望んだ世界
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神子になって自分の存在を理解させられて、いつか自分は消えるんだって。
でも、私が守れた世界で守れた人達が幸せに過ごしてくれているのならそれでいい。そう、必死に思おうとしていたの。無理やり納得させようとしていたの。
もしかしたら、私も美朱に嫉妬していたかもしれない。私が消えても彼女はこの世界で語り継がれていく人だから。
鬼宿と離れ離れになったとしても、彼は美朱の事を覚えているだろう。この世界で美朱のことを想い過ごすかもしれない。
柳宿だって美朱の事を覚えているのに…私の名前は二度と呼んでくれない。そう思ったら心の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。だから全てを水に流してほしくてあの雨の中に飛び出したの。
でも、あの時彼のお兄さんが私を見つけてくれて、そして必死に探してくれている彼がいてくれたから、彼が優しく私を包んでくれたから。
だから、彼がいるこの世界を守りたいと、彼が生きていく未来を守りたいとそう思う事が出来た。
だけど、私がこの世界に留まることを許してもらえるのなら、そんな未来があるというのなら…。願っていたことがある。ずっと思い描いていた暮らしがあるの。
彼と一緒に過ごせる未来を…。こっちの世界でも、現実世界でも…どっちの世界でも構わない、私に彼と過ごせる未来があるのなら…。
そんな夢を見ることを許されたなら…。
風が優しく自分の頬を撫で、耳元で優しく語りかけて行く。その感覚に少しくすぐったくて、もう一度布団を無意識にかぶりなおしていた。風はそのまま、どこかへと吹きぬけて行った。
ドタドタと走ってくる音が聞こえたかと思うと、バンと元気よく扉が開いた。その音にパチパチと瞬きを繰り返す。見慣れない天井、見慣れない部屋…。
ここは一体どこなのだろう。いや、この部屋の感じ一度だけ来た事のある部屋に似ている。
「ったく、いつまで寝てるのよ、今日が大事な大事な日だってこと忘れてないでしょうね!」
ズンズンと部屋に入って来て自分の横に立つその人をじっと見つめた。
「…柳宿…?」
「寝ぼけてるの?ほら、しっかりしなさい。今日は星宿様の子供の生誕際よ!一緒に宮廷でお祝いするからって招待貰ったの忘れたの?」
ごしごしとまだ視界がハッキリしない目を擦り、自分に話しかける人を見つめる。やっぱり柳宿だ。おかしい、彼は確か青龍の神子になっていた時に自分が攻撃してしまい、怪我を負っていたはずなのに…。
目の前にいる彼にはそんな感じは一切ない。それに、紅南国と倶東国との戦争中のはずなのに鎧も身につけず、普通の服を着用しているのだ。
不思議そうに自分を見つめる瞳に柳宿は首を傾げると、机の上に持ってきた髪飾りを置き、柳宿はタンスらしきものから女もの服を取り出し、部屋中に広げていく。その姿はいつかの星見祭りの時の彼と一緒だった。
「今日は一日、兄キに店任せる事になるんだから、出かける前に昨日の仕事仕上げないといけないでしょ…」
柳宿が話しかけてくれるも彼の言葉を理解するのに時間がかかりそうだと思った。店を任せる?出かける?今の自分の中で整理できない言葉が次々と告げられるのだ。
戦争中であるのなら出かけることだってままならないはずなのに。
「ね、ねえ、ここどこ?紅南国と倶東国との戦争はどうなったの?」
「はあ?ちょっと、本当に大丈夫?」
何着も持っていたその腕から椅子の上に服をかけ、そっと近づいてくる、優しいいつもの彼の手が額に触れる。
「うん、熱はないみたいね。こんな大事な日に熱でも出したら大変だわ。星宿様にせっかく招待してもらったのに」
ぶつぶつ言いながら布団の上にまでも広げられていた服を、元の場所へと片付けて行く。どうやら服は机の上に広げた物で決まったらしい。
「ほら、緋連!!」
まだぼーっとしている緋連に自分が見立てた服を着るように促す。とりあえず彼を部屋から追い出し、その服に着替えることにした。