし、思い出して欲しかったけど、最近はどっちでもいいと思っていた。記憶があってもなくても彼女はあの時と変わらない仕草や表情で自分に言葉を返してくれたから。
もし今、前世のことを思い出しているのなら、あの時のように勝手にいなくならないでほしい。自分がいない所で散らないでほしいと。
握った手が握り返される感覚がして目を開け、彼女の顔を覗き込む。パチパチと瞬きを繰り返して、優しい光と共に真珠は目覚めた。
「真珠…?」
開いた瞳が夜天の視線を捉えて微笑んだ。
「心配させないでくれる…?」
「ごめんなさい」
そう言って体を起こす真珠を手伝う。夜天の体が近づいて香るその金木犀の香りに、懐かしさを感じた。